Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘   作:新米ユーリ/神座/DMP

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17話:夢と旋律――誤魔化しの代償

※ ※ ※

 

 

 

 教室を飛び出した俺と翔子は生徒会メンバーに通話で状況を共有した後、昇降口に来ていた。

 

「うん、確認できた。天音先輩はまだ校内にいるよ」

 

 二年生の下駄箱を確認し終えると、翔子は真剣な面持ちで頷く。

 その報せに思わず安堵のため息が出た。

 しゅうら姉の言ってたことは信じれるが、もしも入れ違いになってたら目も当てられない。裏取りができたのは幸先が良いといえる。

 

「翔野さん! 翔子ちゃん!」

 

 後ろから声が聞こえてきた。会長の声だ。

 振り向くと、生徒会の五人が焦った表情でこっちへ走ってきた。

 

「クリーチャーに憑りつかれてるかもしれない方は?」

「幸い校内にまだいるよ。詳しい場所までは分かってないけどね」

「ってなわけで、虱潰しに探していくしかねぇんだよ」

「人海戦術によるゴリ押しだな……」

 

 俺達の説明に熊田が苦い顔をする。そういう顔をされるのは仕方ない。

 一応、心当たりとして特別教室棟にいる可能性は大きい。だが、そこにいる確証もない。別の場所にいる可能性が排除できない以上、全部探すしかないんだ。

 

「それで割り振りについてなんだけど、すずちゃんとゼオスちゃんは昇降口を押さえといて欲しいんだ。万が一、入れ替わりになっても大丈夫なようにね」

「エエ、任せて!」

「うむ、任せるがいい」

「メガちゃんとギャイちゃんには一般教室棟をお願い」

「りょーかい!」

「任しといて」

「会長は俺と翔子と来てくれ!」

「わ、分かりました」

 

 割り当てが終わった後、俺達は連絡を取りやすくするために色々と準備をした。

 

「では皆さん、頑張りましょう!」

 

 そして、会長の音頭と共に俺達は行動を開始した。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

「賢哉! わりぃけど、今日の誘いはパスさせてくれ!」

 

 ライト君が遠ざかっていく。

 やけに慌てて走っていくその姿を私──庵野水晶は見てることしかできなかった。

 

「行っちゃったよ……」

 

 横を見ると、賢哉君も目の前の状況に驚いて呆然として呟いた。

 

「なるほどね、水晶が心配するのがするのが少し分かったかも」

 

 私と賢哉君が驚いて呆然としていた一方で、お姉ちゃんは納得したように頷いていた。

 

「水晶、ライトは最近いつもあんな感じなの?」

「あんなに焦ってるのは初めて見るかも……」

 

 なんだか凄く心配になってきた。さっきのライト君や翔子ちゃんの焦り方は初めて見たから。

 その慌てように、これから何か大変なことが起きるんじゃないかっていう気になってくる。

 

「おっ、いたいた。おーい、庵野ー」

 

 不意に、低い声で響いた。

 

「だ、誰?」

 

 声の方を見てみると、一人の男子生徒が廊下側の開いてる窓にもたれ掛かって教室を覗いていた。バンダナを頭に巻いていて、硬そうな薄緑の髪の、鋭い目つきをした人だ。気だるげな表情をしてるからか、少し怖い。

 

「あら? 尾瀬先輩?」

 

 男の人を見たお姉ちゃんが不思議そうに首を傾げた。知り合いなの?

 いまいちどういう関係か分からなくて、怖がりながら聞いてみた。

 

「お姉ちゃん、この人は?」

「ああ、そうね。水晶は初めて会うわよね。この人は三年生の尾瀬先輩。委員会で一緒に仕事をしてる人よ」

「そうなんだ」

 

 その話を聞いて、少しだけ怖さがマシになった気がする。

 お姉ちゃんの反応的にも、変な人じゃなさそうだし。

 

「それで先輩、どうしたんですか?」

「おめえを探してたんだよ。お前らの所の担任が探してたぞ」

「え? 先生が?」

 

 どうやら尾瀬先輩はお姉ちゃんに用事があったみたい。

 すると、お姉ちゃんは戸惑いながら私の顔を見てきた。

 多分落ち込んでる私を心配してくれてるんだと思う。でも、それでお姉ちゃんに迷惑をかけるわけにもいかない。前も心配事の相談に付き合ってくれたし。

 

「お姉ちゃん、私は大丈夫だから行ってきて」

「そう? なら行って来るわね。先に帰っててもいいからね」

 

 そう言ってお姉ちゃんは優しい笑顔を浮かべながら、私たちの教室を出ていた。

 すると、尾瀬先輩がもたれ掛かっていた窓から体を起こした。

 

「よし、お遣い終わり」

 

 そう言い残して尾瀬先輩は教室の近くにある階段を上がっていった。

 教室に残ったのは私と賢哉君だけだ。

 

(この後、どうしよう……)

 

 お姉ちゃんには大丈夫なんて言ったけど、あんなのはの強がりだ。本当は今も心配で胸がいっぱいになってる。

 ライト君たちが戻ってくるまで待ってた方がいいのかな?

 

「水晶ちゃん、ちょっといい?」

 

 そんな事を考えてると、賢哉君が楽しげな声色で話しかけてきた。

 

「どうしたの? 賢哉君」

「ライト達の後、追ってみようよ」

「はい?」

 

 賢哉君は無邪気な笑みを浮かべて言う。何を言ってるの?

 

「ライト達の事、気になるんでしょ?」

「うっ……」

 

 そう言われると図星で言い返せない。

 私が言い淀んでると、賢哉君が急に手を掴んできた。

 

「賢哉君!?」

「うだうだしても埒が明かない。気になるなら見に行こう」

「えっえぇ!」

 

 そうして私は賢哉君に引っ張られながら教室を飛び出し、階段を駆け上がっていく。

 

「ど、どこにいくの!?」

「特別教室棟だよ。ライトは天音先輩を探しに行ったんでしょ? さっきの話、聞いた感じだと天音先輩はヴァイオリンを弾きにいこうとしてたんじゃないかな。だったら、学校内でそういうことができるのはあそこだからね。そこで何をしてるのか覗いてやろうよ」

「ええ!?」

 

 困惑してる私をよそに、景色は変わっていった。

 階段を抜けて一般教室棟の二階に出ると、次は廊下を抜けて連絡通路を進んでいく。

 私たちの高校は一般教室棟と特別教室棟が一階と二階でそれぞれ繋がっていて、二階は空中廊下で繋がってる。

 気づけばあっという間に私は一昨日と同じ場所に来てしまっていた。

 

「さあ、ライト達の隠し事をこっそり暴いちゃおう」

 

 物凄く楽しそうに賢哉君が笑ってる。中学の頃からライト君と一緒に遊んでたけど、こんなにノリノリな時ってあったかな。

 

(ど、どうしよう……)

 

 賢哉君は楽しそうな足取りで教室を調べていく。

 一方で私は流された状況に頭が混乱していて、立ち往生するしかなかった。

 

 

 

 ──そんな私の耳にヴァイオリンの音色が聞こえてきた。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

「どうでしたか?」

「残念ながら外れだね」

「ああ、人っ子一人もいなかった」

 

 合流場所である階段前に集まった俺達は一回目の探索で得た情報を擦り合わせていた。

 始まった特別教室棟一階の探索は、俺と翔子が天音先輩を探し、アーシュ会長が昇降口へ続く廊下を塞ぐという役回りだ。この配置なら万が一逃げられても問題ない。

 こういう時にドラゴン娘の力はとてもありがたい。俺と翔子はクリーチャーを引き剥がせるが、暴れる人間相手じゃ力になれないからな。

 

「となるとやっぱり上の階ですよね」

「二階か、それとも三階か。どっちかな」

「一昨日は二階にある空き教室にいたけどよ、今日は部活全体がOFFだろ。開いてる教室ならどこでもあり得るぞ」

 

 話ながら階段を抜けて二階に踏み入ると、流れていた空気が一変した。嫌な空気だ。

 

「この嫌な感じ、当たりか?」

「かもしれないね」

「少なくとも、クリーチャーはいるみたいです」

 

 三人で顔を見合わせると、会長の頭にドラゴンの角が生えていた。

 ドラゴンの力は近くにクリーチャーがいると勝手に発動する。どうやら俺達が感じてる嫌な雰囲気は勘違いじゃないみたいだな。

 

「どうする? さっきみたいに俺と翔子だけか、それとも会長にも来てもらうか」

「皆で行こう。それで一気に叩く」

 

 俺達は三人で廊下を進んでいく。

 普段なら文化部の活動で騒がしくなる特別教室棟も、生徒がいなくなったら酷く静かだ。張り詰めた俺達の間には自分たちの足音だけが響いてくる。

 

「待てよ、どこにもいねぇぞ?」

 

 二階の突き当りにはすぐに辿り着いた。予想に反して、クリーチャーは一体も出てきていない。どういうことだ?

 

《マスター! クリーチャーだ! 来るっすよ!》

《翔子! 上からだ!》

 

 今まで黙っていたクロスファイアとジョニーが声を荒げる。

 同時に近くにある上階への階段から、そいつらは現れた。

 ハープの姿をしたクリーチャーとトランペットが人型になったようなクリーチャーだ。

 

「《音奏 ハープララ》に《不朽音奏 トロンベルト》──!! メタリカのワンダフォースか!」

「つうことは、やっぱりクリーチャー案件だったわけだな!」

 

 すかさず俺と翔子は懐からカードを取り出した。

 実体化したアラシとジョニーが有無も言わせぬ早業で、クリーチャー達を撃破し、霧散していくクリーチャーを突っ切って、俺達は階段を駆け上がっていく。

 

(三階ってことは、先輩がいるのは音楽室か)

 

 ヴァイオリンが絡んでいるのなら、他に思い当たるような場所は学校には無い。

 

(頼むから大事は起きてくれるなよ……!)

 

 胸が不安でいっぱいだ。もしもステップル事件と同じようなことが起きるなら、先輩と対峙してスムーズにデュエルへ引き込めるかは分からない。

 

(いや、今は余計なことを考えるな。分からないことを考えても労力の無駄だ)

 

 頭をよぎった雑念を振り払い、三階へ踏み入る。

 その瞬間、ヴァイオリンの音色が聞こえ始めた。

 

「ヴァイオリンの音、ですよね?」

「だね。目標は音楽室にいるみたいだ」

「ああ、二人とも気を引き締めろよ」

 

 気を引き締め、俺は廊下へ出て音楽室を視界に捉えた。その時──廊下にある『ソレ』を見てしまった。

 

「…………は?」

 

 うそだ。

 

「…………あ、あ…………っあ」

 

 うそだ。

 

「ああああ!? なんで!? ふざけんな! ふざけんなよ! おい!」

 

 俺は全力で駆け出していた。

 目的地は変わり、引き締めていた覚悟など霧散していた。代わりにあったのは困惑や疑問、そして絶望。

 急いでに目的地へ駆け寄ると、倒れていた『ソレ』を腕に抱えた。

 

「おい!! 起きろ! 起きてくれ水晶!」

 

 廊下に倒れていた『ソレ』の正体──それは水晶だった。その姿を見間違えるはずがない。

 いくら体を揺らしても、彼女は目覚めない。

 

「ライト!!」

「翔野さん!」

 

 翔子とアーシュ会長が追い付いてくると、抱えてる水晶の姿を見て、二人の顔が青ざめた。

 

「な、なんでここに他の生徒の方が?」

「水晶ちゃん? なんで……」

 

 なんでここにいるのかは俺が知りたい。なんで目も覚まさないんだ。

 まさか──

 

《落ち着け!》

「いてっ!」

 

 取り乱す俺へアラシが蹴りを入れる。

 

「何すんだ!」

《落ち着けって言ってるんっすよ! そいつは気絶してるだけっす!》

「ちょっとごめんよ」

 

 すかさず翔子が耳を水晶の口元へ近づけながら、脈を取る。

 僅かな静寂が流れた後、緊張に染まっていた翔子の顔に血の色が戻ってきた。

 

「大丈夫。脈とか諸々正常だよ」

「本当か?」

「うん。ただ気を失ってるだけみたいだよ」

「……あ」

 

 その言葉を聞いて、身体から一気に力が抜け落ちた。

 

《どうもマナを吸収されたみたいっすね。今回の犯人は憑りついた相手以外からもマナを吸い取れるみたいっす》

「……ふざけんなよ」

 

 憑りついてる相手以外にも直接的な被害が出るなんて、無茶苦茶すぎる。最低限のレギュレーションは守れよ。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」

 

 深呼吸をしてどうにか自分を落ち着かせると、俺は抱えていた水晶の体を廊下の端側に寄せて、柱へもたれ掛からせた。

 

「行くぞ。元凶のクリーチャーをぶっ飛ばす」

「やってやろう。流石にこれライン越えだよ」

「い、行きましょう……!」

 

 音楽室の扉に手をかける。そして、勢いよく扉を開け放った。

 

 

 

 

 

 俺を先頭にして突入した中で奏でられていた音は、とても綺麗で穏やかな物だった。

 だが、音楽室の奥でヴァイオリンを奏でている天音先輩の姿は、そんな音からかけ離れていた。

 頬は現在進行形で痩せこけていき、その目は光を失っている。

 ここまで来たら確定だ。クリーチャーに憑りつかれて、マナを吸収されてるんだ。

 

《お前ら、来るぞ》

 

 ジョニーの呟きと共に、先輩の側に二体のクリーチャーが姿を現わす。

 一体は天使のような羽を持ったヴァイオリンの姿をしたクリーチャー。もう一体はサックスのような姿をしたクリーチャーだ。

 その名前はすぐに分かった。あいつらが元凶か。

 

「《音奏 ハイオリーダ》に《二重音奏 サクスメロディ》かよ。とことん音楽絡みってか」

《マスター。あいつら、もうすぐ実体化しそうっすよ》

「あの大食いども──!」

 

 天音先輩のマナを吸収して、おそらく水晶にまでその毒牙を伸ばしたのだろう。

 しかも、先輩の演奏に合わせて、二体のクリーチャーは徐々に実体化している。

 その光景を見て、ジョニーが声を荒げた。

 

《まさか、ヴァイオリンの音を通してマナを吸い取ってるのか!? このままじゃ、憑りつかれてるアイツどころか、さっきの嬢ちゃんみたいに他の人間にまで被害が出るぞ!》

「はいっ!?」

「笑えないな、流石に悪辣すぎるよ」

「……なんつう胸糞わりぃやり方だよ」

 

 自分の中にある激情が決壊寸前になっていた。幼馴染に被害を出しただけでもブチ切れ案件だってのに、よりにもよって天音先輩が悩んでたヴァイオリンを利用するなんて。

 

(あのクソクリーチャー共! ぜってぇぶっ飛ばす!)

 

 まずは急いで天音先輩に演奏を辞めさせないと、先輩の身が危険だ。

 すると、先輩が突如として演奏の手を止めた。すかさず俺は呼びかける。

 

「天音先輩!」

「煩いな」

 

 返ってきたのは、凍り付くような冷たい声だった。

 ──瞬間、無数のクリーチャーが音楽室に溢れ出た。

 

「うぇああ!? 何で大量のクリーチャーが!? どこから出てきたんですか!?」

「《バグバイブス》に《ジュリドゥ》、《バンジョルノ》までいるのか。どれもこれも、音奏のクリーチャーか。もはや圧巻過ぎて笑えてきたよ」

「先輩! こっちに来てくれ! そいつらと一緒にいるのは危ねぇんだ!!」

「危ない、か」

 

 先輩が深い溜息を吐き、鋭く冷たい視線を向けてきた。

 

 

 

「……僕からすれば、演奏を邪魔する君たちの方がよっぽど危険人物だ──ハッキリ言おう。とっとと失せろ!」

 

 

 

 先輩の怒号と共に、俺達の眼前に新たに一体のクリーチャーが現れた。

 蛇とトランペットが合わさったような姿をしたそいつの正体は《音奏 トランパトラ》。

 そして奴は既に攻撃の体勢に入っていた。

 

「危ねぇ!!」

「「うわっ!?」」

 

 すかさず後ろにいた二人を突き飛ばすと、《トランパトラ》による尻尾の攻撃が俺を吹っ飛ばし、壁へ激突させた。

 

「ライト!」

「翔野さん!」

 

 二人の声が聞こえてくる。だが、その聞こえ方はかなり朧気だ。

 ──俺の意識は、そのままなんの抵抗もできずに暗闇へ落下していった。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

「……なんなんだ、これは」

 

 自分が置かれている状況に僕──御崎賢哉は混乱が隠せなかった。

 

「ったく、面倒なことになりやがった──!」

 

 混乱している僕の後ろで、背中合わせになっている尾瀬先輩が恨めしそうにぼやく。

 

『ピャラララ!』

 

 特別教室棟一階の廊下で、リコーダーに羽が生えた異形を始めとした軍勢に僕らは取り囲まれていた。何がどうなっているのか、もうチンプンカンプンだ。

 思い出せ。僕は今まで何をしていた?

 僕は水晶ちゃんを連れて飛び出していったライト達を追いかけて特別教室棟へ来た。二階を探索して誰も見つからなかったから、一階へ下りて調べようとしたら一緒に来ていた水晶ちゃんがいなくなっていた。そしたら今度は謎の存在の群れとエンカウントして、そこに上の階から尾瀬先輩が階段を転げ落ちてきた。

 駄目だ。急展開過ぎて混乱しかできない。

 

(あれって、デュエマのクリーチャーだよな?)

 

 しかも、立ち塞がっている謎存在には見覚えがある。デュエマのクリーチャーだ。

 クリーチャーが実体化? そんなの夢の中でしか見たことないよ。

 

「ったく、どうすりゃいいんだ」

 

 混乱してる僕の耳に尾瀬先輩の声が聞こえてきた。

 意外にも冷静そうなその人が羨ましくて、つい声をかけてしまう。

 

「冷静ですね、尾瀬先輩。羨ましいですよ」

「そうか? これでも冷や汗が結構出てるよ」

 

 先輩は屋上で絵を描いていて、それが終わって帰ろうとした途中でクリーチャーに出くわしたらしく、それに驚いて足を踏み外した結果、階段から転がり落ちたらしい。それで怪我がなさそうだし、今の状況でもそこまで焦ってないんだから、肝が据わってるよ。

 

『ピュロロロロ』

 

 クリーチャーが声をあげる。それに合わせて、俺が臨戦態勢を整える。

 身に着けた武術が人間以外としっかり戦えるか分からないけど、やるしかない。

 

 

「対象捕捉」

「それじゃあ始めよっか!」

 

 

 声が響いた。同時に僕の頭上に突如として二つの影が現れ、その主たちが僕とクリーチャーの間に割り込む。

 

「なっ、なんだテメェら!?」

「君たちはいったい……」

 

 突然現れた二人組に僕と尾瀬先輩は驚きが隠せなかった。

 その理由は現れた二人の恰好にある。

 現れたのは男子と女子のペア。彼らは僕たちと同じ制服を着ていた。同じ桜龍高校の生徒なのは間違いない。でも、制服の上からサイバーパンク風のジャケットを羽織り、その手足はメカニカルな装甲のような物に包まれていた。

 

「うーん、そうだなぁ……なんて言おう?」

 

 二人組の片割れ──藍色ショートヘアの少女が振り返ると、首を傾げた。

 

「別に何でもいいだろ」

 

 片割れのもう一方──黒の強い灰色髪の男子は、頭を悩ませている少女の姿に呆れのため息をつきながら、僕の背後というか尾瀬先輩の前へ立つ。

 

「あっ、お似合いのがあるじゃん! しかもお約束って言えるやつ!」

 

 すると、何か天啓を得たように少女が笑い、声を高らかにして告げた。

 

「通りすがりの正義の味方だよ」

 

 そう言って明るく笑った彼女は自分の腰に手をかける。

 

「はいっ?」

 

 そうして手にしたものを見て、目を疑った。

 彼女の手が握ったもの。それはデュエマのデッキだ。

 思わず後ろを振り返ると、男子の方もデュエマのデッキを手にしている。

 尾瀬先輩もそんな光景に驚いて言葉を失っていた。

 呆気にとられる僕たちの様子に構わず、二人はクリーチャーの群れを見据えて叫んだ。

 

「「デュエル・スフィアゾーン起動! デュエマ・スタート!」」

 

 

 ──信じられない光景が、始まった。




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