地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~   作:かくろう

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仲間としての一歩

 再び紫の苔に照らされた迷宮の入口へ。

 以前は不気味なだけだったが、今回は空気の質そのものが違っていた。どこか禍々しい圧力が漂っている。

 

「……妙ね」

 

 リンカの耳がぴくりと揺れる。

「魔物の数、増えてる」

 

「ん……間違いない。魔力の流れ、前より濃い。誰か、意図的に集めてる」

 

 やはりただのダンジョンじゃない。誰かが裏で操作している。

 

「皆、気を抜くな。最初から全力で行こう」

 

 奥へ進むと、最初に現れたのは……無数のスケルトン兵。だが前回と違い、揃いの黒いマントを羽織り、同じ紋章を胸に刻んでいる。

 

「紋章……これ、やっぱりただのモンスターじゃないわね」

 

 リンカが低く呟く。

 

 スケルトンたちは合図もなく一斉に剣を振りかざして襲い掛かってきた。

「セージ君、いくわよ!」

 

「了解! 【重ね斬り】!」

 

 僕の剣閃が十重二十重に重なり、前列のスケルトンが一瞬で砕け散る。だが後ろから次々に補充され、列を組んで前進してくる。

 

「ルミナス……まとめて吹き飛ばす。《インフェルノ・バースト》!」

 

 ルミナスの掌から放たれた炎の奔流が骨の群れを飲み込み、一帯を火柱に変えた。

 

「すごい……でも、まだ来るわ!」

 

 リンカはすぐに弓を引き絞り、《ホーリー・アロー》を連射。僕の浄化の力を重ねると、矢は光の弾丸となり、次々と敵を消し飛ばしていく。

 

 その時、後方から呪詛のような魔力が押し寄せた。別の通路から、黒衣の男たちが現れる。骨兵と違い、完全に意志を持った人間だ。

 

「……人間⁉」

 

 僕は一瞬たじろいだ。

「ここまで露骨に妨害してくるなんて」

 

「我らは選ばれし導き手……異端どもを討ち払え!」

 

 彼らが杖を掲げると、黒い鎖が空間から伸び、僕たちを縛り付けようとする。

 

「セージ様! 下がってください!」

 

 セレスが一歩前に出た。両手を胸の前で交差させると、淡い金色の障壁が展開される。

「――《サンクチュアリ・ウォール》!」

 

 黒い鎖が弾かれ、僕たちの体を掠める前に霧散した。

 

「すごい……これがセレスの聖魔法か!」

 

「まだ終わりません……っ! リンカ様、お怪我を!」

 

 気づけばリンカの腕に黒い切創が走っていた。セレスはすぐ駆け寄り、光を纏った手をかざす。

「癒しの光よ、どうか彼女を護りたまえ……《ヒール》!」

 

 傷が瞬く間に塞がり、リンカが目を見開いた。

「すごい……痛みが消えた……セレス、本当にありがとう!」

 

 セレスは小さく頷き、再び戦線を見据える。

「わたくしも……仲間ですから」

 

 敵兵を一掃した後、僕たちは呼吸を整えた。だがその直後、迷宮の奥から強烈な気配が迫ってきた。

 熱を帯びた圧力。焼けた鉄の臭い。

 

「なんだ、この気配……」

 

 僕は無意識に剣を握りしめる。

 

「ん……ルミナスも、知らない。でも……強い」

 

 まだ姿は見えない。だが確実に、“何か”が待ち受けている。

 

「……いよいよ本番かもしれないな」

 

 そしてその背後には、教団どころかさらに巨大な存在がいる――そんな直感が胸をよぎった。

 

 

 戦いを終えた僕たちは、崩れ落ちたアンデッドの残骸の中から戦利品を拾い集めていた。

 

 それらはいつも通りルミナスがヘルガロウム召喚によって済ませてくれる。

 魔石の輝きが暗い迷宮の中で淡く光り、空気が少し澄んでいく気がする。

 

「これで全部かしら」

 

 リンカが拾い上げたのは、掌ほどの大きさの黒い魔石。それに加えて、漆黒の金属で作られた装飾的な胸当てと、錆びた大剣が残されていた。

 

「ん……魔石、大きい。レアドロップ」

 ルミナスが魔石を撫でながら呟く。その瞬間、例の無機質な声が頭に響いた。

 

 ――――――――――

『魔石を取得しました。すべて魔素ストックに変換しますか? 変換値は160万』

 ――――――――――

 

  僕は迷わず頷き、ストックに変換する。体の奥に光が宿り、また一歩強くなった気がした。

 

 ――――――――――

『フィーリングリンク能力が変化しました。追加された能力を開示します』

『【呪い耐性強化(強)】がLv2に上昇しました』

『【聖属性付与(強)】の持続時間が延長されました』

 ――――――――――

 

 おおっ……セレスが加わってから、やっぱり聖属性関連が底上げされてる。

 呪いに強くなるのは、このダンジョン攻略には特にありがたい。

 

「今、力が……増した気がします」

 

 セレス――いや、セレスティアが胸に手を当て、静かに微笑んだ。彼女の清らかな魔力がパーティ全体に流れ込む感覚がする。

 

「聖女の加護ってやつかな」

 僕が呟くと、リンカが肩をすくめる。

 

「ほんとに便利ね。これなら呪いなんて怖くないわ」

「ん……セレス、役立つ。仲間」

 

 ルミナスが短く言い切った。彼女にしては最大級の褒め言葉だ。

 

 僕たちは拾った魔石や装備をストレージにしまい、軽く休憩を取った。

 体力は【超自動回復】を始めとするスキルで戻りつつあるが、精神の疲れまではそう簡単に癒せない。

 

「さて……この後どうする?」

 僕が問いかけると、リンカがきっぱりと言った。

 

「一度ギルドに戻りましょう。セレスのこともあるし、情報共有は必要よ」

「そうですね。皆さまのお力になれるよう、わたくしも正式に冒険者登録をいたします」

 

 セレスの真摯な言葉に、僕は自然と笑みを浮かべた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 僕たちは冒険者ギルドの会議室に呼ばれていた。

 リンカとルミナス、そしてまだ旅に慣れないセレスが並んで座っている。ギルド長と幹部冒険者数名が真剣な表情でこちらを見ていた。

 

「改めて礼を言う。セージ君たちがあの迷宮で尖兵を退けてくれたおかげで、町への被害は最小限で済んだ」

 ギルド長の言葉に、部屋の空気が引き締まる。

 

 僕は軽く頭を下げて答える。

「僕たちは仲間を守るために戦っただけです。でも、教団が背後にいるとなると……話は大きいですよね」

 

 幹部のひとりが低い声で頷く。

「ベアストリア教団は元々、人々の心の支えだった。だが近年は腐敗が進み、国家にまで干渉している。町の独立性を守るためにも、ギルドとして動かねばならん」

 

 セレス――いや、まだ世間からは身を隠すために“セレス”と名乗っている彼女は、小さく拳を握っていた。

「……わたくしの浅はかさで、多くの方々に迷惑をかけてしまいました。それでも、これからは皆さまと共に歩みたいのです」

 

 その瞳はまだ迷いを抱えながらも、確かな光を宿していた。

 

 リンカが柔らかく微笑んで、セレスの手を握る。

「セレス、大丈夫よ。あなたは私たちの仲間。ここでは誰も、あなたを責めたりしないから」

 

 ルミナスも小さくうなずく。

「セレス……仲間。フィーリングリンク、繋がってる。信じる」

 

 会議の空気が少し和らいだところで、ギルド長が声を張った。

「では決定だ。教団の動きを探る正式な依頼を、セージ君たちに託したい。迷宮の更なる調査と討伐任務だ」

 

 セレスは驚いたようにこちらを見て、それから小さくうなずいた。

「……わたくしも、共に戦います。恐怖はありますが……もう逃げません」

 

 

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