透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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ここを、キャンプ地とする。(3回目)

あわや死にかけてしまったナギサをどうにか治し、アリウスへとやってきた。

 

「サオリ、昨日はよく休めたか?」

 

「あぁ。救護騎士団の看病のおかげで全員問題なく動ける」

 

「それは重畳。早速だが全員を引き連れて君達が普段暮らしていた建物へ向かうぞ」

 

トリニティで思わぬハプニングに遭ったおかげで昼を過ぎてしまっている。日が落ちる前に拠点を構築して家を建てなければ、今日のアリウスの生徒達が野宿する羽目になってしまうので急がなければならない。

 

「ミネもアリウスの生徒の看病感謝する」

 

「礼には及びません。為すべき救護を果たしたまでですから。私達は撤収作業が終わり次第トリニティへと帰還します」

 

「分かった。では、縁があればまた会おう」

 

「はい。こちらこそ、色々とご助力頂きありがとうございました。私が言うのもおかしいかもしれませんが、どうかアリウスをよろしくお願いします」

 

「サオリ達の暮らす場所だからな。努力しよう」

 

ミネとの別れも済ませたのでアリウスの生徒達の様子を見やる。昨日よりは顔色は良い。昨日の内にサオリ達が今日これからやる事を説明してくれていたようで、顔に浮かぶ不安の色も少なくなってきている。ベアトリーチェの失脚でアリウスの生徒が勝手に動き出したりしないか少しばかり心配だったが、それなりに統率が取れているようだ。

 

そんな事を考えていたらアリウスの生徒達に見られている事に気付く。そういえばあの時は先生に丸投げしていて私とは一切会話していなかったな。そりゃ私の事が気になりもするか。

 

「ね、ねぇ、あっちの大人の人って……」

「うん、多分そうだよね……」

『スバル先輩の男だ……!』

「ばにたすっ……!」

 

……スバルは昨日この子達に一体何を吹き込んだんだ?

 

「……その様子だと私の事を多少知っていそうだが、一応自己紹介しておこう。ゲヘナから来た者だ。今は風紀委員会に身を置いている。ついでにベアトリーチェを殺した張本人でもある」

 

「そこがついでなんだ……」

「スバル先輩とマイアからも聞いてたけどほ、本当だったんだ……」

「マダムを一蹴した挙句に拷問したらしいよ?」

「ヘイローも持ってないのに凄くない……?」

「魔法が使えるって本当なのかな?」

「正直気になるよね」

「ばにたす」

 

ふむ、この感じだと先生に対する誤解はサオリ達のおかげで昨日の内に解消されてそうだな。手間が省けて助かる。

 

「色々疑問もあると思うが暫くの間先生……とついでに私が君達の面倒を見る。質問は改めて場を設けてから受け付ける。今は時間が惜しいから付いてきてくれ」

 

『は、はいっ!』

 

サオリ達の案内のもと、アリウスの住居へと向かう。

 

「スバル先輩の彼氏さん、意外と怖くない人なのかな……?」

「今のところマダムよりは怖くないね……」

「そこはほら、スバル先輩の選んだ人だし……」

「なんでよりにもよってゲヘナなんかって思ってたけど、意外と大丈夫そう?」

「ばにたす……?」

 

うん、まぁ……現状統率も取れていて混乱も少ない。これも偏にスバルの人望があってこそのものなのだろう。それについては非常に助かっている。しかし私の隣を歩くスバルがアリウスの生徒達の話し声を聞き取ってしまい羞恥心から顔を赤くし、ミサキは後ろからやたらと私の踵を蹴ってくる。一体私はどうすればいいんだ?

 

「えーっと、ミサキ?」

 

「……なに」

 

「昨日アリウスの生徒達に一体何を話したんだ……?」

 

「……べつに」

 

そんな事言いながら徐々に蹴りの威力が上がってきているんだが……?ミサキが答えてくれそうにないのでアツコに事情を聞いてみると、私がベアトリーチェを殺すまでに起きた出来事をアリウスの生徒達に共有したらしい。そこまでは普通なのだが、サオリはそのまま自分達が調教された事まで話そうとしたところをミサキ達が口止めした結果、何故かスバルだけ私と交際しているという話になったらしい。いやなんで?

 

「ほら、サッちゃん達を捕まえたのって本当は先生じゃなくて貴方だったから」

 

あぁ、昨日までは先生がスバルをどうこうしたみたいな誤解が広がっていたな。それが私に置き換わったと。

 

「私も調教された部分はぼかしたのですが、貴方の物にされたのは事実なので全て否定する事も出来ず……そうしたらあの子達の中で補完されて今の様な状況に……」

 

なるほど……つまり身から出た錆という事だな。スバルを調教しただなんて話が露呈したらあのアリウスの生徒のスバルに対する信頼からして好感度がマイナスに振り切っていたかもしれん。むしろよくやってくれたと褒めるべきだろう。

 

「ミサキさんはやきもちを焼いているだけなんですよ。かわいいところありますよね、えへへ……」

 

「……!」

 

「あっ!痛いです!私まで蹴らないでください!うわぁぁぁん!」

 

ヒヨリが余計な一言を発してタゲが移り変わってしまったが、そう言われると確かに可愛げのある行動だ。アリウスのペット達とはまだ個別に時間を取って交流を取れていないのでこの復興に目処が立ったら改めて時間を作りたいところだ。あまりミサキ達に不満を持たせすぎるのも良くないしな。

 

「み、ミサキ先輩ってもしかして……」

「あのスバル先輩の彼氏さんの事好きなんじゃ……」

「それは流石になくない?いつも虚しい虚しいってそれしか言ってなかったじゃん」

「そこのところどうなんです?先生」

「うーん……ノーコメント、かなぁ……」

「はっきり言わんかいワレェ!スバル先輩の恋路がかかってんねんぞ!」

「ばにたぁすっ!」

 

ミサキを宥めながら雑談を交わしている内に住居へ辿り着いた。建物の外観は中々に酷いもので、その辺の自治区に放置されている建物と比べても損傷具合が大差ない。殆どの窓ガラスは割れて吹き抜けていたり、壁にも穴が空いておりそれを板材で塞ぐだけの応急処置と呼べるかも怪しい修繕を施すだけに留めていたりと……。ダルフィですらここまで酷くないぞ。およそ人の住む場所とは言えない。

 

「では今から荷物を全てまとめてきてくれ。日用品など普段使っている物は全て持ち出してこい」

 

私の指示に従ってアリウスの生徒達は荷物をまとめるべく住居の中へと入っていった。待っている間に鞄の中にある荷物を取り出しておくとしよう。

 

「普段あの子達はここで暮らしてるのか……かなりひどい環境だね……って、その大きなワゴンはどこから出したの!?」

 

「うん?私のインベントリからだが?」

 

ちなみにこのワゴンの中にはベッドがぎっしりと詰まっている。ワゴンは複数持ってきているので在庫は家具含め結構ある。

 

「だが?じゃないんだけど。どう見てもおかしいよね?ポケットからそんなのが出てくるのおかしいよね?いや、前々から思ってはいたんだよ。一体どこから絞首台出してるんだろうって」

 

そうは言われてもこういうものだとしか説明できないしな……。

 

「こう見えて普段から色々持ち歩いているぞ。絞首台もそうだし、後はテントだとかエヘカトル様の抱き枕だとか……あぁ、グランドピアノもあるぞ」

 

なんだか久しぶりにグランドピアノを取り出した気がする。キヴォトスで演奏する機会なんて無かったからな……キヴォトスにはそういった依頼などは存在しているのだろうか。もしあるのならこちらでの収入源を増やせるし受けてみてもいいかもしれないな。

 

――依頼といえば適任がいるじゃないか。今度便利屋に依頼はどうやって受けたりしているのか聞いてみるとしよう。冒険者という概念はキヴォトスに存在しないというのは知っているので、こちらではどう名乗れば良いものやら。便利屋に倣って何でも屋とでも名乗るか?

 

【何でも屋ロイテルマート・ゲヘナ支店】

お?悪くないのでは?

 

「あの……急に私をほっぽりだして考え事に耽るのやめてもらえる?」

 

「先生、私は開業する事にしたぞ」

 

「はい?」

 

そうだ!もし上手くいった場合はペット達を従業員として雇うのもありではないか?生徒でもいいしノースティリスのペットも呼んで……いや、流石にそっちはまずいか。だがメイドを呼んで雑事を任せるくらいはしてもいいだろう。……トキが嫉妬しそうだな。メイドを必要とした時は大人しくトキを頼ろう。

 

クククッ……新しい事を始める時のこの高揚感はやはり堪らんな。楽しみだ……実に楽しみだぞ……!

 

「君の荷物の話はどこへ行ったの?私としてはそっちも気になってるんだけど」

 

 

便利屋!私にノウハウを教えてくれ!

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

何でも屋ロイテルマート・ゲヘナ支店(仮)の事を考えていたらいつの間にかアリウスの生徒達が戻ってきていたので一旦そっちに意識を戻す事にした。手に持っている物が恐らく荷物なのだろうが、その中に気になる物が幾つかある。

 

「……その布切れは一体なんだ?」

 

「こ、これは布団です」

 

ふ、布団……?ボロボロになって今にも破れてしまいそうな、いや既にところどころ破けて穴だらけのそのちんけな布が……布団……?

 

「…………」

 

これには先生も唖然としている。本当にベアトリーチェは最低限の世話しかしていなかったようだな。ベッドや家具を用意しておいて本当に良かった。

 

「分かった。とりあえず全員、その布きれを捨てろ」

 

「えっ……」

「つ、つまり……私達はもうこれから寝る事も許されないって事……?」

「うぅ……スバル先輩の彼氏さんだからちょっとは信じてもいいかなって……思い始めてたのに……」

「やっぱり世界は虚しいんだ……これからやり直せる、なんて美味しい話存在するわけないんだ……」

「ば、ばにたすぅ……」

 

ばにばにしてきたな……。めんどくさいのでさっさと話を進めるか。

 

「勘違いしないでくれ。こちらで寝具を既に用意してあるからそれらは不要というだけだ」

 

ワゴンからベッドを一つ取り出し皆から見える位置に設置する。

 

「あ、あれ、ベッドだよね……?」

「アリウスにあんな上等な物残ってないよ……!」

「すごい寝心地良さそう……!」

「ばにたすっ……!」

 

ベッド自体はそれほど価値のあるものでは無いが、素材は上等な物を使っているので確かに寝心地はかなり良いものだ。その布切れとは比べ物にならないだろう。

 

「よし、マイア。試しにこっちへ来て寝そべってみろ」

 

「は、はい!」

 

マイアが恐る恐るベッドの感触を確かめながら横になり始める。そのまま楽な姿勢を取ったマイアは次第に顔が蕩けていった。

 

「ふわぁ……しゅ、しゅごいですぅ……」

 

「マ、マイアずるい……!」

「あれは絶対に人をダメにする……間違いない……!」

「あれを私達も使えるって事……!?」

「そういうこったぁ……!」

「ばにたぁすっ……!」

 

よしよし、デモンストレーションは完璧。ヒナに渡したベッドは王様ベッドではあったが、あのヒナでさえ私の作ったベッドで初めて眠った日は寝坊する程の威力を発揮した。その辺の生徒ではこの誘惑に耐えきるのは不可能……!

 

「だが……どれだけベッドの品質が良くても、君達の住む家がこんなにボロくては気分は上がり切らないだろう」

 

私がそう言うとアリウスの生徒は「確かに……」と住居とベッドを見比べながら同調する。いいぞ、もっとやる気を出させてやる。

 

「とくれば、これからやる事は一つしかないわけだ。お前達の家を――建て直す」

 

「おぉ……!」と歓声が上がり始める。さぁ、働く時間だ。

 

「まずはこのボロい家とはおさらばだ。という訳でこのツルハシを全員に渡す。これを使って家を解体するんだ」

 

別に私が爆破解体を行っても良いのだが、生憎と私は体が一つしかなく他にもやりたい事がある。なのでアリウスにもしっかりと働いてもらい、自分達で復興するという実感を持たせつつ、私もやるべき事に専念出来るという正に一石二鳥の策だ。

 

アリウスの生徒達も良い感じにやる気が出てきている。この調子であればモチベーションの方も問題はないだろう。

 

「では順番にツルハシを受け取りに来てくれ」

 

そう言うや否やアリウスの生徒達は綺麗に整列して並び始める。うむ、やる気があるようで何よりだ。このツルハシはパルミアからパクったルビナスインゴットで作ってあるので採掘の経験に乏しい彼女達でも問題なく掘れるだろう。

 

「よし、行き渡ったな。――っと、これは先生の分のツルハシだ。生徒達の引率は頼んだぞ」

 

「うん、ありがとう。これは明日は筋肉痛かな」

 

先生のやる気も十分。このまま先生に生徒達を任せ、私はこの住居の周辺で土地の権利書を読み上げる。これでここら一帯は私の土地となった。

 

建物もそうだが、床もひび割れていたり穴があいてデコボコしてしまっている。そして何より緑が足りない。建物の解体を待つ間に私は床の張り替えをしよう。芝生にして緑を増やすぜ。ついでに幾つか苗木を植えこんで木も足しておこう。ついでに渇きの壺を利用して水を張り巡らせて池を作ろう。ここで釣りをすればそれだけで飢えは凌げる。

 

水を張り終えて試しに釣りをしてみる。………………お、伝説のマンボウが釣れた。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ヒヨリ」

「ミサキさん?どうしました?」

「あの人いつの間にか池作って釣りしてるんだけど」

「ふぇ?あっ本当ですね?……何か釣りあげました!」

「あの魚はなんだろうか。丸々と太っていて、身がぎっしり詰まっていそうだな」

「えへへ……美味しそうですねぇ……」

「気にするところはそこじゃないような気がしますが。何故水を張っただけであのような魚が釣れるんですか?」

「……言われてみればそうだな」

「言われなくても分かるでしょう……!」

 

 

 

 

 

うーん、池を作ったはいいが装飾が足りんな。ぽつんと池があるだけでは味気ない。ポールで池を囲んで仕切りを立ててみよう。周辺には……花壇を仕切りに沿って幾つか置くことにしよう。――ちょっと自然が多すぎるな。ベンチとテーブルを置いて人工物を混ぜつつ休憩所っぽくしよう。なんだか池のある公園っぽくなってきた。まぁこれはこれでいいか。

 

「これ、お花?綺麗だね」

 

拠点の装飾をしていたらいつの間にやら近くへ来ていたアツコに声を掛けられた。

 

「なんだ、サボりか?中々わんぱくだな」

 

「ふふっ、ちょっと気になっちゃって」

 

アツコの視線は相変わらず花壇の方へ向けられている。花に興味があるのだろうか。

 

「花、好きなのか?」

 

「うん。私もいずれ育ててみたいなって思ってたんだ」

 

「なるほどな。なら今度種を用意しておこうか。育てる場所も確保しておく」

 

「いいの?」

 

「あぁ。キヴォトスにある花の種の用意はすぐには出来ないが、ノースティリスの物であれば幾つか用意出来る」

 

名前の分からない花が数種類と、チューリップとひまわりがあった筈だ。養蜂に使うからその為の備蓄が結構残っている。

 

「ありがとう。楽しみにしてるね」

 

「――姫、抜け駆……サボりはもう終わり。やる事がまだ残ってるでしょ」

 

「あ、見つかっちゃった。それじゃまた後でね」

 

ミサキに連れられアツコが戻っていった。アツコにはやってみたい事があったみたいだが、他の子達はどうなのだろう。その辺も今度聞いておかないとな。

 

それから暫く周辺の装飾を施していると、大分解体作業が進んでいるようで空き地が増えてきた。やはり人海戦術は強いな。ルビナスのつるはしでこれだけの人数を用意すれば当たり前ではあるか。装飾の方も一段落ついたし建築の方に移るか。

 

今回使うのは大理石で作った王都の壁だ。アリウスはトリニティの分校だけあって、今はボロボロではあるがしっかりと建て直す事が出来ればトリニティに負けない荘厳な雰囲気を取り戻せるだろう。となれば白を基調としたパルミアの城にも使われているこの壁で建築するのが最も雰囲気と合うはずだ。

 

 

 

 

 

 

「あの人、凄い勢いで建物建ててる……」

「建築ってあんな感じなんだね」

「う、うーん、アビドスの子達から建築の話は聞いてたけど、ちょっと意味分かんないかなぁ……屋根はどこから出てきたの……」

「先生、どうかしたんですか?」

「ばにたす?」

「ううん、なんでもないよ。一応言っておくと、本来の建築業っていうのはあんな感じじゃないから、参考にしちゃだめだよ。絶対に」

 

 

 

 

 

 

 

拠点の中心に池を作ったので、それを囲むような形で建物を建てた。角にL字型の建物を四棟建て、連絡通路で一か所を除いてそれぞれを繋ぐ。繋がなかった場所は入り口にし、この建物に入る時は中心の池を通ってからそれぞれの建物へと入る事が出来るようにした。四棟あるので学年別で分ければ三つの建物を使う事になる。空いた一棟に関しては水場を設置したり、温泉を蓄えた渇きの壺を利用して温泉大浴場を設置した。他にも調理器具を置いたりしたのでそこがアリウスの共有の生活スペースとなるだろう。

 

「よし、一先ずは完成したと言って良いだろう」

 

「す、すごい……」

「こんな立派な建物がアリウスに……う、うぅ……」

「これからここに住めるなんて……夢みたい……」

「今ならこれ全部夢でしたって言われても信じられるよ……」

「ばに、たすっ……!」

 

 

……ずっと気になってたんだが一生ばにたすばにたす鳴いてる子が居ないか?ばにたすアンチの私としては不快感すごいんだが。矯正したくなってきた。

しかしそろそろ日が沈む。矯正は後に回すとして、アリウスの生徒達には最後の作業を行ってもらう必要がある。

 

「全員作業をして疲れただろう。建物の一つに浴場があるからそこで汗を洗い流してこい。それが終わったら夕飯の時間だ」

 

「お、お風呂……!?」

「お風呂なんて贅沢許されていいの!?」

「み、水がもったいない……!」

「飲み水に使った方がいいんじゃ……」

「ばにたす……」

 

聞いてて悲しくなってくるような事言わないで欲しい。

 

「水なんてこれから幾らでも飲めるから気にしなくていい。早く行かないとご飯を食べる時間が無くなって飯抜きになるかもしれないぞ」

 

『行ってきます!!!』

 

飯抜きを示唆した途端慌てるようにドタドタと走って行ってしまった。

 

「さて、夕飯を作るから先生は手伝ってくれ。カレーを作るぞ」

 

「私も結構解体作業頑張って腕がくたくたなんだけど」

 

「やかましい。大量の皿を運ばせてやるから楽しみにしておけ」

 

「ははっ、人使い荒いなぁ」

 

使える物は使わなければ勿体ないからな。

 

「そうだ。夕飯が終わったらアリウスの子達に話をしておきたい」

 

「奇遇だね。私もなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

「お風呂……しゅごかった……」

「すごい変な味した……」

「飲み水としては使え無さそうだね……」

「でもなんだかいつもより肌がもっちりしてるような気がする!」

「ばにたすっ!」

 

アリウスの生徒達がぞろぞろと帰って来た。ちょうどいい、こちらもそろそろ出来る頃合いだ。

 

「よし、お風呂から戻って来た者から順番に受け取りに来い」

 

「うわぁ、すごい良い匂いがする!」

「これ何の匂いだろう……?」

「分かんない。でも、きっと美味しいやつ……!」

「ばにたすぅ……」

 

……やっぱいるな。ばにたすっ子が。

一度意識すると矯正したくて堪らなくなってくるな……!

 

「これはカレーというやつだ。本来は辛味が強いんだが、辛いのが苦手な者もいたりするから今回は甘めに仕上げてある。美味いぞ」

 

「かれー……知ってる?」

「ヒヨリの拾ってきた雑誌で見た事あるかも」

「私は知らないなぁ。ばにちゃんは知ってる?」

「ばにたす……」

 

……だめだ!がまんできねぇ!

 

「……ずっとばにたすって鳴いてる奴いるよな?誰だ?出てこい。そのばにたす精神を矯正してやる」

 

「ば、ばにたすっ!?!!??!?」

「ご、ごめんなさい!こ、この子だけは見逃してあげてくださいっ!」

「マダムに強い折檻を受けてからこれしか喋る事ができなくなったんです!」

「だ、だからこの子だけは……!どうか!どうか!」

 

えぇ……急に重い過去ぶつけてくるのやめてくれないかな。何も言えなくなったじゃん。

 

「そ、そうか……。それはすまなかった。そういう事ならば仕方ない。これからは少しずつ治せるといいんだが」

 

「まぁ本当は特にそんな事もなく話せますが。ばにたすばにたす」

 

……ははっ。――そうかそうか。なら安心だ。

 

 

 

「――お前を殺す」

 

「ばにたぁすっ!?!!??」

「あぁっ!この子だけは!どうかこの子だけはぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何してるの、あの人」

「ふふっ、アリウスが明るくなった証拠だよ。きっと」

「――そうだな。少し前までならこんな事想像もつかなかったし、決して許されなかった」

「そうですね。本当に、あの人に捕まった時はどうなるかと思いましたが……」

「意外とどうにかなっちゃいましたね……えへへ。カレーも美味しそうですし……」

「あぁ。おかしな話だが、捕まって良かったと今では思う。――ありがとう」

「サッちゃん、それは直接あの人に言わないと」

「あぁ、そうだな。……そうしよう」




イルヴァ豆知識
・渇きの壺
液体を貯めたり、放出出来る壺。壺の作成に使った素材によって蓄えられる水の量が決まっている。でもぶっちゃけこれでちまちま水を撒くより水の床を使って張った方が楽だし早い!!!



ヒナちゃの誕生日当日に番外出したかったけど難しいかも……。なるべく頑張りますが期待はしないでください……すまねぇ……!
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