赤い光弾ジリオン勝手続編シリーズ〜A GIFT FROM GOD〜 作:LLZILLION
マジメな話が続いた反動か、バカップルが恥ずかしい思いをする艶笑コメディ的なものをやりたいなぁ、と思ってしまったので。
オチがオチてない気もしますが、原作でこんな感じの〆のときに流れる「あのBGM」を脳内再生よろしくお願いします。
「オパオパ……サイキン、チョット……ヒマ」
ホワイトナッツ本部の工作室でオパオパがデイブに言った。
「ウパウパ……サイキン、デバン……ナイ」
トライチャージャーの量産試作機をいじっていたデイブは手を止め、ウパウパの表面に手を置いた。
「そっかぁ……うーん、ホワイトナッツ本部はなくなっちゃうし、お前たちの受け入れ先を考えないとなぁ……」
*
「とりあえずお試しでいいんだ。どうせもとはガラクタの寄せ集めだから、軍の備品扱いにはなっていない」
JJとアップルを前にデイブは言った。
「オパっ……!?」
デイブのセリフにショックを受けたのか、オパオパは表面を激しく点滅させた。
「オパオパだけでいいんで、ちょっと日常で使ってみてくれないか。ジャマだったらもちろん返してくれていい。日常で使ったデータだけでも、十分助かる」
JJとアップルは顔を見合わせた。
ふたりだけの新居もまだ見つかっていないのに、こんなおじゃま虫を居候させるなんて……。
「オパオパ……」
オパオパはどこか寂しげな声を出した。
「JJ……」
アップルがJJを横目で見た。JJは腕を組んで考え込んでいたが、やがて吹っ切れた顔で口を開いた。
「まぁいいだろ。いいぜデイブ、こいつもホワイトナッツの仲間だ。困ってるなら一宿一飯の仁義くらいは切らなきゃ、っていつもばぁちゃんが言ってたし。とりあえず一週間、オレたちで預かってみるよ」
「ありがたい! センサーを日常用に再調整したんで、いろんなことのサポートに使えるはずだ。なんでもいいんだ、高いところのものを取ったりとか、探し物をするとかでも」
「オパオパ、オ役ニ立ツ!」
真剣まゆげを装備したオパオパが力強く言った。
*
「それで、どうするのJJ? 大学には連れてけないし、私たちがいない間に部屋探しでも手伝ってもらう?」
「アップル、オパオパ、探シ物、大トクイ」
「…えっ?」
オパオパの言い分はこうだ。
巷の人々の行動を分析、部屋を探している人物を見付け、そこから更に行動が最適化された個人を抽出、こちらの条件に対して近似値となる事例を選び、そこで参照される情報を教えてもらうことで、最短で最適な部屋を見つけ出せるというもの。
「……ホントかよ!? どーする、アップル?」
「わたしも、部屋探しなんて初めてよ。ここはオパオパに任せてみましょ」
「オパ!」
*
「オパオパ! オパオパ!」
「あれっ、オパオパ!? なんでここに?」
上機嫌でトイレから出てきたJJは、そこにいたオパオパに目をむいた。大学の廊下はひっきりなしに学生や職員が行き交っている。構内のシックな内装に、原色の派手なカラーリングは否応なく目立った。
「ちょ、ちょっとお前、こっち来い!」
JJはオパオパを抱えて物陰に隠れた。
「オパオパ、特ダネ、ミツケタ」
オパオパはマジックアームを使って、ある学生を指差した。なんでも、彼は不動産屋の息子で、多くの学生が掘り出し物を求めて彼に相談をしているらしい。
「しょうがねぇ、お前、こん中に入ってろ。喋るときは、オレだけに聞こえるように」
「JJ、どうしたの、それ?」
講義がひとつ終わり、学生に混じってアップルが廊下に出てきた。段ボール箱を抱えたJJに訝しそうな視線を向ける。
JJが箱から手を離すと、箱はそのまま空中に浮かんだ。
「!……んっ?」
箱からパタパタと音がする。
「まさか……!?」
アップルが箱を開いた。
「やっぱり、オパオパ!? ダメじゃない、こんなところまでついてきちゃ!」
母親みたいな口調はアップルにはいつものことだが、これではまるで「うちの子」になったみたいだ。
JJ父さんにアップル母さん、珠のように丸々としたオパオパ……
JJは身震いし、慌ててその想像をかき消した。
不動産屋の彼、ダニエルは人気者だった。数分ごとに誰かが彼に話しかけている。
「そっかぁ、ロフト付きねえ。最近はあんまり見ないけど、入ったら真っ先に連絡するよ」
「ありがてぇ。恩に着るぜ、ダン!」
「ダニエル、私のは?」
「はいはい、ペット可の一階だっけ? 来月の引っ越しシーズンに入ればボチボチ出るから」
そんな会話を何度か繰り返したあと、ダニエルは学食に腰を落ち着けた。
彼女らしい女子学生が正面に座り、辺りを見渡した。
箱を持ったJJはとっさに納入業者を装い、アップルを押し込んですぐそばの備品室に身を潜めた。
「ちょ、ちょっとJJ! なんでわたしまでこんなとこに入んなきゃならないの!?」
「成り行きだろ、文句ならこいつに言ってくれっての」
「オパ……」
オパオパが弱々しく抗議しようとしたが、素っ頓狂な声に遮られた。
「え、同棲っ!?」
女子学生があげた声に、JJとアップルもビクンと跳ね上がった。
「そうなんだよ。もう、なんかふたりとも盛り上がっちゃってて、俺もどう言っていいもんか困っちゃってさぁ」
これはダニエルの声だ。
「先輩なんでしょ、あんたもしゃっきりなさいよ」
「それがさぁ。ふたりともずっと前から相思相愛だったんだけど、本人たちはなかなかそれを認めなくてさぁ。こっちもすっげぇヤキモキしてたんだけどやっと最近付き合い始めて」
JJとアップルは思わず顔を見合わせ、合ってしまった目を慌てて反らした。
「……オパ?」
「ふたりともまだ若いし、もともとスポーツやってるからすんごく体力あるだろ?」
「やーねぇ…なによ、そのゲスな笑いは」
「だからさ、セックス覚えたてのそんなふたりが同棲なんかしちゃったらもう……昼とか夜とか、人間とかサルとか、関係なくなっちゃうと思うんだよね。学業にも差し支えるしさぁ」
「呆れた。そんなの、そのふたりの勝手じゃない。あんたが気にすることじゃないわよ」
すぐ裏にある備品室で、JJとアップルは顔を真っ赤にして、その声に聞き入った。
「どういうことなんだよ、オパオパ!?」
「最適化サレタ近似値……近スギタ……」
「JJ、オパオパは悪くないわ」
「そ、そりゃわかってるよ……でもなんで、こんな話を聞かされなきゃなんねーんだか……」
「……手っ取り早くいい部屋を見つけようとしたバツかもね……」
その後ふたりはダニエルたちの同棲談義やらノロケやらをさんざん聞かされ、1時間後にやっと備品室から解放された。
どっと疲れたふたりが外に出ると、ちょうど日蝕に入るところだった。
「JJ、待ツ。オパオパ、イイ部屋、探シテクル」
「お、おいオパオパ!?」
日蝕時の照明切り替えの隙に、オパオパは警備室の片隅に陣取った。音をたてないようにパネルを開き、情報ケーブルを探り当てた。
学内の監視カメラ網に侵入すると、不動産屋のダニエルはすぐ見付かった。
「やっべ、あいつらだ。またノロケられても困るし、ここは退散っ」
彼が何から逃げようとしているのか、オパオパはカメラをその方向に向けた。
若いカップルがダニエルを見つけ、呼び止めようとしている。
「せ、先輩、待ってくださいよぅー?」
状況からして、これが例のカップルだろう。短髪の男性はスポーツマンらしい大柄な体、こちらも短い茶髪の女性はやや太りぎみだが小柄な部類だ。どちらも、JJにもアップルにも似ていない。酷似しているのは状況だけのようだ。
オパオパはデータベースから彼らの履歴を探した。すぐ、目的のものは見つかった。彼ら単体の画像。オパオパはその画像とミス&ミスターキャンパスの画像を組み合わせると、大学紹介風のスライドショープログラムに紛れ込ませた。
最初に気づいたのは彼女の方だった。
構内至るところにあって、いつもなら気にも留めないメッセージスクリーンに、彼女は軽い違和感を覚えた。
学内ニュースで、ミス・キャンパスの横で満面の笑みを浮かべているのは、いま手を繋いでいる、その彼氏だ。
オパオパはカップルの反応をズームして確認した。彼女が繋いだ手を振り払った。口論が始まる。互いにヒートアップしてきた。そこにダメ押しの画像を流した。
「あんたなんかと一緒に住むなんてお断り! キャンパスで見かけても話しかけないで!」
決定的なセリフを確認し、オパオパはシステムとの接続を切った。
*
オパオパは目的を達し、ダニエルが探してきたカップル向け2DKは、連絡を受けたJJが契約した。
その後、例の学生カップルは誤解に気付いてすぐ仲直りし、ダニエルに部屋のことを申し入れたが、もう後の祭り。
そんなことは知るよしもないJJとアップルは、大学卒業後にオパオパを引き取ることをデイブに頼んだ。
「いいぜ、2年くらいなら預かるよ」
そう答えたデイブに、チャンプが言った。
「JJじゃ、留年するかもしれんぜ。アップル、こいつを甘やかさないようにな」
「えぇ、もちろんそのつもりよ」
「うへっ、キビシーお言葉」
「……ねえJJ、今回、オパオパは役に立ったの?」
エイミが尋ねた。
「……うん? あぁ、そういや、えらい早かったな。お部屋探しはオパオパで!ってな位だ」
「……しかし妙だな、データベース接続履歴が大学のものしかない。オパオパ、いったいどうやって探したんだ?」
デイブが首をひねって言った。
「……オパオパ、企業ヒミツ……」
「ヒミツって……僕にもか!?」
無邪気に見えて、黙られてしまうと何を考えているのやらまったく伺い知れないそのカメラアイに、デイブは製作者ながら、底知れないものを感じた気がした。
「……ま、まぁとにかく、問題行動は控えてくれよ。退役したら僕が保護者なんだから」
「オパオパ、イイコ。問題コードー、JJ」
「イキナリなに言い出すんだコイツは!?」
オパオパに食って掛かったJJに、チャンプは諭すように言った。
「単なる客観的な事実、ってヤツだろ。しかしJJはともかく、オパオパもウパウパも退役か……寂しくなるぜ」
「大丈夫、いつでも会いに来てね! わたしもウパウパも、うんとオシャレしておくから」
エイミが言うと、つけまつげをつけたウパウパがチャンプの肩にとまった。
「チャンプ……オヒマナラ、キテヨネ……」
その瞳になにを感じたのか、チャンプはこう返事をするのがやっとだった。
「そ…、そうね……」
<了>