キヴォトスが未曾有のパンデミックに襲われてから数ヶ月。

かつての学園都市はもはや見る影もなく、もはやこの街には静かな終わりだけが残されていた。

しかし、そんな地獄の中でも、懸命に生きる者たちがいる

これは、そんな彼女たちの生存記録である。

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キヴォトスでゾンビパンデミックが起きたら

「やっほー☆私の名前は聖園ミカ!今日は135日目の生存記録を撮っていくよー!」

 

「ヴォアァァ……」

 

「……やだなー、もう!先生ったら登場が早いよー!今日はサプライズゲストなんだから、ちゃんと私が呼んでから来てって言ったじゃん☆」

 

「ヴェアァァ……」

 

「ほら、座って座って!───さて、今日はご覧の通り、シャーレの先生をゲストに連れてきたよ!今日の朝、たまたま近くで歩いてるところを見つけたんだ☆これが運命ってやつかな?ねぇ、セイアちゃんはどう思う?」

 

「…………」

 

「もう、セイアちゃんったら!先生はそんなことしないよー!あはは☆」

 

「ヴァアァ……」

 

「……うん、もういいや。それじゃあ、今日の生存記録は終わり!また次の記録で会おうね!ばいばーい!」

 

 

────ミカの元気な別れの挨拶と共に、ビデオカメラの電源が落とされる。

 

それと同時、ミカは先程までの笑顔を捨て、悲壮に歪んだ顔を見せた。

 

「……先生」

 

「ヴィアァ……」

 

「───ッッッ!!!」

 

変わり果てた先生の呻き声に、ミカは耐えきれず地面を割る。右脚を中心として放射状に伸びるひび割れが、彼女の心に宿る激情を表していた。

 

「なんで……どうしてこんなことに……やだ、やだよ……先生……ッ!」

 

キヴォトスが未曾有のパンデミックに襲われてから、今日で135日目。全てを失ったミカに唯一残されていた希望が今日、ついに消え失せてしまった。

 

すでに、この学園には数える程しか生徒は残っていない。外部との連絡手段は残されておらず、他の学園に助けを求めて旅立った生徒たちは、一人も帰ってこなかった。

 

もはや、あとは死を待つのみ。

 

「あはは……もう、いいや。ごめんね、セイアちゃん。私、つかれちゃった」

 

「…………」

 

セイアは答えられない。かつて彼女が座っていたお茶会用の椅子に、小さな骨壷が置かれているのみである。

 

両手に布を固く縛り付けられ、鎖を繋がれた先生が、ミカに向けて腕を伸ばす。彼ら屍は、生者を求めるのだ。

 

───ナギサが持っていかれた時も、屍たちは同じように手を伸ばしていた。

 

『ミカッ!トリニティを……!みんなを……守ってください……!』

 

全身を裂かれ、血を吐きながらも懸命に叫ぶナギサの姿が脳裏を過ぎる。

 

本当なら、あそこで連れていかれるのは自分だった。

 

調子に乗った自分を庇ったせいで、ナギサは死んだのだ。

 

───だが、誰も自分を責めなかった。

 

それどころか、セイアはミカを次のティーパーティーのトップとして推薦したし、かつて自分を嫌っていたはずの生徒たちも、次々と彼女を『ティーパーティーの聖園ミカ』として仰ぐようになった。

 

理由は単純。ただ強かったから。

 

セイアは、いち早くミカを旗頭に立てる必要があると察していた。

 

だから、感情を押し殺し、かつての自分に戻ったようなフリをして、ミカに非情な仕打ちをしたのだ。

 

実際、あそこでミカをトップに立てなければ、今頃誰も生きてはいなかっただろう。

 

しかし、それでもセイアやナギサは死んだし、ほとんどの生徒は屍と化している。

 

「結局、がんばった意味なんて無かったなぁ……」

 

ミカはふらつきながらも、その場を後にした。

 

 

「……先生がダメになっちゃったこと……みんなに、つたえないと」


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