赤い光弾ジリオン勝手続編シリーズ〜A GIFT FROM GOD〜 作:LLZILLION
『before the rain』の直接の続きとなります。
JJのナイーブな側面を描きたかったんですが、うまく行ってますでしょうか。
いまにも崩れそうな空模様の下、 JJはマリスベースの敷地をぶらぶらと歩いていた。
チャンプはもう、雑誌の取材を受けるため、ベースを出発していた。
デイブも、試作品の持ち込みに軍研究所へ出掛けてしまった。
アップルは、以前ベッドでまどろみながらJJと話していたとき、軍を辞めるつもりだと打ち明けていた。その時は、芸能界にでもデビューすんのか?と茶化したものの、同時にJJは、自分に今後の考えがなにもないことに改めて気づかされた。
――皆、「これから」のために動き始めている。
自分でも気づかないうちに、JJの足は英雄墓地に向かっていた。
「……ニック、また来たぜ」
対ノーザ戦争に倒れた兵が眠る英雄墓地にあって、ニックの墓はまだ真新しく、綺麗に整っていた。戦功の高かったケリーのものに比べてこじんまりとはしているが、一兵士に与えられるものとしては最大限配慮されたものといえた。
「ニック、お前がジリオンをバカにしたから、ブラックボックスが怒って発動しちまったよ。おかげでノーザ戦争は終結、俺も近々お役御免になりそうだ」
墓石に丸い点が表れた。ひとつ、ふたつ……そしてすぐ、数えきれなくなった。JJはフードを出して被り、雨を避けた。
まばらにいた人影がいつの間にかいなくなり、JJは広い墓地にひとり佇んだ。
「……JJか? 何やってんだ」
「マッシ……」
以前所属していた部隊の仲間、マッシが傘を片手に、ハンバーガーを片手に立っていた。
「こんな雨んなかで墓参りか?」
「いんにゃ、散歩。そっちは?」
「こいつさ」
マッシはハンバーガーにかぶりついた。そういえば、マッシはニックと同期で、昼はよく二人でこのバーガーを食ってたっけ……。
「……聞いたぜ。リルまで行ってきたんだってな」
マッシは口をもぐもぐさせながら指を空に向けて言った。
「あぁ。あいにくと、土産売り場が見つかんなくてね。悪ぃが手ぶらだ」
「いいってことよ。ノーザの野郎もいなくなったし、お前もなんとか生きて帰ってきたしな」
JJは腕を叩いた。
「オレは不死身のJJ様だぜ? あっさり死ぬもんかよ」
「フカシやがれ。せいぜい、ニックに追い返されたんだろ。……それで、ホワイトナッツはどうなんだ? 存続するのか?」
「どうかな……でももうジリオンもないし、どの道オレの仕事は……もうないと思う」
「そうか……」
また一口頬張り、マッシが口を開いた。
「……俺たちは、JJが戻りたいってんなら歓迎するぜ」
「マッシ……」
「だが……今のお前じゃダメだ」
「え……」
思わず、JJの息が止まった。
「ひでぇもんだ。お前、行き場をなくした犬みたいだぜ。ずぶ濡れでよ、誰かに拾ってもらいてぇのか?」
「そんなワケ……!」
JJは強く言いかけて、しかし、横を向いて呟くように言った。
「……いや……そうか、そうだよな……」
「まったく、反論もしねえのか? そんなこと言ってるときのテメエはダメだ、まったく使えねえ。うまいもんでも食って、女にでも甘えとけ」
マッシはニヤリと笑った。この雑なトコ、まったく変わんねぇな……。JJは、その変わらなさに力づけられている自分に気づいた。
「……わかったよ、あんがとさん。マッシ、あとニック、俺もう行くわ」
「またなJJ、ムダに焦るなよ。あと、あんま週刊誌を賑わすんじゃないぜ」
JJは苦笑し、右手を挙げて英雄墓地をあとにした。
「――あらJJ、どうしたの? こんなところで」
雨はいつの間にか止んでいた。アップルはJJに駆け寄るとキスをした。
「……別に。そっちこそ、どうしたんだよ」
「情報部にちょっと用事があって。一緒に戻りましょ」
「ん、あぁ……」
全身濡れ鼠なJJにアップルはわずかに首をかしげ、そしてJJの眉間に指で狙いをつけた。
「バァン!」
JJはそれこそ豆鉄砲を喰らった鳩のように目をしばたかせた。
「らしくないぞ、JJ。わたしに話せることなら、話してみない?」
屈託なく笑うアップルに、JJは虚を衝かれた。
「あ、いや……なんか、先のこととかさ、アップルもチャンプも、ちゃんと考えて動いてて……なんか、ホワイトナッツがもうなくなっちまったみたいで……ニックに会いに行って……俺、先のこと、何も考えらんなくて……」
言ってることが支離滅裂だ。わかっていても、でもそう言わずにはいられなかった。特に、彼女に対しては。
「……JJには、そう見えてたの?」
アップルは、微笑して言った。
「そんなに考えて動いてないわ。わたしも、たぶんチャンプもね。ただ、じっとしてられないだけ」
「……」
「未来は、待っていても来ないもの。悩むより早く、掴みに行かなきゃ。……って、可笑しいね。本当は、JJが一番それを体現してるのに」
アップルが心底可笑しそうに言い、JJは怪訝な顔をした。
「俺が……?」
「JJ、あなたが動くことでみんなの未来が作られてたのよ。わたしやチャンプを、ずいぶん振り回しながらね。だからたぶん、JJは立ち止まってちゃダメなんだわ」
「……そういうモンかな……」
JJが自分に言い聞かせるように呟くと、アップルが満足げに大きくうなずいた。
「……そうだよな、やっぱ先のことをあれこれ気にすんのは、オレに合わねぇよな。ありがとな、アップル!」
「きゃっ!?」
いきなり抱えあげられたアップルが声をあげた。
アップルの重さと温もりが心地いい。JJはアップルを抱えたまま駆け出した。
「JJ、落とさないでよ!」
髪をかきあげたアップルが笑いながら言った。
「あぁ、離すもんか!」
二人の笑い声が、雨上がりの秋の空気に吸い込まれ、どこまでも広がっていった。
<了>