Q.前世の記憶が都市の法に引っかからない?
A.エクリプスによるバグ技で回避してる。
エクリプスの権能にアクセスポイントずらしというものがあり、これは「思考している場所をずらす」というもの。例えるならVPNによるIPアドレス書き換え。思考している世界(IPアドレス)が都市ではない亜空間上と判断されるようになるため、頭は思考や脳に関する違法に関しては追えなくなっています。エクリプスの仕様を使ったある種のバグ技です。
VPN関連で分かりやすいのは海外サーバーでIPアドレスを外国にするとネトフリでジブリ作品が見れるというやつ。日本だと権利関係で見れないけど海外だと見れる仕様を逆手に取った合法バグ技。これを脳内でやってるという感じですね。
まぁ複雑な解説になりましたが「思考してる部分が都市世界の外にあるように見せかけてるからバレない」という考えでOKです。亜空間で行われている悪巧みすら把握できる程、頭の力も万能ではないでしょうし。これすら可能だったらアンジェラの存在が早々にバレてる筈なんで…
「で、どれだけ歩けばいいんですか?」
「ん〜K社の巣までかな?」
「…巣に事務所があるんですか?」
「一応巣って感じかな。巣と裏路地の境目の所にあるからどちらからでも依頼が来るんだよね」
「なるほど…」
「と言ってる間に着いたね。ようこそ我が事務所、円卓事務所へ!」
そこにあったのは小さなオフィスビル。綺麗だがあまり大きくはなく、看板には大きく『円卓事務所』と書かれていた。
「ここが事務所ですか」
「そう!ありとあらゆる協会と提携を結び、色々は方面から依頼を受ける!そんな事務所…と言いたいところだけど、今は2人のみで経営してるんだよねぇ…」
「2人って…貴方特色なんですよね?人望なさすぎでは…?」
「いやさ、元々とあるフィクサーの元で働いてたんだけど、所長が死んだり、強い人達死んだり、都市のゴタゴタに巻き込まれて人辞めちゃったりとなんやかんやあって経営ガタガタになってね。そこが潰れたのよ。そこを名前変えて引き継いだって感じだから経営回復に忙しいんだよね。まぁ経営自体は黒字になってきたから安心なんだけど、それはそれとしてまだ安心はできなくてね」
「なるほど…」
「さ!立ち話はこの辺で!さっさと入ろうか!」
そういいながらオフィスビルに入っていった。
「ヴィヴィア~ン?いるか~い?」
「所長。生きてたんですか」
「酷くない?連絡するような時間じゃないでしょ」
「いえ所長ならどこで死んでもおかしくないなと」
「だから酷くない?特色だよ私」
「所長は特色最弱でしょ」
「あのねぇ…」
「あの、彼女は?」
「あぁ、彼女はヴィヴィアン・ニミュエ。円卓事務所のもう一人のフィクサーだよ。ちなみに4級ね」
「?所長、その子は?」
「彼はヴァイス・ペンドラゴン。かの有名なフィクサー狩りにして、今日からこの円卓事務所の一員となる9級フィクサーさ」
「…詳しくは聞かないでおきます」
そう言って黒髪で長身の女性は立ち上がった。
「ご紹介に預かりました、ヴィヴィアン・ニミュエと申します。副所長として、『白の魔術師』マーリン・エムリスと共にこの円卓事務所を経営しています」
「どうも、ヴァイス・ペンドラゴンです。今日からこの円卓事務所で働かせていただきます。よろしくお願いします」
「じゃ、ヴァイス君。色々手続きあるからさ。とりあえずこの書類読んでサインしておいて」
と言いながら割と分厚い紙束を渡したマーリンは何か予定があるのかヴィヴィアンを連れて何処かに行ってしまった。…そう言えばマーリンってフルネームエムリスなのか…
それよりもこの分厚い書類…どうしよ…
「…スレ民と共に読むか」
「はい、修理が完了しましたよ。マーリン」
「ありがとうヴィヴィアン。やはりコートはいい生地じゃないと」
そう言って僕はコートを受け取る。ヌオーヴォ生地ではないが、それに匹敵するほどのいい生地だ。
「事務所の立て直し中なのに生地に拘る必要はあるの?」
「自費だからいいだろう?ハァ…煙戦争に少しだけちょっかいかけただけなのにさぁ…ここまで酷いしっぺ返し食らうとは思わなかったよ」
「本格的に絡んだ人間は一部の巣で居住禁止を言い渡されてるとか…爪痕は大きいわね」
「そうらしいね。K社とかもその口だ。何をそこまで警戒しているのやら…」
「利権争いに邪魔なものを切り落としてるんでしょ。都市の人間らしい…」
「余り言うのは辞めておいたほうがいいよ?ヴィヴィアン。それよりも未来のことについて語ろうじゃないか」
そう言いながら所長の席に着く。以前の事務所から置いてある年季の入った木の机は、前の事務所の所長の趣味だった。
「一先ず急を要する案件は終わりましたが…次にやる依頼はどれに?」
「資料出して」
「そう言うと思って持ってきてますよ」
そう言いながら彼女は分厚いファイルを持ってくる。
「流石ヴィヴィアン。さてと…期限が近い依頼は…コレかな?」
「?裏路地施設への潜入、ですか…」
「彼の初仕事にも丁度いいだろう?」
「彼…とはあの少年の?荷が重くないですか?」
「あれ?言ってないっけ。彼謝肉祭相手して勝てるくらいの実力の持ち主だよ?」
「…冗談ですか?」
「冗談じゃないんだなぁ〜これが。そもそもあのフィクサー狩りだよ?
「…それに関しては眉唾物の話だと言っていませんでしたか?」
「いいや彼を見て確信に変わったね。彼の持つ薙刀の刃はその1級フィクサーのもので間違いない。普通のクリスタルアトリエ製の刃ではあそこまでの熱量は耐えられない。アレは高級なものだ」
「…戦っている所を見ていたんですか?」
「見てたよ。
恐らく彼女には、私の声色が変わったように思えただろう。
「…彼にも使ったんですか」
「そりゃあね?でも記憶は見えなかった」
「…珍しいですね。貴方の力でも見えないとは」
「侵入自体は出来たし、警戒心も解けたから成功してるのは成功してるんだけどねぇ…記憶だけ、しかもフィクサー狩りとしての記憶すら見えないとなると、記憶喪失とかではないようだ」
「…流石『夢魔の声』の持ち主ですね」
…夢魔の声。それは僕が持つ力。声を媒介に相手の脳に侵入する、生まれつき持っていた特異な能力。
「余りいいものじゃないって言ってるでしょ?莫大な量の情報を裁かなくちゃいけないし、見たくもない記憶も覗いてしまう。しかも本人自身…いや、
「…聞けば聞くほど無法ですね」
「大いなる力には代償が伴うってね。それを言うなら彼もだよ」
「?」
「あの紫が接触してきたからね。あの人が彼を狙ってるってことは、それなりにヤバい存在ってことだ」
「…?…!?紫って、紫の涙!?」
ヴィヴィアンが身を乗り出してくる。あ〜そうか。彼女は紫の涙についてあまり詳しくないのか。
「そ。あの蛇婆さんが絡む事案って、平行世界が吹っ飛ぶかこの世界が吹っ飛ぶかの二択なんだよね」
「…その先って私が聞いても平気な話?」
「ん?もう手遅れだよ。事務所設立時言ったでしょ?『旅は道連れ世は情け。人生は長い旅路』って。だから君も道連れにするのが道理でしょ?」
「理不尽よ!」
「まーまー。多分死にはしないしそれ以上のことも起きないよ。…多分」
「〜〜〜!!!まぁいいわ…で?続きがあるんでしょう?」
「話が早くて助かるよ♪」
「呆れてものも言えないだけよ…」
クールぶっているのに、突然怒ったり、不貞腐れたりするヴィヴィアンはとても面白い。
「まぁ紫が接触しようとしてきたからさ。何しようとしてるか尋問したんだけど…まぁ煙に巻かれちゃってね。あの人には声が届かないらしいから彼女の口から聞きたかったんだけど…僕が彼をフィクサーにするって言ったら急に態度変えてどっか言っちゃったんだよね」
「…つまり?」
「彼は僕が導かないといけない存在なようだ。彼を救えるのは、僕しかいない」
「…そう。ならそうしてちょうだい」
「連れないなぁ〜ヴィヴィアンは。これからの仲間なんだよ?もっと仲良くしようとかないの?」
「…煙戦争に行かなかった私が仲間と思っていいの?」
「…ヴィヴィアン」
「私も行くべきだった。そしたら龍穴事務所も…」
「ヴィヴィアン」
僕は彼女を制止する。
「…なによ、マーリン」
「仕方のないことだったさ。誰もが英断を下せる訳ではない。僕達の選択が正解だったのは偶然だ。所長が旧L社側について死んだのも、旧L社側の人間も、新L社側の人間も、ここに帰れなくなったのもただの偶然だ。君が罪悪感を感じる必要性は全くない。それは去っていった人々も言っていただろう?」
「それは…」
「過ぎた物を数えても虚しいだけだ。今は再建と、新たなコネクションを作ることが重要だ」
「…マーリン」
「さ!しみったれた話はここまでにして!今日の仕事を始めようか!」
そう言って手を叩くと、曇った彼女の顔は何時も通りに戻っていた。
「じゃ、まずはこの辺の書類整理ね」
「……やりたくないなぁ…」
「そんな事言ってられないって言ってたのはどこの誰?」
「やっぱり人手が足りないなぁ…」
そう言いながら僕はしぶしぶペンを取った。
マーリン・エムリス
青髪緑眼の青年。白の丈の長いスーツとコートを着ている。
白の色を持つ特色フィクサーで異名は【白の魔術師】。特色になってから比較的日は浅いが、他の特色とも負けず劣らずの実力がある。
武器は杖であり、投石機でもある。彼の剛腕から放たれる質量弾は壁を容易く粉砕する。杖術も達人級。
しかし彼本来の強みは交渉や対人術である。彼の声には人の心を惹きつける力があり、その力を使い様々な協会や組織とコネクションを作っている。
性格は楽観的であり、面白そうなことに目がない。しかし、その心の奥底には優しさと正義を持ち合わせている。
夢魔の声
マーリンが持つ特殊な力。声を媒介として相手の脳に侵入し、感情の操作や記憶の閲覧などが可能になる。特に記憶の閲覧に関しては深層心理に埋もれている記憶や、焼却されたであろう記憶すら見ることができる。しかし、閲覧する記憶は選べず、結果的に脳にその人の人生丸々の記憶を流し込まれるという結果になるため、並大抵の人間では発狂してしまう。彼が耐えられているのは、マーリン自身の努力と根性の結晶の賜物である。しかし負担も大きいので、普段は自前の話術だけで対処している。