赤い光弾ジリオン勝手続編シリーズ〜A GIFT FROM GOD〜   作:LLZILLION

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本編完結後一ヶ月あたりのお話です。
ラブとかエロとかは今回ほぼないです。
男子校ノリのエロ話とか、あと主人公がみんな若いのはどうしてか、の一解釈を入れたりしてみました。


before the rain

 「最近どーよ? 羽振り良さそうじゃん」

 シミュレータールームでJJが言った。

 

 惑星マリスからノーザ星人がいなくなって早一ヶ月あまり。ホワイトナッツは実戦がない分、整備待機やB級、C級待機、シミュレーションでの訓練が増え、部屋にはお気楽な空気が漂っていた。

 

 「おかげさんで、忙しくさせてもらってるよ。この後もファッション誌の取材でね。軍も宣伝になるからぜひ協力をってんで、高級フレンチで残業三昧」

 チャンプはいかにも面倒でたまらない、という風を装いつつ、しかし満面の笑みで言った。

 「なんでも、評判の美人記者らしいぜ。元トップモデルだとさ」

 シミュレーターのプログラムをいじっていたデイブが口をはさんだ。デイブはホワイトナッツの特殊な装備を、ひろく陸軍で使えるよう改修する任務を新たに受けていた。

 「なぁJJ、せっかくだからモデルの知り合いでも紹介してもらうかい?」

 「へん、やなこった! でもチャンプ、忙しいならいつでも替わるぜ?」

 「おあいにく様。JJにファッション語られても先方の迷惑だから、俺が仕方なく行ってやるよ」

 「なんだとテメー、このチャンプ!」

 「はっはっは、JJ、まずはファッションセンスを磨かなきゃな。専属スタイリストさんがおかんむりだぜ」

 「そゆこと。オマエは他の女のことなんか俺に任せて、彼女に愛想尽かされんようにな」

 「ちぇっ、なんだよそれ……なんか納得いかねー」

 JJがふくれっ面でチャンプを睨んだ。

 「それでどうなんだ、我らの姫のお味は?」

 「……えっ?」

 「とぼけるなよJJ。最近、妙に色っぽくなったよなぁ、アップル」

 デイブがニヤニヤ笑いを隠そうともせず言った。ここぞとばかりにチャンプも同調する。

 「そーそ、こないだも誰かさんを見つめる目がハートマークになってたもんなぁ? いったいナーニがあったのかなぁ、JJサン?」

 「そ、そんなこと……言えるかよ!」

 「おーおー口止めかぁ? 順調に尻に敷かれてるな、ハハハハハ!」

 「二人だけの秘密よ、JJ♪ ってか? ガハハハハハ!」

 シナを作ってウィンクしたデイブのモノマネが意外と似ていることが、かえってJJの逆鱗に触れたらしい。

 「にゃろー、二人とも覚悟しろ!」

 顔を真っ赤にしたJJがデイブに食って掛かろうとしたとき、横から声がかかった。

 

 「ちょっとうるさいわよ、JJ」

 

 「うわっちゃちゃちゃ!!!?」

 三人は飛びあがらんばかりに驚いた。その慌てぶりに、声をかけたアップルもビックリした顔で尋ねた。

 「ちょ、ちょっとどうしたの三人とも? わたし何か言った?」

 「ど、どうして戻ってきたんだよアップル? Mr.ゴードから緊急の呼び出しじゃなかったのか?」

 「あぁ、あれ? すぐ終わったわ」

 アップルはあっさりと言った。

 まだゼーハーと荒い息をさせながら、背を屈めた男たちは互いに目配せした。三人で重々しく頷くと、チャンプがスッと立ち上がった。

 「……いや、騒々しくしてすまなかった。ちょっと議論に熱が入っちゃってね」

 「そ…そうそう、建設的なナントカとか、なんか、そういうヤツ?」

 「……い、いやぁホント、つい言いすぎちゃったよ。JJ、すまなかった」

 「アップル、そういうことなんだ。……じゃ、俺は取材があるんで失礼するよ」

 チャンプが言うと、なぜか三人揃って風のように走り去った。

 「……はぁ?」

 一人残されたアップルは、キツネにつままれたような顔でそれを見送った。

 

 

 「――そうか……やはり、本人の意思は固いか」

 「……残念ながら。希望に添えず、申し訳ない」

 Mr.ゴードはスクリーンの司令長官に頭を下げた。

 対ノーザ戦争の終結以後、マリス軍最高司令長官バーンスタインは同期のゴードに対して、仕事でもオフでも、何かと話を持ちかけてくる機会が増えていた。彼も疲れているのだろうか? ゴードはちらと浮かんだその考えをおくびも見せず、スクリーンを見据えた。

 「……はからずも、世間の注目度が上がったこの時期だ。古巣の情報部のみならず、広報はじめ、彼女を欲しがっている部門は多い。マリスの復興に軍が果たす役割のシンボルとして、彼女には残ってもらいたかったのだが……」

 「……理解します。しかし、本人の意思が優先です」

 「なぁゴード……我々の頃は、大人といったら20歳を越えてからだ。まだ若い彼女のキャリアを、我々がサポートするのは、決して悪いことではないだろう。もう一度、君の口から説得してもらえんか?」

 「バーンスタイン」

 ゴードは長官の名を呼んだ。その瞳に強い意思が宿っている。

 「マリス政府が成人年齢を引き下げたのは、この星を拓く彼らの力を欲したからだ。彼らは15になったとき、自らの意思で軍に入った。アップルも、JJも、チャンプも、デイブも。だからこそ我々は、16から18歳の若く、才能に溢れた彼らを死地へと送り出し、そして今日の平和を勝ち得た。それはつまり、我々が、我々の都合で、彼ら彼女らを大人にさせたということだ。いまさら保護者ヅラをして彼女を利用するなど、断じて許されることではない。……彼女は我々などより立派な大人だよ、バーンスタイン」

 Mr.ゴードは言い終え、スクリーンを見つめて微動だにしない。思わず手を止めたエイミも、息を詰めてそのやりとりを見守った。

 

 「……君には、そう言われてしまうんじゃないかと思っていたよ」

 しばらくして、一気に老け込んだかのような長官がやっと答えた。

 「まさしく、君の言う通りだ。……我々は、多くの若者たちの命を預かり、散らせた。ノーザが去ったいま、生き残った者の最低限の礼儀として、あらゆる若者の意思を、大人として尊重すべきだった」

 「……」

 「いやゴード、すまなかった。実は例の大臣……彼女が以前助けたあの男が、アップルをぜひ秘書にと申し入れている。彼女が望むならそちらに紹介すると、伝えてはもらえんだろうか?」

 エイミは驚いた。アップルが、大臣付きの秘書に? 実現したら、たしかにすごい出世だけど……。

 「了解です、伝えましょう」

 「頼む。……しかしゴード、まさかとは思うが、君まで辞めるなんて言い出すことはないだろうな? 君には、まだまだやってもらいたい仕事がある」

 「私のここでの仕事は、彼らを送り出すまでと心得ています。我が儘ですが、その後のことは、その時に話をお聞かせいただきたい」

 「わかった。……つい長話をしてしまったな。ではゴード、明日の参謀本部で会おう」

 長官が敬礼し、スクリーンが消えた。

 

 「……エイミ、コーヒーを頼む」

 敬礼を解いたMr.ゴードが、いつものように穏やかな声で言った。

 

<続>

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