Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘   作:新米ユーリ/神座/DMP

22 / 26
やっと、ここまで来れた。
誤字脱字報告や感想、ありがとうございます。
ちょっと遅くなってしまいましたが、これより『アオハル』編、始まります

※一部描写のミスがあったので修正しました。
ロムが5組、リンが4組です。


2幕 アオハル衝突・ドラゴン娘とデュエリスト
21話:青春のひと時――デュエリストたちの日常


 ──夢を見る。

 

『ふふふっ、ふははははははは……ははははははっ!』

 

 荒野に立ち、狂気に染まった己の姿を。

 

『あぁ、もう誰にも負けないさ!』

 

 怪物を従えて、ただの強さを求めていく。

 そんな道から外れていく己の姿を。

 

『ふざ、けんな……!』

 

 そんな僕と対峙して、ボロボロになっていく友達の姿を。

 

『似合わねぇんだよ、クソが!』

 

 傷だらけになっても、僕を止めようとする友達の姿を見ている。

 それはあまりにも荒唐無稽なのに、現実感に満ちた夢だった。

 

(ライト……)

 

 その光景に僕──御崎賢哉は今すぐ駆け出したかった。

 ボロボロになっていく友達の下へ、今にも倒れそうになってる体を支えてあげたかった。

 なのに、身体が動かない。

 自覚している夢──明晰夢のはずなのに、いくら藻掻いても身体は一歩も動かない。

 

 

 

《──エ──ルカ》

 

 

 

 藻掻く僕の耳を声が震わす。そして、眼前が炎に包まれた。

 

「なっ……!」

 

 夢の全てが炎に包まれていく。

 荒野の戦場も、狂気に飲まれた僕も、傷ついていくライトの姿も、全てが紙に描かれた絵のように燃えていき、風景が塗り替わっていく。

 そうして現れたのは、炎に包まれた岩肌だった。

 辺りを見渡せば、あるのは緑一つない岩肌の群れ。

 まさに地獄の山と言える魔境だ。

 

《キ──エ──カ》

 

 僕の体に影が差す。辺りを見ても、あるのは岩肌と炎だけだ。

 つまり、影の源は──

 

「っ──!」

 

 見上げた先で、僕は息を呑んだ。

 そこには1体の龍が翼を広げて、空に佇んでいた。

 

「きみ、は──」

 

 それは鎧と炎に身を包んだ赤き龍だった。

 白き鎧と片手を覆う巨大な籠手(ガントレット)

 そんな特徴を持ってる龍の名前を僕は知っている。

 

「ボルシャック・カイザー……?」

 

 その名前を呟いた時、僕の身体を炎が包む。

 そして、僕の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

「っは──!」

 

 夢から覚めると、僕の体は布団から跳ね上がった。

 

(いま、のは──)

 

 心臓に手をやると、鼓動がドクドクと激しい音を上げている。胸が痛い。

 

「はあ……はあ」

 

 呼吸を整えながら辺りを見渡す。

 そこにあるのは、いつもと変わらない自室の光景だった。

 普段から踏みしてる畳も、普段から使ってる文机やタンスも、縁側と室内を区切る襖にも変わりはない。

 

「あぁ、ったく……なんなんだ……」

 

 頭を抑えて、溜息をつく。

 時計を見れば、針が示しているのは朝の4時。普段してる朝の鍛錬よりも早い目覚めだ。

 

()()、あの夢……)

 

 狂気に染まった僕と、それを止めるために戦うライトの夢。

 それを塗り替えるように現れるドラゴンの夢。

 二日前から寝てはこの夢ばかりを僕は見ていた。

 

(あれが、関わってるのか?)

 

 その原因に心当たりはあった。

 

(デュエマのクリーチャーと、それと戦う人)

 

 二日前の放課後、僕は──超常の戦いを目にした。

 ゲームの中にしかいないはずの存在が現実にいて、それと戦う人がいることを知った。

 驚いて混乱した中でも、目の前に現れたサイバーパンク風のジャケットを着た二人組の姿は、しっかりと焼き付いてる。

 そうして戦いが終わった後、戦った二人は何も言わずに去っていった。

 

「まさか、あれが現実?」

 

 その経験が、夢に妙な現実感を与えていた。

 

「……まずは、あの人に聞いてみるか」

 

 確かめないといけない気がする。

 きっと、あれはただの夢なんかじゃない。

 あの人なら、少なくとも何かは知ってるはずだ。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 それは天音先輩の騒動から二日経って、四月の下旬に差し掛かろうとしている日のこと。

 昼放課の図書室。利用者がいなくてガラガラになってる部屋の片隅、置き畳のスペースで俺──翔野来人はデュエ友──翔子、リン、ロムの三人と集まっていた。

 

「そういえば、部活の予算案提出って今日の朝が期限だったよね」

 

 翔子がそんなことを言ったのは、彼女とリンによる対戦の真っ只中だった。

 

「部活の予算案?」

 

 急に出てきた話題に俺は首を傾げると、リンが頷く。

 

「だね、アタシの所も結構大変だったなぁ。出費が嵩むとかでさ」

「そういや、水上ってゲーム部だったか」

「おお、ライトってば覚えてくれてたんだ。忘れられてると思ってた」

「さらっと失礼なこと言うんじゃねぇよ、お前」

「まあまあ、ごめんって」

 

 リンが愛嬌のある笑みを浮かべる。

 可愛いが、さっきの言いようがムッとしたから軽く小突いてやりてぇ。

 

「やっぱり他の部活もきりきり舞いだよね。《ソーナンデス》で《デドダム》へ攻撃、する時にJ(ジョーカーズ)チェンジ発動。マナの《ジョット・ガン・ジョラゴン》と入れ替わる」

「うっげ、もう出てきた……」

「《デドダム》撃破。これでターンエンド」

「盤面空っぽになっちゃったよ」

「割と早く出てきたな《ジョラゴン》。それで、予算案だっけか。何が大変なんだよ?」

 

 いまいち分からなくて問いかけると、リンはカードを引きながら溜息を吐く。

 

「アタシたち1年が入学して、もう半月立つでしょ? 新メンバーも馴染んできてこれからやってこうってなるわけじゃん。うちのゲーム部とかだと道具、運動系……空手部とかは合宿費用込々で、結構な予算がいるわけ。その予算案を考えるのが大変で、どの部活も苦労してるっぽいね」

「だね。漫研もデジタル系の機材は金食い虫だって、部長がぼやいてたよ」

「はぁ、そういうもんなのか」

 

 帰宅部兼クリーチャー退治に勤しむ俺にはよくわからん話だ。

 すると、今度はロムが口を開いた

 

「生徒会も大変だろうな。予算も無際限ってわけじゃないから、申請してきた案からいくらか減らすことになる。そうなったら、口論も避けられないだろうし」

「ああ、なるほど。確かにそいつは面倒そうだな」

 

 生徒会の仕事は色々とあるが、部活動とも関わるのか。言われてみると納得だ。

 それはそれとして、ロムから生徒会のことが出るとはな。

 

「ちょいと意外だ」

「何が?」

「間桐が生徒会のことを知ってるのがだよ。そういうには全然興味なしって思ってたぞ」

「お前は俺を何だと思ってるんだよ」

 

 ロムが呆れかえった視線を突き刺してくる。そんな目で見るなよ。

 お前ってば周りのことに少し無頓着だったりするから、生徒会のことも何も知らないって思ってたんだよ。

 

「でも、確かに意外だ。生徒会ってまだ大きな活動はしてないから、他の生徒からすると知名度はないしね」

 

 ロムの視線から逃げるように顔を背けると、その先で翔子が目を輝かせて笑っていた。

 どうもロムの反応は翔子の好奇心を刺激したらしい。

 

「ねえ、ロム。もしかして生徒会入りを狙ってたりしてた?」

「ええ? ロムってば、そういうのに憧れとかあるタイプなんだ?」

「水上まで食い付くのかよ……」

「物好きめ」

 

 女子二人がキラキラした目をロムへ向ける。

 横目に見てみると、当のロムは面倒さそうに眉をひそめてるが、そいつは悪手だ。そんな態度をとっても女子二人は止まらない。

 ロムもそれに気づいて観念したのか、大きな溜息を吐いた。

 

「別にそういうことじゃない。ただ、生徒会に1人、中学からの友達がいるだけだよ」

「ほほう、それはまた意外な話だね」

「へぇ、中学の友達と一緒なんだ。ちょっと羨ましいなー」

「マジかよ」

 

 まさかのカミングアウトだ。

 留学生のゼオスは別として、生徒会の4人のうち誰かが友達って予想がつかない。

 全員ロムとキャラが合うのか?

 

「この話はもういいだろ。対戦に戻ってくれ」

 

 うんざりだと言いたげにロムがそっぽを向く。

 女子二人はそんな姿も見てて楽しいのか、笑顔を崩さない。

 

「はいはい、分かった分かった」

「恥ずかしがらなくてもいいのに」

「この愉快犯ども……」

 

 呆れてため息が出るが、女子二人は意にも介さず手慣れたカードさばきでデュエルを再開した。

 

「《デドダム》と《アイオン・ユピテル》召喚。《デドダム》の効果で整えて、《ユピテル》で《ジョラゴン》へ攻撃。それで侵略発動。《デッドダムド》へ進化させて、効果で《ジョラゴン》を墓地へ」

「やっぱり来るよねぇ」

「これでターンエンド」

 

 戦いはリンの有利に傾いてる。まあ、握ってるデッキ的には当然ではある。

 リンが握ってるのは水・闇・自然(アナカラー)の【ダムド】。

 対する翔子が握ってるのは火・自然が主のジョーカーズ。

 マナの数は翔子がリードしてるが、デッキパワーの開きは歴然だ。

 

「マナチャージして、《バークアステカA(エース)召喚。登場時効果で《デドダム》を墓地へ」

「あーやっぱり潰しに来るよねぇ。というか《アステカA》って、翔子ちゃんマイナーカード引っ張ってきたね」

「ここ最近はジョーカーズがマイブームでね、色々と使えないか試行錯誤してるんだよ」

「へぇー、そうなんだ」

「それじゃあ、《アステカA》でW・ブレイク」

 

 リンは出てきたカードに驚きながらシールドを捲っていく。

 が、内容を確認するや否やニヤリと笑った。

 

「S・トリガーゲット! 呪文《テック団の波壊GO!》。《アステカA》を破壊」

「……これで、ターンエンド」

「アタシのターン。マナチャージして、墓地のフシギバース発動! 《デッドダムド》をマナに送って、《大樹王 ギガンディダノス》を墓地から6マナで召喚。登場時効果で相手の手札を全てマナへ落とす」

 

 場に現れたのは木々が生い茂る巨竜。

 その能力は敵の全ハンデスと自身より弱いクリーチャーによるプレイヤー攻撃の封殺。

 もう勝敗は決まったも同然だ。

 

「……投了しよう。流石にそれを出されたら勝てないよ」

 

 翔子が両手を上げながら力なく笑う。

 分かるぞ、翔子。《ディダノス》のロックは本当に決められると嫌になるよな。

 

「ふっふっふ、やっぱり【ダムド】で決める《ディダノス》は気持ちいね!」

 

 一方でリンはふんすとドヤ顔になっていた。

 

”キーンコーンカーンコーン♪ キーンコーンカーンコーン♪”

 

 そのタイミングで予鈴のチャイムが鳴り始める。

 

「ありゃ? もう時間?」

「みたいだね」

「そんじゃ急ぐか」

 

 デッキを片付けると、急ぎ足で図書室を出る。

 廊下に出た後、辺りを見渡して先生がいないことを確認すると、俺達は廊下を走り出した。

 

「誰にも見つかりませんように!」

「祈っても意味ねぇだろ……」

 

 走りながら手を組むリンを半目で見ながら、俺達は一般教室棟に踏み入る。

 

「じゃあな」

「それじゃあ、アタシもこれで!」

 

 5組の教室を通り過ぎるところでロムが抜け、4組の前ではリンが抜けていく。

 そうするうちに、廊下の突き当りに位置する俺達の教室が見えてきた。

 

「よーし、到着」

「まぁ、ギリギリだけどな」

 

 教室へ飛び込む。時計を見てみると、自分たちの教室に着いたのはチャイムが鳴る2分前。

 自分のことながら、ギリギリだ。もう少し時間を見るようにしとかないといけないな。

 

「あ、そうだ」

 

 そんな自省をしてると、翔子が何か思い出したに目を見開いた。

 

「ねえライト、放課後ちょっと手伝ってよ」

 

 そういって彼女はニヤリと笑った。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

『えっしゃおらー!』

『よーしよしよし、行け行け行け! 逃げ切れ!』

『捲れ! 捲れー!』

『差せ! 差せー!』

 

『俺の愛馬が!』

 

 昼放課になると、3年のフロアである3階はかなり騒がしくなる。

 後輩たち――1年や2年がどんな感じかはいまいち知らねぇが、少なくとも3年は少し落ち着けよと思うぐらいには愉快な有様だ。

 

「ったく、うっせーっての」

 

 一般教室棟の屋上、その塔屋の上で俺――尾瀬(おぜ)甲介(こうすけ)は、下から聞こえる喧騒にうんざりしながら、スケッチブックに鉛筆を走らせていた。

 

「よーし、いい出来じゃねーの」

 

 スケッチブックに描いてるのは屋上から見える町の眺め。

 桜の絵もしっかりと完成させて、気分転換にやり始めたが、我ながら良い絵を描くもんだ。

 ステップルの奴が抱えてた焦りとかも持ってったのか、今じゃ心穏やかに描ける。

 気分よく鼻歌まで歌ってると、屋上の扉が開く音が聞こえてきた。

 

「尾瀬先輩、いますか?」

 

 下から声が聞こえてくる。下のフロアからじゃない。俺が今いる塔屋の下からだ。

 

「誰だ――って、お前」

 

 下を覗くと、そこには1人の男がいた。

 短い黒髪に優男っぽい顔つき――1年の後輩、御崎賢哉。

 御崎の奴は妙に真剣そうな眼つきで俺を見ていた。

 

「何の用だ?」

「ちょっとお話したいことがあって」

「そこに梯子があるだろ、上ってこい」

「あっはい」

 

 顔を引っ込めると、御崎はすぐに梯子を上って来た。

 やってきた御崎の顔は妙に硬い。しかも俺が座ってるってのに、ぼっ立ちだ。

 

「座れ」

「あっはい」

 

 床を指さして座るのを促すと、御崎は慌てて胡坐を組んで座った。

 

「で、何の用だ?」

「先輩にお聞きしたいことがあるんです。一昨日の事で」

 

 御崎は胡坐から正座へ体勢を整えると、真剣な眼差しを向けてきた。

 どうも結構真面目な話らしい。

 それにしても、一昨日か。こいつが聞きたいことって何かあったか。

 

「……ああ、そういうことか」

 

 少し記憶を掘り返してみると、思い当たる物があった。

 そういえば、コイツと一緒にクリーチャーの群れと出くわしてたな。

 思い出してきたぞ。確か、どうにか切り抜けようとしてたら、妙な二人組が出てきて、そいつらがクリーチャーをぶっ倒してった後、俺も急ぎの予定があったから、呆然としてたこいつを放置して帰っちまったんだ。

 

「お前が聞きたいことって、クリーチャーのことか」

「っ……はいっ」

 

 頷く御崎の目が少し見開いた。

 どんな気持ちなのかはいまいち分からねぇが、お目当ての話を一発で引き当てたことに驚いたってところかね?

 

”キーンコーンカーンコーン♪ キーンコーンカーンコーン♪”

「ありゃ?」

 

 いざ話そうとした時、予鈴のチャイムが鳴り始めた。

 スマホを取り出して時計を見てみると、数字は昼放課終了まであと5分を指してる。

 

「やばっ……」

 

 御崎の方を見てみると、同じようにスマホで時間を見ていた。

 どうもタイムアップは想定してなかったのか、その顔は青ざめてる。

 

「すいません、先輩。失礼します」

「おい、御崎」

 

 慌てて中へ戻ろうとする御崎を呼び止める。

 梯子に足をかけていた野郎の顔は、妙に呆けてた。

 

「放課後、ここに来い。テメェが気になってること、俺が知ってる範疇なら教えてやるからよ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。