透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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番外編です。ヒナちゃ回ですが、Elin要素が非常に強い話となっております。
未プレイの方にはよく分からない点が多々あるかと思いますのでご注意ください。
尚、読み飛ばしても本編に大きな影響はありません。


Elinを、買え!


番外:ノースティリス旅行へ赴くヒナ 前編

ベアトリーチェの始末を終えて暫く経ち、ようやくゲヘナに腰を落ち着けるようになってきた。しかしまぁ思い返してみるとトリニティでは色々な事があったものだ。一番の収穫はやはりペットの数が大きく増えた事だろう。私のキヴォトス生活は順風満帆と言える。まぁ少しばかり増やし過ぎたせいでヒナの機嫌を損ねてしまったので、今回はそのケアも兼ねてノースティリスへ旅行に連れて行こうと思う。

 

「というわけでそろそろノースティリスの方へ出かけないか?」

 

「いく」

 

即答だった。

 

 

 

 

 

 

 

「テレポーターはいつ使っても不思議な感覚ね」

 

「そうだな。一瞬で移動できるのは本当に便利だから大いに助かるが」

 

ノースティリスはキヴォトスの様に移動手段が豊富ではないので、テレポーターが無ければ街から街へ移動するだけで数日から十日程掛かったりするのが常だ。私は各地の主要の街の近くに拠点を置いてテレポーターを繋げているおかげで、日数をかけずに移動する事が出来るのでこうしてヒナを気軽に旅行に誘える。

 

「それじゃあ早速行こうか」

 

「うん。あ、あのっ」

 

呼び止められたので振り返ってみるとヒナが顔を赤らめながら何かを言おうとして躊躇っている様子が見て取れる。もじもじしながらこちらの手を意識しているようだが、もしかすると――自身の閃きに従って私からヒナの手を取ってみる事にした。

 

「さ、行こうか」

 

「――うんっ」

 

ヒナの嬉しそうな顔を浮かべているところを見るとどうやら正解だったようだ。

さて、まずはあそこから行くとしよう。

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

「ここがネフの里。狐耳と尻尾の生えた種族が暮らしている町だ」

 

まずこの里に入って最初に目につくのは大きな鳥居の存在だろう。そして道に沿って真っ直ぐ歩いていけば神社が見えてくる。

 

「大きな神社ね……」

 

「キヴォトスにも神社が存在しているみたいだしな。だからまずはこういった馴染みのある場所から見せておこうと思ってな」

 

「ここまで立派な神社は百鬼夜行に行かないといけないでしょうね」

 

ノースティリスもネフの里でなければ見れない……というか街の特徴によって祀られている神が違うというべきか。例えばノイエルでは毎年十二月になると聖夜祭と呼ばれるお祭りが開催され、癒しのジュア様が祀られたり、抱き枕を片手に改宗を促してくる着ぐるみが出没したりする。無論私もその勧誘に乗って改宗し、抱き枕を手に入れている。

 

ちなみにここネフの里では月影のホロメ様という女神が信仰されており、この里に住む住民全員がホロメ様信仰という信心深さが感じられる里でもある。先述したノイエルではジュア様を祀った祭りが開かれるが、住民の全員がジュア様を信仰しているわけではなかったりする。

 

「道理で貴方が百鬼夜行に興味を持つはずだわ。これだけあそこと似た環境があるのなら気になるのも分かる」

 

「だろう?やはりノースティリスとキヴォトスはいつからかは分からないが交流があったのだろうな。料理だけでなく神社すらも互いに存在しているのだから」

 

いつかヒナがこちらへ来た時に似たような話題を話した事を思い出す。という事は百鬼夜行にある神社はホロメ様を信仰しているのだろうか。どうせいつかロイテルとファリスを連れて百鬼夜行へ旅行に行くのだからその時に確かめればいいか。

 

「今の私は信仰上の理由でお参りは出来ないが、ヒナはしていくか?」

 

下手したら信者認定されるかもしれないが、ヒナがホロメ様を信仰したいと思うなら止める理由は……結構あるけど止めはしない。ホロメ様と銃の相性が絶望的なまでによろしくないという致命的な理由があるが、止めはしない……!

 

「ふふ、私の意思を尊重してくれるのは嬉しいけれど、やめておく。どうせなら貴方の役に立つ生き方をしたいから」

 

ヒ、ヒナ……!私はヒナのようなペットを持てて嬉しいぞ……!

 

「分かった。ネフの里には神社以外にも名所があってな。そこへ行こう」

 

それから少し歩いて、神社よりも巨大で神聖さを感じさせる桜の木の元へと来た。キヴォトスは科学が発展している分、このような大樹や自然の景色を見る機会が少ない。なので今回は街を見て回るよりも、ノースティリスの自然を楽しんでもらう方に注力する事にしている。

 

「おおきい……それに、綺麗ね……」

 

「だろう?この木の下で軽く花見をしよう。軽食も作って来たからそれをつまみながらな」

 

「えぇ、良いわね」

 

木陰に入り二人で座り込む。しばし沈黙を保ちながら軽食をつまんでいると、食べながら周りを見渡していたヒナが口を開いた。

 

「そういえば、ここに居る住民ってほとんどが獣耳と尻尾を生やしているのね」

 

「あぁ、種族について説明していなかったな」

 

ネフの里、という名前の通りここはネフという種族が暮らしており、獣耳と尻尾を生やした人が多数を占めている。キヴォトスの生徒の中で外観が最も近いのはセイアだな。セイアの様な特徴を持った人たちが着物を着て暮らしていると思えばイメージしやすいだろうか。

 

「じゃあこっちには私みたいな悪魔も暮らしてたりする?」

 

「いるぞ。ルロスの侍女というモンスターが悪魔だった気がするな」

 

そしてルロスは優秀な技を持っているので一匹は必ず捕まえておくか災いという魔法の遺伝子を抜いておきたい有能モンスターだ。意思上げ用の乳としても使えるので、危険度の高い場所でルロスを見かけたらとりあえず媚薬を投げておいて損は無い。

 

「ヒナはルロスと違って見た目は人間そのものと言っていいしモンスター扱いされる事はないから安心していいぞ」

 

ルロスも人型ではあるので人間扱いできなくもないかもしれない。人間と呼ぶには大きすぎるサイズと青い肌を除けばだが。とはいえノースティリスにはかたつむりやカオスシェイプといった異形の冒険者が存在するしルロスの侍女が冒険者をしていてもおかしくはないかもしれんな。

 

「ここに居ると定期的にかたつむりの存在が出てくるわね……ノースティリスではかたつむりは有名なの?」

 

まぁある意味で有名と言えるかもしれない。ノースティリスにおいて最弱種族という不名誉極まりない称号を与えられているのがかたつむりという種族だ。装備部位は背中のみと貧弱で、塩水を投げられれば例えどれだけ鍛え上げていようとたちまちに溶けて死んでしまう悲しい宿命を持っている。すくつの深層まで潜り込む歴戦のかたつむりであろうと、町に居る塩水を常備した清掃員には勝てないらしい。

 

「すくつ……確か貴方が主戦場としている場所ね」

 

「あぁ、ヒナもいずれ一緒に行く日が来るだろうな」

 

卒業後にはなるだろうが、ヒナと共にすくつを練り歩くその日が待ち遠しい。そう思って胸を躍らせていたのだが、何やらヒナは浮かない顔をしていた。

 

「……行けるかな。前に会ったイモーロナクっていう子、凄く強かった。あの子に比べたら私なんてまだ……」

 

あぁ、なるほど。私のペットとの差を感じて不安になっていたのか。あの子は壁役で文字通りパーティーの命綱なので手塩にかけて育てている。なので強さというか育成度合いで言えば私のペットの中でも一、二を争う完成度を誇っている。そんな子と自分を比べるのはあまり意味の無い行為ではあるのだが、それを今のヒナに伝えても不安を拭い去る事は出来ないだろう。

 

「ふむ、そうだな。確かに私のペット達に比べればヒナだけじゃなく、キヴォトスのペット達はまだ及ばない。だが前にも言った筈だぞ」

 

私の趣味はペットの育成だ。ヒナが育っていく過程を見る事も私にとっての楽しみの一つだ。何より、もし私が強さだけを指標に人を見ていたとしたら、現状私より弱い者しか居ないキヴォトスに長居などしていない。

 

「っと、少し迂遠な言い方をしてしまったな。ともかく私は、ヒナに出会えて良かったと心から思っている」

 

「……本当?」

 

「あぁ、本心だ。私がヒナに嘘をついた事があったか?」

 

「ないわ。――私に内緒でペットを増やしたりするけど」

 

ここで蒸し返されるとは思わなかった……!

 

「――ふふっ」

 

私がどう言葉を返そうか迷っているとその様子がおかしかったのか少し笑った後、私に体を預けるように頭をこちらへ寄せてきた。

 

「良いわ。これからはペットを増やしても許し……はしないけど、私の事も忘れないで」

 

許してはくれないんだ……。

 

「約束する。今までも君を忘れた事は無かったが、これからも共にいる」

 

「――うん、約束」

 

そう言ってようやく心からの笑顔を見せてくれた。

 

「……やはり、ヒナには笑顔が良く似合う。こう見えて私はヒナの笑顔が好きなんだ」

 

「――っ。きゅ、急に変な事言わないで。恥ずかしいから……」

 

確かにヒナはこういった事の耐性が低そうだ。あまり言い過ぎても逆効果だろうしこの辺にしておこう。お互い軽食を食べ終えていたので、話題転換ついでに食後のデザートとしてフォーチュンクッキーを取り出してヒナへと差し出す。

 

「これはちょっとした運試しが出来るクッキーでな。キヴォトスでいう……おみくじ、だったか?そんな感じの事が出来る食べ物だ」

 

「そうなの?確かに神社といえばおみくじね。季節は外れてるけど面白そう」

 

そう言いながらクッキーを頬張るヒナを注視する。クッキーを口に含んだ事を確認したところで一つ忠告しておくことにした。

 

「ちなみにそのクッキー、結構不味い」

 

「――んふっ!けほっ!……口に入れてから言ったわよね?」

 

「ん、そうだったか?すまない、言うのが遅かったかもしれない」

 

言うまでも無くわざとだ。お腹を壊すんじゃないかと錯覚するほどに不味いんだよなこのクッキー。小麦粉をそのまま口に含んだ状態で更に水を少量口に入れ咀嚼した様などうしようもない不味さがある。

 

「貴方も早く食べて。……いえ、食べさせてあげる」

 

私の分のクッキーを手に取り私の口へと近付けてくるヒナ。しかし――

 

「待てヒナ。その量はおかしい。一体何枚手に取っ――むぐぅ!」

 

容赦なく口いっぱいに広がる小麦粉の風味!(直喩)

うぅ……腹を壊しそうだ。つい苦い顔になってしまう。

 

「ふふ、仕返しよ。ところで運勢はどこで見れるの?」

 

「――ふぅ、ひどい目に遭った。それはこっちの包装の裏に書かれているからそれを見るんだ」

 

ちなみに当たりだとそこそこ役に立つ豆知識が書かれている。

 

「これね。えっと、【妹専用の最強アーティファクトがあるらしい】……そうなの?」

 

ただのジョークだな。ハズレだとこの様に嘘を教えられてしまうのだ。

……なんでこれが嘘なんだよ存在してくれ。

 

「どれ、次は私だな……【後ろ!気をつけて!ほ、ほら、妹がー!逃げてー!あー!】」

 

なんだ、私のもジョークだな。後ろを向いたって誰も……

 

「おにーちゃん♪」

 

「……お?本当に妹がいるじゃないか」

 

「い、いつの間に……?その子も貴方のペットなの?」

 

「いや、この子は野良妹だな。たまに見かける事がある」

 

「……?」

 

「お兄ちゃんのいるところに妹ありだからね!あなたはヒナちゃんだよね?よろしくね!」

 

「え、えぇ……ところでどうして私の名前を知ってるのかしら」

 

「妹だからね!お兄ちゃんの事は何でも知ってるよ!」

 

「??????」

 

ヒナが深淵を垣間見た猫の様な表情をしている。恐らく妹という存在を理解しようと試みているのだろう。素晴らしい事だ。

 

「君は行くところはあるのか?もし無いなら私の拠点へ来るか?」

 

「いいの!?じゃあ私達がいっぱいいるあそこの拠点へ行けばいい?」

 

「そうだな。そこでみんなと一緒に仕事をしてくれると助かるよ」

 

「分かった!任せてお兄ちゃん!それじゃあ私は帰るね~!」

 

これでまた私の拠点に妹が増えた。

ただのジョークかと思っていたが全くそんな事は無かったな!最高だ!

 

「……どうして当たり前のように貴方の拠点を知っていたのかしら」

 

 

妹だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

ネフの里の案内が終わり、次にヒナを連れてきたのはスペクウィングだ。

 

「これはまた……ネフの里で見た桜の木の大きさが霞むわね」

 

ここにはネフの里とは比べ物にならない巨大な大樹が聳え立っている。恐らくキヴォトスにある高層ビルと比べても遜色ない程の高さがある。

 

「ここは妖精が管理している大樹でな。妖精の扱う魔法で大樹の中に住居スペースを作り生活をしている。かなり中はくりぬかれているが、それでもこの大樹は成長を続けているそうだ」

 

「妖精……そういうのも存在してるのね。まるでファンタジーの世界ね。いえ、魔法が存在しているのだし元からそうだったのでしょうけど」

 

「高い所は平気か?頂上からの景色は一見の価値ありだぞ」

 

「大丈夫。行きましょう」

 

昇降機を使って頂上へ一気に行く事は出来るが、折角なので歩いて登る事にする。

 

「一階のスペースは……ホテルかしら」

 

「そうだ。ここには冒険者がよく集まっててな。ここでパーティーを組んでネフィアに挑む冒険者が多いらしい」

 

「らしい、って事は貴方はここで組んだりしなかったの?」

 

私の場合は命の恩人であるフィアマに拾われた日にペットを譲り受けていたのでわざわざ組む必要性が無かった。知り合い自体は多くいるが、仲間にした冒険者は結構少ない。

 

「貴方の最初のペット……どんなペットなの?」

 

「少女だ」

 

「……えっ、少女?……え?」

 

やっぱり最初はそういう反応になるよな。あの当時提示されたペットは四種類いた。

仔犬、仔猫、子熊……そして少女だ。あの時は私も意味が分からな過ぎて一瞬戸惑ったのだが、結局好奇心には勝てずに少女を選んだ。

 

「ほ、本当に訳が分からないけど……貴方が女の子の扱いに慣れてる理由が分かった気がする」

 

何故か恨みがましい目で見られてしまった。まるで私が年端もいかない少女を誑かしているかのような目で見るのはやめてもらおうか。

 

「ざこ。ざぁこ♡(えー、誑かしてるのはほんとじゃん♡)」

 

「え?……また他の女の子が出てきた……!」

 

なんでよりによってこの子がここにいるんだ、牙姫……!

銀髪のツインテールで中華風の衣装に身を包んだ彼女は、神に呪われたせいで「ざこ」としか喋る事が出来なくなってしまった哀れな冒険者だ。

名前は牙姫と書いてガキと読む。

 

「あー……元気そうだな?」

 

「ざこ。ざこざこ(そういう君は最近見かけなかったけど、今はその子にお熱なの?)」

 

「今は????」

 

わざと誤解を招くような言い回しはやめてくれないかなぁ!

 

「ざこ♡ざこざーこ♡(私に卵産ませておいて放置するなんて酷いと思わない?)」

 

「ちょっと、話を聞かせてもらえる?」

 

「待って欲しい。牙姫を鞭でしばいたのはキヴォトスへ来る前の事だ!」

 

産ませた理由に関しては牙姫から生まれてくる個体が特殊だからだ。本来有精卵から生まれる個体の持つアビリティは固定されており、何度孵化させようが同じ能力を持った個体が生まれるのが普通だ。しかし牙姫の有精卵から生まれる個体は、罵倒を固定で持ってはいるが、他の幾つかのアビリティは個体によってランダムなのだ。

 

そこで輝くのが遺伝子薬の存在だ。牙姫から生まれてくる個体と遺伝子薬を掛け合わせる事で、自分の好みのアビリティを選んで抜き出す事が出来てしまうのだ。

 

そりゃ、鞭でしばきたくもなるだろう!?

 

「ざこ♡(でも~……産卵薬も飲ませてきてたよね?♡)」

 

「……へぇ」

 

産卵薬は渡すだけで良いから楽なだけだったんだ……!くそっ!何故過去の行いが今になって災いとなって降りかかるんだ!

 

「ざこ、ざこざ~こ♡(それじゃ、デートの邪魔しちゃ悪いし邪魔者は退散するね~。次会ったら私ともデートしようねざこざこお兄さん♡)」

 

そうして牙姫はこちらを好き放題引っ掻き回してから軽快な足取りでどこかへと消えていった。次に会ったら絶対にしばき倒してやる。

しかもアリウスで見かけたあのばにたすっ子、どこか既視感があると思ったらまんま牙姫じゃないか……。そう考えるとなんだかむかついてきたので今度あのばにたすっ子を見かけたらついでにまたしばいてやろう。

 

「――ねぇ」

 

「な、なんだろうか……?」

 

「あの牙姫って人はペットじゃないの?」

 

違うな。牙姫に用があったのはあくまでも有精卵だけだったから拠点に誘う事はしていない。していないが、あの通り産卵薬で好意自体は高まってるので多分こちらから呼びかければすぐにでも来るんじゃなかろうか。ヒナが怖いので口には出さないでおくが。

 

「そう。なら過去の事だし、ギリギリ許す」

 

ギリギリ許された……!

 

 

 

 

 

 

 

 

それから改めて大樹を登りつつ、途中に恐らく妖精の手製の物と思われる土産が置かれていたので、せっかくなので私とヒナの分の木彫りの像を買ったりしながら頂上へと辿り着いた。

 

「さ、着いたぞ。ここが頂上だ」

 

「――良い景色ね。この高さから見ても一面が自然に埋め尽くされてる景色を見るのは生まれて初めて」

 

どこか食い入る様子で見渡すヒナ。その様子を見守りながら軽く周辺の案内をする事に。

南西方向を眺めてみれば遠目にパルミアとカジノであるフォーチュン・ベルが見える。

 

「こっちの方は……雪原が見えるわね」

 

東の方向には雪原があり、雪原の中心付近にはノイエルがある。更に奥深くまで歩いていけば永久凍土という名の墓地も存在する。常に吹雪に見舞われているのであまり足を運ぶ事はないが、金色の雪プチが出現しやすいという情報を聞いた時に一生歩き続けた記憶がある。

 

「北側を見てくれ。向こうに周囲とは少し変わった形の洞窟があるのが見えるか?」

 

「えぇ、見えたわ」

 

「あそこがすくつだ。そしてすくつから北西方向にはネフの里があるな。ここからだと山を挟むから残念ながら見えないが」

 

「そう……ここが貴方の生きてきた世界なのね」

 

そうか、私の住む世界だからこうして周囲を熱心に見てくれていたのか。少し嬉しくなりつつ引き続き周辺の案内を続けた。

 

「――と、ここから見える範囲での地理は大体こんな感じだ」

 

「ありがとう、教えてくれて」

 

礼を言いたいのは寧ろこちらだ。ノースティリスに関心を持って聞いてくれた事は素直に嬉しく思う。

 

「ここからじゃ見えない場所も、いつか案内して。一緒に」

 

「無論だ。その時を楽しみにしている」

 

「――うん、私も楽しみにしてる」

 

「それじゃあ今日のところは拠点へ戻ろうか」

 

そうして帰還の魔法を使って拠点へと戻って来た。すると思わぬ人物が私達を出迎えた。

 

「おかえり」

 

「――クルイツゥア?珍しいな。ただいま」

 

彼女はケトルと共にこの拠点へやってきた女の子だ。色々と暗い過去を背負った子で、自身の運命に翻弄されつつも今ではコルゴンという小さな竜といちゃこら楽しそうに過ごしている。

 

「ケトルが帰ってきたの。みんなを呼んで欲しいって」

 

「分かった、すぐに行く。わざわざありがとう」

 

クルイツゥアは静かに首を縦に振ってから他の者を呼びに足早に去って行った。そうか、ようやくケトルが戻って来たのか。これでやっとコルゴンがボロボロにしたフライパンを直せるな。ファリスも喜ぶだろう。

 

「ケトルって、前に貴方が言っていた錬金術師の人よね?」

 

「そうだ。――ふむ、せっかくだし一緒に行こうか。いずれは共に生活する仲間になる者達だ。顔合わせは早い内に済ませた方が後々楽になるだろう」

 

特にファリスはヒナと同性の大人なので頼りに……なるかはちょっと断定出来ないが、まぁ彼女の性格を考えれば悪い関係にはならないだろう。

 

「分かったわ。そういう事ならついてく」

 

 

 

さて、今回の件はどう転ぶ事になるかな。




なんと前後編と分ける事になりました。
文字数を抑えきれない不甲斐ない私を誰か殺してくれ。
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