絆創戦隊キズナファイブ THE MOVIE 電脳ワールド大決戦!! 作:大荒鷲
多数の光線が流星のように飛来する。光は大地を、建物を閃光と共に吹き飛ばした。
それを放った者達――ハサミのような仮面をつけた奇怪なヒトガタの群れが武器を手に迫ってくるのが見えた。
爆発の隙間を縫うようにして逃げ惑う人々が20人ばかり。だがその姿は明らかに幼い。みな色とりどりの髪をして、光のラインが走ったSFチックな衣装を着ているが一番背の高い少年でも小学校高学年くらいだ。
それぞれ手に剣や盾を持っていたがとても迫りくる怪物共と戦うどころではない、四方八方から飛んでくる火焔や電撃から逃れるので精一杯だ。
仮面の兵士は軍隊のように統率の取れた動きでゆっくりと進軍してくる。そしてそれらを率いるかのように、空では禍々しいオーロラと共に巨大な影が高笑いを上げていた。
『フハハハハハハハッッッ!!なんだ、逃げるばかりか?もっと俺様を楽しませてくれるモノはいないのか!?』
影はそう言うとハエでも払うように腕を振った。するとそれに応じて血のように赤い電撃が多数、一帯に降り注いだ。閃光と轟音に子ども達が頭を抑えて悲鳴を上げた。
『そう……その声だ!!見苦しく恐怖に震えて鳴くがいい、下等生物どもっ!!』
愉快でたまらないとばかりに吠える影、そしてなおも迫りくる兵士たちの姿に子どもたちは絶望し、うずくまるしかなかった。
だがその時――。
何かが自分達の頭上を飛び越えるのが見えた。最初に赤色――次いで青、黄、緑、桃色のコスチュームを身にまとった5人の人影が迫りくる怪物に向かっていく。
その姿は――まさしくヒーロー。子どもたちは呆然と呟いた。
「――“キズナファイブ”!」
R.B.Y.G.P.
まさに子どもたちの目前にまで迫っていた怪物の群れの前に燃える炎のような、真紅の戦士――キズナレッドが降り立つ。その姿に仮面の兵士たちがたじろいだように手にした槍状の武器を構えた。
明らかにこの「世界」には不釣り合いなその姿……。ヤツらの正体はよく知っている。秘密結社“ゼツエンダー”の戦闘員・エンガチョンだ。まさかこんな所にまで現れるとは……。
「せっかくのイベント、ジャマしやがって!これ以上はさせないんだぜっ!!」
熱く、激しくキズナレッドは怪物共に拳を突き出してそう宣言する。ここからは先は一歩も通さない……という強い意志がそこには込められていた。
「全く。実に無粋というモノでありますな」
「先生的には放っておけないのよねぇ、こういうの!」
レッドに続くように緑のコスチュームをした厳つい体格の戦士とスラッとした細身の黄色の戦士が並び立つ。キズナグリーンとキズナイエロー。既に戦意は十分だ。
「ちょっと~……先パ~イ…」
「おい待てよ――」
闘士を燃やす3人の後ろにいる二人――キズナピンクとキズナブルーは何故か浮かない声。ブルーがレッドの肩をそっと掴もうとしたが、それよりも3人がエンガチョンの群れに飛び込んでいく方が早かった。レッドが拳を硬く握りしめて、思いっ切り振り上げた。
「先手必勝!バーニング…キズナパァァァンチッ!!」
キズナレッドの十八番技。燃え盛る熱き拳はどんな敵をも貫き、焼き払う……筈なのだが…。
放たれたパンチが確かにエンガチョンの頭部を捉えた。だのにマトモに攻撃を受けた筈の戦闘員はまるで痛みでも感じていないかのようにすましている(表情があるわけでもないのに)。
「……アレ…?」
レッドは首を傾げた。そう言えばいつもなら腕のブレスを操作した時に鳴るシステムボイスもないし、拳が炎に包まれることもなかったような……?
そんな事思ったのも束の間、殴られたエンガチョンは「エンガ~~!」と奇声を発して持っていた槍をレッドに叩きつけた。直撃した箇所から火花を散らして吹き飛ばされる。
「痛ってぇ~……なんかおかしいような…?」
ダメージを受けた箇所をさすりながらレッドは呻いた。そう…
ふと周りを見ると。グリーンは自慢のパワーをいつもより発揮出来ていないようでエンガチョンの大群に明らかに押し負けていた。槍を奪って振るっているがどこか動きがぎこちない。対してイエローは……ヘッドバッドしたりケンカキックしたりとなんだかやけに戦い方が荒々しい。ありゃあヤン時代のくせが出てるな……。
「ナニやってんですか先輩!」
ピンクが駆け寄ってきた。何故か見慣れないデザインの剣と盾を装備している。
一方グリーンとイエローの方にはナギナタのような武器を持ったブルーが助太刀に入っていた。始めて使う筈の武器をブルーは華麗に振るって的確にエンガチョンたちを薙ぎ払っていく。が……やはり効いている様子はあまりない。倒しても倒してもすぐ起き上がり、また戦いに参加する様はさしずめゾンビだが、いつもよりなんだか動きもキレが良い。
「……クッ…。何がどうなってんだぜ…」
間違いなく敵はいつもより強くなっており――逆に自分たちはいつもよりパワーダウンしている。握手カリバーやターボ円陣といった武器も出せないし、必殺技も発動しない。ブレスの調子が悪いんだろうか……?
「当り前じゃないですか!ここがどこかだか忘れたん――」
ピンクが呆れたように何か言いかけた次の瞬間。仲間たちと戦っていたエンガチョンの群れがさっと左右に飛び退いた。まるで道を作り出すかのように。
「――ヤバい…!みんな下がるんだぜ!!」
咄嗟にレッドは叫んでいた。
果たして開かれた道の向こう。その先には2体の怪人――絶縁魔が立っていた。しかもその内一体の方は……!絶句したレッドの事など気にもせず、絶縁魔はそれぞれ両手から光線を発射した。そしてその射線の向こうには――エンガチョンたちによって追い詰められた子どもたちの姿がある。
させるか――!!
みな考えた事は同じだった。理屈ではなくそうしなければならないと本能が命じるままに、光線の射線上に立ちはだかる。
狙い通り光線は全てキズナファイブに突き刺さった。スーツの各所からスパークが飛び散り、余波が周囲に巨大な火柱を作り出す。マトモに直撃した5人の姿が爆炎に呑まれた。
子どもたちから悲鳴を上げる。
「……ぐうぅぅ………」
爆炎が晴れた時、その場には力なく地面に横たわる5人の姿があった。そこでダメージが限界に達したのかスーツが消失する。
キズナレッドに変身していた少年――浅垣灯悟は呻きながら顔を上げた。勝利を確信したのかエンガチョン共は槍をかかげてピョンピョン飛びはね、2体の絶縁魔がゆっくりとにじり寄って来る。空では依然この場を支配する例の影が高笑いを上げていた。
不意に視界の端で何かが光り、同時に不安をあおるような不気味な電子音が鳴り響いた。目を向けるとちょうど自分のすぐ左側、目線辺りに長方形のバーが浮かんでいた。それの上には「RED:HP」の文字。そして今バー内のメモリが急速に減って行き、残り1割といったところで止まった。バーは血のように赤く発光し、明滅を繰り返していた。
いくらこの手のモノにはあまり詳しくない灯悟でもハッキリと分かる。これはこの“世界”における危機表示――すなわち「死」が迫っているという警告だ。他の4人にも同様のものが浮かんでいる。
自分に見えるということは間違いなく後ろにいる子どもたちにもこのアラートは見えているはずだ。振り向かなくとも子どもたちが恐怖に呑み込まれそうになっているのが分かる。
立たなきゃいけない。でも死ぬわけにもいかない……。矛盾した想いを込めて拳を握る灯悟の背を誰かが踏みつける。
顔を上げるとそこには先程の絶縁魔の1体がこちらを見下ろしていた。仮面で覆われているせいで目元の表情は窺えないが、覗いた口元はニヤニヤと這いつくばるこちらをあざ笑っている。
「ウキャキャキャキャキャッ!!ブザマブザマ、ブ~ザ~マ~ねぇキズナレッドさん?大好きなキズナのチカラが使えないって今ど~んなキブン?クヤシい?カナシい?それともオコッてる~~?」
こちらを煽るように絶縁魔は早口でそうまくし立てる。しかし灯悟は不思議と怒りは湧いてこなかった。ただその姿――金色の髪をなびかせ、黒いドレスをまとい、各所をベルトのような帯で締められた――に胸が傷む。
「――ベル――――!!!」
自分のではない、だがここにいる誰かの哀しそうな声が木霊した。
R.B.Y.G.P.
何故こんなことになったのか。事態は1日前にさかのぼる。
「《ネバー・ネクサイト・オンライン》?」
拠点である万丈寺グループ本社地下に呼ばれたと思ったら告げられたその聞き慣れない名前に灯悟は首を傾げる。
「正しくは《ネバー・ネクサイト・オンライン:ネオ・ネーション》だ」
この部屋の主である青い髪の青年――万丈寺流が眼鏡を直しながら訂正する。そんなこと言われても「Nばっかりだな……」という感想しか出てこない。なんだよソレは…?
「え、先輩まさか知らないんですか?」
「子どもから大人まで皆やってるわよ」
「…自分も名前ぐらいは知っているであります」
そのリアクションがよっぽど衝撃だったらしい。同じくその場にいた愛沢ツカサ、飛星エミリの二人が揃って素っ頓狂な声を上げ、堅岡修二は言いづらそうに手を上げた。どうやらマジで自分だけなんにも知らないらしい。
流は溜息を吐くと、ヘッドギアのような機械を取り出して机の上に置いた。さすがにこれは知っている、《ダイブオン》とかいうVRゲーム機だ。義妹の澄香が持っている。
「そうか、つまりゲームか!」
ようやく得心がいったと手を叩く灯悟――だが何故かすさまじい剣幕になった流とツカサとエミリが「「「ち~が~う!!!」」」と大声で叫んだ。なんか怖いんだけど……。
「……良いか灯悟、ただのゲームだと思って舐めてると
ゲーム機を手に持って常ならぬ気配で迫って来る流。
「え?え?えぇ…?ナニしたんだよブルー……」
「百聞は一見に如かず、だよ。見てきた方が早い」
流の宣言と無機質な電子ボイスが『Dive Start』と呟いたのがほぼ同時。リアクションする間もなく灯悟は体が何かに引っ張られて浮遊するような感覚を味わった。
R.B.Y.G.P.
『ようこそ《ネバー・ネクサイト・オンライン》へ!ここは完全なもうひとつの“世界”です。戦うことも探検することも町を作ることも……全てがあなたのおもうがまま。さぁ、冒険に旅立ちましょう!!』
最初に認識したのはその声だった。いかにもゲーム的なシステムボイスではなく、軽やかで聞いている者の心をほぐしてくれるようなそんな……。灯悟はうっすらと目を開けた。
「……おおっ…!!」
かくして眼前に広がっていたのはどこまでも続く壮大な世界。灯悟はそれを小舟のような形をした雲の上から眺めていた。どこまでも青く澄み切った空には大小の岩が島のように浮かんでおり、それらを虹の橋が繋いでいる。それより下にはやはり草原に森、湖や山脈が連なる大地が広がっていた。明らかに現実ではあり得ない、しかしあまりにもリアルなその光景に灯悟はただただ圧倒されていた。
「スッゲエ……なんだぜここは…!!」
「お気に召していただきましたか?」
興奮してあちこちを眺めていたら不意に背後からそんな声が聞こえた。灯悟は驚いて後ろを振り向く。
いつの間にかそこに一人の少女が立っていた。年は灯悟と同じか少し上くらいだろうか…腰のあたりまで伸ばした水色の髪に金色に輝く瞳。薄い白のドレスを身に着け、軽やかな笑みを浮かべるその姿は、この世界と同様どこまでも非現実的で美しい。
「申し訳ありません、驚かせてしまいましたね。わたくしベル・シンクと申します、気軽に“ベル”とお呼びください。この世界であなたのサポートをさせていただきます」
いろいろ目を奪われかけていた灯悟をよそに少女――ベルが手を差し出す。それが意味するところはひとつ、灯悟は迷わずその手を取った。
「おう、よろしくな!俺のことは……“レッド”って呼んでくれ!」
握手は良い。互いの手と手を繋げあう、たったそれだけの動作で絆を結べるから。
「承知しましたレッドさん。それではまずはこの世界を案内いたしますね」
その言葉と同時にベルの身体がふわりと浮き上がる。当然灯悟も一緒にだ。驚いたのは一瞬のこと、飛べると感覚的に分かった瞬間、とにかく心が躍った。
「飛べるのか……!すごいんだなこの世界は!!」
「驚くのはまだ早いですよ。いろいろなワクワクがこの世界には詰まってますから!」
ベルは声を弾ませながら、誇らしげに笑ってみせた。
R.B.Y.G.P.
『ここは光の惑星《ネバーライト》。どこまでも広がる大地と浮遊する島、そしてあちこちに眠る地下迷宮(ダンジョン)から成ります。高峰から極地、砂漠に海の底と様々なフィールドはすべてシームレスに繋がっています。
そしてこの世界には様々な生き物、そして「ファイアーズ」「ウォーキュリー」「ビートール」「アーグリン」「サクラノス」という5つの種族が住んでいます。あなたはまずこの種族のどれかを選択して、基本的にはそこの仲間たちと行動を共にすることになります。
目指すは世界の中心、《ヴェスペル・マウンテン》、そしてそこから地下に拡がっている神秘の超古代遺跡《ナラク》です。そこに住まう古の深き魔族を討伐した種族こそがこの星の王族となり、大いなる力を得ることが出来るのです。
さあ、あなたも仲間と共にこの雄大な世界の旅に出ましょう!!』
「分かったろう、ただのゲームじゃあないんだってことが」
ひとしきりベルからゲームの世界観に関するナビゲートを聞き、自分の種族を選択した後(因みに灯悟はファイアーズにした。燃えるような響きがなんかカッコいい)、灯悟は既にこの世界にきていた仲間たちと合流した。4人ともすでにアカウントを作成していたらしい。それで今チュートリアルを終えたばかりの灯悟の前で流がドヤ顔を向けている。
「ああ!これはもう、完全な異世界だぜっ!!」
ただのゲームではない、彼がそこまでいう理由も分かるというものだ。従来のテレビゲーム機はおろかVRゲームともまるで違う、まるで本当にゲームの世界にダイブしたかのような感覚。ネバー・ネクサイト・オンラインというゲームそのものもこのハードに見合うだけのグラフィックや世界観を持っており、タダモノではないと思わせてくれる。
満足したように流が微笑んだ。いつもキザったらしい笑みかクールな表情でいることが多い彼にしてはやけに優し気な表情だ。
「そういってくれて嬉しいよ。NNOもダイブオンも高校時代の友人が作ったモノなんだ…。ここはアイツの夢の集大成だからな」
その友人は今このゲームを作ったメーカーでエンジニアをやっているのだそうだ。皆が等しく楽しんで笑顔になれるゲームを創り出す、それが彼の夢なのだとか。
「なるほど、ブルーの絆が繋いでくれたわけか」
「意外と友達想いですよねブッチョさん♪」
感心する灯悟に対してツカサは目を細めてシシッと笑った。
「まぁ絆ついでだ。なんでこのゲームの話をしたのかというとな……」
流は照れたようにはにかんだ。その言葉の続きはベルが引き取る。
「この度ネバー・ネクサイト・オンラインはサービス開始3周年を記念して、より一層グラフィックやアクション性を強化して《NNO・ネオ・ネーション》へと生まれ変わります。その世界初となる先行プレイ大会が明日開催されるのです、ゲストは星元小学校の児童さんたちになるのですが……」
「……ですが?」
思わせぶりな間に流以外の一同が首を傾げる。ベルはいたずらっぽく舌を出して微笑んだ。
「なあんと!実はスペシャルゲストとしてキズナファイブの皆様にイベントモデレーターを努めていただきた、というわけなのですよ!!」
どうも、お久し振りです。「誰だお前は?」と思う方は初めまして。
久し振りの作品投稿になります。タイトルですでにピンと来ている方もいると思いますが、本作は「戦隊レッド 異世界で冒険者になる」、その前日譚である「絆創戦隊キズナファイブ」の二次創作になります。
キズナファイブの方は作中で出来る限りの説明をしてるつもりですし、異世界レッドからの登場人物は(灯悟を除いて)登場しませんので、原作未読の方でも楽しんで頂けると思ってます(読んで興味持ったらぜひ原作を!)
まだ語りたいことは一杯ありますが、あんま長々やっても意味ないのでそれは後ほど。