Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘   作:新米ユーリ/神座/DMP

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11話:幕間――戦ってやる

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 その後、俺達四人は〈トレカ・キャット〉の店舗大会に参加した。

 結局、リンとロムの二人は店内に現れなかった。もともと厳密な約束をしてたわけじゃないから、来なくても仕方ないのはそうなんだが。それが少し意外だった。

 

 大会はトーナメント方式で行われて、一回負ければそこで終わり。

 参加人数は俺達含めて十六人もいて、俺達は全員優勝する気で挑んだんだが──

 

「俺だけ、一回戦落ちかよ……」

「先輩……その、ドンマイ。いやでも、俺や賢哉も二回戦落ちでしたし、そんな大差ないですよ」

「そうですよ! そんなに落ち込まなくても……」

 

 結果、尾瀬先輩は一回戦で敗退し、俺と賢哉も二回戦落ちという序盤敗退。

 それが堪えたらしく、店の外で落ち込んだ先輩を俺と賢哉が励ましていた。

 

「そうだよ先輩、誰だって上手くいかない日はある。気にしてたって仕方ないだろ?」

「「「優勝した奴がそれを言うか!!」」」

 

 一方で翔子は見事に無色ジョーカーズでトーナメントを駆け上がり、しっかりと優勝。

 そんな奴が慰めの言葉を言っても意味ないぞ、翔子。

 まあそれからしばらく、俺達は先輩をどうにか立ち直らせて世間話に花を咲かせて、あっという間に夜を更かしてしまった。

 そそくさと荷物をまとめると、賢哉は一足先に離れていった。

 

「じゃあ僕はこれで。夜更けの帰り道は気を付けてね」

「おう、お疲れ」

「じゃあねー」

「そっちも気を付けろよ」

 

 その後ろ姿を見送ると、俺と翔子も地面に置いていた荷物を背負い帰る準備を整える。

 すると、先輩が俺達を呼び止めた。

 

「ああ、ちょっと待て。翔野と神上、話があるからちょっと付き合え」

「どうしたんです?」

「話ならここで聞きますけど……」

「ちょいと場所を変えたい気分なんだよ、ちょっと付き合え」

 

 そう言って先輩は俺達の前を歩き始める。

 突然なことに翔子の方を見やると、彼女は楽しそうに笑った。

 

「どうする?」

「行こう。多分変なことはないよ」

「いざって時はクロスファイア達に出張ってもらうか」

 

 短い話し合いの結果、俺達は先輩についていくことにした。

 それにしても、俺達に話とは一体何なのだろうか。いまいち検討がつかない。

 と、考えているうちに俺達は目的地に到着した。

 先輩が向かった先はショップの近くにある公園だった。

 

「やっぱり夜遅くの公園って雰囲気があるね」

「だな。クリーチャーを知った後でも不気味さを感じる」

 

 夜遅くに来たので俺達以外の人影はない。翔子が言う通り、クリーチャーなんて超常存在を知った後だというのにその場の空気は不気味さがある。

 一方の先輩はそんなことは感じないのか、ずんずんと公園の中を進んでいく。

 それについていくと、公園に設置してある自販機の前で先輩は止まった。

 

「何か飲むか? 俺の奢りだ」

「えっ……あー、いや、いいっすよ」

「良いんですか! じゃあカフェオレお願いします」

 

 突然の提案に俺は少し言い淀む。というか翔子はちょっと遠慮をしろよ。

 すると、先輩がジェスチャーで近くのベンチを指さした。座れってことだろうか。

 従って座ると、先輩は自販機に小銭を突っ込んだ。

 

「わりぃな。急にこんな所に来てもらってよ」

「いや、別にいいですけど……何のために?」

「ちょいとお前らだけと話したくてな」

 

 そう言って先輩は買ったカフェオレを翔子へ投げ渡す。

 

「まずはカドショでも言ったが、ぶっ倒れた俺を運んでくれてありがとな」

「おっ、おっす」

 

 快活に笑う先輩。

 まずって言ってたし、本題は別にあるみたいだな。

 

「それとこっからが本題だ」

 

 そう言うと先輩の纏っていた空気が変わった。

 先ほどまであった快活さは消えて、張り詰めたような重い空気が漂い始める。

 

 

 

「暴れてた俺を止めてくれたことも、ありがとよ」

「「ッ!?」」

 

 

 

 先輩の発言に驚いて身体が震えた。この人、今なんて言った?

 まさか、この人はしっかりと覚えてるのか?

 

「その反応……心当たりがあるって感じだな」

「やっべ……!?」

「しまった……」

 

 後悔時すでに遅し。

 してやったりと言いたげに、先輩が笑いながら言う。

 

「実はな、俺には昨日倒れるまでの記憶がはっきりと残ってるんだよ。ステップルに憑りつかれてた間の記憶がな。いまいち現実離れしてたから、夢の内容が記憶と混ざったのかと思ったが、カドショで御崎の奴が言ってたことやお前らの反応を見るに本当みたいだな」

「マジかよ、デュエル中に聞き耳立ててたのか……」

 

 やられた。この人、カマかけやがった!

 というか、クリーチャーに憑りつかれてた時のことって全部忘れるんじゃねぇの!?

 そこらへん個人差あるのかよ……。

 

「お前らのここに呼んだのは、さっきの話があったからだよ。わりぃが教えてくれ。俺の身に何が起きてたのか、お前らが知ってることをよ」

「……う、先輩顔近いですよ」

 

 ぐいっと顔を近づけてくる尾瀬先輩。その目には好奇心が隠せてなかった。

 言っていいのか分からず、助けを求めて俺は翔子の方を向いた。

 

「どうする?」

「ボクらとクリーチャーのことは言っていいんじゃないかな。じゃないと終わらない気がするよ」

 

 翔子は苦笑いを浮かべながら、答える。

 やっぱ答えないとダメか。

 

「分かりました、先輩。俺らが知ってることは教えますよ」

「おう、ありがとよ」

 

 そこから俺は尾瀬先輩に俺達が知ってることを話した。

 クリーチャーが現実に存在すること、俺達がクリーチャーと契約して共に戦ってること、一部のクリーチャーは人の心にある闇を利用して憑りつくってことも、全部。

 唯一言わなかったのは、生徒会のドラゴン娘の事だけだ。あれは他人に知られると、会長たちに掛かる迷惑が尋常じゃない。さすがに本人たち以外の口から明かすべきことじゃない。

 

「なるほど。人の心にある闇に憑りつくクリーチャーね」

 

 話を聞いた尾瀬先輩は内容を噛みしめるように静かに頷いていた。

 

「そうです、だから先輩はスランプに漬け込まれて憑りつかれたんだと思います」

「まぁだろうな。かなり思い詰めてたし、恰好の的だっただろよ」

 

 そう言って先輩が苦笑しながら、スランプとステップルに憑りつかれた経緯を話してくれた。

 どうやら先輩は三月末からスランプだったらしく、それから抜け出せずに苦しんでいたらしい。そこからどうにか抜け出したくて、四月になってからは我武者羅に桜の絵を描いていたそうだ。

 ただ、それでもスランプから抜け出せず、納得できる絵ができなかったらしい。そうして時間が過ぎることに焦りを覚えたらしく、そこをステップルに憑りつかれたそうだ。

 なんでも、ステップルは「願いを叶えてやる」と言ったらしく、先輩は納得いく絵が描けるまで桜を咲かせたままにしてくれと願ったそうだ。

 

「ほうほう、散らない桜はそういう経緯があったんだね」

「我ながら馬鹿なことを言っちまったよ。人のエゴで自然の在り方を捻じ曲げちまった。幸い桜に変な影響が出なくてよかったぜ」

「そうっすね。何も起きなくてよかった」

 

 本当にそう思う。もしも桜に悪影響が起きていたら大騒ぎってレベルじゃなかったかもしれない。想像でしかないが、あのまま散らない状態がもっと続いていたら学校の桜が全部枯れたんじゃないかとすら思う。

 

「だからありがとな、神上。俺を止めてくれて」

「気にしないでよ、先輩。ボクは美術室をめちゃくちゃにしたステップルをぶちのめしたかっただけで、先輩を止めたのは結果論だからさ」

「だとしてもだ。お前が止めてくれなかったら、俺は取り返しのつかないことを起こしてたかもしれねぇ。本当に助かったよ」

「描いてた絵、頑張ってくださいね。完成したら一番に見てみたいな」

「おう、絵はこれから自分の力で完成させてやるよ。ステップルの奴が消えてから、妙に焦る気持ちもなくなってよ、筆が軽いんだ。完成したらお前らにすぐ見せてやるよ」

「おっ、それは楽しみになってたね!」

 

 絵を語る先輩の目は穏やかなものだった。

 おそらく、今や先程のデュエマで見せていたのが先輩本来のキャラなんだろうな。

 すると、尾瀬先輩はポケットから二枚のメモらしき紙を取り出して、俺達に差し出した。

 

「助けてもらった礼だ。何か困ったことがあったら言いな。三年・美術部、尾瀬(おぜ)甲介(こうすけ)は受けた恩を忘れねぇ。クリーチャー退治とかで困ったら頼っていいぜ」

「これって」

「電話番号とメアドだね」

 

 受け取った紙を見ると、そこには先輩の連絡先が書かれていた。

 いや、助けてくれる気概は嬉しいですけど……連絡先ポンと渡していいのか、この人。

 

「ありがと先輩。困ったときは助けてもらうよ」

「おう、困った後輩を助けるのが先輩の仕事だからな」

 

 そういって握手をする翔子と尾瀬先輩。

 これは仲間が増えたってことにしていいのか?

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 その後、俺と翔子は公園で尾瀬先輩と別れて一緒に帰路へついた。

 バス停を目指して進む住宅街の道は相も変わらず静かで不気味な雰囲気を醸し出している。

 しばらく進むと、翔子が口を開いた。

 

「ねぇライト。尾瀬先輩、元気でよかったね」

「だな。でも、まさかクリーチャーに憑りつかれてる時のことを覚えてるのは予想外だった」

「確かにあれは驚いたよ。賢哉君は覚えてなかったんだよね?」

「正確に言うと夢だと思ってる。あれを言われた時はビビったよ」

「だろうね。横から聞いてたけど、ボクもビックリだったよ」

 

 まったくだ。夢ってことになったが、賢哉の口からあの日のことが出てくるとは思わなかった。

 正直に言うと、あいつの口から戦った日のことが出てくるのは嫌だ。

 賢哉には真っ直ぐ自分がやることをやっていて欲しい。天才って呼ばれるぐらいスゲェ奴なんだから、それが邪魔されるなんて嫌だ。

 あいつや尾瀬先輩みたいに、自分が誇れるものを持ってる奴はスゲェんだ。

 それを一時の揺らぎに漬け込んで歪ませるなんて、許せるはずがない。

 

「きっと、ああいう事件はこれからも起きるんだよな」

「だろうね。創作をやってる身だから言えるよ、スランプや挫折は身近で色んなところにある。そんな人達をクリーチャーは利用するだろうね。だから――」

「俺達で止める、だよな」

 

 翔子の言葉に続くと、彼女は拳を差し出してきた。

 拳を突き合わせて、俺達は笑い合う。

 

「その通り。アーシュちゃんたち生徒会もいるから、難しくないよね」

「おう、やれるに決まってるだろ」

 

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