透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

69 / 70
それはつまりタピオカミルクティーでは?

「ふっふっふ……遂に……遂に!この日がやってきたのだ!」

 

ご機嫌だ。

キサキの依頼を終えて暫くして、私は再度山海経へと足を踏み入れていた。今回の訪問の理由は言わずもがな、不老長寿のエリクシルを譲渡する為だ。そんな訳で当然ながら今回は玄龍門ではなくサヤの活動拠点である錬丹術研究会に居る。

 

「もうずーーーーーっとこの日を待ち侘びていたのだ!さぁ早く!早くあの薬を渡すのだ!」

 

「もぐもぐ……落ち着け、これが不老長寿のエリクシルだ」

 

あまりの気迫に若干気圧されながらもエリクシルを渡す。サヤは差し出されたエリクシルをひったくるように私から半ば強引に奪い去ると、恍惚の表情を浮かべながらそれを見つめている。

 

「はぁ……これが不老の薬……やっぱりこのまま飲んじゃおうかな……いやいや流石に分析してぼく様の手でも作れるようになってからでないと……!でもでも効果が本当にあるか分からないし、やっぱり自分で飲んでみて効果を確かめる必要がある……よね?うん、ある。これはしょうがない。しょうがない事なのだ……ふひっ」

 

ダメだ。現物を手にした所為かすごい勢いで壊れ始めている。判断力が味噌っかすだ。

 

「だから落ち着けサヤ。もぐもぐ……ほら、こうなるかと思ってもう一本用意してあるから」

 

「――!??!!??!?」

 

そう言って念の為に用意しておいた予備を渡すと、サヤは両手にエリクシルを抱えながら幸せそうな――いや、どちらかと言えばクリムの煙を吸った様な表情を浮かべてるな。完全にトリップしてやがる。

 

「ふへっ、ふへへへ……!」

 

何度か声を掛けてみたが応答が無い。

仕方が無いのでお子様ランチでも食べながら帰ってくるのを待つとするか。もぐもぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぼく様はこれからずっと貴方についていくのだ、お師匠様」

 

「あ、うん。もぐもぐ」

 

私が五個目のお子様ランチに手をつけたところでサヤがトリップから戻って来た。

なんか呼ばれ方も変わった気もするが好きにさせよう。

 

「でも飲んでみたはいいけど、不老になった実感がないのだ」

 

「それはそうだろう。もぐもぐ」

 

不老の効果を実感するには年月が必要だろうしな。とはいえ不老長寿のエリクシルであれば飲んだ時点でフィートを獲得出来るし、私も服用して永遠の若さフィートを持っているのは確認している。聴診器を使ったわけではないが、サヤにも同等のフィートが得られているはずだ。……一応確認しておくか。生徒にこれを飲ませたのは初めてだしな。

 

「というわけで君が不老になれたか確認するぞ」

 

聴診器を取り出してサヤのフィートを確認してみるが、問題無くフィートが得られている事が確認出来た。これでサヤは永遠の十六歳だ。

 

「おめでとう。君はこれで立派な不老だ……もぐもぐ。後は不死を目指すだけだな」

 

「ありがとうなのだ。……そういえばぼく様のあげた薬もちゃんと効果を発揮しているみたいだね」

 

そう、あれからサヤから貰った食べても太らない薬を服用していたのだが、最初私が思い描いた通りの結果を得られたのだ。おかげで食育がかなり進み今の私は今までとは比べ物にならない速度で主能力が成長している。なので実は私もかなりご機嫌なのだ。その証拠に、サヤの為に不老長寿のエリクシルを複数用意しておいたりもした。サヤは今にとっては私の成長には欠かせない重要な存在なのでこの程度の融通は幾らでも利かせる価値のある子だ。ペットである事を加味すれば、エリクシルを複数用意する程度ではまだまだ対価としては釣り合わないので、他にもサヤには褒美を用意してある。

 

「もぐもぐ……今度私の拠点へ君を招待しよう。私よりも錬金に長けた人物の元へ案内してやる」

 

「ほんとに!?」

 

ケトルとソリンにも既に話を通してある。ソリンは最初力を貸す事に渋っていたが、拠点に住む為の家賃代わりだと言えば渋々ながらも了承してくれた。ソリンに対する貸しをここで消化してしまったのは少し勿体ない気もするが、サヤにはそれだけの価値があるはずだ。人を辞める外法の類は教えない様にも言い含めているので滅多な事にもならないだろう。

 

「こちらへ来るときはこれを使ってくれ」

 

「これは……スクロール?」

 

「そうだ。帰還の巻物と言ってな……もぐもぐ。それを読めば私の拠点へ跳べる」

 

山海経には拠点を建てていないので移動手段が限られる。帰還の魔法を教えても良いが、あれは無駄に詠唱難易度が高いのでこういう場合は誰でも使える巻物の方が利便性は高い。

 

「それと、こちらの世界のポーションを幾つか用意しておいた。これらも好きに使うといい」

 

そうしてポーションを取り出し、どういった効果を持つのか説明をしていく。

 

「――これが重傷治癒のポーション。これは睡眠薬。こっちが精神復活と肉体復活のポーションで、そしてこれが育毛剤だな。こっちは媚薬で、これは若返りのエリクシル。それでこれが産卵薬だ。これは文字通り飲ませた相手を産卵させる薬で、時折有精卵も産むことがあるな。君達のような生徒にもちゃんと効果は発揮する事は確認済みだ」

 

「へー……有精卵って事はもしかしてそこから子供が生まれたりするの?だとしたらかなり面白……じゃなくて倒錯的な感じがするのだ」

 

「いや、生まれるのは確かに分類としては赤ちゃんなんだが、面白い事に見た目は卵を産んだ本人とまるで同じなんだ」

 

「クローンみたいな感じ?だとしたらとんでもない薬なのだ。悔しいけどやっぱりお師匠様の薬はすごいのだ」

 

実際かなりとんでもない。

ペットの強さを求めるなら卵から生まれたペットを育成をした方が強くなりやすい。ちなみに更に上の強さを目指すならすくつの深層にいるモンスターを直接勧誘した方が良かったりもする。あいつらマジで訳分からん強さしてるからな。倒すこっちの身にもなれ。

 

「ちなみに今紹介したポーションの幾つかの組み合わせ次第では不老長寿のエリクシルを創り出す事も可能だ。――答えを提示してもいいが、どうする?」

 

「いや、必要無いのだ。それだけヒントを貰えたなら後は自分で試行錯誤してみるのだ」

 

「そうか。まぁ君なら不老長寿のエリクシル程度はすぐに作れるようになるだろう」

 

これはお世辞でもなく事実だ。

不老長寿のエリクシルに必要な素材は睡眠薬・産卵薬・育毛剤・若返りのエリクシルの四つ。そしてサヤは今までに効果に微妙は差異はあれど、育毛剤と若返りのエリクシルに近しい薬を作った事があるという。睡眠薬は私にわざわざ報告していないだけで創れるだけの力はあるだろうし、既に独力で不老長寿のエリクシルの作成に必要な素材の半分以上は自力で開発済みという事になる。残りの産卵薬が壁になるはずだったが、それも今こうして存在を教えた事でその障害も消えた。サヤならばすぐに私の境地まで辿り着く筈だ。あ、お腹空いた。もぐもぐ。

 

「――そうだ。こっちの不老長寿のエリクシルをちょっと貸してくれ」

 

「いいけど、どうするの?」

 

懐から祝福された水を取り出し、研究用に使うエリクシルと混ぜ合わせて祝福する。

 

「え、何をしたの?水で希釈した?」

 

「いや、希釈ではなく祝福させたんだが……まぁ細かい説明は省く。研究するのに支障は無いから安心してくれ。ちょっとした保険のようなものだ」

 

これが役に立つ日が来るかは分からんが、念の為の対策の一つでもある。

 

「では私はそろそろ行く。他にも行かねばならない所があるのでな」

 

「え、もう?――あ、門主と逢引き?」

 

「……いや、今日は門主ではなく玄武商会の方へな。元々そちらへ行くついでにここへ来ているからな」

 

この後はルミの元へ行って食材を卸しに行く予定だ。

まぁその用事も終わったらキサキに来るように言われているので逢引きも間違ってはいないが。

 

「ふーん。ていうか、ぼく様の前で門主なんて呼ばなくていいのだ。会ったばかりの時にキサキって呼びかけてたし、それに抱き合ってた所も見ちゃってるんだから今更取り繕う必要もないのだ」

 

……そっすね。

 

「……じゃ、後は頑張ってくれ。また時間が空いたら連絡する」

 

「待ってるのだ!ぼく様も研究が進んだら連絡するのだ!」

 

「期待している」

 

「任せるのだ!それじゃあね、お師匠様!」

 

そうして錬丹術研究会を後にし、玄武商会へと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい!待ってたよ。今日はずっと楽しみだったんだよねぇ」

 

玄武商会へ足を踏み入れると出迎えてくれたルミから歓迎の言葉を受けた。

 

「こんにちは、ルミ。早速だが食材はどこで出したらいい?」

 

「それじゃあ厨房に案内するから、そこでお願いするよ」

 

「分かった。もぐもぐ」

 

ルミに案内されるがままに厨房へ。山海経でも大きな組織だけあって厨房もかなりの広さだ。そして衛生管理もしっかりしており清潔に保たれている。見慣れぬ調理器具も多く、非常に興味がそそられる空間だ。

 

「ところで他の従業員は居ないのか?前に来た時はもっと賑わっていた印象だが」

 

「今日は休みだからね。折角だからみんなも呼んで色々試作しようかとも思ったんだけど、うちの子達は料理に情熱的だから新しい食材――なんて話題になるとちょっとみんなの動きを統制出来るか不安でさ。悪いけど今日の所はあたしだけ抜け駆けさせてもらう事にしたんだ。ダメだった?」

 

「いや、そういう事なら構わない」

 

サヤが薬にお熱な様に、玄武商会の者達が料理に対して同じ様な心持ちであるとするなら私はもみくちゃにされて面倒な事になっていたかもしれない。そう考えるとルミの判断は正しい。

 

「あたしも聞きたいんだけど、報酬は本当にあれでいいの?ちょっと安すぎない?」

 

今回の依頼の報酬について、私は金銭を求めていない。

私が今回求めたのは玄武商会で作っている料理そのものだ。ルミからすれば料理を提供するだけで食材が手に入るのだから安いと感じてしまうのも無理はない。

 

「初回サービスのようなものだと思ってくれ。今後も定期的に卸すなら次からは金銭を受け取るよ。もぐもぐ」

 

「もしかして意外と大食い?今もなにか食べてるもんね」

 

これは信仰焼きだな。

 

「確かに今の私は幾らでも食べられるが、報酬の料理に関しては食べるわけじゃないんだ」

 

「え、そうなの?じゃあ一体……」

 

「なに、軽くハンマーで砕いてレシピをだな「――はい?」……スーッ」

 

言いかけたところで、ルミの纏う雰囲気が変わったのを感じ取ってしまい言葉が詰まる。

あれ、私何かやったか?

 

「聞き間違いかな?あたしの作った料理を……どうするって?」

 

「え、いやだからハンマーで砕いて、レシピを習得しようかと……」

 

変な事は言ってないはずなのにルミの纏う雰囲気が更に冷たくなった。――どして?

 

「――ふぅ。貴方の世界ではどうかは知らないけど、普通そんなやり方で料理のレシピなんて覚えられないからね?それに、あたしの料理をそんな粗末な扱いをするのは……ちょーっと許せないかな」

 

「……すまない。ノースティリスではそれが普通――というか、そうやって覚える事も出来るからつい……」

 

「レシピならあたしが直接教えてあげるから、もうそんな事しちゃダメだよ。分かった?」

 

「はい……」

 

「うん、よろしい」

 

 

キヴォトスの常識が分からねぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん~!ドラゴンのお肉ってすごいね!赤身の部分は筋肉質でしっかりと弾力がありながらも硬すぎなくて、脂身の方はびっくりするくらい柔らかくてすぐに口の中で蕩ける……かといって脂のしつこさはこれっぽっちもない。これ、もしかしなくてもかなり高級品じゃない?」

 

「そう言われると店でドラゴンの肉を使った料理って見た事が無いような気がするな……」

 

「だよねぇ。ちょっと高級志向が強すぎてうちじゃ合わないかな。本当に美味しいんだけどね」

 

まずは素材の味を確かめてみるべく軽く火を通しただけのドラゴン肉を味わっていたのだが、総評としては微妙そうだ。筋力を育てるならドラゴン肉は絶対に欠かせないのだが、店の雰囲気と合わないなら仕方がないか。

 

「変わり種だがこれはどうだ?プチというモンスターの肉なんだが」

 

そう言って肉を取り出す。

先程のドラゴンの肉とは違い透明で、見た目だけならただのゼリーだ。実際に軽くつついてみせるとプリンの様に小刻みに揺れる。

 

「これはまた、面白そうな食材だね。お肉にはとても見えないけど」

 

「間違いなく肉ではあるがゼリー質でな。見た目通りコラーゲンが豊富だから、肌の調子が良くなって魅力が上がるぞ」

 

「――へぇ~」

 

反応こそ平坦だが肌の調子が良くなるという言葉に目を光らせている。

やはり女の子にはこういうのが効くか。本気で魅力を上げたいのなら妹猫の肉を使うのが良いんだが……猫を、ましてや妹を食べるなど言語道断だ。決して許される事では無い。

 

「あ、美味しいね。食感も面白いしこれはアリかな。――ちょっと閃いたかも」

 

そう言うや否や、私の持ってきた食材を幾つか取り出して厨房に立つルミ。特に干渉する理由も無いので私は信仰焼きでも食べながらルミの動向を見守る事に。

 

「はい、出来たよ」

 

そう時間も掛からず一品目が完成し、テーブルの上に完成品が置かれる。

四角く形成されたプチの肉の上に万色フルーツが上に添えられているという至ってシンプルな見た目。甘さを足す為かシロップの様なものが掛けられてはいるが、見た感じだとこのプチの肉は火を通していないな。

 

「食感はゼリーそのものだったから、いっそのことデザートとしてそのまま使えないかなって」

 

なるほど。ゼリーだからゼリーとして出してみる、というのはシンプルながら独創的な発想だ。少なくとも私がプチの肉をデザートに使おうなどとは思いつきもしなかった。★コック帽があればあるいは、といったところか?

 

「食べてみてもいいか?」

 

「もちろん。あたしも気になるから食べようかな」

 

二人でルミの作ったゼリーを掬って一口頬張る。

 

「……なるほど」

 

「これは……」

 

「「微妙だな(だね)」」

 

これに尽きる。

確かにゼリーとして楽しめなくはないのだが、プチの肉そのものはかなり淡泊なせいで無味に近い。ではシロップと万色フルーツを一緒に口へ運ぶと、今度はシロップと万色フルーツに味が塗り潰されてしまってプチの肉を使う必要性が無くなる。これなら普通に万色フルーツを材料にゼリーを作った方が上等な物が出来るだろう。

 

「発想は悪くないと思うんだがな……」

 

「中にフルーツを混ぜ込めたらもう少し変わるかもしれないけど、一応これお肉だからそういう事も難しそうだし」

 

「そういう事なら、いっその事ミンチにしてみるのはどうだ?そうすれば果肉を混ぜられるんじゃないか?」

 

「……アリかも。ちょっとやってみよっか」

 

それから二人でああでも無いこうでも無いと試行錯誤を重ねていった。

最初こそ調理の方はルミが担当していたが、試行を重ねていく内に次第に私もルミと一緒に厨房へ立って調理を一緒にこなしていた。そうして―――

 

 

 

 

「「出来た……!」」

 

目の前に置かれているのは透明なコップに入れられた一杯のフルーツジュース。

それにはストローが差し込まれており、コップの底には小さな球体の粒が幾つか沈んでいる。

 

「よし、では試食――ではないな。試飲してみるか」

 

私の合図と共に二人でフルーツジュースを飲む。ストローで吸うとジュースと共に小さな球体も一緒に口の中へと自然と入ってくるが、噛んでみるとこれが中々良いアクセントになっている。

 

「……美味いな」

 

「だね。無理にプチのお肉を主役にしようとしなくて良かったんだ。あくまでアクセントとして使うのが正解だったなんてね」

 

分かっていた事ではあると思うが、この球体はプチの肉だ。

淡泊なプチの肉では味付けにはどうしても限界があった。なのでいっその事開き直ってプチの肉そのものには味付けをせず今回のジュースの様に使ってみたのだが、ルミの言う通りこれがプチの肉としての正しい使い道だったのだ。

 

「名付けるなら『万色プチジュース』ってところかな」

 

うーん、安直。

 

「良いと思う。この出来ならば人気が出るんじゃないか?」

 

「うん、なんたってあたし達で考えて辿り着いた料理だからね。いや、料理じゃなくて飲み物なんだけど……」

 

こればっかりは仕方がない。試行錯誤を繰り返している内に本来の目的から逸れるというのは往々にしてよくある事だ。それに飲み物もこれだけ独創的な工夫を凝らせば十分料理と呼べる域にあるだろう。

 

「それにしても、まさか貴方がここまで料理が出来るなんて思わなかったよ。って、この言い方は失礼だったね」

 

「問題無い。料理に関してはそれなりってところだな」

 

あまりに料理の腕が低いと食材の良さを活かしきれずに品質の高い料理が作れないからな。食事効果を最大まで高められる程度までは料理スキルも上げてはいるが、逆に言えばそれ以上は能動的に上げる事はしていない。なのでルミの様に料理に生きる者には及ばない、というのが私の所感だ。

 

「謙遜するねぇ。玄武商会でも貴方なら即戦力だよ?いっその事ここで働いてみない?」

 

「悪くない話だが、生憎と何でも屋や風紀委員会の事もあるからな」

 

「だよねぇ……残念、貴方と料理作るの楽しかったんだけど」

 

「それは私もだよ。こうして誰かと料理を作るなんて機会は殆ど無くてな。中々に新鮮だった」

 

ノースティリスでは一人で無心で料理を作るだけだったし、ゲヘナでは給食部の手伝いをする事はあれども、あれは作る量が多すぎて料理というより最早作業だ。

 

「代わりと言ってはなんだが、君さえ良ければ時間が合えば今日の様な試作に付き合うぞ」

 

ルミの独創的な発想には驚かされてばかりだった。これからも付き合っていけば私も新たな着想が得られるかもしれない。

 

「……ふーん、言ったね?じゃあこのまま二品目も作っちゃおっか」

 

え、これから?

 

「だってさっき出来たのは飲み物だし、料理はまだでしょ?それにまだまだ使ってない食材はあるんだから使わないと勿体ないしさ。――付き合ってくれるんでしょ?」

 

「――分かった、乗り掛かった舟だしな。いくらでも付き合おう」

 

「ふふっ、今日は帰さないよ?……なんてね」

 

 

それは勘弁して欲しい。キサキに会うのが遅れてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――して、他の女子に現を抜かして妾の元へ来るのが遅れたと」

 

はい……って言いにくいなこれ。どうしよう。

結局あれから試作は日暮れまで続き、キサキの元へ来れたのは完全に日が沈んでからの事だった。

 

「よりにもよって相手がルミとはの。あやつには妾から言って聞かせておくべきかの」

 

あぁ、そういえば昔馴染みだとルミが言っていたか。

 

「えっと、一応聞いておきたいんだが、何を……?」

 

「妾の物に手を出すなと」

 

あれ、キサキが私の物ではなく……?いや別に良いんだけれども。

だがそこまで神経質にならなくとも良い気もする。仲良くなりはしたが、それだけだ。残念ながらペットにするなんて話にはならなかったからな。

 

「あくまで今日は依頼の一環だったし、そう何度も会う機会は無いと思うぞ」

 

……多分。

 

「ふむ……今日の所は許そう。じゃが、其方には埋め合わせはしてもらわねばな?」

 

「無論だ。予定はもう無いからこの後の時間は全部君の物だ」

 

「ふふっ、ならばよい。ほれ、近う寄れ」

 

呼ばれるまま隣へ腰かけるとキサキは私の肩へ寄り掛かる。

暫しその体勢のままキサキと言葉を交わしながら、静かな時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

それから数日後、サヤから連絡が来た。

 

 

「お師匠様……ごめんなのだ。お師匠様から貰った不老の薬が、盗まれちゃったのだ……!」




イルヴァ豆知識
・すくつ
言わずとしれたelona・elinにおけるエンドコンテンツ的ダンジョン。
廃人の代名詞でもあるすくつだが、elinにおいてはここにずっと潜る人ってそんなに居ないんじゃない……?そこらのネフィアに潜った方が圧倒的に名声上げの効率良いし……。
ユニークがボスとして登場しないのも痛い。早くアプデ来てくれー!


ゲヘナに住んでいて尚且つノースティリスの食材を扱うんだから給食部を巻き込んで美食研究会とわちゃわちゃする回を挟もうかと思っていたのですが、今回のルミの回と被る部分が多いなとなって断念しました。いずれ美食研究会にご馳走する回も書きたいが、機会があるかどうか……。


後数話で山海経は一区切りの予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。