透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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年頃の女の子をペットにするような鬼畜がいるわけないじゃないですか!

「――という事があった。エデン条約に精力的に取り組んでいたのにこんな事を報告するのは心苦しいが、言わない訳にもいかないからな」

 

「……そう」

 

ヒナに万魔殿との対談の内容を聞かせた。特段ヒナの表情は変わっていないように見受けられるが心中は察する事が出来ない。気に病んでいなければいいんだが。

 

「私ね、本当は風紀委員会を辞めようと思っていたの」

 

するとヒナが突然独白し始める。しかも内容が中々強烈だ。少なくとも私から見て今までそんな事を考えていたとは露とも思っていなかった。

 

「そうだったのか?こう言ってはなんだが意外だったな。口ではめんどくさがる事もあったが生来の性格ゆえに責任はしっかり果たしてきていたから」

 

「エデン条約が出来れば設立されるETOによって風紀委員会も仕事が減って楽になるだろうから。めんどうなのは本当だし。――幻滅した?」

 

「まさか。きちんと代替を用意して辞めるんだからしっかり責任を果たすヒナは偉い。私ならそんな事知った事かとほっぽりだしている自信がある」

 

「ふふっ。ノースティリスでの貴方を見ると確かにそうかも」

 

まぁ今風紀委員会の協力者として治安の維持に従事しているところからして、ガード等の職に就いても案外やっていけたかもしれないが、それでも長く続けられたかは分からない。色々と見て回ったり戦うのも好きだからやはり私の天職は冒険者なのだろう。

 

「でも最近はそんなにこの仕事も辛くないの。……貴方のおかげでね」

 

「そうか。私の存在がヒナの助けになっているのなら良かったよ」

 

いずれペットになってもらいたいと考えているので関係は良好に保ちたい。というよりそろそろ誘ってみてもいいのではなかろうか?自惚れでなければヒナとはかなり信頼関係を築けているように思う。誘うだけ誘ってみるか。

 

「こう言うと打算的に聞こえてしまうかもしれないがヒナにはいずれ私のペットになってもらってキヴォトスやノースティリスを私と共に旅して欲しいと願っているからな。良ければ考えておいて欲しい」

 

「わ、私と……?良いの?」

 

「あぁ、もちろん。私のペットになってもらえないだろうか?」

 

「う、うん!もちろ――――ペッ!!!??

 

ん?最初にそう言ったはずだが……?そんなに驚く事があっただろうか。それともペットになるのは流石にだめだったか?まぁネフィアに潜ったりする事もあるだろうし今まで平和なキヴォトスで生きてきたヒナには危険な事もあるだろうから無理強いは出来ないか。

 

「ペッ……ト、って……!えっ…!いや、その……!」

 

「――?やはりだめか?」

 

「い、いや…!でも……心の……!そ、そん……あ、貴方が、望むなら……!いやでも……!!」

 

動揺の仕方が尋常じゃない。顔はとんでもなく真っ赤だし目は泳ぎまくっているし手振りまでとっても激しい事になっている。少なくともこんな様子のヒナは見たことが無い。

流石にここまで来るとお互い何か噛み合っていないであろう事は分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なるほど……。そういう事だったのね……。びっくりした……」

 

「びっくりしたのは私だ。よもや私がそんな特殊性癖持ちだと疑われる事になるとは思わなかったぞ。先生じゃあるまいし」

 

致命的にすれ違っていたので一旦クールダウンしてお互いのペットに対する認識を共有してみた。するとヒナにとってのペットは愛玩動物の事であり、自分にそういう扱いをして楽しまれてしまうんじゃないかと思ったらしい。――とんでもなさすぎる。ノースティリスでもそんな事は……無くはなさそうだな……。

 

「しかしそうか。キヴォトスでのペットという概念はそういう感じだったのか。言い方をきちんと変えて伝える。私と共に生活をして欲しい」

 

「……そ、その言い方もなんだか……で、でも、うん。喜んで」

 

「――!本当か!これからもよろしく頼む!」

 

「そんなに喜ばれると恥ずかしいわね、嬉しいけど……。あ、でも卒業するまでは待ってちょうだい。さすがにちゃんと卒業はしておきたいから」

 

「あぁ、私にとって年月など些細な事だから気にしない。いくらでも待つよ」

 

★不老長寿のエリクシルが存在するので本当に些細な事だ。実質的な不老が実現可能なので十年でも待てる。しかし異世界の子をペットに出来るとは幸運だ。エヘカトル様には感謝してもしきれない。

しかしこうなれば深刻な問題が一つ発生する。それは――。

 

「そうだ、ヒナ。アビドスで亡くなったという生徒がいたが、彼女の死亡地点は分かるか?」

 

「え、えぇ……。おおよその地点は把握しているけれど、どうかしたの?」

 

「少しばかり実験をしたくてな」

 

 

 

 

 

復活の魔法の有効性について。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば私達、アビドスの人に無断で入らないって約束した気がするのだけど」

 

ヒナに案内され砂漠へ入り目的地に向かう道中、ふとヒナがそんな事を言う。

 

「いいかヒナ。バレなければそれは入った事にはならないんだ。相手は知らないんだから」

 

「――はぁ。貴方と一緒にいるって決めたのは私だし、仕方ないわね。これから慣れていくわ」

 

ヒナがノースティリスに染まる事を良しとしたようだ。今日はなんて良き日だろう。

 

「でも復活の魔法、ね。聞いた今でもとても信じられないわね」

 

まぁそれはそうだろう。このキヴォトスにおいて命は一つ。今までその常識の中で生きていたのだから死者蘇生など前代未聞だろう。だからこそこの実験は是が非でも行う必要がある。

 

「これに関してはもし先生に止められようが必ずこの実験は行うつもりでいる。ヒナが私のペットとなる以上、そこらの有象無象などより余程価値が高い。キヴォトスではアリウスの襲撃が予見され、ノースティリスでも危険は存在する。そんな中でヒナの命が一つしかないとなれば私も安心出来ない」

 

「――大切にされてるって、考えていいのかしら」

 

当然だ。ペットとなれば他の生徒達と比べれば扱いの差は全く変わる。もし今回の実験に失敗した場合は襲撃してくるアリウスを適当に何人か捕まえて拠点で実験体にして色々試す予定だ。それは流石にヒナには言わないでおくが、それくらい私にとって今のヒナの重要度は高い。

 

「無論ヒナが望まないのであれば例え実験が成功したとしても危険度の高い所に連れていくような真似をするつもりはない。もしこれだけはしたくない、というような事があればこれから遠慮なく教えてくれ」

 

「分かったわ。でも私も貴方と居たいから、色々やってみたいわ」

 

「そうか。ありがとうヒナ。――それはそうと、魔法書をこの前渡したと思うが、無事に読めたか?」

 

「えぇ、問題なかったわ。読書に失敗する事も特に無かった」

 

ほう、それは凄いな。恐らく渡した魔法で一番難易度が高いのはオディナの癒しだが、それすらも読めたのだとしたらやはりヒナの能力は高いのだろうな。今度聴診器で能力を確かめさせてもらおう。

 

「言われた通り治癒魔法以外はまだ使っていないけれど、何か理由があるの?」

 

「あぁ、今度便利屋も交えて攻撃魔法の講習をしようと思っていてな。ヒナと便利屋で二回に分けて教えるのは非効率だから一緒にどうかと思ってたんだが……そういえば敵対組織だったな。やっぱまずいか?」

 

「まぁ、まずいかまずくないかで言えばまずい、かな。でも非効率なのは同意だから構わないわ」

 

明日には恐らく盟約の石のレベルが上がりテレポーターの使用が可能になるはずだ。これでノースティリスの行き来が出来るようになれば、盟約の石のホームポイントをこちらに変えて帰還の魔法を使えばいつでもゲヘナの拠点へ戻れるようになり、キヴォトスでの生活が楽になるはずだ。そして便利屋にもテレポーターを利用してもらってキヴォトスの者も問題なく通れるか試してもらうつもりでいる。ヒナ達に魔法を教えるのはその時になるだろう。

 

ヒナがペットになったのなら食べ物もこちらから渡して食べてもらうようにするか?しかし食に富んだキヴォトスで同じものばかり食べさせるのも酷だよな。最近はペットですら同じものを与えると「またこれか」などと言うようになってしまった。バリエーションを増やすこちらの身にもなってほしい。

 

――まずいな。ヒナがペットになったと実感が湧いてきたら途端に育成に関する考えが色々と浮かんでくる。しかも貴重な異世界ペット。考える事は無限にある。今がキヴォトスに来てから一番楽しんでるかもしれない。まずはヒナの昼食をお弁当という形でこちらで用意するのがいいか?

 

「というわけでどう思う?」

 

「え?」

 

主語が抜けてしまっていた。とりあえずヒナにこちらでの食事は強さの成長に繋がる事を話し、まずはお弁当を渡すのでそれを食べてみないかと誘う。

 

「貴方の作るご飯ならいつでも食べたいくらいだけど……でも良いの?そこまで甘えて」

 

「構わないさ。私がやりたくてやっていることだ」

 

「じゃ、じゃあ……お願い」

 

「了解した。なるべく飽きないように工夫するよ」

 

「――やったっ」

 

こうして話している内に死亡したアビドスの生徒の場所付近に到着した。

 

「確か梔子ユメ……だったか」

 

「えぇ。あ、写真はこれね」

 

ヒナからユメの写真を受け取る。キヴォトスではやはり死亡事故というのは大きい事件らしくかなり調べたようで、ユメに関する情報は豊富だ。キヴォトスでの復活に何か条件が必要だったりするかもしれないのでこういった物は多ければ多いほどいい。

 

「よし、では始めるぞ」

 

「なんだか緊張してくるわね……」

 

ちょっと分かる。特にこれで失敗しようものなら私はアリウスを実験体にすることが決定してしまう。アリウスの命運はお前にかかっているぞ。梔子ユメ。

そんな事を考えながら梔子ユメの写真を眺めながら復活の魔法を唱える。

 

そうすると私達の目の前で光の粒子の様なものが発生しそれが次第に一か所に集まっていく。集まった光は徐々に人の形を象り徐々に実体を得るかのように半透明に変化し光を失いつつ人間の色を取り戻していく。そうして写真と同じ顔をした子が目を瞑ったまま横になった状態で形が定まった。

 

「うそ……。まさか本当に?」

 

まさかとは思っていたが、無事に成功して良かった。

 

『――貴方の在り方は、ルールや契約、テクストを無視して行動出来る』

今になって黒服の言葉を思い出す。

 

確かに、命は一つ限りである。というのがキヴォトスでのルールだと仮定した場合、私はそのルールを完全に無視してひっくり返している。まさか黒服も死者蘇生まで行うとは微塵も思っていなかったであろうが、ようやく私はあの時の黒服の言葉を理解出来た気がする。

 

「ん、んぅ……」

 

「無事目覚めたか」

 

次第に意識がはっきりしてきたのか目をしぱしぱと瞬かせ、次第にのそのそと起き上がる。まだ私達に気づいてはいないようだ。

 

「あれ、私確か……ここは……寝ちゃってたかなぁ」

 

確かに寝ちゃってた。永いこと。少しばかり呑気なセリフに感じてしまうがとりあえず話掛けることにしよう。

 

「もし、お目覚めかな?」

 

「ふぇ?――わわっ!びっくりした~。えっと、貴方は?」

 

「私はゲヘナの者だ。隣にいるのは風紀委員会の委員長である空崎ヒナ」

 

「な、なるほど?あ、隣の子ちっちゃくてかわいい!髪の長さとか色は違うけどホシノちゃんみたいだねぇ~」

 

「ど、どうも……」

 

ヒナは未だに死者蘇生の瞬間を見て固まっており、返事が若干上の空だ。ユメは今どの程度自分の事を把握しているのだろうか。寝ちゃってたかなぁとか言ってたし自分が死んだ自覚はないのか、はたまた覚えていないだけなのか。

 

「あっ、思い出した!確か私砂嵐で遭難して倒れちゃったんだ!もしかして貴方が助けてくれたんですか?」

 

なるほど。死んだ自覚は無いが死ぬ直前の記憶はあると。

 

「助けた、というのは語弊があるな。少なくとも君がここで倒れてこうして目を覚ますまでに二年の年月が経過している」

 

「え?」

 

「後眠っていたのではなく正確に言うなれば君は死んでいた。私の実験によって二年後に蘇生された。というのが実際の所だ」

 

「え?――え?」

 

「君の知るホシノは既に三年生であり後輩を持つに至っている。あぁ、アビドスは未だに残っている。借金もな」

 

「ゑ???」

 

「後は……アビドスとそれ程交流が無いからこれくらいしか知らんな。何か聞きたい事はあるか?」

 

「――ひぃん。訳が分からないよ……」

 

「きっとわざとやってるんでしょうけど、情報の洪水を浴びさせるのはかわいそうよ?」

 

すまない。蘇生の経験は初めてではないが二年のギャップがある者となると話は別だ。一体どうやって本人にそれを伝えればいいのか分からなかったのだ。ならばいっそと思って捲し立ててみたんだが、やはりだめそうか?

 

「とりあえず、私から説明するわ。ゆっくりとね」

 

「すまない……任せる」

 

ヒナと一緒に来て正解だった。やはり優秀だ。ヒナしか勝たん。

そうしてヒナが時間をかけてユメの自覚と現実のすり合わせを行ってくれた。話をしている内にようやく理解が追い付いてきたのかユメが感慨深そうな顔をする。

 

「そっか~。ホシノちゃんはあれからもがんばってくれてたんだねぇ」

 

「えぇ、小鳥遊ホシノは強い人だと思う。私だったらきっと耐えられなかったでしょうね」

 

「そっかそっかぁ。えへへ、立派になったんだねぇ」

 

自分の状況を正しく理解しただろうにそれでも先にホシノへ関心がいくのは、それほどまでに仲が良かった証なのだろうな。さて、これどうしようかな。この後の事特に考えてなかったんだよな。アビドスに送り返す?いやどう考えてもホシノが怖い。

 

「あ、そっちの大人の方、ありがとうございました!おかげさまでホシノちゃんにまた会う事ができます!まぁ私にとってはそんなに久しぶりって感覚はないんだけどね」

 

「礼は必要ない。徹頭徹尾自分の目的の為だけに行った事だ。感謝するなら幸運の女神に頼む」

 

「幸運の女神様かぁ。ふふ、確かに生き返る幸運なんて普通は得られないよね。感謝しなくっちゃだね!」

 

「あぁ。ところでこの後はどうしようか。君をいずれアビドスへ戻す事は決定しているのだが、タイミングを考えないと危ないかもしれん。私が」

 

ホシノが死んだはずのユメを見てどういう反応をするかが一番の不安材料だ。二年経った今でもユメの事を大切に思っているであろうことは十分察している。だからこそそれほど関わりの無い私が突然ユメを連れて行けば、最近黒服の被害に遭った彼女からすれば後ろ暗い事をしたと疑われてしまいそうだ。清廉潔白だというのに。

 

「そういう訳でまずは先生に連絡を取りユメを先生に預けたうえで後は任せたいんだが、いいか?」

 

「それはだめだよ!」

 

「――?なぜだ?」

 

「恩を返せていません!」

 

「必要ないぞ。さっきも言ったが私利私欲で行った結果だ」

 

「だめ!」

 

???????

我が強くないか?ゲヘナか?

 

「だがホシノにも会いたいだろうしアビドスにも戻りたいだろう?」

 

「それはそうだけどぉ」

 

「とりあえず、ここで話をしててもしょうがないから移動しない?」

 

それもそうだ。いつまでもここに居たらユメがまた遭難してしまうかもしれない。早めに退散しよう。

 

「ひぃん。ぶらっくじょーく……」

 

とりあえずは先生の所だな。今は先生はシャーレの部室にいるだろうか。とりあえず急用があるとモモトークを送っておこう。そうして携帯を手に取ろうとしたとき、何やら地面から揺れを感じる。――地震か?オパートス様が寝返りを打たれたのか?

 

「何か揺れを感じるんだが、気のせいか?」

 

「……本当ね。何かしら」

 

「え、そうかな?――あ、ほんとだ。……なんだかだんだん強くなってきてない?」

 

なっている。というより何かが近づいてきているような感覚だ。この規模の揺れを引き起こす何かが近づいている。

 

「ヒナ。ユメを連れて離れて守ってやってくれ。何かがこちらへ来ている」

 

「分かったわ。梔子ユメ、付いてきて」

 

「う、うん!でもあの人は一人で大丈夫なの?」

 

「えぇ、きっと」

 

さて、何が来る?

しばらく待っていると私と向かい合うようにして地面からようやくその姿を見せる。

これは、機械か?全体的に白い大きな蛇だ。顔と胴体しかまだ見えていないにも拘わらずこちらは首を大きく上げなければまともに顔を見る事も出来ない。全長は一体どれほどの長さなのか想像する事も出来ない。

 

大きさにも目を引かれるが私が最も気になったのは、蛇の後頭部に浮かんでいるもの。あれは恐らくヘイローだ。機械にもヘイローが宿るのか?少なくともカイザーの鉄屑兵器には見かけなかったはずだが……。そうしてしばらく私と鉄蛇が向かい合っていると大きく口を開け、銃口のようなものが喉に見える。そして銃口が徐々に光り始め、何かチャージし始めている。

 

敵対の意思ありと見ていいだろう。

これほど大きな敵と戦うのはノースティリスでも殆ど無い経験だ。全く――

 

「今日は退屈しないな。ユメに鉄蛇に、楽しい事がたくさんだ」

――程なくして口から巨大な光線が放たれ、私の体を容易く飲み込んだ。




イルヴァ豆知識
・ペット
共に旅をするかけがえのない仲間。決してエッチな関係とかではない。
なお、未だElinには結婚は未実装ゆえにティリス民にその概念は存在しない。
実装されたら結婚だろうが重婚だろうが見境なくなるだろう。度し難いね。


一時的にかもですが評価の色が赤になっちゃいました…!
本当の本当にお礼申し上げます…!
評価してくれた人に個別にお礼出来る機能があればいいのに…!
これからも拙作をよろしくお願いいたします。

次回、ビナー産卵する。

アビドス3章こわれちゃった
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