Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘   作:新米ユーリ/神座/DMP

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 やっと更新できた!
 お久しぶりです! そして新年明けましておめでとうございます!
 久々の更新となりましたが、どうかこれからも拙作をよろしくお願いいたします。


23話:青春のひと時――部活命たち

※ ※ ※

 

 

「あー、つまり? 部費の予算で揉めたってことか」

 

 その後、俺と翔子は生徒会と共に五人組──アオハル組を追いかける形で武道場を飛び出し、特別教室棟で立ち往生していた。アオハル組を見失ったのが主な理由だが、一応俺達が合流するまでに起きた経緯を聞くためでもある。

 

「そうそう、ボクとギャイがゲーム部に行って」

「朕とすずちゃんでビジュツブ? に行ったの」

「そっから交渉決裂しちまったのね……」

「あはは……なるほど。それにしても、アーシュちゃんってば話が平行線になったからって、勝負で決めるって思い切ったね。ちょっと意外だな」

「ちょっ違いますよ翔子ちゃん! あれは伍代さんが吹っ掛けてきたんです!」

「おい、割と真面目な話だぞ……」

 

 翔子が苦笑しながら言うと会長が涙ぐんだ声でそれを否定し、そこへ熊田が突っ込む。

 頼む翔子よ、今ぐらいは揶揄わずに緊張感を持ってくれ。

 

「しっかし、面倒なことになったな」

 

 事の経緯を聞いて、俺は思わず天を仰いだ。

 今の状況は結構よろしくない。生徒会からすると予算の話は火急の事態だし、俺からするとクリーチャーがアオハル組という無関係な面子と関わってるのがマズい気がしてやまない。

 

 一応、今確認されてる《消男》は大した奴じゃない。ドラゴン化してない真久間が今も片手に捕まえてるし、伍代の奴も素手で捕まえてる以上、奴による怪我人は出ないだろう。

 だが、この学校には色んなクリーチャーが潜んでる。もしも今の騒動に釣られてヤバいのが出てきたら、怪我じゃ済まないかもしれない。その可能性がある以上、騒動を収めるのは急務だ。

 ……胃が痛くなってきた。

 

「……取りあえず、どうする?」

「なら、まずは分かれよう。こっちの方が人数じゃ勝ってるんだ。人海戦術でクリーチャーを押さえよう」

 

 ため息を吐きながら全員に問いかけると、翔子が真面目な顔で答えた。

 お前、できれば最初からそうしてくれよ。

 

「……会長たちもそれでいいか?」

 

 会長たちの方を見ると、五人は納得した顔で頷いた。

 ひとまず、やることは纏まったな。

 

「そんじゃあ、このまま散会──」

「あっちょっと待ってください」

 

 離れようとしたタイミングで、会長は俺達を呼び止めた。

 

「一応、グループ通話を繋げておきましょう。何かあってもいいように」

 

 そういって会長は俺達にスマホの画面を見せてきた。

 なるほど、グループ通話を無線みたいに使うのか。確かに良いかもしれない。

 

「クリーチャーを捕まえたら、その都度教えてください」

「分かった。何か変なことが起きたら、俺か翔子を呼んでくれ。すぐに飛んでく」

「だね、もしも危なそうなクリーチャーが出たら教えて」

 

 そうして各自の行動を決めた後、俺達は校舎に散会していった。

 

 

※ ※ ※

 

 

「ふぅ……ふぅ……」

 

 ボク──神上翔子は全力で廊下を突っ走っていた。褒められた行為じゃないけど、今は非常時だし、何度もやってるんだから今更だ。

 

『ヘドゥルルル~』

「このッ! 待て!」

 

 前方をちょこまかと動き回る黒板消し頭の異形(クリーチャー)──《消男》に手を伸ばすけど、奴と私の距離は一向に縮まらない。あいつ、中々にすばしっこい!

 

「ああもう! 大人しく捕まってよ!」

『ヘドゥルルル、お前みたいなヘッポコには捕まる方が難しいドゥル~」

「なっ、なにぉ!」

 

 あのヘボクリーチャー、アタックもできないパワー4000のポンコツのくせに言ってくれるじゃないか! 頭にきた!

 

「ジョニー!」

《お前、そんなことでキレるなよ》

「相棒が貶されてるんだから少しは怒ってよ!」

 

 相棒に呼びかけても、当の相棒から返って来たのは辟易とした声だった。

 なんて薄情な相棒だろうか。少しは気遣ってよ。

 確かにちょっと体育は苦手だけど、いくらなんでも貧弱って言われるほどじゃない。

 

「それにあいつをさっさと捕まえないと!」

《なら尚更無理だ。俺が出ても、一発撃つだけで消し飛ばしっちまう。それじゃあ意味がねぇだろ?》

「えっ? ……あっ、そうだった……」

 

 ジョニーからの指摘でハッとした。

 そうだった。ジョニーの銃撃って余程の大物クリーチャーじゃなければ簡単に倒せるんだった。捕まえた数を競うんだから、倒したら台無しだ。頭にきて忘れてたよ。

 

「な、ならロープで縛りあげるのは──」

《俺の姿を勝負相手や他の生徒に見られる可能性があるぞ》

「……ライトと別行動にしたのは失敗だったかも」

 

 人海戦術で押さえようって自分から言った手前、一人で動くことにしたけど、ライトと組めばよかったかもしれない。

 そんな時、片耳に突っ込んでたイヤホンからグループ通話で繋がってる皆の声が聞こえてきた。

 

『メガ、そっちに行ったで!』

『そぉおれ! 捕まえた!』

『よし、いいぞ! そのままいけ!』

『アラ? くすぐったいワネ!』

『えいっ! こっちも捕まえました!』

『まずは一匹! ぼあっ!? テメェ、顔に何ぶっかけやがった!』

 

 聞こえてきた内容的に皆はそれぞれ獲物を捕まえてるみたいだ。

 メガちゃんはギャイちゃんと、すずちゃんはゼオスちゃんとで組んでるっぽいね。

 

(これ、ボクとライトとアーシュちゃんで組めばよかったんじゃ?)

 

 一人で動いていったライトはともかく、アーシュちゃんも一人で動いてる。

 いつぞやみたいに三人で集まれば楽になったかも。

 

「うぬぬ……」

《唸っても仕方ないぞ。今は目の前の獲物に集中しろ。勝負に勝つんだろ?》

「それは……そうだけど」

 

 唸るボクにジョニーが呆れ気味に告げる。このガンマン、もうちょっと励ましの言葉をくれてもいいんじゃないだろうか。そりゃ、ぶっきらぼうな所がカッコよさの秘訣だけどさ。

 

(ああ、もう! 切り替えろ! 取りあえず今はクリーチャーの捕獲が最優先!)

 

 両手で顔を叩いて気合を入れる。今は目の前の事に集中しなきゃ。

 

「まずは一匹、ボクも捕まえる!」

 

 走る足を一瞬深く踏み込ませて、《消男》へ飛び掛かる。

 そうして、ボクと奴の間がようやく埋まった。

 

『ヘドゥ!? 危ないヘドゥ!?』

「なっ!?」

 

 だが、現実は上手くいかない。

 ボクの手が《消男》に届こうとした瞬間、奴は体を捩じって捕獲の手から逃れ出た。

 

(マズった!)

 

 獲物を逃した身体は、飛び掛かった勢いのまま宙を舞う。

 捕まえることしか考えてなかったから、受け身が間に合う体勢じゃない。完全に顔面から床へ突撃コースだ。

 

(やばっ!?)

 

 激突の回避を諦めて、咄嗟に目をつぶって両腕で顔を覆う。

 流石に顔面から行くのは御免だ。

 

「catch♪」

 

 だが覚悟していた床への激突は訪れなかった。代わりに感じたのは柔らかい人肌の感触。

 そして耳に届いてきたのは聞きなれた声。

 

「ジュラ子……?」

 

 目を開いて飛び込んできたのは赤のロングヘアにサンバイザー、ジュラ子の姿だった。

 自身の状況を確認してみると、ボクはジュラ子を下敷きにして彼女の腕に抱かれていた。

 どうやら彼女は床とボクの間に滑り込んで受け止めてくれたらしい。

 

「大丈夫かしら? 翔子」

「えっ、あ、うん」

「OK! ならよかったわ!」

 

 突然の事に呆然としていたボクを、ジュラ子は笑いながら立たせる。

 それにしても、ジュラ子ってばいつの間にボクの側に来ていたんだ? 少なくともついさっきまでは周り誰もいなかったはずなんだけど。

 

「捕まえたでし!」

 

 次の瞬間、背後からまた聞きなれた声が聞こえてきた。

 急いで振り返ると、ボクらの少し後方に《消男》を両手で掴んでるマロンがいた。

 

「どうでし、神上。まずはこっちがリードでし!」

「ありゃりゃ、ははっ一本取られちゃったか」

 

 こっちの視線に気づいたのか、彼女がこっちにやってきた

 ドヤ顔を見せてくるマロンに思わず笑った。結構真面目な勝負のはずなのに、こっちがしていた真剣な心持ちが揺らいでしまう。

 

「……二人とも策士だね。いや、考えたのはマロンかな? 見事に漁夫の利かまされたな」

 

 ひとしきり笑ってひと息つくと、友達二人へできる限り真面目な視線を向ける。

 完全に一杯食わされたよ。

 ジュラ子は正々堂々と真正面から勝負をするタイプだけど、マロンはライン越えじゃなければある程度の絡めては使ってくる。

 恐らくはマロンが少し策を講じたんじゃなかろうか。

 

「No, that's wrong.翔子、これはcoincidence。私たちは何もしてないわ」

「流石に我が輩も今みたいな状況は考えないでし……」

 

 そんなボクをジュラ子は毅然とした態度で、マロンは少し呆れ気味に否定する。

 

「…………自分で言っといてアレだけど、確かに」

 

 友達二人にちゃんとした態度で否定されると、自分の考えも変な気がしてきたな。

 考えてみると漁夫の利しようとするより、手分けして総当たりした方が確実かもしれない。獲物が何処にいるのかなんて分からないし、相手がちょうどいい失敗をするかも分からないわけだし。

 

「あー、変な空気に当てられたかも……」

 

 自分の言動を振り返ってみると、ちょっと変になってるな。

 大事の勝負に巻き込まれて、テンションがおかしな上がり方をしたのかもしれない。

 

「翔子? Are you okay?」

「おまえ、どうしたでし?」

「ああいや、気にしないで。ちょっと冷静になってただけだから」

 

 不思議そうにこっちを見てくる友達二人の視線が妙にこそばゆい。

 流石にテンションが変な上がり方して、冷静になったら恥ずかしくなってきたなんて言えるわけがない。話題を強引にでも変えないとな。

 

「それにしても、まさか二人に獲物を横取りされるなんて。二人とも、結構やる気満々なんだね」

「Of course! この勝負は試合と同じくらい負けられませんわ!」

「当たり前でし! 予算にこっちの融通が利くようになるなら、なんでも作れるようになるでし!」

 

 ボクからの話題に二人はその目に闘志を燃やして頷いた。

 

「なんでもって、マロンは何をする気なんだい……」

 

 そんな姿に思わず苦笑いをしながら首を傾げる。

 同時に少し嫌な予感がしてきた。なんだかマロンを制約から解き放ったら不味い気がする。いつか自分の才能と創作意欲に任させて処理に困るような作品を生み出しそうだ。それこそ、巨大なお菓子の家みたいな恐ろしい代物を。

 

「──それに、生徒会を負かしてやらないと腹の虫がおさまらないでし」

「……えっ?」

 

 そんなことを考えてると、突然マロンの纏っていた空気が一変した。

 

「予算のことにも文句はあるでし。でも、それはそれとして、作品づくりを邪魔してきたのあいつらには目にもの見せてやるでし……!」

 

 彼女は分かりやすく眉間に深い皺を寄せていた。かなりお冠だ。

 

「だからこの勝負に乗り気だったのか……」

 

 それにしても、作品づくりを邪魔された、か。

 

(確か、美術部に行ったのはゼオスちゃんとすずちゃんだったよね? うーん……?)

 

 考えてみると、どちらも意図せずマロンの地雷を踏み抜くような気がする。

 それにマロンからしてみても、作品づくりを邪魔されて怒るのは分かる。被害が消えたとはいえ、少し前には尾瀬先輩に憑りついたステップルに絵を滅茶苦茶にされたんだから、邪魔に敏感なるのも仕方ない気もする。

 

「そういうことでし。というか、勝負が始まったから色々と流してたでしが、なんで神上は生徒会側についてるでし?」

「確かに言われてみるとそうね?」

 

 そうこう色々と考えていると、マロンが怪訝そうな顔でこっちを見てきた。

 彼女の疑問にジュラ子も不思議そうに首を傾げる。

 

「いやー、別に大した理由はないよ? ボクと一緒に来てた男子がいたろ? 彼と一緒に何度か生徒会の人たちの手伝いをしてね。仲良くなったんだ。そしたら、何か困ってるみたいだから助けに来ただけ」

 

 嘘は言ってない、うん。ただクリーチャー関連のことを言ってないだけで。

 

「はぁ、そうでしか。お前って何だかんだお人好しでしね」

「まあ! 翔子ったら彼女たちともfriendsになってたのね!」

 

 そんなボクの説明にマロンは呆れ顔に、ジュラ子は楽しそうに笑った。

 よし。ひとまず互いの事情は確認できたね。

 

「まあそんなわけで、ボクも勝負に参加してるんだ。一応聞いておくけど、この勝負、降りたりは──」

「──ないでし!」「──No!」

「……だよね」

 

 友達の力強い言葉に、ボクは思わず天を仰いだ。

 分かってたことだけど、二人とも負けん気が凄いよ。一応、クリーチャーなんてビックリ生物を捕まえるのに、少しもビビらないんだから。

 

「はぁ……」

 

 視線を元に戻すと、二人と視線がぶつかった。

 

「ボクも負ける気はないよ?」

「上等でし!」

「that's right! victoryはジュラ子たちがいただきますわ!」

 

 二人と一人で火花をぶつけ合い、全員で笑い合う。それと全く同じ時だった。

 

 

《――ニャアァァァァ!》

《――行け行け! GO! GO!》

 

 

 黒い影がボクらの間を通り過ぎて行った。辛うじて分かったのは影が動物のようなシルエットとその上に人型が跨っていただけ。

 

「なっ、待て!」

 

 急いで振り返ると、そこには装飾を纏った猫らしき姿とそれ跨っているドングリ小人の姿があった。獰猛な爪を携えたそいつは猛スピードで廊下を走っていく。

 それを認識した時、体は反射的に動いていた。

 

「what's!? 翔子! どうしたの!?」

「どこいくでし!?」

 

 後ろから慌てふためく二人の声が聞こえるが、それもどんどんと遠ざかっていく。

 火事場の馬鹿力なのか、明らかに普段よりも走りが速くなっていた。

 

(別のクリーチャー! しかもあれって、まさか……天音先輩と初めて会った時に取り逃がした奴か!?)

 

 走る中、記憶の片隅から浮上してきたのは、数日前に取り逃がしたクリーチャーの影だった。確証はないけど、小人の噂を調べにいった時に逃がした奴らだ。

 正体は分からないけど、《消男》よりも厄介なのは明らかだ。

 

「ライト! 別のクリーチャーが出た! 勝負はアーシュちゃん達に投げて!」

 

 クリーチャー達が階段に到達した時、ボクは全力で叫んだ。

 全力で走るのに慣れてないからか、通話越しに叫んだ時、妙に胸が痛かった。

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