ありふれ世界にゴ階級オリ主を投入する話です。なお、今回はありふれ要素が迷子です
「後は頼んだぞ、戦士クウガ……五代……」
それは、彼にとって二回目の死であった。
特撮ドラマの世界に転生し、怪人グロンギでありながら人間を助け、ヒーローと肩を並べて戦い、それを庇って死んだのだ。
(あぁ、悪くはない人生だった。ヒーローを庇って死ねるなんて最高だ……)
彼、ゴ・ガタク・バは転生者である。前世は単なる特撮ファンであり、仮面ライダークウガの怪人として生まれ変わった。
古代の戦闘種族であるグロンギの上級集団たるゴ集団の一人として、本当ならクウガと戦う運命にあったのだろう。しかし、中身が異世界の人間になったことで運命は変わる。
原作開始の数十年前に一人だけ封印から目覚めた彼は、未来の世界で戦うクウガを助けるために修行を重ね、東京にて殺人ゲームを行う同胞と戦う決意を固めた。
そして、戦いの果てに彼が最後に見たものは、こちらを覗き込む赤い複眼の戦士の姿。何か話しているようだが聞こえない。視界は徐々に暗くなり、完全に暗転。意識が遠のいていった……
はずだった。
「ここは、何処だ?」
ガタクが目を覚ますと、峡谷のような場所にいた。両側はかなり高い絶壁となっており、越えることは難しい程だ。
場所は不明だ。この峡谷は何キロにも渡って続いており、その底は岩石や骨の転がる殺風景な荒地。少なくとも日本ではないだろう。
(グロンギの力は……体内の魔石ゲブロンは残っている……おかしい、砕かれたはずだ)
グロンギの力の源、魔石ゲブロンは健在だ。彼らは体内にあるこの特殊な鉱石の力で怪人になり、驚異的な再生能力や人外の力を発揮する。
ガタクの死因の一つはゲブロンが砕かれたことにある。それにより変身能力と再生能力が失われ、致命傷を受けることになったのだ。しかし、その反応は確かに体内に存在していた。
(初めて見る連中だ。まるで異世界ファンタジーのような……)
そして、現在進行形で状況の把握をしているガタクの周囲に魔物とでも言うべき存在が敵意を剥き出しにして集まってきている。皆、デザインは異世界ファンタジーの敵みたいな感じだ。
(丁度いい……どこまで動けるか試すか)
とりあえず、ガタクは戦うことにした。なお、怪人には変身せずに人間体のままで行くつもりである。自身の能力を確かめるためだ。
多数の魔物と対峙しているガタクの姿を見てみよう。まず、彼は民族衣装のような茶色の衣類を身につけており、胸部や首回りには細長い金属を何本もぶら下げた装飾品が存在している。
魔物を真正面から見据える瞳はカラコンを入れているかのように赤く、それが強面の顔に付いている。装飾品の一つを引き抜くと、彼は言い放った。
「
これはグロンギ独自の言語だ。ガタクは元日本人ではあるが、グロンギに転生したことで精神をそちらに引っ張られ、思わず発してしまうのだ。そして、殺気の乗った一言を受けて魔物達は硬直してしまう。
その隙に、引き抜いた装飾品に意識を集中させ、紫色の大剣に変化させる。グロンギの中でも上位の者が使用する、モーフィングパワーによるものだ。同時に、ガタクの瞳は紫色に変化する。
モーフィングパワーは物質を分子レベルで分解して再構築する力だ。変身や形態の変化はこれにより行われ、クウガも同じ力を持っている。
「
紫色の大剣を振り下ろし、目の前の魔物を一刀両断する。今のガタクは剛力体という筋力と防御力に特化した姿になっており、その腕力により高い威力をたたき出している。
その後、魔物の集団は数分も立たないうちに全滅させられた。
「思ったよりも骨のない連中だ。ズの連中にも劣るな……」
最後に双頭のティラノサウルスのような魔物を片付け、ガタクは呟く。強さでいえば、グロンギの下級集団であるズ集団にも劣るレベル。ゴのグロンギからすれば、雑魚に等しかった。
「何か、乗り物が欲しいものだが……あれは?」
この峡谷は先が見えないほどに長く続いている。徒歩では間違いなく時間がかかるため、ガタクはできれば乗り物が欲しいと思っていたのだが、それはすぐに見つかった。
「そうか、お前もこちらに来たのか……」
ガタクが発見したのは、地球では一般的な乗り物であるバイク。しかも、これまでの戦いで常に乗っていた相棒であった。
「
そのバイクに乗り込み、始動キーの差し込み口に当たる部分に胸元の装飾品を突き立て、青い装甲に覆われたクワガタの意匠を持つバイクに変化させる。
元々、トルネイドは捨てられていたバイクの部品をかき集め、モーフィングパワーで無理矢理にバイクとして仕立て上げたものだ。殺したグロンギの魔石ゲブロンを埋め込んでみた結果、生きたバイクへと進化している。
谷底には似つかわしくないエンジン音を響かせ、ガタクはトルネイドを発進させる。ここが何処だか分からないが、相棒が一緒ならば何とかなる。そんな気がしていた。
数時間後、ガタクは峡谷を抜けることができた。明らかに人工的に造成された階段を登り、さらに進むと草原が広がっている。
当然ながら土地勘はない。知的生命体が存在する可能性は高いため、ガタクは感覚を極限まで強化し、細かな音すらも拾うようにしながら草原を駆け抜けていく。
現在、ガタクの瞳は緑色に変化している。射撃体といい、超感覚による遠距離射撃に特化した形態だ。常人では感知できないものを含めた全てを捉えてしまうため、精神力がなければ情報の奔流によって飲み込まれ、痛覚も強化されるので命の危機に陥る可能性が高い両刃の剣である。
しばらく草原を走っていると、ガタクの耳に飛び込んでくる音があった。
(誰かが戦っている?)
耳に捉えられたのは、人間が発したと思われる怒号と悲鳴、金属製の武器が振るわれる音、そして魔物の叫び声だ。
視認可能な距離まで接近すると、五人程の武装した人間がワイバーンのような空飛ぶ魔物の群れと戦っている光景が見えてくる。
人間達は陣形を組んで戦っているが、その倍以上の空飛ぶ敵に包囲され、明らかに追い詰められている。しかも、孤立している人員がチラホラと見受けられた。
「助けるか」
ガタクは装飾品を緑色のボウガンに変形させ、構えると超感覚を駆使して狙いを定め、トリガーを引く。
その先端より飛び出したのは、高い貫通力のある空気弾であり、負傷して蹲る女性に向けて尻尾を振り下ろそうとするワイバーンモドキを一撃で貫き、絶命させた。
そのまま、トリガーを引き続けてワイバーンモドキを撃墜していく。向こうが反応できる範囲の外からのアウトレンジ攻撃であるため、一方的だった。
「
突然の出来事に、双方が混乱している様子だ。ガタクはこの隙に直接介入すべく走り出す。その瞳は青色に変化し、プロの陸上選手どころかチーターにすら匹敵する速さで駆け抜けた。
これは俊敏体だ。純粋なパワーは下がってしまうが、それと引き換えに高いジャンプ力とスピードを得ることかできる。
助走の勢いも借りて高く跳躍し、ワイバーンモドキの頭上に位置取る。奴は自分よりも高い場所に人間が現れる異常事態に驚くが……
「判断が遅い」
そのまま、手にしたボウガンをモーフィングパワーで変形させた双頭槍を突き出し、ワイバーンモドキの頭部を刺し貫く。
着地して見上げ、睨みつけるとワイバーンモドキの生き残りは尻尾を巻いて逃げ出していく。困惑している人間達と接触するため、ガタクは歩みを進めた。
バイクの名前の由来はマシントルネイダーです。他にも候補はありましたが、グロンギ語にした時の響きが良かったのがこれでした