Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘   作:新米ユーリ/神座/DMP

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9話:幕間――生徒会とデュエリスト

「うーん、何を持ってくかねぇ」

《そこまで真剣に悩むもんなのか? それってよ」

 

 袋菓子とにらめっこをしていると、クロスファイアが不思議そうな声で聞いてきた。

 

「邪魔するのはこっちだからな。それなりの用意をするのが道理ってもんだろ」

《ほー、よく分かんねぇな》

 

 ステップルが起こした騒動の翌日。俺達は放課後、最寄りのコンビニに来ていた。

 騒動を解決した翔子を生徒会メンバーに紹介するため、今はその準備の真っ只中。

 選んでいるのは生徒会メンバーに渡す手土産だ。

 

 元来、他者の領域へ踏み入りる際には相応の手土産が必要になる。

 仕事先への挨拶は勿論、友人や親戚の家を訪問する時でもそれは変わらない。

 そして、それは完全なプライベートで生徒会室に訪れる時でも同じだ。

 

「どうライト? 買う物は決まった?」

「いやまだ。いまいち決まんねぇ」

 

 聞こえてきた声の方を向くと、一緒に来ていた翔子が腕にいくつかの袋菓子を抱えていた。

 自分で買う分は確保できたらしい。

 

「そんな真面目に悩まなくていいと思うよ。余程のゲテモノじゃない限りは大丈夫だって」

 

 そう言って朗らかに笑う翔子。いやまあ、悩み過ぎなのはそうかもしれないが、人に渡す以上はしっかり考えてから選ぶべきだろ。

 そう思っていると、翔子は俺が腕を通している買い物カゴにいくつかの袋菓子を突っ込む。

 いやおい待て。

 

「なに突っ込んだよ……って、なんだこのチョイス」

 

 突っ込まれたものを見ると、そこには激辛のポテチやココアクッキーが入っていた。

 クッキーは分かるが、激辛ポテチはどうなんだよ……。

 

「大丈夫だって。案外こういうのはいけるものだよ?」

「本当かよ……」

 

 女子が激辛ものを食べるイメージってないぞ。どっちかというと男が好き好んでる気がするし、おっさん方が酒の肴にしてるイメージの方がある。

 

「よしっ! これで必要なものは揃ったね。さっさと買って、いざ生徒会室へ!」

「テンション高けぇな、お前」

 

 まさに気分上々といったご様子。よほど生徒会の面々に会うのが楽しみみたいだ。

 軽やかな足取りで彼女はどの袋菓子も持たずにコンビニを出て行った。

 あれ? 何も持ってない?

 

《おいマスター。翔子のやつ、マスターのカゴに持ってきてた菓子全部入れてったぞ》

「はァ!?」

 

 言われるままカゴの中を覗くと、そこにはさっき突っ込まれたもの以外の菓子がいくつもあった。全部さっき翔子が抱えてたものだ。

 

「あ、あいつ……支払い俺に押し付けやがった……!」

《どうすんだ、これ。いくつか戻しておくか?》

「はー、取りあえずジャンルが被ってるのは片っぽ戻して買うか。なんか俺が選ぼうとすると無駄に時間がかかりそうだしな」

 

 この際だ、彼女が置いてったものにあやかろう。

 いくつかの袋菓子を棚に戻した後、俺は会計を終わらせて翔子の後を追った。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

「何してんだよお前」

「いたっ」

 

 その後、俺は校門前で翔子の頭に軽いチョップをお見舞いした。

 会計を終えた後、外に彼女の姿はなかった。よりにもよって彼女は一人で学校にまで帰っていたのだ。なんでコンビニの外で待ってないんだよ。そんなに時間かからなかっただろ。

 

「普通、一緒に着た奴を置いてくか?」

「別にそんな気にすることじゃないじゃないか」

 

 叩かれた頭を擦りながら彼女は不貞腐れる。

 悪いが自業自得だ。チョップには置いてったこともそうだが、勝手にカゴへ菓子を突っ込んだことも入ってる。

 というか、いつの間に入れたんだよ。全然気づけなかった。

 

「お前が突っ込んだ菓子についても、割り勘にして請求するからな」

「えー!? それぐらい奢ってくれてもいいだろ?」

「なんで何もない時に奢らにゃならんのだ!」

 

 冗談じゃない。袋菓子でもそれなりの数買うと金額も馬鹿にならない。

 デュエマをやってる身でいうのもあれだが、金の羽振りは考えないといけないんだよ。

 

「ったく、まあ請求は生徒会との話が終わった後だ。さっさと行くぞ」

「ケチだなぁ」

「自分が欲しがったものを人に押し付けるやつが言うか」

 

 そこから互いに軽口をたたき合いながら、生徒会室のある部室棟へ向かう。

 辺りには練習に励む色々な運動部の姿があった。

 

「やっぱり運動部は運動部で元気だね」

「だな。部活してない身からすると、眩しいよ」

 

 ラリーを繰り返すテニス部やハードルなどを運んでいる陸上部、走り込みをしている男女混合の集団は水泳部だろうか。それぞれが真剣に取り組んでいて、見ていると少し眩しく感じる。

 

「よーし、これでかんりょー」

「メガ、まだ残っとるで」

「まったく、いくら生徒会の仕事とはいえ多すぎるではないか」

「アラ、すずちゃん。それは朕が運ぶわネ。すずちゃんじゃ届かないワ」

「子供扱いするなぁ!」

「皆さん、あともう少しですから頑張りましょう!」

 

 そうして体育倉庫を横切ろうとすると、その中から聞き覚えのある声がした。

 声の方を向くと、そこには五人の女子が倉庫の中で色々な荷物を運んでいる真っ最中だった。

 ドラ娘生徒会の面々だ。

 

「会長? 何してんだ、そんなところで」

「え、翔野さん?」

 

 俺の呟きが聞こえたのか、それとも外にいるこっちの姿に気づいてくれたのか。

 外から覗いてると、アーシュ会長は持っていた荷物を棚に置いて、わざわざ俺達の方へ出てきてくれた。

 

「なになに? かいちょーどしたの?」

「アーシュはん、どないしたん?」

 

 他の生徒会メンバーも会長の後に続いて、ぞろぞろと中から出てくる。

 

「よっ、生徒会の皆様方。何してたんだ?」

「先生から体育倉庫にある荷物を整理して欲しいって頼まれたんです」

 

 なるほど、雑用を任されたわけだ。先生からの雑用は生徒会でも変わらないんだな。

 と、会長が俺の持っている袋に気が付いた。

 

「その袋……翔野さんはどこかに行く途中でしたか?」

「ああ、昨日のことで話があったから生徒会室に行こうとしてた。それで行く途中に会長たちを見つけたんだ」

「昨日の事で……あっ、じゃあ一緒にいるその子が言ってた」

「その通り」

「そうだったんですか。すいません……荷物の整理にもう少し時間がかかりそうなんです」

 

 申し訳なさそうにしょんぼりする会長。

 後ろを見てみると、中にある段ボールの数はまだある。確かに時間がもう少しかかりそうだ。

 

「なら、俺達にも手伝わせてくれ」

「え、いや悪いですよ」

「用事があるのは俺達なんだ、それのついでだって」

 

 それに荷物整理なんて面倒事は長い時間やりたくないだろうしな。

 すると、背中をツンツンと突っつかれた。後ろにいる翔子だ。

 

「なんだよ?」

「それだったら、まずはボクの紹介の方が先じゃない?」

「あー、そうだな。ここでもうやっとくか」

「そうそう、早くやって悪いことはないよね」

 

 そう言って彼女は前に出ると、俺と生徒会メンバーの間に立つ。

 

「一応作業の前にこいつの紹介だけさせてくれ。昨日起きたクリーチャー騒動を解決したのはこいつなんだ」

「昨日アーシュちゃんが言ってたわネ」

「ほうほう、貴様がな」

「昨日のあれかー、色々大変だったよねー」

「先生たちも大慌てやったもんな」

 

 昨日の事ということもあり、生徒会の四人の反応は様々。

 熊田とゼオスは翔子に興味があるみたいで、地封院と真久間は騒動を思い出してか苦笑いを浮かべる。

 

「初めまして、生徒会の皆♪ 一年一組・漫画研究部所属、神上翔子だよ。よろしくね」

 

 そう言って見事なウィンクをする翔子。うん、それ必要だったか?

 自己紹介への反応はというと。

 

「うん! よろしく! ぼくは真久間メガ! よろしくね!」

「地封院ギャイや、よろしゅうな」

「サーヴァ・K・ゼオスよ、よろしくネ」

「熊田すず。覚えておけよ」

 

 割と感触は良さそうだ。

 真久間なんてもう距離を詰めて握手してる。俺の時もそうだったけど、距離の詰め方が凄いな。

 とはいえ、初対面の相手に自己紹介でウィンクは正直どうかとは思うぞ、翔子。

 

「流星アーシュです。神上さん、よろしくお願いします」

「翔子でいいよ。その代わりにボクもアーシュちゃんって呼びたいんだけど、いいかな?」

「え、あ、はい! むしろお願いします!」

 

 会長が手を差し出すと、翔子は爽やかに笑いながら手を取った。

 なんか改めて見ると翔子のやつ、美少女なんだが話し方が中性的だからか90年代の王子様キャラみたいだな。

 会長の様子も変な気がする。なんというか感極まってるというか、我が世の春が来たって叫びたがってそうな感じだ。

 

「それじゃあ、すぐに終わらせちゃお。皆と色々話したいしね」

「よーし、皆でがんばろー!」

『おー!』

 

 真久間の掛け声と共に声をあげて仕事に取り掛かる女子たち。

 いや、仲良くなるの早すぎないか?

 そう思いながら、俺も段ボールに手をかけた。

 

「あれー? これってどこだっけ」

「それは向こうの棚やったはずや」

「おおサンキュー、ギャイ」

「うぬぬぬっ! なんのこれしきぃ」

「すずちゃん、『無理は巾着』ネ」

「それをいうなら『無理は禁物』だ! って無理などしとらんわ!」

 

 倉庫の整理は予想よりも順調に、そして賑やかに進んでいった。

 時間にすれば十分と少しぐらいしかかかってない。まさにマンパワーイズジャスティスってこんな感じなんだと思う。

 

「皆さんお疲れ様です。それじゃあ生徒会室に戻りましょう!」

 

 にこやかな笑顔になったアーシュ会長の一声と共に俺達は大所帯になって生徒会室へ向かった。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 生徒会室に通された後、その場の空気はすぐに歓迎会ムードに突入した。

 その言い出しっぺは真久真。なんでも、昨日の騒動を解決した翔子にお礼をしたいらしい。

 

「それじゃあ、改めて神上翔子だよ。よろしくね」

「俺も改めて、翔野来人だ」

 

 椅子に座ってる生徒会メンバーの前で、改めて自己紹介。

 目の前の机には手土産として買ってきた菓子が開けられ、生徒会室に備え付けられていた冷蔵庫から取り出されたジュース類が紙コップに入って置かれている。

 

「それじゃあ、色々と大変だった昨日の騒ぎの解決と『しょっちー』や『ラトやん』と会えたことにカンパーイ!」

「「「「カンパーイ」」」」

 

 真久真の掛け声とも紙コップを掲げる生徒会一同。俺と翔子もそれに倣ってコップを掲げる。

 かくして俺達二人と生徒会による歓迎会プチパーティーが始まった。

 

「ねえねえ、『しょっちー』って漫研なんだよね? あそこって何してるところなの?」

 

 話の中心になったのは、当然ながら翔子のことだ。歓迎会が始まった開口一番に、真久真がその話題を切り出した。

 それは俺もちょっと気になる。少し前に聞いてみたことはあったが、その時は「特に変なことはしてないよ? 普通にオタクが創作をしてるだけさ」と言ってた。

 だが、後に噂ではあるが「漫研は週刊連載誌よりもヤバい」なんて話も聞いた。火のない所に煙は立たぬ、って言う以上は何かあるはずだ。

 そういう話はちょっと好奇心が疼く。

 

「うーん、別にただの漫画研究部だよ? ボクも含めて、部員は皆アニメや漫画が大好きなオタク。その好きが高じた結果、自分でも何かを作りたいって思った人が集まった場所だね」

 

 返って来たのは面白みもない答えだった。いや、面白くないとか言っちゃダメだな。

 俺が勝手に変な期待を持ってただけだ。

 そう思っていると、翔子は「でも」と言葉を続けた。

 

「作ってるのは漫画だけじゃないね。ラノベを書いてる人もいるし、その作品に使う挿絵を描く人もいるから漫画研究部じゃなくて、サブカル研究部に改名した方がいいんじゃないかな。殆ど同人サークルみたいになってるね。今年は夏と冬の両方で新刊を出すって部長も言ってたし」

 

 中々にとんでもないカミングアウトが飛んできた。

 いや、待って。あくまで部活だよな? 夏と冬の新刊ってコミックマーケットのことだよな? 部活が夏コミと冬コミに新刊出すの? かなりメチャクチャなこと言ってないか?

 

「へー、なんか凄そう。じゃあ絵が上手い人ってやっぱり多いんだ」

 

 俺が度肝を抜かれてた傍らで、質問主だった真久間は微妙に分かってなさそうな感じで感心していた。熊田やゼオス、会長もいまいち分かってなさそうだ。

 そうだよな、コミケの新刊とか伝わんないよな。

 

「なんかさらりと新刊がどうこうって言っとったけど、それが本当やと真面目に同人サークルやないか……」

 

 一方で、地封院だけは俺と同じように翔子が言ってることに驚いていた。

 

「地封院、今の言ってたこと分かるんだな」

「まあ一応な。それにしても、コミケに出すって結構クオリティあるんやな」

「みたいだな。噂も本当なのか?」

「どういう噂なん?」

「漫研はジャ〇プよりもヤバいってやつ」

「それは流石に吹かしやろー」

 

 豪快に笑う地封院。

 そうだよな、いくらコミケに夏と冬の両方で新刊を出すって言ってても、流石に学校の部活が週刊連載誌よりもヤバい所ってことはありえないよな。

 と、こんな感じで翔子への質問はいくつか続いていった。

 好きな物や趣味、コスメ。一部は男の俺にはさっぱり分からないものもあったが、翔子はあっという間に生徒会メンバーと打ち解けていった。女子のコミュ力って凄いんだな。

 そして話はクリーチャーのことへ移っていき、今まで黙っていたアラシやジョニーも話に参加してきた。

 

「あなたもクリーチャーなのネ?」

「うん、彼はジョニー。今は小さいけど本来の姿はすっごくカッコいいガンマンなんだ」

《よろしくな、嬢ちゃんたち》

 

 二頭身なSDキャラになったジョニーが手を差し出すと、ゼオスがそれを握る。

 なんというか、不思議な光景だ。ジョニーが元々機械の身体ということもあって、今の小さくなった姿はアラシよりもマスコットっぽい。

 

「やっぱりアラシはかわちいね」

《ちょ、や、やめ……あ、ダメだぁ》

 

 一方でアラシは真久真に抱っこされて骨抜きにされていた。

 お前、デレデレじゃん。もうクロスファイアの姿になっても威厳が保てなくなるんじゃないか?

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

「あー楽しかった!」

「だろうな。すっかり生徒会メンバーと意気投合したもんな、お前」

 

 夕方、歓迎会を終えた俺と翔子は校門に向かっていた。

 歓迎会の盛り上がりはかなり凄かった。手土産に持ってきた菓子類は全滅ぐらいだ。

 でもそのお陰なのか、翔子は生徒会とすっかり打ち解けていた。

 特に真久真とゼオスとはあっという間だったな。熊田はまだツンケンしてるけど。

 

「ライトはどうだったかな? 楽しかったかい?」

「楽しかったよ。一部の女子トークは置いてけぼりになったけど」

 

 実際、生徒会のわちゃわちゃした感じの空気感は一緒にいて楽しかった。

 見方によっては締まりがないって言われるかもしれないが、変に堅苦しくなくて関わりやすいし、困ってる時に頼りやすいと思う。

 アーシュ会長のあたふたしてる所が可愛かったし、そういった面が知られると親しみやすさがもっと高まるかもしれない。

 

「それじゃあ、今日はこの後も目一杯楽しもう! 店舗大会も勝つよ!」

「生憎とそれはないな。今日は俺が勝たせてもらう」

 

 この後〈トレカ・キャット〉で店舗大会がある。久々の普通なデュエマだ。全力で遊んで楽しみ倒すしかない。大会で優勝する気満々だ。

 

「そこのお二人、少しいいかのう」

 

 そんな時、突然後ろから声をかけられた。

 

「「えっ」」

 

 後ろを振り返ると、そこには黄土色のスーツを着た小柄の老人がいた。

 その姿に俺達は驚くしかなかった。

 この学校でその特徴を持っている人物は一人しかいない。

 でも、その人が俺達に話しかけてくるはずがないんだから。

 

「「校長先生!?」」

 

 だが、目の前には確かに──桜龍高校の校長がいた。

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