透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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唸れ俺のレールガン

「随分面白そうな話をしていますね、リオ」

 

アリスが友達の激励もあってか前向きに自分の生い立ちを理解してくれたところでゲーム開発部の部室の扉から声が聞こえてくる。振り向いてみると車椅子に乗った白髪の生徒がそこにいた。

 

「貴女とは休戦状態だったとはいえ、このような行動に出るとは本当に、全く、これっぽっちも思いませんでしたよ」

 

「ヒマリ……」

 

ヒマリ?その名前は確かユメの身分をどうにかしてくれた人物だったはずだが、何故こんなところにいるのだろうか。

 

「そういえばヒマリに説明するのを忘れていたわ。ごめんなさい」

 

「貴女が素直に謝るなんて、一体どういう風の吹き回しですか?頭でも打ちました?」

 

「今回非があるのはこちらだもの。慌てていたとはいえ失念していたのは事実よ」

 

「まるで今回以外は非は無いような言い方が癪に障りますが、まぁいいです。それより、リオの隣にいる大人の方が、今回のリオの奇行の原因ですね?」

 

どうやらただならぬ関係のようではあるが奇行とまで表現されるとは、普段のリオは一体どのような感じなのだろうか。そこが気になってしまうな。

 

「恐らくは、そうだな。君はヒマリといったな?ユメの件について世話になった。感謝する」

 

「いえ、構いませんよ。あのくらいはこの超天才清楚系病弱美少女ハッカーの手にかかればお茶の子さいさいです。貴方の事はヴェリタスの子から話を聞いてから興味がありましたから」

 

「なるほど。ではその超天才清楚系病弱美少女ハッカーには借りがあるからな。私に答えられる事なら答えるぞ」

 

「おぉ、ノリもよく分かっていますね」

 

ですがその話はまた今度するとして、と続けて

 

「一体どうやればリオに相手に言葉で丁寧に説明するなんて事をさせられたんですか?普段のリオといえば超合理主義の秘密主義で人の感情はまず最初に排除して物事を進めるような人ですよ?今回だって独断で動いたのを見てアリスの強制排除に動いたのかと焦ってこちらへ向かったのですから」

 

「そうする事で円滑に話を進められると教えられたからよ。そちらの方が合理的と判断したの」

 

「はぁ~……。貴女も人の意見に耳を傾ける事もあるんですね。いえ、この人の方が一枚上手だったのでしょうか。ますます興味深いですね」

 

リオにはあまりそういった印象は受けなかったから意外だ。確かに合理という言葉を用いる事はあったが普段はそこまでの子だったんだな。

 

「正直心当たりがないな。私としては普通に会話していたつもりだったし……」

 

強いて言えば私の言葉よりもキヴォトスの外から来たよく分からない人物、というのが大きい気もする。

 

「えっと、そっちの車椅子の人はだれ?」

 

双子の元気な方がヒマリに質問をする。そういえばゲーム開発部の子を置いてけぼりにしてしまってたな。

 

「おっと、失礼しました。私はミレニアムが誇る超天才清楚系病弱美少女ハッカーであり、「全知」の学位を持つ眉目秀麗な乙女であり、そしてミレニアムに咲く一輪の高嶺の花であるヴェリタス部長の明星ヒマリです。よろしくお願いしますね」

 

「お、おぉう……よろしく!ヒマリ先輩!私はモモイ!」

 

「お姉ちゃん馴れ馴れしいよ……私はミドリです」

 

「は、花岡ユズです……」

 

「アリスはアリスです!」

 

「ふふっ、元気な良い子達ですね。そして貴方も初めましてですね先生。ヴェリタスの子から話は聞いています。お目にかかれて光栄でしょう?なんてったってこの――」

 

「それよりヒマリ。アリスについて何か分かったかしら」

 

「はぁ……。恐らく無名の司祭に関連していると思われますが、詳しくはもう少し調べる必要がありますね」

 

「無名の司祭……。予想はしていたとはいえやはり厄介ね」

 

「ヒマリ。無名の司祭っていうのはアリスの制作者かい?」

 

私が気になっていたことを先生が先に聞いてくれた。司祭という名前が付くのだから聖職者に近いのだろうが、無が付くのは無のエイスの信者という意味だろうか?いや、ここはノースティリスではないし流石にそんな事はないか。

 

「恐らくは。キヴォトスが今の形になる前に存在していたと思われる者の総称ですね。詳細は未だ不明ながら現在のキヴォトスの技術力を超えていたのではと考えています」

 

「そっか。アリスは無名の司祭って言葉に聞き覚えはある?」

 

「うーん……そう言われるとあるようなないような……そんな気がします」

 

「全く分からないではないのなら可能性は高そうね」

 

聞いていた感じアリスの製作者に関しては候補が絞れたようだ。早くアリスの詳細が判明するといいのだが……。

 

「なんかこの人アリスと似たような銃背負ってない?」

 

そのままリオとヒマリが議論を始め私や先生達までも置いてけぼりとなった頃、モモイが私の背中にあるレールガンに目を向ける。

 

「これか?確かにこれはアリスと同じレールガンだな」

 

「えぇ!?あれってアリスくらいしか持てないと思ってた!もしかして貴方もロボット?」

 

「いや、私は人だよ。ただ少し人より力持ちなだけだな」

 

「力持ちってレベルじゃなくない……?」

 

「アリス以外にレールガンを持っている人初めて見ました!もしかして貴方も勇者なのですか?」

 

んん?キヴォトスではレールガンを持っている者は勇者と呼ばれる存在なのだろうか。

 

「いや、勇者ではないな。私は魔法使いだ」

 

「魔法使い!本当ですか!アリス、魔法が見てみたいです!」

 

「いやいやアリス、流石に冗談だって」

 

「そうだよアリスちゃん。魔法は使えないと思うよ?」

 

双子がそんな事を言うがこういう反応を見るのも久しぶりな気がする。便利屋との遭遇以来か。魔法を見せたらどんな反応をするのか気になるところだしお披露目してみよう。

 

「――炎の剣」

 

やはりこれが伝わりやすいだろう。

 

「え、えぇー!?なにこれぇ!?」

 

「うそ、ほんと?」

 

「うわぁ、凄いです!アリスも魔法が使ってみたいです!」

 

「え、これ本物ですか……?そんなばかな――あっつ!?」

 

ユウカと呼ばれていた子が私の炎の剣に手を伸ばしてしまってそのまま触れてしまった。ムツキは手を近付けるだけで触るまではしてなかったが、大丈夫だろうか。

 

「ユウカ何してるの……?私でも触ってみようなんて発想しなかったよ?」

 

「いやだって普通信じられないでしょ!あっ、失礼しました。私は早瀬ユウカです。急に触ってしまってすみません……」

 

「気にしなくていい。ただ手は大丈夫か?見せてみてくれ」

 

一応手を見せてもらいエリスの癒しを唱えておく。――この子達に回復魔法も見せられたと思えばいいか。

 

「あ、え?痛みがなくなった……?」

 

「回復魔法も使えるんですか!?是非アリスの勇者パーティーに入ってほしいです!」

 

勇者パーティー?ペットのようなものかな。私がペットになるわけにはいかないな。

 

「残念ながらパーティーは難しいかもしれないな。ただ魔法はアリスの中に眠るらしい魔王の力をどうにか出来たら教えてあげよう」

 

「お助けNPCでしたか!じゃあ魔王クエストの報酬は魔法の伝授という事ですね!」

 

「あぁ、そうだ。勇者にこのクエストはこなせそうか?」

 

「はい!絶対にクリアしてみせます!」

 

クエストという馴染みのある言葉を聞いてそれっぽく言ってみたが満足してくれたようで良かった。流石に問題を解決する前に教えてしまったら私の教えた魔法によって被害を広げる可能性があるから今は教えられないが、無事に終える事が出来たら教えてあげたいところだ。

 

しかし想像以上に無垢な子だ。直接会って話してみて尚の事世界を滅ぼす兵器だとはとても思えない。記憶がないとの事だったがそれが無名の司祭とやらの意図するとこだったのだろうか。だとすればあまりにもあほらしすぎる。世界を滅ぼす意図で作った機械に感情を与え更に記憶も無いなど滅ぼす気が無さすぎる。そもそも前提が違って滅ぼすのではなく守る目的で作られた可能性もあるか?それでも記憶がないのが意味分からんな。

 

「アリスだけずるーい!私も魔法使ってみたーい!」

 

「お姉ちゃんわがまま言わないの。すいません姉が騒がしくて」

 

「構わないよ。君たちもアリスの友達なら無事にこの件が終わったら一緒に魔法を教えるよ」

 

「いいの!?やったー!」

 

「ありがとうございます。私も正直興味ありました」

 

「そこの、ユズっていったかな?君も今度魔法覚えてみるか?」

 

最初ロッカーにとんでもない速さで隠れていた人見知りであろう子にも話かけてみると、言葉での返事はなかったがこくんとうなづいたのを確認したのでこの件が無事に片付いたらゲーム開発部に教える事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『思ったより勘付かれるのが早いですね。こちらも早めにアレを呼び寄せて、王女を――』

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

リオとの出会いから幾日が経ち、リオから案内したいところがあると連絡が来たので再度ミレニアムへ向かうことになった。

 

「コーヒーをどうぞ」

 

「ありがとうトキ。――そういえば君と同じメイド服の子をリオに見せてもらった映像で見たが、同じ組織の一員か?」

 

「同じCleaning&Clearingですね。C&Cと略称で呼ばれるエージェント集団です。」

 

一般にはメイド部と呼称される事もありますとのこと。

 

「エージェント?なるほど、どうりで映像で見た子はアリスを圧倒していたわけか」

 

「彼女は美甘ネルですね。C&Cの部長です。まぁ私には及びませんが」

 

とんでもない自信の持ち主だ。昨日も思ったが表情は基本動かないが愉快な性格をしている。ネルという子は銃を扱う割に距離を詰めたがる性質を持っているにも拘わらずSGではなくSMGを持っていたのはどういった理由なのだろう。しかも銃の二刀流とは中々珍しいタイプだった。

 

「ですが私はリオ様の直属でC&Cとは面識はありませんのでネル先輩含め他の者は私を認識しているかは分かりません」

 

そうなのか。同じ部員であっても面識がないのなら知り合いも少なそうだな。今度アビドスへ案内する時にでもトキも紹介してあげれば他校ではあるが友達を作れるか?リオは秘密主義と聞いたがトキの存在も秘匿しているとは普段の徹底ぶりが窺える。そんな彼女が案内してくれるところとはどこなのだろう。

 

「トキは今回リオが紹介する場所に心当たりはあるか?」

 

「はい。恐らくですが――」

 

「お待たせしたわ。少しヒマリとの話が長引いてしまって」

 

今日の予定についてトキに聞こうとしたところでリオがやってきた。リオが来たのなら彼女から直接聞けばいいか。

 

「トキが話し相手になってくれたおかげで退屈しなかったよ。今日はどんな用件だ?」

 

「場所の案内とそこでこちらで作った武装のテストに付き合って欲しいの。有事に備えてトキの為に作ったものなのだけれど」

 

「なるほどな。そういう事ならいくらでも付き合おう」

 

武装というのは非常に気になる要素だ。もし性能が高ければ私の分も用意してほしいがどうだろうな。

そういう訳でリオに案内された場所へ来てみたのだが、見た目はただの都市のようだが人の気配が全くない。彼女の用意した演習場だろうか。

 

「ここが私が作り上げている都市、エリドゥよ。様々な防衛機構を備えていてキヴォトスに襲う災害に対抗するために作っているものなの」

 

とはいえまだまだ未完成で進捗としては六割程度といったところかしら、とリオは言うがこのばかでかい都市を一人で作り上げたのか?凄まじいな。強さという意味ではヒナが優秀だったが、技術者という意味ではリオが一つ頭抜きんでているような気がする。――ペットにしたいが私にリオの技術力を扱える気がしないな。

 

「――凄いな。これほどのものを作り上げる手腕は本当に見事だ。機械に疎い私だがそれでもそう思わされるよ」

 

「ありがとう。今のところ私財でどうにかコツコツと作ってはいるけれど、アリスの事もあるからどうにか早めに完成させたいのだけれど、今のままだと間に合うか分からないのが不安要素ね」

 

そういえばこれで未完成だったな。これの出番が無いのが一番だろうが、そうも言ってられないのが今だしな。私もキヴォトスのお金はそれ程多くない。収入源はヒナから貰う給与のみだからそちらでは力になれそうにないのが申し訳ないな。

 

「気にしないでちょうだい。代わりではないけれど性能テストに付き合ってもらえるならそれで十分よ。――トキ、アビ・エシュフの用意を」

 

「イエス・マム。――アビ・エシュフへ移行します」

 

トキが何やら号令をかけるとしばらくしてどこからともなく機械が空から降ってくる。どういう理屈だ?キヴォトスの技術は訳が分からなすぎる。そのままトキがメイド服を脱ぎ払いかなり動きやすい服装に切り替えてその機械を装着する。

これがリオの言っていた武装か。どの程度のものか楽しみだ。

 

「これがアビ・エシュフよ。エリドゥの電力と演算機能をそれに全て注ぎ込む事で――いえ、貴方の反応を見たところこれ以上は無粋かもしれないわね。自分の身で確かめてみてちょうだい」

 

理解が早くて助かる。

 

「トキ。私はヘイローを持った生徒と同じ耐久を持っていると思ってくれていい。遠慮なく攻撃してきてくれ」

 

「分かりました。では――テストを開始します」

 

そう宣言して腕に装備されているガトリング砲をこちらに向けて発射してきたので何もせず受けてみる。――ダメージはない。威力は高くはないようだな。

そのまま弾丸を無視してトキに迫り木刀を振り下ろす。しかしトキは難なく私の攻撃を横に動く形で避けた。

 

――キヴォトスで私の攻撃を初見で避けたのはトキが初めてだな。ヒナも初見で対応してみせたが避けるのではなく翼で払っていた。少なくともヒナと同等の能力を有しているとみていいか。

 

そのままトキに追撃を繰り出し続けてみるがやはり全て避けられる。時折こちらにカウンターの如く撃ち返してくる余裕があるほどだ。……私の近接スキルでは埒が明かないな。魔法を使えば必中で当てられるがテストである以上使う訳にもいかないし何だか負けた気がするので遠慮したい。

 

向こうがテストならこちらもテストをしてみようと思い立ち、背中に背負っているレールガンを取り出す。なんだかんだこちらで初めてのレールガンの運用だ。入れている改造道具のヴォーパルは防御を貫通する特性上、生徒に対しどう作用するか分からなかったので入れずに連射に特化させた。リロード加速も品質の高いものを入れてあるのでリロード要らずでかなりの弾幕を張れるはずだ。

 

トキは私がレールガンを使う事に少し驚く様子を見せたがそのまま構わず一発撃ってみる。しかしやはり避けられるので、そのまま間を置かずに連射してみるとこれにはかなり驚いたのか動きが若干固まり攻撃がヒットする。しかしあまり手ごたえはないな。私の射撃スキルもあまり高い方ではないがそれでも防御性能が高いのだろう。

 

「あれだけレールガンを連射出来る代物ってどういう原理かしら……?彼の世界の技術力もかなり高いのね」

 

リオが独り言のように呟いているがこちらのレールガンはそうでもないのか?そういえば映像で見たアリスの使っていたレールガンは基本単発でチャージ式だったか。このレールガンは私の持つ貴重な五スロだから譲れないが、他の物であれば譲ってもいいか。リオであれば上手い具合にノースティリスとキヴォトスの技術を混ぜた良い武器を作れるかもしれない。

 

最初に不意をついた以外では連射しても幾らか当てる事は出来たが八割程は避けていた。これであの武装は未だ未完成だと言うのだから末恐ろしい。

そんな武装を操るトキの技量も高い。武装の性能に振り回される事無く操っている。ネルに対して自信満々に対抗していたが虚勢でもなんでもなく事実だったな。

 

「この辺りでおしまいにしましょうか。二人共、テストは終了よ」

 

その言葉を合図に私達は撃ちあうのをやめ揃ってリオに近付く。

 

「アビ・エシュフだったか。凄まじい性能だった。まさかここまで攻撃を当てられないとは思わなかった。これで未完成とはとても信じられん」

 

私の言葉にリオは顔を少し綻ばせトキも無表情ながらもふんすと誇らしげな様子だ。

 

「まだまだよ。ガトリングの威力が少し足りてなさそうだし改良の余地はあるわ。回避性能に関してもエリドゥの建造が進めば更に上がる見込みよ」

 

確かに威力不足は感じたかもしれない。せめてビナーの光線程とは言わずともミサイルくらいの威力があれば素の私にダメージが入るからな。しかしあれ以上回避性能が上がると私の近接や射撃では手も足も出ないかもしれない。高レベルネフィアとかだと近接は育成をかなりしないとまともに当てられないらしいからな。回避能力で言えばノースティリスに匹敵しているのは恐ろしいな。

 

「本当はアバンギャルド君の性能も試したかったけれど、今回のテストの内容をそちらにも反映させれば事足りそうね」

 

アバンギャルド君とはなんだろう。リオの作った武装の一種であるのは間違いなさそうだが、見れないのは少し残念だな。

 

「また今度お披露目させてもらうわ。アビ・エシュフに負けない自信作だから、楽しみにしててちょうだい。それじゃあ試したい事は試せたし今日はミレニアムに戻りましょう」

 

 

リオの号令で私達はミレニアムに戻る事にした。リオが自信を持っていうアバンギャルド君。それを見る日がとても待ち遠しい。

 

 

 




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