試作品・短編集   作:ウエストモール

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メトロイドOtherMのアダム・マルコビッチ司令官がシャーレの先生になる話です。Pixivにも同じものがあります


アダム・マルコビッチ先生

 それは、砂漠地帯に拠点を構えるアビドス廃校対策委員会の生徒達にとって騒がしく、刺激のある日々だった。

 

 しっかり者の1年生、眼鏡っ娘の奥空アヤネが連邦生徒会に送った支援要請が受理され、連邦捜査部シャーレから先生という大人が派遣されたことが、その始まりだ。

 

 ある日、2年生の砂狼シロコが一台の装輪装甲車をアビドスの校庭に案内してきた。そこから降りてきたのは青いアーマーとフルフェイスヘルメットに身を包んだ大人だ。彼こそが先生であり、多くの物資をアビドスにもたらしてくれた。

 

「ん、この人がシャーレの先生」

 

 早速、狼耳の生徒シロコは彼を教室に招き入れる。ヘルメットを外して素顔を晒すと、そこには30〜40代程のダンディで父性を感じられる顔つきの男がいた。そして、彼は所属と名を名乗った。

 

「連邦捜査部シャーレのアダム・マルコビッチだ。君が送り主のアヤネで間違いないな?支援要請に基づき、物資を輸送してきた次第だ」

 

「はい、私が奥空アヤネです。まさか、本当に来てくれるなんて……」

 

 彼の名はアダム・マルコビッチ。外の世界にて銀河連邦軍の優秀な司令官として名を馳せた人物であり、対パイレーツ作戦における英雄である。彼は元部下(サムス)に銀河の未来を託し、ボトルシップの事件で散ったはずだった。

 

「シャーレの先生!?」

 

「わあ☆支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」

 

 そう口々に言うのは、1年生で猫耳とツインテールが特徴的な黒見セリカと2年生でふんわりとした雰囲気の十六夜ノノミだ。

 

「はい!これで弾薬や補給品の援助が受けられます。あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ?ホシノ先輩は?」

 

「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる」

 

 そう言ってセリカは部屋から出ていく。その時だった、外から激しい銃声が聞こえてきたのは。

 

ダダダダダッ!!

 

「銃声!?」

 

「わわっ!武装集団が接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」

 

「あいつら……!!性懲りもなく!」

 

 アヤネのドローンが偵察し、銃声の正体が判明する。どうやら、彼らは襲撃の常連らしい。その襲来を知り、シロコは怒りをあらわにしていた。そこへ、セリカが戻ってくる。

 

「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」

 

「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー」

 

 連れてこられたのは、ホシノ先輩なるピンク髪の小柄な少女だ。かなり眠そうで、到底襲撃に対応できるとは思えなかった。

 

「ホシノ先輩!ヘルメット団がまた襲撃を!こちらはシャーレのアダム先生です!」

 

 すかさず、アヤネが状況を説明する。その流れでアダムも紹介されることになった。

 

「ありゃ〜そりゃ大変だね……あ、先生?よろしくー、むにゃ」

 

 襲撃に際して、ホシノは他人事のようにふるまう。アダムを前にしてもぼんやりとしており、昼行灯とはこのことを言うのだろう。しかし、アダムは彼女から違和感を感じ取っていた。

 

(心の奥底で警戒されているか……抜かれていないだけの鋭いナイフといったところ……只者ではないな)

 

 アダムは彼女が昼行灯を演じているのではないかと推測した。彼女はぼんやりとした態度をしているのだが、歴戦の軍人を思わせる何かを秘めていた。

 

「すぐに出るよ。先生のおかげで弾薬と補給品は十分」

 

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

 シロコとノノミが率先して飛び出ていく。セリカとホシノもそれに続いた後、部屋にはアダムとアヤネだけが残される。

 

「アヤネ、ここは私が指揮を執る。君は情報支援を頼むぞ。異論はないな、レディー?」

 

「は、はい!!せ、先生の指揮の腕前はよく聞いてますので、お願いします!」

 

 唐突のレディー呼びにアヤネは顔を赤くしながらも、アダムに指揮権を譲って情報支援に務める。

 

 これは、冷静で厳格な堅物である彼なりのユーモアであり、生徒達と打ち解けるための言葉だ。かつて、元部下のサムスにもブリーフィングの最後に問いかけていた。

 

 その後、カタカタヘルメット団はアダムの的確な指示を受けたアビドス在校生により駆逐され、直後にホシノの立案で実施された敵基地への反転攻勢にも成功するのであった。

 

 

「私は認めない!」

 

 そんなことを叫んだ後、セリカは教室のドアをバタンッと開いて飛び出ていく。それは、直前の会話が原因だった。

 

 ヘルメット団の前哨基地を壊滅させ、いくつかの物資を回収してきた対策委員会は、アダムにお礼を言っていたのだが、そこでセリカが口を滑らせた。

 

 どうやら、アビドス高等学校には大体9億円くらいの借金があるらしいのだ。年々激しくなる砂嵐という自然災害を克服するための資金が底をつき、ついには悪徳業者から借りるしかなくなったことで、ここまで借金が膨らんだのだ。今ではアビドスの半分が砂の中である。

 

 セリカはアダムに感謝しながらも、これまで自分達だけでやってきたことに部外者である大人が首を突っ込んでくることを嫌い、猛反発して出ていってしまった。

 

「先生、セリカのことは気にしないで。きっと、神経質になっているだけだから」

 

「むしろ懐かしい気分だ。私の元部下のことを思い出す」

 

 思えば、サムスが自身の部下だった頃、彼女は常に尖っていた。辛い過去から意地を張り、子供扱いされることに反発していたサムスの姿が、セリカと重なった。

 

「そういえば、先生は軍人だったねー」

 

「ん、その部下の人のことが知りたいな」

 

「いいだろう。話せる範囲にはなってしまうが、構わないかね?」

 

 

 

 翌日の夜、事件は起きた。バイト帰りにセリカがヘルメット団によって誘拐され、トラックで砂漠の端へ連れていかれたのだ。

 

「こ、ここは!?私、拐われた!?」

 

 セリカは暗闇の中で跳ね起きた。ガタン、ガタンと絶え間なく振動が伝わってきて、トラックか何かで運ばれているのだろう。

 

「暗い……けど、隙間から少し光が漏れてる。外、見えるかな……」

 

 光の差している隙間から外を覗き込むと、砂漠とそこに敷設された線路が後方へと流れ続けているのが見える。事態を理解し、彼女の顔がハッとなった。

 

「ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」

 

 セリカは膝をつく。スマホはあるがここは圏外であり、仮に脱出できたとしても仲間達に知らせることはできない位置なのだ。遭難して死んでもおかしくないだろう。

 

「……このまま何処かに埋められちゃうのかな。誰にも気付かれないように……裏切ったって思われるかな……誤解されたまま死ぬなんて、そんなの……ヤダよ……う、ううっ」

 

 セリカは涙を流し、嗚咽を漏らす。仲間達の前ではこんなことはしないだろう。ホシノ、ノノミ、シロコ、アヤネの姿が脳裏に浮かび、アダムの姿までもが現れる。

 

(先生が助けてくれるわけ……あんなに酷いことを言っちゃったのに……)

 

 その時だった……

 

ドガァーーーン!!!

 

 突然、セリカの悲しみを切り裂くように響く爆発音。足元が大きく揺れ、突き上げられるような衝撃で乗っていた乗り物が横転し、激しく転がって停止する。

 

「う、うわあああっ!?」

 

 セリカは横転した車内から這い出ようとするのだが、その前に扉が開かれた。彼女の目の前に現れたのは、1人の大人だった。

 

「セリカ、助けに来たぞ」

 

「せ、先生!?」

 

 そこには、青いアーマーに身を包み、グレネードランチャー付きのアサルトライフルを肩に掛けるアダムの姿があった。ランチャーからは煙が出ており、これをトラックに撃ち込んだのだろう。とんでもない先生である。

 

(カッコいい……)

 

 周囲を警戒しているアダムの横顔を見て、セリカは思う。とても頼り甲斐のあるカッコいい大人であると。こんな気持ちは初めてだった。

 

「こちらアダム、コードネーム:プリンセスを発見。半泣きになっている模様」

 

「にゃ!? な、泣いてなんかないわよ!!」

 

 そこへ、ホシノやノノミ、シロコも駆けつけてくると、みんなで半泣きのセリカを弄った。全力で否定するも、先輩達の攻勢を受けた彼女に為す術はない。

 

「セリカ、敵が迫っている。悠長にしている暇など存在しない。まだ戦えるか?」

 

「も、勿論よ!やってやるわ!」

 

「よろしい。アビドスの諸君、これより私が指揮を執る。異論はないな、レディーズ?」

 

 誰一人として異論は無い。アビドスの生徒達からサムズアップが返され、そのまま彼らは戦闘に突入した。

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