Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘   作:新米ユーリ/神座/DMP

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夢を持つ者と夢を失った者。
かくして戦いの火蓋が切られた。


19話:夢と旋律──王龍、吠える

 始まった俺と天音先輩のデュエル。

 天音先輩の先行で始まった戦いは、互いに1ターン目を多色マナのチャージで終わった後、2ターン目に天音先輩は早速動き出した。

 

「僕のターン。《♪ 仰ぎ見よ閃光の奇跡》をチャージ、2マナで《奇跡妖精ヴェヌス》召喚」

 

 荒野に現れたのは、金色の髪をなびかせる歌い手の妖精。

 その効果は各ターンに一度、光・水・自然のクリーチャーにかかるコストを1下げるもの。

 先輩はこれで次のターンからコスト4のクリーチャーが使用圏内に入ってくる。

 今確認できるカードや憑りついてる奴らを見るに、どうやら先輩のデッキは光・水文明で構成されてるみたいだ。

 

「俺のターン。《無限超邪(インフィニティ) クロスファイア》をチャージ。そして呪文《メンデルスゾーン》! デッキから上二枚を表向きにし、ドラゴンを全てマナへ置く」

 

 対する俺も動き出す。

 表向きになったのは《斬龍電融 オロチリュウセイ》と《ボルシャック・栄光・ルピア》。

 どちらもドラゴン。よって俺のマナはこれで四枚。これで大きな動きは俺が先に取れそうだ。

 

「僕のターン。《二重音奏 サクスメロディ》をチャージ。《ヴェヌス》の軽減効果で《音奏 バグバイブス》を3コストで召喚」

 

 そのまま天音先輩へターンが渡り、場へバグパイプを模したクリーチャーが現れる。

 すると《バグバイブス》が音色を響かせた。

 

「《バグバイブス》の登場時効果発動。GR(ガチャレンジ)召喚を行う」

「早速お出ましかよ……!」

 

 天音先輩がデッキの横に置いてある()()()()()──GRのデッキを引く。

 GR(ガチャレンジ)。それはいわばもう一つのデッキといえるもの。

 通常のメインデッキ40枚から外れた外部ゾーンに属するクリーチャーだけのカード群。

 GR召喚とは12枚のGRゾーンからカードを引き、クリーチャーをランダムに召喚するものだ。

 しかも、それは言ってしまえば特定のカードを使った後に行われるオマケなのだ。強力なシステムであることは言うまでもない。

 無論、制限も存在する。通常のデッキが同名カードを4枚まで入れられないのに対して、GRは同名カードを2枚までしか入れることができない。だが、それでも強力なものなのは変わらない。

 

「来い《白皇角の意志 ルーベライノ》」

 

 フィールドの空間が歪み、その中から光が飛び出す。

 現れたのは白い身体を持つサイのようなクリーチャーだ。

 

(やっぱりメタリカのGRが来るよな)

 

 面倒なのが出てきやがった。あいつの能力は光の呪文のコストを永続的に1軽減する。

 先輩の盤面が少しずつ便利になってやがる。

 

「俺のターン。《ヨビニオン・フレイムバーン》をチャージ。4マナでもう一枚の《ヨビニオン・フレイムバーン》を召喚」

 

 負けじと俺もクリーチャーを召喚する。

 火文明の紋章と共に、フィールドに甲冑を纏ったドラゴンが現れた。

 

「そして《フレイムバーン》の召喚時効果、ヨビニオン発動」

 

 俺の宣言と共にデッキの上からカードが表向きになっていく。

 ヨビニオン。それは召喚によって出た時限定で、その効果を持つクリーチャーよりコストの小さいクリーチャーを1体踏み倒す能力。

 使い方次第じゃ、リソースの大量確保やデッキトップによる解決をしやすくできる代物だ。

 そして、三枚目が表向きになった所でカードが止まる。

 最後に捲れたのはコスト3の《ボルシャック・栄光・ルピア》だ。

 

「《ボルシャック・栄光・ルピア》をバトルゾーンへ。その登場時能力でデッキの上から一枚をマナへ置く。それがドラゴンならもう一枚だ」

 

 デッキからカードがマナへ落ちていく。

 落ちたカードは《偽りの王(コードキング) モーツァルト》。ドラゴンだ。

 よって更に1枚マナが増える。これで俺のマナは7枚。

 だが、俺の動きはまだ終わらない。

 

「次に《フレイムバーン》のもう1つの登場時能力を解決する。手札を1枚捨て、2枚ドローだ」

 

 手札の《偽Re:の王(リコードキング) ナンバーナイン》が墓地に落ちて、2枚のカードが手元へ飛んでくる。

 マナブーストと手札補充。この動きは3ターン目でやれる最高の動きだ。

 

「僕のターン。《音奏 アサラト》をチャージ。そして《ルーベライノ》の軽減で《理想と平和の決断(パーフェクト・アルカディア)》を3マナで唱える。効果選択は2回とも光と水のカード全回収だ」

 

 天音先輩のデッキから二枚のカードが表向きになる。

 露わになったのは《アラサト》とツインパクトカードである《音奏 ハイオリーダ》だ。

 

「っ……そっちもいい動きするな」

 

《理想と平和の決断》は唱えると、3つある効果の中から2回効果を選んで使える呪文だ。

 その一つにはデッキから二枚を表向きにして、光か水を持つカードを全て回収する効果がある。

 デッキの構成を考えると、2回目の効果も確定で手札が2枚増えるだろう。

 4枚も手札を増やすのはリソース回収札としては上澄みの性能だ。

 

「っ……!」

 

 再び先輩のデッキから2枚のカードが表向きとなり、現れたカードに俺は奥歯を噛みしめた。

 

(《ヘブンズ・ゲート》に《ミラダンテ》かよ!)

 

《ヘブンズ・ゲート》は光のブロッカーを2体まで踏み倒す6コストのS・トリガー呪文。しかも先輩の場には呪文のコストを1減らす《ルーベライノ》がいるから、次のターンで使える。

《ミラダンテ》──()()()() ()()()()()()|()X()I()I()()()()()()()は光か水のコスト5以上のドラゴンの攻撃時に革命チェンジで手札から飛んできて、相手のコスト7以下のクリーチャーの召喚を封殺してくる。

 その2枚は先輩から見れば大当たり、俺から見れば最悪過ぎる代物だ。

 

「俺のターン……!」

 

 俺にターンが回ってくる。

 だが、今の俺じゃ攻め入ることができない。

 

「《ナンバーナイン》をチャージ。8マナで《オロチリュウセイ》を召喚」

 

 火・水・自然の紋章と共にフィールドへ歪な龍が現れると、同時にシールドが増える。

 その姿は頂点に人型がくっついた蛇の顔が尻尾の先にある、青い龍。

 名は《斬龍電融 オロチリュウセイ》。

 今回使っているデッキに必要不可欠になるクリーチャーだ。

 

 歪な姿はディスペクターという種族の特徴。本来は別々のクリーチャーを無理矢理に繋ぎ合わせた存在の証明だ。

 その成り立ちからディスペクターという種族を持つクリーチャーは2つの命を持つという設定を持っており、その再現としてある効果を持っている。

 

 EX(エクスト)ライフ。それはディスペクターが場に出た時、デッキトップをシールド化し、自身が場を離れる時、代わりにそのシールドを墓地へ送ることで除去を耐える力だ。

 

「っ……これで、ターンエンド」

 

 だが、このターンの動きはこれで終わりだ。あまりにも打点が少なすぎる。

 下手にシールドを割れば、《ヘブンズ・ゲート》を引き当てて勝つ可能性が消えかねない。

 

「僕のターン。《Re:奪取(リスタート・ダッシュ) アクロアイト》をチャージ」

 

 天音先輩のマナが5枚に到達する。

 つまり、アレが来る──!

 

「呪文《ヘブンズ・ゲート》」

 

 5枚のマナがタップされ、宣言と共に光の門が天空に現れた。

 天上からは光が降り注ぎ、まるで祝福を示すように何処からともなく鐘の音が響き渡る。

 そして門が開き、中から2つの光がフィールドへ降り立つ。

 

「《音奏 ハイオリーダ》と《二重音奏 サクスメロディ》をバトルゾーンへ!」

 

 光の正体は2体のワンダフォース。苦しんでいる先輩を利用してる元凶共。

 そうして現れた2体は使命を果たすように音色を奏で始める。

 

「《ハイオリーダ》の登場時能力でシールドを追加する」

 

 先輩を守る無傷のシールドが6枚へ増える。

 だが、これだけじゃ終わらない。

 

「シールドが追加されたことで《ハイオリーダ》の効果発動。GR召喚を行う」

 

 再び空間が歪み、その中から光が飛び出す。

 姿を見せたのは蛇のような姿をした岩石のクリーチャーだ。

 

「《続召の意志 マーチス》をGR召喚。そして、登場時に僕のマナが5枚かつ光文明があることで条件達成。マナドライブ5発動。更にGR召喚を行う」

「お気軽に横展開してくんなよっ……!」

 

 現れた《マーチス》の姿に苦い声が出た。

 マナドライブ。それはGRクリーチャーが持つ能力で、指定された数と文明がマナゾーンにある時に発動する。

《マーチス》の効果はその中でも格別に強い。なんせ条件を満たせば追加でクリーチャーが出てくるんだから、出てくるカード次第で一気にリソースを増やすことができる代物だ。

 

「GR召喚。来い《ルーベライノ》」

 

 そんな《マーチス》の力で2体目の《ルーベライノ》が現れる。

 面倒すぎる。これで先輩は永続的に光の呪文に使うコストが2も軽減される。

 なのに、先輩の動きはまだ終わっちゃいない。

 

「《サクスメロディ》の登場時能力発動。僕の場にいる光のクリーチャー1体につき、GR召喚を行う。場にいるのは7体。よって7回のGR召喚を行う」

 

 巨大な歪みが現れると、そこから続々とクリーチャーが飛び出してきた。

 

「さあ、出てこい《ブレイン・テンタクル》、《回収(サルベージ) TE(ティーイー)-10》、《サザン・エー》、《マーチス》」

「ふざけんなよ……!」

 

 並び立つGRクリーチャーの軍団を、俺は忌々し気に睨みつける。

 面倒な《マーチス》以外の面子もバリエーションが豊かだ。

 機械化されて電子回路が丸見えになっている無脊椎動物が2体。電子チップに改造されたヒトデが2体。機械化されたサザエが1体。普通のクリーチャーと比べたら統一感がなさすぎるだろ。

 

「《マーチス》の効果発動。GR召喚を行う」

 

 その宣言と共に再びGRゾーンへの道が開かれる。

 だが、今度の光はさっきまでの比じゃない輝きを放っていた。

 

 

 

「遍く闇を焼き払う、星の光を纏いし龍。全ての悪を葬り裁く、絶対なる審判者。さあ、出でよ《煌銀河(ギラクシー) サヴァクティス》!」

 

 

 

 天に生じた歪みから、1体の光輝く龍が舞い降りる。

 それは宝石すら上回る輝きを放つ存在、マスター・ドラゴン。

 その威圧感は他のクリーチャーとは比較にもならない恐ろしさだ。

 

「えげつねぇ……」

 

 構築された盤面に口が引きつる。

 ふざけた物量にもほどがある。14体もいるとか悪夢でしかないだろ!

 しかも、大量に並んだクリーチャーの殆どはリソース回収役。カツカツになった手札がこれでもかって程に潤う出力だ。

 

「《サザン・エー》のマナドライブ4発動。自身を破壊して2枚ドロー。次に2体の《TE-10》の効果で墓地の呪文を回収。そして《ブレイン・テンタクル》の効果でそれぞれ1枚ドローの後、手札1枚を墓地へ」

 

 先輩の手札が物凄い勢いで潤っていく。

 墓地にある《ヘブンズ・ゲート》と《理想と平和の決断》が手札に戻り、更に4枚のカードがその手元へ吸い込まれた。そこから2枚のカードが墓地へ落ちる。

 

(ああ、くそ! どうすんだよ、あのリソース差! こっちはメインがまだ使えねぇから詰めれねぇってのに!)

 

 目の前に並び立つクリーチャーの軍勢と先輩の手札枚数のせいで、スゲェ嫌な気分だ。嫌気がさしてくる。

 なんなんだよ、こっちはクリーチャーが3体しかいねぇ上に手札もカツカツなのによ!

 

「俺のターン。《栄光・ルピア》をチャージ」

 

 でも、文句を言っても仕方ない。それでもターンは巡ってくる。諦めるなんて論外だ。

 ならやれることをやるしかない!

 

「《オロチリュウセイ》の効果発動! デッキトップを確認し、それがクリーチャーならデッキから召喚できる!」

 

 デッキの上を確認する。そうして見えたカードに俺は安堵した。

 幸いにもここで外れるほど、俺の引き運は壊滅的じゃないみたいだ。

 

「さあ、出てこい相棒! ようやくなれた姿を見せやがれ!」

 

 7枚のマナをタップし、俺はカードをバトルゾーンへ送り出す。

 それに応えて、フィールドに火文明の紋章と共に1体のドラゴンが現れた。

 

「《無限超邪(インフィニティ) クロスファイア》召喚!」

《オラオラ! お出ましだ》

「行け、《クロスファイア》!」

《応!》

「迎撃しろ、《テンタクル》」

 

 赤き龍がシールド目掛けて突撃するが、その眼前に《ブレイン・テンタクル》が立ち塞がった。

 だが、そんな妨害を《クロスファイア》は一撃で粉砕する。

 

「《栄光・ルピア》でアタック!」

「《テンタクル》でブロック!」

 

《栄光・ルピア》の攻撃で残った《テンタクル》が粉砕される。

 だが、今はこれが限界だ。もう俺にできることはない。

 後は自分のデッキを信じるしかない。

 

「僕のターン。《ヘブンズ・ゲート》をチャージ」

 

 天音先輩へターンが巡る。

 マナに先輩がカードを置くと、心なしか場に並ぶクリーチャー達が俺を睨んでいるような気がした。まるで敵は葬るのを今か今かと待ち焦がれるように。

 

「このターンで終わりだ」

 

 その指揮者たる先輩の冷たい目が、俺を射抜いた。

 

「《サヴァクティス》で攻撃」

 

《サヴァクティス》が唸りを上げ、2枚のシールドを砕く。

 トリガーは、ない。

 

「《マーチス》でシールドを攻撃」

 

 更にシールドが砕かれる。これでシールドは残り3枚。

 ここにもトリガーはない。

 

「《サクスメロディ》で攻撃──するとき、革命チェンジ発動!」

 

 先輩の宣言と共に、手札と場のカードが入れ替わる。

 それに合わせて、シールドへ攻撃しようとしていた《サクスメロディ》が光に包まれ、天へ昇っていく。

 そして入れ替わるようにそれは姿を現わした。

 

 

 

「奇跡の翼、未来よりここ! 《時の法皇 ミラダンテXII(トゥエルブ)》降臨!」

 

 

 

 天使の羽が舞い落ち、荘厳な鐘の音色が響き渡る。

 天より戦場に降り立ったのは金色の鬣に法衣を纏った天使龍。時すら超越し、奇跡を超えた奇跡を起こす皇たる龍。

 

「時の法皇が全ての時を支配する! 時よ、止まれ! ファイナル革命発動!」

『グルォオオオオオオオ!』

「ぐあっ……!」

 

 その嘶きと共に茨が俺の体を縛りあげる。

 茨の痛みが駆け巡る。シールドの引き裂くような痛みとは違う。食らいつき、締め上げるような痛みだ。

 しかも、それだけじゃない。

 

(体が、重い!)

 

 茨に縛られてるからだけじゃない。まるで時間が止まった中を無理矢理に動いてるみたいだ。

 その重さに思わず膝をついてしまう。

 

「これで君は次のターンの終わりまで、コスト7以下のクリーチャーを召喚できない」

「大半のトリガー獣を封殺かよ」

「そうだ。今までの動きを見るに君のデッキ、ドラゴンのビッグマナって言ったところだろ。それもさっきの動きを見るにメインになるカードのコスト帯10辺り。早期に攻めてくる相手にはトリガーで耐えるんだろうけど、それも無意味になった」

 

 昏い瞳で語る先輩の手札が一枚増える。《ミラダンテ》の効果の登場時能力だ。

 

「とっとと消えてくれ。僕は、僕の理解者といたいんだよ。それ以外はどうでもいい!」

 

 心底憎い、邪魔だ、という感情を隠さずに、先輩が俺を睨みつける。

 

「《ミラダンテ》で残るシールドをブレイク!」

「ぐああっ!」

 

 残る3枚のシールドを《ミラダンテ》の咆哮が砕く。

 その破片が皮膚を次々に引き裂いていく。

 

(ああ、本当にクソみたいな盤面作りやがって!)

 

 体のあちこちが痛みで悲鳴を上げてる。

 クリーチャーは8マナ以上しか出せない。デッキにはこの盤面を返せる呪文は入ってない。

 これ以上ない詰み盤面だ。

 

 

 

 

「ああ、やっと来やがったな──!」

 

 

 

 

 ──このデッキじゃなかったらな。

 

「S・トリガー!」

 

 3枚のカードが宙を舞い、その内の2枚が光を放つ。

 ボロボロの体を鞭を打って、その光を俺は掴んだ。

 

「来い《ストーム・ハイパーXX(ダブルクロス)》!」

 

 俺の叫びと共にフィールドへ爆炎が現れる。

 その炎を破って現れたのは、双剣を握り鎧に身を包んだ赤き龍。

 

「更に《ガイアッシュの海地図(ビジョン)》!」

 

 その次に現れたのは青き龍が描かれた石板。

 タマシード。それはクリーチャーや呪文とは異なるカードタイプ。

 永続的に場へ残り、効果を発揮するものだ。

 

「トリガーのタマシードに、トリガー獣だと!?」

 

 現れた2枚の姿に、冷たかった先輩の表情が驚きに歪む。

 無理もない話だ。《XX》は11マナのドラゴンで、《ガイアッシュの海地図》は種族ドラゴンのタマシード。見事に今の俺にかかってるロックをすり抜けるんだからな。

 

「だが、そのクリーチャーのパワーは0! そんなクリーチャー1体とタマシード1枚で、この軍勢を相手に何ができるっていうんだ!」

「そいつはどうかな?」

 

 苛立つ先輩へ精一杯の笑顔で答える。

 くっそ、笑うのも結構キツい。でも、やっと反撃だ!

 

「さあ、派手に行くぞ! 《XX》の登場時効果発動! こいつのパワーより小さいクリーチャーを全て破壊する! こいつのパワーは俺の場にいるコストが異なるクリーチャー1体につき、3000上がる! 俺の場には《XX》含めて5体! よってパワーが15000より小さいクリーチャー全てを破壊だ!」

「なにっ!?」

 

《XX》が爆炎が巻き起こし、敵を焼き尽くしていく。

 先輩の軍団の殆どにはこの炎から逃れるすべなどない。

 恐ろしかった軍勢は一瞬にして、1体のマスター・ドラゴンを残して全てが消えていった。

 

「……そんな、僕の、クリーチャーが……」

 

 焼け野原となったフィールドを見て、先輩が呆然として呟く。

 

「たえ、きったぜ……っぐ」

《大丈夫か!? マスター!》

「結構キツい……次のターンで決めねぇとヤバいかもな」

 

 デュエル前にマナを《クロスファイア》に吸わせたせいで、デュエル中のダメージも合わさってフラフラだ。正直、踏ん張りも結構危なくなってきてる。

 でも、チャンスはしっかりと舞い込んできてる。砕かれたシールドの中からな。

 

「俺の、ターン!」

 

 残ってる力を振り絞り、カードを引く。

 

「ふう、ふぅ……!」

 

 カードを引くだけでも息が切れる。

 長時間の試合で疲れることがあっても、デュエルで息が切れるなんて経験はそうできないな。

 

(ああ、これだけは言わねぇとな)

 

 それでも天音先輩に言わなきゃならないことがある。

 夢を持つ人を羨む奴として、言っとかなければならないことがある。

 

「先輩……夢、捨てちまうかよ」

「何を──」

「アンタ言ったよな、自分の音を世界に届けたいってよ。そんなこと言ってた奴が、こんな有様でいいのかよ!」

「なにも知らないで、勝手なことを!」

 

 畳みかける俺に天音先輩も怒号をあげる。

 怒ってる。なのに、その声は泣いているようにも聞こえてきた。

 

「君といい、クラスのJack-Potといい、良い御身分だ! キラキラした夢へ向かってる奴らは気分が良いだろうさ! 夢が呪いになったことがない奴に何が分かる!? 分からないだろ! 好きだったものが苦しくなる絶望なんて!」

 

 なんて酷い叫びだ。聞いてるこっちすら泣きたくなってくる。

 あの叫びは絶望だ。好きなものに感じた苦しみへの絶望で、それを感じてしまった己に向けた激しい絶望なんだ。

 だからこそ、言わなきゃならない。

 

「そうさ。確かにアンタの言う通りだよ、夢は持ち主を縛る呪いになる。でもな! そいつは夢に縛られるんじゃない! 夢に折り合いがつけられない後悔に呪われるんだよ!」

 

 夢が呪いに転じるなんてない。それを俺は知ってる。父さんがそれを教えてくれたから。

 ギタリストの夢が叶わなかった父さん。でも、あの人の夢は呪いになんてならなかった。

 失敗しても、そこから立ち上がっていった。それは失敗しても、それでも自分が芸能業界に携わっていきたいって気づいたからだ。

 そんな夢を持って叶えようとした人ってのはバイタリティの塊だ。だからこそ、他の人よりも立ち上がって結果を出せるんだと思う。

 

「成功するならそれでいい! でもな、失敗しても終わりじゃないんだよ。その結果が新しい道を開くことだってある! そいつは祝福だ! だからこそ、挫折もできねぇ奴は呪われるんだ! 夢を叶えようと前に進むこともできねぇ、全力でぶつかって諦めることもできねぇ。どこにも行けずに腐ってくんだよ」

 

 成功も失敗も等しく前進の一歩だ。それが夢見た道か、それとは違う道を進むだけ。

 出来る事と出来ない事。どちらも自分を知っていくことなのは変わらない。そうなれば、自分の中で折り合いを付けられるんだと思う。

 だからこそ、もう何処へも行けなくなった奴は呪われるんだ。

 

 挫折する前に夢へ挑む権利を奪われ奴──俺なんて良い例だ。

 ギターを奪われた事故を思い出したり、夢を持って頑張ってる奴を勝手に羨ましく思ったりしては勝手に自己嫌悪で苦しんでる。哀れにも程がある。

 だからこそ、言わなきゃならなかった。

 

「アンタはまだ自分で選べるんだよ! 夢に挑めるんだよ! そっから変わることだってできるんだよ! 自分のことをクリーチャーなんかに握らせてるんじゃねぇ!」

 

 カードをマナゾーンに叩き付ける。条件は達成された。

 

「だからこそ、アンタをぶっ飛ばす。アンタを逃がさない。このままじゃアンタが絶対後悔で苦しむことになるから!」

 

 叫びと共にマナが次々とタップされていく。

 そして、俺はカードを掲げた。

 

 

 

「──響け、荘厳なる旋律。悪しき運命(さだめ)を砕き、降臨せよ。王たる龍! 《「戦慄」の頂 ベートーベン》!」

 

 

 

 青き光と共に荘厳な白き鎧を纏った王が、黄金のラインが走る白き槍を携えて戦場へ降り立つ。

 それは戦慄の王龍。力の権化たる龍を統べる存在。

 ──だが、現れた王の目は悲しみに淀み、似合わぬ悲嘆に染まった雄叫びをあげた。

 

「それは、そのカードは──」

「アンタが俺にくれたカードさ。こいつを使うためにどうにかデッキを作ったんだよ」

 

 驚愕に染まった天音先輩へ俺は笑う。

 俺の組んだデッキはドラゴンのビッグマナ。

 そのキーカードにしたのは先輩が俺に譲ってくれた《ベートーベン》だ。

 だが、ただの《ベートーベン》じゃない。こいつはもう絶版になってる初登場パックから出てきた十年以上前のカードだ。しかも状態は良好で、コレクションとしてはお宝だ。

 渡された時は流石にビビるに決まってる。

 

「《ベートーベン》が召喚で場に出た時、ドラゴンか無色呪文を合わせて3枚、墓地かマナから回収。そして3マナブーストだ」

 

 カードが墓地とマナから俺の手元へ集まって来る。

 墓地からは《ナンバーナイン》が、マナからは《モーツァルト》と《オロチリュウセイ》の2枚が手札へ集まっていく。

 

「さあ、行くぞ! 《ベートーベン》でシールドを攻撃!」

 

 白き王龍が動き出す。

 本来なら召喚酔いで動けない《ベートーベン》だが、《オロチリュウセイ》のSA(スピードアタッカー)付与のお陰ですぐに動ける。

 だが、これだけじゃ終わらない。

 

「──するときに、アタックチャンス発動!」

 

 俺はカードを叩き付ける。

 

「自分の道は自分で決めやがれ、呪文《運命》!」

 

 それは《ベートーベン》が与える運命の選択。

 その効果は0から5枚までカードを引いた後、手札から相手に3枚を選ばせる。そうして選ばれた中にあるドラゴン全てを踏み倒して場に出す代物だ。

 

「ドローは無しだ。さあ、選びな!」

「ならッ!」

 

 俺の手札が宙を舞い、カードたちが独りでに混ざっていく。

 そうして先輩に選ばれたカードが表向きになっていく。

 

「アンタが選んだのは《偽Re:の王 ナンバーナイン》と《偽りの王 モーツァルト》、そして《斬龍電融 オロチリュウセイ》だ」

 

 フィールドへ新たに3体の龍が並び立つ。

 その内の2体は鎧を纏った龍。《ベートーベン》の配下たちだ。

 

「《ベートーベン》でT(トリプル)ブレイク!」

「シールドチェック!」

 

 砕かれたシールドが光を放ち、先輩の手札へ吸い込まれていく。

 だが、その光はすぐに輝きを失っていった。

 

「なっ、僕のトリガーが!?」

「《ナンバーナイン》の効果だ。こいつがいる限り、相手のあらゆる呪文を永続的に封殺する!」

 

 先輩のデッキに入ってるトリガーは殆どが呪文のはずだ。

 このロックはかなり効くだろう。

 

「《XX》で残りのシールドを攻撃!」

「ちいっ!」

 

 全てのシールドが砕かれ、一瞬の光を放つ。だが、その全てが輝きを失っていく。

 これで詰みだ。

 

「《クロスファイア》でトドメだ!」




夢と旋律、終幕へ
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