地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~   作:かくろう

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新たなダンジョン

 僕たちは冒険者ギルドに顔を出していた。

 今回のリンカ救出作戦にあたり、6億ルクスという途方もない額を用意できたのは、煉獄の騎士団をはじめとした冒険者先輩方の協力あってこそだった。

 だから今、僕らは一つ一つのパーティーに頭を下げて回っている。

 

「おお、リンカ。無事だったんだな。よかった」

「アテンさん、このたびはご助力いただきありがとうございます。おかげで無事に助けて頂けました」

 

 煉獄の騎士団リーダー、アテンさん。他のメンバーは出払っているらしく、ちょうど居合わせた彼にまず礼を伝えることになった。

 

「本当に……よかった」

「ご協力いただいたお金は、時間をかけてでも必ずお返しするつもりです」

「ははは、いいんだよ。気にしないでくれ。私達も今回の件で力をつけられた。君たちのこれからの活躍に期待しているよ」

「ありがとうございます。でも、いつか必ずお礼はさせてください」

 

 僕が頭を下げると、アテンさんは少し肩をすくめて笑った。

 

「協力したのは私達だけじゃない。ここにいる冒険者の大半は、セージ君に命を助けられた恩がある。そのお返しだ。だから胸を張って受け取っておけ」

「いや、でも……」

 

「それなら今夜、ここにいる全員に一杯奢ってもらうってのはどうかな? どいつもこいつも底なしの大酒飲みばかりだが……君たちの財布で間に合うか?」

「うっ、た、確かに今はすっからかんですが……」

 

「ははは! ならしっかり稼いでくることだね」

「そうですね、頑張ります!」

 

 笑い合ったその時、アテンさんの視線がルミナスへと移る。

 

「ところで……そっちのお嬢さんはすっかりセージ君のお仲間みたいだな」

「んっ、ルミナス、セージのお嫁さんになった。口説くなら一足遅かったな」

「なっ――よ、嫁!? 君、結婚したのか!?」

 

 アテンさんの声がギルド中に響き渡る。周囲の冒険者たちも「えっ!?」と振り返ってきた。

 

「ちょっ、ルミナス!? ええと……アテンさん、実はまだ秘密なんですが、リンカと結婚することになりまして。で、ルミナスも一緒に……娶る予定でして……」

「ふむ……つまり二人とも……? セージ君、どっちが正妻なんだ?」

「ぐっ……え、えっと、それは……」

「正妻はルミナス」

 

「ちょっ!? リンカが正妻だよ!」

 

「なんだなんだ? 三角関係か?」

「おい誰か賭けをはじめろ!」

 

「やめろぉぉ!」

 

 ギルド中が一気にざわついた。アテンさんも腹を抱えて笑っている。

 

「ははは、なるほど! いやぁ、宴が楽しみだな。……とにかく今は依頼だ。難易度の高いものが一つ出ている。私達が受けるつもりだったが……君たちなら楽勝だろう」

「分かりました。ありがとうございます!」

 

 ◇◇◇

 

「あ、リンカさん、ご無事だったんですね! 本当に良かった……。ドスケベ貴族に変なことされませんでしたか?」

 

 受付嬢のお姉さんはわざわざカウンターから飛び出してきて、リンカの両手をぎゅっと握りしめる。その瞳は心底ほっとしたように潤んでいた。

 

「ありがとうございます。おかげさまで五体満足で戻れました」

「……良かったぁ。あの時セージさんに助けてもらわなかったら、私なんて今頃――。だから今度は私が恩返しします!」

「恩返し?」

「はい! 情報なら全部出しますし、物資もできるだけサービスします。街の皆も、セージさん達には感謝してますから!」

 

 真剣な顔でそう言われ、胸の奥がじんと熱くなる。

 

 実はこの人、以前に町の外で魔物に襲われている所を助けた事がある。

 

 それ以来なにかと僕らに便宜を図ってくれる義理堅いお姉さんだ。

 

「ありがとうございます。それで、煉獄の騎士団のアテンさんから高難度の依頼が出ていると伺ったのですが」

「はい。実は王都に行っている間に、新しいダンジョンが発見されまして……。強力なアンデッドモンスターが大量に出現しているんです」

 

「アンデッド……ですか」

 

「そうです。ベータクラスのナイトリッチやデスソルジャーが群れをなしているそうで……。炎属性や聖属性の攻撃、呪いの解呪、毒対策は必須かと」

「分かりました。準備を整えたらすぐ向かいます」

 

「お願いしますね! あっ、それと……結婚、おめでとうございます」

「えっ!? も、もう広まってる!?」

 

「お嫁さん、二人……なんですよね?」

「だ、だからそれはまだ秘密でぇぇぇぇ!」

 

 またもや爆弾発言の余波でギルドがざわつく。

 

 本当は8人なんて口が裂けてもいえないな。

 

 ◇◇◇

 

「さて、強力なアンデッドを相手にするなら……やっぱり聖職者や回復魔導師がいてくれると手っ取り早いけど。ルミちゃん、聖属性魔法は?」

「ん……ルミナス、聖属性は苦手。魔族、回復魔法得意違う」

「そうか……。なら聖属性の使い手を雇うか、僕の魔法を底上げするしかないな」

「問題ない。セージの浄化魔法、【ためて・放つ】で聖属性攻撃に負けない威力になる」

「なるほど……。生活魔法も根源を辿れば聖属性の基礎、ってことか」

 

 リンカも真剣に頷いた。だが内心では、僕はやっぱり魔法が苦手なことを痛感していた。いくら努力しても、剣技ほどの成長はなかったのだ。

 

「うーん、とりあえず現地で様子を見てみるか。僕たちで通用するなら最後までやってみよう」

「そうね、それが一番だわ」

「問題ない。ルミナスの火魔法でアンデッド丸焼きにする」

「いや、やりすぎ注意な!」

 

 ◇◇◇

 

 ミルミハイド商会に戻り、必要なアイテムを揃える。

 

「聖水は五十本、呪符は三十枚、解毒薬は百本……。はい、完璧ですね」

 

 出迎えてくれたのはエリスだ。大商会の跡取り娘にして、切れ者の経営者。僕らが必要とする物資を、すでに見越して揃えておいてくれたらしい。

 

「すごい……もう全部準備してくれてたのか」

「当然ですわ。あなた達の帰還を信じておりましたもの。しかも……次はアンデッド退治でしょう? 読めてましたわ」

「さすがエリス!」

「うふふ♪ 商売は先読みが命ですから」

 

 彼女は胸を張りながらも、最後に小声で付け加える。

 

「……ただし、ちゃんと帰ってきてくださいね。商売相手を失うのは困りますもの」

 

 穏やかで澄ました顔だが、その耳はほんのり赤く染まっていた。

 

 僕らは笑みを交わし、いよいよダンジョン、通称【囁く迷宮】へと出発することにした。

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