最終回の後、ラキアが人間界でもグラニュート界でもなくキヴォトスに飛ばされてしまう話です。プリンとゼリーのゴチゾウは人間界に行っていましたが、ここではラキアと一緒ということで
pixivにもあります
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25766269
「だる……」
ラキア・アマルガは廃墟と化した都市にいた。その景色は故郷であるグラニュート界と似ても似つかないものであり、人間界の建物に良く似ていたのだが、そのどちらでもない世界であると分かる理由があった。
ダダダダダッ!!!
都市に銃声が鳴り響き、鉛弾がラキアへと飛んでくる。これまでの戦いで培われた反射神経で咄嗟に回避すると、物陰に隠れて攻撃の方向を見る。
「あんなロボット、人間界にはいないぞ。銃を持ってる奴すらいなかったはずだが……」
そこにいたのは、人間と同じ大きさの人型ロボットの集団だ。ストマック家のエージェントと同じく銃で武装しており、明らかに敵意を持っていた。
「だるいが、やるか……」
ヴラスタムギアを取り出して腹部に当てる。すると、バックルから左右にベルトが展開され、ラキアの胴体に巻き付いた。
『ヴラスタムギア』
そして、懐から飛び出したプリンのような眷属〈どっプリンゴチゾウ〉が手のひらに収まり、ラキアはそのまま平然と物陰から歩いてロボット軍団の前に出る。
そこにロボット軍団からの銃撃が迫るが、ゴチゾウがヴラスタムギアの上部にセットされると、透明なプリンカップのようなバリアが展開されて全てを弾く。
『カップオン』
ヴラスタムギアから黄色い液状のエネルギーがドバドバと溢れ出し、バリアの内側でその水位を上げていく。
「変……身……」
ラキアは前髪をくるくると手で弄り、その姿を変化させる合言葉を呟くと右側のレバーを倒す。すると、バリア内部の水位が急激に上昇し、液状のエネルギーがプリンの姿に変わる。
この時点でバリアは解除され、何処かより飛来した二本の大きなスプーンにより巨大プリンが切り裂かれ、中から黒と銀のシンプルなスーツを身に着けた戦士の姿が現れる。
『プディング』
『ヴラムシステム』
巨大プリンが切り裂かれて変化した無数の小型プリンが変身したラキアに纏わりつき、黄色の装甲となって装備される。最後に二本のスプーンが頭部の左右に合体し、変身が完了した。
その姿の名は仮面ライダーヴラム、プリンカスタム。グラニュートでありながらストマック社に反旗を翻し、人間のために戦ったグラニュートハンターである。
ヴラムは専用武器〈ヴラムブレイカー〉を構え、弓モードでエネルギー矢を連射して撃破した後、鎌モードに切り替えてロボット軍団へと斬り込んでいった。
「だっる……」
廃虚にチェーンソーの音が響き渡り、鎌モードのヴラムブレイカーによって最後のロボットが真っ二つにされる。
「ここは何処なんだ?」
ラキアは人間界とグラニュート界を繋ぐ扉の間を破壊していた際、崩落に巻き込まれて落下した。本当ならグラニュート界に残るはずだったのだが、気付けば未知の場所である。
結局、場所は分からない。ラキアは変身を維持したまま、ロボット軍団を蹴散らしつつ、未知の廃虚を進んでいく。かなり遠方に近未来的なビルが立ち並んでいるのが見えたので、進んでみると……
「やはり、人間界ではないのか。だる」
目立ちそうなので変身は解除しており、廃虚ではない真新しい都市を眺める。街を行き交うのは、ロボット頭や獣人の市民に、頭上に光輪を浮かべた女性達。オマケにいくつもの無人機が活動しており、これまで見てきた人間界とは全く異なっていた。
「言葉は通じそうだが……」
聞こえてくる言葉は全て人間界のものと同じだ。少なくともコミュニケーションや情報収集で困ることはないだろう。その時、ラキアの背後から接近するドローンがいた。
振り返り、そのドローンを見つめていると、そこから透き通るような少女の美声が聞こえてくる。
「こんにちは、迷子さん」
「誰だ?」
「天才病弱美少女ハッカー……とでも名乗っておきましょうか」
「だる。要件は?」
「お話でもしませんか? あの姿のことも気になりますし、キヴォトスのことも知らない様子。どうでしょう、情報交換をするというのは?」
どうやら、ドローンの向こう側にいる声の主はラキアのことを監視していたらしい。
「分かった。提案に乗る」
「そうですか。では、私に着いてきてください」
ラキアはドローンの後を追って路地裏へと消えていく。様々な階段や地下通路を通り抜け、とある建物の廊下を進んだ先に扉があった。扉を開いて進入すると……
「ようこそ、迷子さん。私はこのミレニアムの誇る高嶺の花であり、誰もが憧れる超天才病弱美少女ハッカーの明星ヒマリです。よろしくお願いしますね」
そこには、儚そうな容姿の車椅子に座った美少女がいた。なお、その見た目とは裏腹に癖が強いオマケ付きである。
「だる……俺はラキア・アマルガ」
この日、ラキアは天才美少女と出会った。
「……なるほど、人をお菓子の材料にするために攫うストマック社のグラニュートと、それを狩る三人のグラニュートハンター……あなたはその一人、仮面ライダーヴラムとして戦ってきた…と」
「そうだ」
「にわかに信じ難い話ですが、あれを見せられたら信じざるを得ませんね」
ラキアはヒマリに自身のことを説明する際、早々にグラニュートとしての本来の姿を見せていた。長身のイケメンからクラゲの怪物になるという衝撃的な光景である。
「俺としては、学園都市キヴォトスの方が信じ難い。ガキが政治の真似事をして当たり前に銃撃戦をする……恐ろしくだるいな」
学園都市キヴォトスは数千の学園が集まった巨大都市である。学生が政治のようなことをしており、全員が銃を携帯している。銃撃や爆発を受けても最悪気絶で済むような耐久力なので、平気で銃撃戦をするらしい。
キヴォトスの学生は身体能力が高く、グラニュートの代わりに銃を持った学生がいるようなものだ。力こそ全てという風潮もあるらしく、価値観は人間界よりかはグラニュート界寄りだろう。
ちなみに、ここはミレニアムサイエンススクールといい、最先端の科学技術を強みとする科学の学園である。ヒマリはそこの3年生だった。
「ラキアさん、私の所に来るつもりはありませんか?その装備も整備する者が必要ですし、身分もありません。私の伝手なら、その全てを解決できます」
「だる。拒否権はないようなものだな」
ラキアの使用するヴラスタムギアや人間に擬態するためのミミックキーを修理し、再現できそうな人物は、現時点で全て死んでいる。そのため、優秀なエンジニアが必要だった。
「ふふっ、交渉は成立ですね。身分は私の方で何とかしておきますので、エンジニア部のところまで行っていただけると……」
そして、ヒマリが身分を用意してくれたので彼女の案内でラキアはミレニアムサイエンススクールのエンジニア部なる部活動の所まで向かう。そこで待っていたのは、一人の生徒だった。
「君がラキアかい?ヒマリから話は聞いているよ。私は白石ウタハ、エンジニア部の部長をしているマイスターさ」
ウタハと名乗る生徒は、制服の上に白衣を羽織っていた。頭上には光輪とは別にうさ耳のような機械のパーツが二つ浮遊している。
「さっそくだけど、君の変身を見せてくれないか?是非、この目で見てみたいんだ!」
出会って早々、これである。ラキアはこれまで何人かの技術者を見てきたが、まともな奴は一人もいない。ウタハもその一人としてカウントされそうになっていた。
「はぁ、だる」
『カップオン』
『プディング、ヴラムカスタム』
ラキアはすぐに変身を見せてやる。ただ見せるだけなので、変身の一言すら言っていない。
「よし、そのままデータを取らせてほしい。ターゲットを出すから攻撃してくれないか?」
ヴラムの目の前に武装したドローンが集団で現れる。一通りの攻撃手段を試して撃破し、変身を解除した。
「良いデータが取れたよ、ありがとう。それにしても、ヴラスタムギアといいゴチゾウといい、興味深いものばかりだ……」
ウタハの目線はプリンゴチゾウとゼリーゴチゾウをロックオンしており、ラキアと話しながらも捕獲を何度も試みているが、普通に逃げられている。
「是非、研究させてもらうよ。この技術を吸収し、君の役に立てる装備を用意することを約束しよう」
この日、ウタハはラキア専属のエンジニアとなった。今後、彼女はグラニュート由来の技術を吸収し、装備の修復どころか新装備の開発までこなしていくことになる。
(ショウマ、絆人、幸果……俺は何とかやっていけそうだ……そっちは大丈夫だと信じている)
ラキアは離れ離れになってしまった仲間達のことを思う。自分は人間界でもグラニュート界でもない、未知の世界へと飛ばされてしまったが、彼らが元気にやっていると信じて進むことにした。
斯くして、プリンの騎士は学園都市に降り立った。
ブルアカの便利枠であるエンジニア部のウタハなら、グラニュート系の技術も何とかなりそう
ガヴ以外にはバイクがないので、話が続けば出したい