試作品・短編集   作:ウエストモール

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 この銀河には最強と謳われる戦士が二人いる。バウンティハンターのサムス・アランとハジメ・ナグモ。彼らは銀河で最も高度な文明を築いた鳥人族の力と叡知を受け継ぐ存在であった。これは、その片割れである南雲ハジメが最強の戦士に至るまでの記録である。

連載版はこちらです
https://syosetu.org/novel/388142/


メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜

 南雲ハジメは六歳のとき、宇宙人の犯罪勢力であるスペースパイレーツによって地球から連れ去られた。突然、両親と引き離されたハジメは、ただ恐怖に怯えるだけだった。

 

 だが、そんなハジメに手を差し伸べる者達がいた。彼らは鳥人族、またはチョウゾと呼ばれる鳥類によく似たヒューマノイド型の宇宙人である。

 

 ハジメを救助したのは、その中でもマオキン族という一派だ。戦士の文化が色濃く残っている武闘派の部族で、高い身体能力が特徴的である。

 

 保護されたハジメは彼らの本拠地である惑星ZDRに連れていかれ、育てられることになった。その際、人間には過酷なZDRの環境に適応するためマオキン族の遺伝子が移植されており、身体能力が大幅に上昇している。

 

 マオキン族の族長、レイヴンビークはハジメのことを実の息子のように扱い、戦士達と共に鍛えてくれた。更には彼らの技術を結集したパワードスーツも与えられている。

 

 鳥人族は古来より高い知能と戦闘力、高度なテクノロジーを誇っており、その力によって銀河系の各地に勢力を拡大して繁栄を極め、銀河社会の発展に貢献していた。だが、それは既に過去の話である。長命であるが故の高齢化、加えて出生率の低下により、鳥人文明は衰退の道を辿っていた。

 

 マオキン族は鳥人族の中でも衰退の程度が比較的マシな方だったが、未来のことを考えると限界はいつか来ると悟っており、そこに現れたのがハジメだった。彼らは未来を託すため、ハジメに遺伝子と装備を授けたのだ。

 

 惑星ZDRで育ってきたハジメだったが、数年経った頃に別の部族へと預けられることが決まった。それは、惑星ゼーベスを本拠地とするソウハ族であった。

 

 ソウハ族はマオキン族とは対照的に穏健で平和主義的な部族である。それも、他者を傷つけると耐え難い苦痛を受ける心理プロテクトを施す徹底ぶりだ。彼らは特に衰退の影響を受けていた。

 

 レイヴンビークからZDRやマオキン族の元だけでは学べないことがあると聞かされ、ハジメはそれを承諾する。彼の旧友でソウハ族のグレイヴォイスの元で暮らすことになり、その過程でソウハ族の遺伝子も受け継いだ。

 

 ハジメはゼーベスでサムスという少女と出会う。ハジメよりも二歳は歳上であり、パイレーツによって両親を殺され、ソウハ族に拾われて彼らの遺伝子を移植された経歴がある。

 

 サムスもまた、ハジメと同じく鳥人族の未来を託された存在だ。ハジメは彼女と共に〈銀河の守り手〉となるべくして教育や戦闘訓練を受け、いつしか本当の姉と弟のように振る舞うようになっていた。だが、そんな日々は突如として終わりを迎える。

 

 それは、ハジメが十六歳、サムスが十八歳の時のこと。鳥人文明を揺るがすような大事件、機械生命体マザーブレインの反乱が起こった。鳥人族によって開発されたマザーブレインは高度な演算能力を持ち、鳥人文明の中枢として機能していた。

 

 マザーブレインは二人と同じく、鳥人文明の未来を託される存在であった。だが、人間的な感情が芽生え始めたマザーは、自分以外にも未来を託されたハジメ達に対して嫉妬し、鳥人族に対して不満を抱いていた。

 

 マザーブレインは判断した。衰退しつつある鳥人族よりも、勢力を拡大しつつあるスペースパイレーツこそ銀河に繁栄を導く存在であると。そして、スペースパイレーツが惑星ゼーベスを襲撃した際、彼女は鳥人族を見捨ててパイレーツに寝返ったのだ。

 

 ゼーベスはたちまち陥落し、マザーに統制されたパイレーツによって多くの鳥人族が殺害された。グレイヴォイスは戦死し、サムスは絶体絶命のピンチに陥り、駆けつけたハジメも多勢に無勢で苦戦してしまう。同時にZDRも襲撃されており、マオキン族も援軍を出すことができなかった。

 

 ハジメとサムスは多くのものを失った。慣れ親しんできた惑星ゼーベスという家を、家族同然の鳥人族達を、育ててくれたグレイヴォイスという偉大な戦士のことを。

 

「ハジメ、私は銀河連邦軍に入隊する。でも、ハジメは本当の両親の元へと一度帰るんだ」

「サムス姉さん、俺も戦う。いつかゼーベスを取り戻すためにも、逃げるわけにはいかない」

「私の肉親はもういないし、住んでいた故郷もない。でも、ハジメには肉親も故郷も残っている。死んでしまう前に顔くらいは出した方がいい」

 

 そして、二人は別々の道を歩む。サムスは銀河連邦軍に入隊し、ゼーベス奪還の機会を窺う。そして、ハジメは一度故郷である地球へと戻り、肉親のところへ顔を出すことになった。その後、必ず戻ってくると約束して……

 

 ハジメは地球へと行く前にZDRにも立ち寄る。第二の父親的存在であるレイヴンビークや戦士達にゼーベス陥落の報告をし、地球へ一度帰還することを告げ、銀河の彼方へと旅立った。

 

 

 

 

 

 ハジメのスターシップが向かう先は、銀河連邦の勢力範囲から大きく外れた辺境の星系。太陽系の第三惑星であり、故郷である地球だ。ハジメはスターシップを大気圏に突入させる。目標は幼少期を過ごした祖国、日本だ。

 

 ハジメはスターシップを人里離れた山奥に降ろし、見つからないように隠蔽した。そして、搭載してある鳥人族製の高性能なコンピュータを使い、ハッキングを行って情報収集を開始する。

 

「南雲菫、少女漫画家。南雲愁、ゲーム会社社長。どちらも生存確認。住所は…変わらないな」

 

 コンソールの画面にハジメの両親の名前、写真、プロフィール、住所などの詳細な情報が表示されていた。普通なら知り得ないような情報もあるが、それはハッキングによるもの。

 

「父さん…母さん…元気そうでなによりだ」

 

 ハジメはコンソールのキーボードを叩き、自分自身の情報も調べる。すると、ハジメに関する情報が出てきた。

 

「警察は捜査を打ち切り、南雲夫婦は仕事を続けながらも情報を収集中……そうか、十年も捜し続けていてくれたのか」

 

 早急に会いに行き、自身に何が起こったのか説明する必要があるだろう。そう判断したハジメは、懐かしき我が家へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 ハジメの両親、南雲菫と南雲愁は失踪したハジメのことを十年も捜し続けていた。それも、各々の仕事もしっかりこなした上で。

 

 二人が仕事を疎かにしない理由は、どこかにいるであろうハジメに、作品を発表し続けることで自分達が元気に生きていることを知らせるためだ。

 

 ある日の夜中、南雲家のインターホンが鳴った。夜中に人が訪ねてくるのだから、よほど重要な用事なのだろうと思い、二人は玄関に出る。そこには、一人の青年が立っていた。

 

「こんな夜中にすいません。私は南雲ハジメと申します。信用していただけますか?」

 

 二人は、南雲ハジメと名乗る青年のことをじっくり見た後、目を見合わせる。

 

「菫、彼は…」

「えぇ、彼にはハジメの面影があるわ」

「あぁ、俺達には分かる。十年間もずっと捜してきた俺達の息子、ハジメだ!」

 

 南雲夫妻は、目の前にいる青年がハジメであることにすぐに気付いた。

 

「ただいま。父さん、母さん…」

 

 これが、南雲夫妻と南雲ハジメの実に十年ぶりの再会であった。

 

 両親と再会した後、ハジメは過去に起きた出来事について全て話した。宇宙海賊に連れ去られたこと、鳥人族という種族に保護されたこと、彼らによって育てられたこと、ゼーベスにおける惨劇のことを…

 

 まるでSF映画のような話であり、普通なら精神病の類いを疑われるような話であったが、パワードスーツを見せたこともあって信じてくれた。

 

「息子をここまで立派に育ててくれたんだ。レイヴンさんとグレイさんという人には感謝しないといけないな」

「でも、グレイさんにはお礼を言えないのは残念ね……」

 

 残念そうにする二人。マオキン族とレイヴンビークは健在なので問題ないが、グレイヴォイスについては戦死しているので、お礼を言えないことを残念に思っていた。

 

「それで、ハジメはどのくらい地球にいるつもりなんだ?」

「一年くらいいると思う。その後、俺はサムス姉さんの元へと戻ってゼーベスを奪還するつもりだ」

 

 ハジメは、戦いから逃げるつもりは無かった。十字架を背負っている以上、現実から目を逸らすわけにはいかないのだから。それに、スペースパイレーツが地球に手を出す可能性だってある。

 

「もしも、戦いが終わったら… また帰ってきてくれるか?」

「勿論。俺が生きていたら、顔くらいは見せに帰ってくる」

 

 ゼーベスに再び向かい、生きて帰ってこられる保証はない。仮に戦いに勝ったとしても、相討ちで死ぬ可能性もあるのだから。

 

「俺達は信じてる。ハジメが生きて帰ってきてくれると…」

「そうね…」

 

 三人は、夜が明けるまで話し続けた。

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