わたしがマスターになれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)   作:くそじらいせいせいき

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わたなれ原作小説一巻の発売日が2020年2月21日かつ
原作短編集内章『沙月さんのファンレター』より触れられたチェンソーマン新刊の発売時期が晩秋となっているため2019年10月9日第1刷発行の四巻と判断。
よって今作中において高校一年時における原作内時間軸は2019年と仮定する。



第4話

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 約一年が過ぎて冬。幸か不幸か、れな子には才能があった。

 魔術に関してボクは膨大な知識だけはあるが、ほぼ独学かつ素人同然だった。初歩の強化や投影から一部のルーン魔術。暗示や人払いの結界を始め必要に応じて手を出していただけの実戦では通用しないだろうレベルのお粗末な代物。

 とてもではないが、師と呼べるような上等な存在ではない。互いに手探りの状態にもかかわらず彼女がこの一年で基礎レベルとは言え上達したのには彼女自身の頑張りは当然のこととして、映像作品とはいえイメージを固めることができる存在がこの世界にもあったことも要因の一つだろう。

 Fateシリーズ。stay night・Zero及び派生作品に至るまで現在(2018年)において展開されていたそれらがこの世界にも存在している。

 もちろん。ボクの片割れであるアストルフォが登場するApocryphaも当然存在しているし、かつて危惧していた人理焼却および人理再編。空白の一年間は存在せず、ごく普通のスマートフォンアプリの一つとしてGrand Orderは配信され人気を博している。

 幼少期、『冬木』が存在しないと調査を開始した時点で判明していたので、おそらくは別の世界なのだろうとは薄々思っていたが、念には念を入れ人を使ったり自身で厄ネタの現地まで文字通り飛び回って確認作業に明け暮れていたこともあった。

 おかげでこの世界はあちらとは違いとても平和なのだと再認識することができた。魔術協会なんてものはどこにも存在しないし、教会も至って普通の宗教団体のそれであり孤児を贄に悪事を働くことなどは無く、魔術のマの字すら感じることはなかった。

 思い返せば、ボクだけが異質な存在だった。異常な知識と記憶。そして人間離れした能力。

 同類が存在する可能性に再び危機感を覚えたが、現状探し出そうにも一人では無理だと人を雇うため『幸運』を頼りに金を稼いだ。

 手始めに手駒として借金で潰れかけの探偵事務所を買い取ったは良いものの実質業務内容は何でも屋で、猫探しから不倫調査に別れさせ屋とハチの巣駆除。果てはイベントスケジュールの穴埋めに何かしてくれという無茶ぶりまで。

 案の定泣きついてきた探偵見習いを助手になんとかマジックショーを盛況で締めくくった結果。最近では不本意ながらメディアに露出するようになり、マジシャンと学生。サーヴァントと忙しい日々を送っている。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「最近、甘やかしすぎじゃない? お兄ちゃん。……ただでさえ不登校のニート予備軍なんだからこれ以上この愚姉を甘やかすの辞めたら?」

 

 朝、朝食を食べ終え早々に自室に引き上げようとしたところ不機嫌そうな顔をした妹がそう口にした。

 いやいや、待ってくださいな。妹よ。確かに学校には行ってないけど。塾にはちゃんと行ってるし、テストだって最近は点数もかなり良い点取れてるから! 見えにくいだけでわたし頑張ってるって! ね? お兄ちゃん!

 

「えっと遥奈。マ、じゃなくてれな子も頑張ってるんだよ? 確かに今はまだ不登校児だけど、塾にもちゃんと行ってるしその結果もついて来てるから……多分環境さえ変わればちゃんと学校にも行けるようになるんじゃないかな」

「ほらそうやってすぐ甘やかす! 塾のお金だってお兄ちゃんが出してるんでしょ。ホントはやりたくない手品なんかやって、稼いでも自分で使わずにさ」

「いや、手品を披露するのは別に良いんだけどね。見て楽しんでくれるのはボクも本望だし」

 

 アレを手品と片付けて良いものなのだろうか。よくあるトランプを使うような単純なものではなくまさしくイリュージョン。本物の魔術を使用しているのだからそりゃあバズるでしょうよ。本来の意味でマジシャンなんだから。

 

「それにね、遥奈。人を驚かせるのって結構楽しいよ。もちろん良い意味でね?」

「ふーん……でもそれとこれとは話が別だよね。お姉ちゃん」

「わ、わかってるよ。今のままじゃダメだってことくらい」

「まぁ良いけど。そうやってずっとお兄ちゃんに頼ってたらいつか愛想尽かされても知らないんだからね!」

 

 …………そうだ。このままじゃダメだ。こんなわたしのままじゃどこに行ったってまた繰り返すだろう。逃げて、隠れて。やさしさに甘えて。ダメなわたしをずっと抱えさせたまま好意と環境を盾に本当に寄生虫みたいに生きるなんて嫌だ! わたしは変わるんだ。今、この瞬間から!! だから――

 

「お願いします、わたしを陽キャにしてください!」

「いやそりゃちょっとムリでしょお姉ちゃん」

「頑張れれな子。ボクは全力で応援するよ!」

「うん! わたし、頑張る! 何から始めたら良いかわかんないけど!」

 

「はぁ……しょうがないなぁ」なんて言いつつ妹はこれが最初で最後だからねと念押しするようにわたしを指差し、とりあえず美容院に行けと初手から陰キャには厳しいお言葉を賜ることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ムリムリと駄々を捏ねても始まらないので半ば自棄になって初の美容院に行ったわたしたち勇者パーティ一行は紆余曲折の末なんとか無事、魔王を討伐せしめ腰ほどまで伸び放題になっていたぼさぼさの髪とおさらばした。

 肩口ほどにカットされ目元もすっきり。これだけでもかなり印象が変わるんじゃなかろうか!? え。顔が死んでるって? 笑顔の練習? しゃべり方も? それと歩き方に背筋伸ばすってそんなのいっぺんに言われても無理だって!

 

「やる気無いならもう付き合わないけど?」

「や、やります! やらせていただきます! はい! うだうだ言ってすみませんでした!」

「ん。じゃあその引きつった顔どうにかして鏡見て――」

 

 スパルタだぁ……。お兄ちゃん助けて。え、頑張れ? れな子のためだから心を鬼にする? そんなぁ。

 

「あのさぁ。ずっと気になってたんだけど。お姉ちゃんたちって何か隠してるよね」

「えっ! な、なんのことかな? 隠し事なんてなにも、無い、よ?」

「わかりやすいにもほどがあるでしょ……。一年くらい前から夜、二人でどっかに行ってたり部屋で変なこと喋ってたり。あと、今みたいに目で会話してるみたいなやつとか」

「ゲゲッ!?」

 

 思わず変な声が出た。まさかバレてたとは思いもしなかった。侮りがたし妹の直感。しかしどうしたものか。とお兄ちゃんの方を見ればあちゃーと言わんばかりに手を頭に当て天を仰いでいた。どうやらお手上げらしい。

 

「ええと遥奈。ごめんね。わたしが悪いの」

「いや、ボクの不手際だ。マスターは悪くない。遥奈に、というか両親にもだけど隠していたことがあるのは事実だよ」

「やっぱりそうなんだ……ってマスター?」

「「あ」」

 

 やば。これ根掘り葉掘り聞かれるやつなのでは!? お姉ちゃんがマスターとかwみたいな反応絶対されるよね!?

 

「え、どういうこと? そういうプレイ……的な? 流石に兄妹でそういうのよ、よくないと思うけど!?」

「ち、ちが! …………わないかも。っていうかあんたなんてこと口走ってんの!?」

 

 最近の小学生の知識どうなってんの!? 乱れてるよ! 風紀が! 家族会議待ったなしだよ!? え、中学生もたいして変わらないって? うん、それはそう。って、お兄ちゃんにだけは言われたくないんだけど!?

 

「わたしのファーストキス奪ったくせに!」

「へぁっ!?」

「ま、れな子!?」

「その上自分だけ告白してきて返事はいらないとかさぁ……」

「お兄ちゃん……さいてー」

「う、ごめんなさい」

 

 どんどん縮こまって行く姿に妹の絶対零度の視線が冷たく深く突き刺さる。ま、まぁ? 家族だから実質ノーカンですし? 唇柔らかかったなぁとかたまに思い出したりなんてしてないですし? うん。これ以上考えるのはよそう。こっちもダメージを受けそうだ。こ、今回は痛み分けということで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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