絆創戦隊キズナファイブ THE MOVIE 電脳ワールド大決戦!!   作:大荒鷲

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QUEST2~3『ようこそネバー・ネクサイト・オンラインへ!(承前)』『忍びよる企み』

R.B.Y.G.P.

 

 

 3ヵ月くらい前、この世界に宇宙からの侵略者が現れた。

 

 その名は「宇宙秘密結社ゼツエンダ―」。マルチバースの知的生命体が互いに他者と繋がり合った際に生じるとされる未知の力――「絆エネルギー」を奪い、幾多の星を滅ぼしてきた。簡単に言うと人同士の関係性を壊すことを目的とした非常に悪辣な組織だ。

 

 だがその出現を10年以上前から予見していたペタゴラス博士という科学者がいた。彼はとある企業の協力を得ることでゼツエンダ―に対抗し得る装備を開発し、この日のためにそれを使うことの出来る人間を見出した。

 

 博士のパトロンである万丈寺グループの御曹司であり、絆エネルギーの研究にも取り組む若き社長、万丈寺流。

 

 昔の恩師との約束を果たすために教員の道を志した泳頭高校の教師、飛星エミリ。

 

 自称グリーンベレーの工作員、実際はサバゲ―好きの大学生、堅岡修二。

 

 運命の相手を探し求める恋愛脳なギャル……な愛沢ツカサ。

 

 この4人に加えて人一倍絆を結ぶことを求める高校生・浅垣灯悟。誰よりも強い絆エネルギー、「ビッグ絆ソウル」を持つ5人の若者が紆余曲折あって選ばれた。

 

 各々が胸に秘めた絆の“色”を身にまといし、ヒーローチーム。それが「絆創戦隊キズナファイブ」だ。

 

 

 

 そういうわけでゼツエンダ―との戦いに日々身を投じる灯悟たちなのだが、実は任務は他にもある。

 時折開催される交流会――という名のヒーローショーに出ることだ。

 

 セッティングを行うのは万丈寺グループなので、主にそこが保有しているテーマパークで行われることが多めになっている。

 なんでそんなことするのかと言われれば、絆エネルギーは人と人との強い結びつき、特に特別な感情の動きや強い思い出から生まれる。それを糧に戦うチームとしては多くの人々と日々絆を結んでいくことは悪と戦う以上に大事だからだ、信頼あってこそヒーローはヒーロー足り得る。

 実際子どもたちにはなかなか好評だ。大人たちは初めこそ怪しんでいたみたいだが、最近はキズナファイブの活躍が知られるようになってきたこともあってだいぶ受け入れられつつある。最もそれはすなわちゼツエンダ―の被害が確実に増えているということでもあるのだが……。

 そういう事情があるので今回の話もその一環ということなのだろう。イベントモデレーター――要するに司会をやれという話だ。

 

「明日のオープニングセレモニーはゲームにログインした状態で行われます。そこで特別ゲストとしてキズナファイブの皆さまに登場いただきたいのです。その後はフリープレイとなるので終了まで自由に、児童の皆さまと交流を深めて下さい」

 

 因みにキズナファイブの登場はサプライズ扱いなのでそれまでは口外禁止、とのことだ。そう言われた時何故かエミリがもの凄~~く険しい表情で灯悟の方を睨んできた……。

 

 もちろん灯悟としては異論はない。こういう絆を結ぶ機会は人一倍大好きだし、なにより少しやっただけでもこのゲームがかなり楽しいことは理解出来た。仲間(ブルー)の友達の夢――この世界は多くの人たちを笑顔に出来る可能性に溢れている。それを伝えるために出来ることがあるならなんでもするつもりだ。流以外の3人も同じ気持ちで頷いた。

 

「任せてくれ!みんなで明日のイベント、最高の思い出にしようぜっ!!」

 

 一同が快哉を上げた。

 

 

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 そして翌日。

時刻は9時57分。ネバー・ネクサイト・オンライン・ネオ・ネーションの世界最速プレイイベントの始まりが迫っている。

 

 特別ゲストとして呼ばれたのは都立星元小学校の児童20人。それぞれがダイブオンを使用してゲームにログイン後、ネバーライト上空に浮かぶ特設ステージに召喚された。本来なら眼下に広がっているはずの世界は闇に閉ざされて、まだ見えない。年齢や振り分けられた種族・持っている装備はバラバラだがその顔は一様に期待と興奮に満ちている。

 

 そして上空に浮かぶ巨大な大時計が午前10時の時報を告げた瞬間、世界一面が急速に明るくなり、浮島間に虹の橋が架かっていく。陽光に照らされた大地に眠る5色のクリスタルが輝き出し、世界を美しい光に染め出した。

 光の惑星、に恥じないその輝かしい世界に子どもたちが歓声を上げた。

 

 そしてそれと中央に据えられたステージに魔法陣のような光のポータルが出現したかと思うと、今度はそこをくぐって5色のスーツを着た戦士たちがこの世界に飛び出した。

 

「キズナファイブだぁ!!」

 

 児童の誰かが叫んだのを皮切りに会場に先程以上の大喝采が響き渡る。特に比較的幼い年の男の子たちからの声は割れんばかりで、どうやらサプライズは無事成功らしい。バイザーの奥で一同は安心したように微笑んだ。レッドが出現させたマイクを手に取る。

 

「みんな、ようこそネバーライトへ!俺は絆創戦隊キズナファイブのキズナレッド、気軽に“レッド”と呼んでくれ!!」

 

 お決まりの自己紹介に子どもたちが「知ってるーーー」と合いの手を飛ばした。苦笑しながらブルーが続きを引き取った。

 

「今日はこのイベントに参加してくれてありがとう。以前のバージョンを遊んでくれていた子も今日が初めてだという子も、目一杯楽しんで欲しい」

 

 お決まりの流れで次にイエローにマイクを引き取らせようとするが、それよりも早く、待ちきれないとばかりにピンクがマイクをひったくってしまった。

 

「ちょっと……!」

「ちなみに~私は前から結構やり込んでたんで、今回のリニューアル、すっごい楽しみにしてました!!なので私自身も今日は思いっきり楽しんじゃうつもりなんで、みんなも一緒に遊んでくれたら嬉しいなっ♡」

 

 妙にあざと可愛いピンクの振る舞いに、特に男の子たちから黄色い声が上がった。全く子どもと言えど男ってのは……。イエローはバレない程度に溜息を吐く。とは言え一気に場内の心を掴んでみせる辺りさすがコミュ強者…。気を取り直してマイクを引き取ろうとしたら今度はグリーンにひったくられた。

 

「……おい堅岡ぁ…」

「みんな、この世界にもいろんな危険があるから。ルールを守ってみんなで仲良く遊ぶように!破ったらこのおっかないイエローさんに怒られるであります!」

「私をネタにすんなぁっ!!!」

 

 妙なことを言い出すグリーンにドロップキックを叩き込むイエロー。ド突き漫才同然のやり取りに子どもたちが大爆笑した。なんか釈然としないがひとまず掴みは上手くいったということで良しとするか……。イエローはそう言い聞かせながら今度こそマイクをもぎとった。

 

「というわけで……限られた時間だけど楽しんでね。遠足はログアウトするまでが遠足よっ!!」

 

 子どもたちが元気よく「はーーーい」と手を上げた。なんかそれっぽくまとめられたようなので教師としてはまぁ良しとしよう。

 

 

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 そこから1時間。確かに夢のような時間だった。

 

 子どもたちはフィールド中に散らばって各々でチームを作って遊んでいる。草原エリアで雑魚モンスターを討伐したり、ダンジョンを探してそこに探検に行ったり。変わったのだと釣りをしたり建物を造ったりと楽しみ方は本当にそれぞれなようだ。

 流石に教師みたいに各生徒たちの引率をすることは物理的に不可能なので、レッドたちキズナファイブ組は定期的にフィールドを周りながら子どもたちの様子を見て回っている。まぁピンクことツカサはノリノリで遊びまくっているようだが。

 

 世界はいたって平和だ。少なくともレッドはそう思っていたのだが……。

 

「なんだアレ…?」

 

 草原フィールドの丘の上で周囲を見ていると、同じフィールド内であるある一団が剣を交えているのが見えたのだ。多分5~6年生くらいの子どもたちが6人、赤い髪のファイアーズと黄色い髪のビートールの種族にくっきり分かれている。

 

「ヤバッ……ケンカか!?」

 

 ゲーム内でケンカすると派手なことになるんだな…どうでも良い感想を抱きながらも、とりあえず止めなければとレッドは飛び出そうとしたが……。

 

「やめとけ、そんなんじゃない」

 何故か横で見ていたブルーに止められた。「なんでだよ!」と抗議すると呆れたように息を吐かれる。

 

「あれもれっきとしたゲームの仕様さ。このゲーム、PvPが出来るようになってるんだ」

「ぴーぶいぴー?」

 また意味の分からない単語にレッドは首を傾げた。

 

「それについては私から説明いたします」

「のわっ!!」

 すると突然レッドの横にベルが煙のように出現した。レッドは思わずのけ反って飛び上がる。

 

「PvP……即ちプレイヤー・バーサス・プレイヤーという意味です。簡単に言うとNNOはプレイヤー同士で対戦をすることが可能なんです」

「要するにサバゲ―みたいなものだな。チームに分かれて勝敗を競い合うんだ」

 それならレッドでも知っている。グリーンこと修二に連れられて何度か見学に行ったことがある。

 

 そう言えば、とレッドはこのゲームの設定を思い出す。この世界の5種族は各地に自分達の領土を持っており、戦闘や開拓といったミッションをこなして、これを拡大することが出来る。最終的には地下に眠るとされる古の種族を討伐して……というのが目標。つまり各種族はライバルであるというわけだ……。

 

「負けた方はどうなるんだ?」

「基本的には降参するか、全滅するかで勝敗が決まりますね。負けた方は事前に賭けたスキルやアイテムをドロップして、領土内から再リスポーンになります。時に領土を賭けたアルティメット・コンクエストなる戦いも開催されることもありますよ」

「……なんてーか意外と殺伐としたゲームだなぁ…」

 

 人間は今のように1箇所に定住するようになってからその土地を巡って争い合うようになったと言われているが、まさかこんな世界でも土地問題でケンカしてるとは……。

 

「まぁそこもゲームの醍醐味ですから」

 ベルが目を細めて苦笑する。

 

「スポーツだって相手のチームと競って点を取り合うでしょう?“戦い”というと眉をひそめる人もいますけど、あくまでも決められたルールに則って、命のやり取りをせずに行うという点ではそれと何も変わらないですよ」

「そう言えばそうか」

 

 至極ご最もな言い分。確かにゲーム内でHPがゼロになればゲームオーバーだがそれは現実における本当の死とは違う。何度も復活してチャレンジできるのがゲーム世界の強みだ。

 

 この“世界”では何があっても絶対死ぬこともケガすることもはない……。そう考えれば実はスポーツよりも遥かに安全だとすら言える。

 

「つまり戦うことも時には絆だってことか……!」

「……なんか違う気もするがな、それはそれで…」

「良いじゃないですか、それで生まれる仲もありますよ」

 

 なにやら明後日の方向に解釈を飛ばしたレッドを微笑ましくベルは見ている。“彼女”に与えられた役割はこの世界にログインしたプレイヤーたちが心から笑顔になってゲームをプレイ出来るように支えることだ。それはAIとしての“彼女”が持って生まれた使命なのだろうが……その瞳にはそれだけでは収まらないような…そんな色があるようにブルーには思えた。

 

 その時だ。青い空にふと、奇妙なエフェクトが走ったのが見えた。赤黒い、稲妻のような……どこかこの世界にはそぐわない不吉なノイズ。この場にいた3人だけがそれに気が付いた。

 

「……今なんか変なのが見えなかったか…?」

「あぁ……以前はあんなのなかったはずだがな…」

「気候エフェクトでしょうか……?それにしては妙でしたが…」

 

 時間にすればほんの一瞬の些細な異変だったが、この世界は天候もモンスターの動きも、プレイヤーの行動以外の全てがシステムによって管理されているのだ。そのシステムに近い場所にいるベルが知らないということはつまり、何かしらのバグやトラブルが発生した可能性がある……ということだ。

 

「とにかく運営の方に確認してみます」

 

 ベルはそう言ってメニューウインドウを掌の上に出現させた。プレイヤーのそれがあくまでレベルや獲得アイテム、メッセージなどの確認を行うUIであるのに対して、ベルが使用しているのは運営サイドとコンタクトを取るための緊急通信機能が備わっている。

 

 しかし次の瞬間、再び空に稲妻が閃いた。先程よりも更に長く鮮明に――より禍々しく。

 追い打ちを掛けるように更に僅かな時間をおき、三度の雷鳴が奔りぬけた。まるでネバー・ネクサイト・オンラインというこの世界の有りようを変えてしまうかのように。

 

 

R.B.Y.G.P.

 

 

 二度目の雷光はレッドたち以外も気が付いていた。サクラノス族の領土中心部の街にいたイエローとグリーン、そして一緒にいた数名の子どもたちもそれをはっきりと見ていた。

 

「なに今の……?」

「なんかイヤな感じですな……」

 

 イエローはそこまでドップリでもないが以前よりこのゲームをプレイしていたから分かる。ああいう空模様はこれまでのNNOにはなかったし……それになんだか低く唸るような不気味な空鳴りといい、凡そこの世界らしくない。

 実際近くにいる数人の少女たちも何か感じ取るものがあるのか、怯えたようにこちらを見ている。

 

「大丈夫ですよ、何があっても自分たちがなんとかしてみせますから」

「そうね…とりあえず灯悟たちに連絡して――」

 

 子どもたちを気遣って励ますグリーン。あの子達のことは任せておこうと思ってイエローは自分のウインドウを開いた。これはフレンド登録しているプレイヤーにメールを送る機能もあるのだ。

 だがメールを送るよりも先にまた空を雷光が切り裂いた。先程よりも遥かに重々しい轟音と共に。

 

「きゃあっ!!」

 少女たちが一斉に悲鳴を上げた。思わず空を見やったイエローはそこに広がっていた光景に絶句した。

 

「……なによコレ…」

 それはもう稲光などというモノではなかった。台風の最中の空の方がまだ生やさしい。雷のような赤黒い光はジグザグに広がって空全体を埋め尽くし、なおも広がり続ける。まるでこの世界全体の呑み込もうとするかのように。

 

「……これもサプライズイベントの一環、なんてことはないわよね流石に…」

「だとしたら趣味が悪すぎであります…」

 

 では一体何が起きているというのか……思考を巡らせた結果、二人はあることに同時に思い至った。運営は少なくともこんな企画はしていない、となると他にこんなことを画策する者と言えば……!

 

 最悪の事態を想定し、イエローはその場にいた少女たちに向かって叫んでいた。

 

「みんな、急いでログアウ――」

 

 しかしその声が最後まで紡がれるよりも先に少女たちの身体が光に包まれ出した。いや自分たちもだ。一体何が起きているんだ……考える間もなく、イエローたちの身体はその場から幻のように消失した。

 

 同様の現象は全てのフィールドで起きていた。レッドとブルーはもちろん、地上の喧騒も知らず、地下のダンジョンにいたピンクも彼女と一緒にいた子どもたちも。NNOにいた全てのプレイヤーたちが同様に光に包まれたかと思うと次の瞬間にはそこから姿を消していた。

 

 人のいなくなったフィールドには寒々しいほどの静寂だけが残された……。

 

 

 




【設定解説】
・ネバーネクサイトオンライン

 今回の舞台となる新サービスのMMORPG。
 「光の惑星・ネバーライト」に住む5つの種族「ファイアーズ」「ウォーキュリー」「ビートール」「アーグリン」「サクラノス」をプレイヤーは選択した上で、戦闘・探索・拠点構築などを行って種族の領地を拡大していく「コンクエスト」がメインモードとなる。
 領土の拡大によって力を蓄えていき、地下に拡がる超古代都市「ナラク」、そしてそこに住む古の種族を討伐して、この星の新たな王族を決める……というのがストーリーのメイン。この性質上、種族間競争の要素が強く、異種族に対してはPK可能という点で意外とシビアなゲームであるが、単に建築を愉しむだけのクリエイティブモードや複数の種族でパーティーを組む事自体は可能なので「楽しみ方は人それぞれ」である。
 因みにファンタジックな設定に反して世界美術はSFチックであり、バイクや銃といったスーパーアイテムも普通にある。勿論魔法や剣、弓等の王道RPGらしい装備や特定のモンスターのテイムもあったりなどファンタジー要素も多め。「光の惑星」の名に恥じず、美麗なグラフィック、各種族の絢爛なエフェクト、空に掛かる虹やオーロラ等の「光の表現」の評価が特に高く、老若男女楽しめるゲームだと評判。


ちなみにスーパー戦隊に詳しい方ならタイトルやタグでなんとなく察してるかと思いますが、このお話、要するに「夏映画」です。映画ならではの大規模バトルを意識して書いたのでその辺も想像しながらお読みいただけると幸いです。
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