地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~   作:かくろう

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王城内戦


 瓦礫と炎に覆われた王都の一角、かろうじて残った石造りの建物の地下室に、冒険者ギルドの残党や守備兵が集まっていた。そこが臨時の拠点になっているらしい。薄暗い空間にランタンの灯が揺れ、沈痛な面々が顔を揃えている。

 

「おお……外から来てくれたのか」

 屈強な男――冒険者ギルド長が僕らに歩み寄ってきた。血の跡がついた鎧を着込んでいるが、その眼光はまだ死んでいなかった。

 

「状況を教えてほしい」

 僕が切り出すと、彼は深いため息をついた。

 

「王城は完全に占拠された。炎の魔将イグニスなる者が玉座に居座り、陛下をはじめ、王族や大臣方を人質にしている。奴の炎に抗える者はほとんどおらん……」

 

 周囲の冒険者や兵士の顔に、絶望が色濃く刻まれていた。

 

「……わたくしが行きます」

 静かな声が響いた。セレスだ。

 

 全員の視線が彼女に集まる。淡い金髪を隠すための魔法の腕輪が光を受けて鈍く輝き、それでも彼女の気高さは隠しようがない。

 

「聖女として、この命を盾にすれば、人質を解放する交渉の余地が生まれるはずです」

 

「バカ言わないで!」

 リンカが即座に声を張り上げた。銀の耳が逆立ち、尾が大きく揺れる。

「そんなことをしたら、セレスが犠牲になるだけよ!」

 

「ん……セレス、死ぬ。意味ない。ダメ」

 ルミナスも短く否定した。

 

 僕はセレスの肩に手を置き、静かに首を振った。

「その覚悟は……本物だと思う。でも、犠牲を前提にした覚悟なんて僕らは認めない。セレス、君は仲間だ。だから一緒に戦おう」

 

 彼女の大きな瞳に、涙が滲んだ。けれど、すぐに小さく頷く。

 

「……はい。わたくしも、皆様と共に」

 

 重苦しい空気の中で、ルミナスが口を開いた。

「なら、ルミナス、《リ・テレポ》で直接、王城。転移する」

 

 僕たちは一斉に顔を上げた。

「できるのか?」

 

「ん……試す」

 

 ルミナスは両手を組み、瞳を閉じる。魔力が渦を巻き、空気が張り詰めていく――だが次の瞬間、彼女は顔をしかめて魔力を解いた。

 

「ダメ……王都全域、魔力の渦。座標、歪んでる。転移……不可能」

 

 王都の中まで来れば可能かと思ったが、そう上手くはいかないらしい。

 

 冒険者たちの間に落胆のざわめきが広がる。だが僕は逆に覚悟が定まった。

 

「なら――正面から突破するしかないな」

 

 言葉にすると、不思議と心が軽くなった。目の前の仲間たちも、それぞれに頷く。リンカが鋭い笑みを浮かべ、ルミナスが拳を握り、セレスが胸に手を当てる。

 

「僕たちで道を開こう。必ず人質を救い出して――イグニスを討つ」

 

 薄暗い地下室に、確かな決意が響いた。

 

 王都の大通りを進む僕らの目に映ったのは――地獄そのものだった。

 炎に包まれた街路、崩れ落ちた建物、血と煙の匂い。逃げ惑う市民たちの背後を、炎を纏ったアンデッドが追いすがる。

 

「来るわよ!」

 リンカが双剣を抜き放ち、前へ躍り出る。銀狐族特有のしなやかな動きで、先陣を切って突撃するアンデッドを切り伏せた。

 

「任せる……《ノヴァ・インフェルノ》!」

 ルミナスが詠唱を終えると、紅蓮の魔法陣が空中に展開し、幾百もの炎弾が豪雨のように降り注いだ。

 炎に炎をぶつける――普通なら相殺だが、ルミナスの魔力は次元が違う。燃え盛るアンデッドたちはさらに燃え上がり、悲鳴を上げて灰と化した。

 

 恐らくはフィーリングリンクによる影響だろうか。セレスの聖属性がルミナスの魔法にも付与されているらしい。

 

 灼熱の閃光が夜空を照らし、焼け焦げた瓦礫だけが残る。

「ひいっ……」

 後方に控えていた冒険者たちが息を呑む。恐怖で硬直していた彼らの瞳に、わずかな光が宿った。

 

「セージ君!」

 リンカの声。僕は頷き、剣を握り直す。

「――【重ね斬り】!」

 一瞬で幾十もの斬撃を放ち、群れを成して迫る炎のゾンビ兵を切り刻む。裂け目からあふれた黒い瘴気が、セレスの掲げた光で浄化されていく。

 

「《ホーリー・シールド》! この光で守ります!」

 セレスが詠唱すると、純白の障壁が展開し、仲間や市民を包み込んだ。アンデッドの爪が叩きつけられるが、光の壁に弾かれて砕け散る。

 

「助かった……!」

「まだやれるぞ!」

 冒険者たちの士気が、目に見えて高まっていった。

 

 僕たちは街路を突破し、ついに王城前の広場に辿り着いた。

 そこには――兵士や魔物、尖兵化した冒険者までもが、黒い波のようにひしめいていた。

 

「数が……多い! 重ね撃ち!」

 リンカが歯を食いしばる。ストレージから矢をつがえて打ち出し、聖属性を纏わせてアンデッドモンスターを駆逐していった。

 

「ん……問題ない。ルミナス、また焼く」

 ルミナスがドヤ顔で両手を掲げ、再び炎が巻き起こった。

 

 

 

「任せて。僕らが前に出る。セレス、援護を!」

「はい、全力で!」

 

 僕らは駆け出した。

 双剣を煌めかせるリンカ、聖光を展開するセレス、そして炎と氷を自在に操るルミナス――三人の力を繋げ、敵の大軍へ突っ込んでいく。

 

 轟音と咆哮が広場を揺らす。

 光と炎と刃の奔流の中、冒険者たちが奮い立ち、怒号を上げて続く。

 

 こうして、王城奪還のための総力戦が始まった。

 

 

 

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