地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~   作:かくろう

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骸の鎧騎士


 扉が爆発し、木片や石の破片が舞う。目の前には、通常より二回りも大きなリビングデッドアーマーが立ちはだかっていた。黒光りする鎧に、赤く光る瞳――その威圧感は、これまでの敵とは段違いだ。

 

「デカい。またイレギュラーか」

 

 最近もの凄く遭遇率が高いな。

 

 僕は剣を握り、呼吸を整える。

 

「セージ君、援護行くよ!」

 リンカが双剣を構え、軽やかに構えを取る。

 

「ルミナス、火力頼む!」

「ガッテン承知」

 

 アーマーが振り下ろす一撃を、僕は剣で受け止める。衝撃で後ろに吹き飛ばされそうになる瞬間、耳に機械音声が響いた。

 

 ――――――――――――――――――

 

『新能力《シャイニング・チャージ》解放します。攻撃力増大、魔素吸収効率増大、聖属性付与。ただし、適性外能力のため負担増』

 

 ――――――――――――――――――

 

 よしっ!

 何度もこの声に助けられてきた。今も、体が力で満ちあふれる感覚が走った。剣が重くなるどころか、振るうたびに力が身体全体に広がる。

 

「リンカ、ルミナス、行くぞ!」

「はいっ!」

「任されたわ!」

 

 アーマーが振り下ろす刃を避け、僕は全力で剣を振るう。

 

「――ピュリファイを付与……! シャイニング・チャージッ」

 

 最大値2000になった聖属性の生活魔法によって剣に光が宿る。

 

「ぐっ」

 

 体に重圧のような負担が掛かる。なるほど、これが適性がない力の代償か。

 だがこれならアンデッドモンスターにも十分通じる筈。

 

「せやぁああああ」

 

 光の刃が奔流となり、アーマーを直撃。鎧の隙間から黒い霧が漏れ出すが、光が一気に浄化していく。

 

「セージ、強い。ルミナス、分かる。力、圧倒的」

 

 ルミナスの瞳がキラキラ輝いている。そうしながらもちゃんと戦いには集中しているから流石だ。

 

 リンカも隙を突き、流れるように敵の足元を斬り裂く。軽やかに飛び跳ねながら、アーマーの動きを封じていく。

 

 リンカの近接戦闘能力も確実に向上しているみたいだ。

 

「よし、ルミナス、燃やせ!」

「待ちわびた。《ファイアバレット・超連射》」

 ルミナスが両手を掲げ、炎の弾丸を次々と発射。火柱が走り、アーマーの周囲は光と炎に包まれる。

 

「チャンスだ!」

 僕は剣に魔素ストックを集中させ、無機質な声に従う。

 

『練度アップを確認。新技解放――《シャイニング・チャージ・フルスラッシュ》を獲得します』

 

「新技っ、放つぞ!」

 過去に何度も経験した感覚で、体が自然に反応する。剣先に力が集中し、光と浄化が奔流となる。

 

「――消えろッ! かぁああああああ!」

『ギョァアアアアアアアアアアアアアアアアア』

 

 光と炎、浄化の奔流がアーマーを包み込み、鎧の破片と黒い霧を吹き飛ばす。巨大な体は崩れ落ち、最後の抵抗も虚しく消滅した。

 

「す、すごい。セージ君、今回の力、さらに強いね……」

 

 ルミナスも目を輝かせて言う。

「ルミナス感動。セージすごい。濡れた」

 

「ルミナスさんや、そういう発言は気を付けようね」

「ショボーン(´・ω・`)」

 

 おちゃらけたルミナスに和みつつ、僕は剣を握り直す。背後には、無数の敵の残骸だけが静かに散らばっている。

 

 巨大なリビングデッドアーマーが完全に崩れ落ち、辺りは静寂に包まれた。

 僕は剣を下ろし、大きく息をつく。肩にかかる緊張がようやくほどけた。

 

 僕たちは倒れた場所に歩み寄り、残された戦利品を確認した。

 漆黒の魔石と、砕け散った鎧の一部。加えて、禍々しい大剣が残っている。

 

「この剣……使うには重すぎるけど、素材としては一級品ね」

 

「確かに。持ち帰ろう。ルミナス、この魔石は新しい能力に使えそうか?」

「ん……。ん~、相性が悪そう。今回は遠慮」

 

「そうか。じゃあこいつは変換してしまおう」

 

 僕が魔石を拾い上げた瞬間、例の機械的な声が響いた。

 

『魔石を取得しました。魔素ストックに変換しますか? 変換値は95万』

 

 やっぱり来たか。もちろん変換する。

 胸の奥から全身へと力が満ち、内側まで光が流れ込む。

 

 それにしても、変換値から推察するに、このリビングデッドアーマーはあのヘルガロウムのイレギュラーよりも強かったわけか。

 

 いや、吸収効率アップや経験値アップの能力も獲得しているから、一概にそうとも言い切れないか。

 

「……よし。これでまた一段階、底上げできたな」

 

 

「ねえ、セージ君」

 リンカが僕の袖を軽く引いた。

「戦いのたびに強くなっていくの、実感できるでしょう? 今の一撃なんて……あの巨体すら押し返してたもの」

「ん。ルミナスも感じる。セージ、普通の人、違う。もっと……すごくなる」

 その目は真っ直ぐで、僕は少し照れながら頷いた。

 

 ――それでも。強さを得られるのは仲間がいてくれるからだ。

 この二人の支えがあるから、僕は全力で剣を振るえる。

 

「さて、行こうか」

 僕は落ちた大剣をストレージに収納し、二人に視線を向けた。

「多分こいつはまだ前哨戦のような気がする。次の階層へいってみよう」

「ふふっ、そうね。次はどんな敵が出るのかしら」

「ん……どんな敵でも、セージとリンカとなら勝てる」

 

 そう言ってルミナスが僕の腕にぴたりとくっついてくる。

 リンカも負けじと反対側から寄り添い、二人に挟まれる形になった。

 

「よ、よし……じゃあ三人で、この先に挑もう」

 

 扉の奥には、まだ見ぬ迷宮の深層が広がっている。

 僕らは新たな戦いを前に、一歩を踏み出した。

 

 

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