Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘 作:新米ユーリ/神座/DMP
なのに、本当に毎度遅くなってしまって申し訳ない……。
※ ※ ※
火花散る生徒会&デュエリストVSアオハル組のクリーチャー争奪戦。
しかし、そこへ新たな影が……。
「テメェ! 待ちやがれ!!」
俺達は、必死に廊下を移動していた。
『ヘドゥルルルル!』
前方には、空中を移動する黒板消し頭の異形──《消男》が1体。
追いかけている俺は小回りを利かせるために少し速度をセーブしてるが、手は抜いていない。
なのに、俺と敵の距離は縮まらない。
「だー! あの野郎、何かチートでも使ってんだろ!」
《うーん? 特に何も感じねぇぞ。単純に向こうがすばしっこいっだけみたいだな》
「そっちの方がよくねぇわ! せめて種と仕掛けはあれよ!」
特別教室棟でそれぞれ別れた後、俺とアラシは普通教室棟の2階で《消男》を追っていた。道中で別の《消男》を捕まえたが、むしろそのせいで追っていた方を取り逃がしかねない状態に陥っていた。
《ヘッドルルル、放すヘドゥ……》
《へいへい、おめぇは大人しくしてろって》
隣で飛んでいるアラシが抱えている《消男》が呻く。が、アラシが首を絞めるとあっという間に意識を失った。
「……めんどくせぇ」
《とやかく言っても仕方ねぇだろ》
「あんなすばしっこいとか聞いてねぇよ!」
均衡を保っていた距離がジリジリと離れていく。
《消男》はそのまま3階への階段を上がっていった。
「あの野郎っ!」
俺達も続いて階段を駆け上がる。
そして、踊り場を超えて3階へ走り出そうとした時の事だった。
「えっ?」
「おっ?」
眼前に見知った二つの影が現れた。そこにいたのは、バンダナでまとまった深緑髪の少年──尾瀬先輩と、黒髪の少年──賢哉だった。
それだけじゃない。賢哉の手には、俺がさっきまで追いかけてた《消男》が掴まれていた。
「はぁっ!?」
だが問題はそこじゃない。いや、賢哉の奴がなんで《消男》を捕まえてるのかとか気になるが、今の状況で真っ先に気にするべきことじゃない。
だって、俺が眼前にいる二人と激突するのが避けられなくなっているんだから。
「「「ぐぎゃ!」」」
二人と俺が激突し、鈍い音と共に視界が回った。
身体が階段から転がり落ちたあげく、踊り場の壁に激突したせいであちこちが痛い。
「あぁ、くそ……いてぇ……」
「いったぁ……ん? ライト?」
痛みに悶えながら立ち上がると、目の前には尾瀬先輩と賢哉が階段上でよろめいていた。
どうもさっきの激突でそれらしい被害を被ったのは俺だけらしい。すげぇ理不尽。
「っ……尾瀬先輩、それに賢哉? なんでここにいるんだよ」
持ち直した尾瀬先輩の眉間に、気まずそうな皺が浮かんだ。
「ああ、どっから話せばいいんだ? ちょいと面倒なことがあんだよなぁ……」
言葉に悩む先輩と状況が分かってない俺の間で、沈黙が流れる。
賢哉も状況が分かってないのか、俺と先輩の顔を見てはオロオロと黙っていた。
そうして辺りを確認した時、気が付いた。
(……待て、アラシの奴どこいった?)
さっきまで一緒にいたアラシの姿が見当たらなかった。
どこかに隠れてるのか、目だけを動かして周りを見てみるが、それらしき影はない。
(まさか
そう思った矢先、腰に付けていたデッキケースが勝手に震えた。
(……カードになって退避したのか、なんつう速さの身のこなしだ)
どうやら別行動をしたわけでないらしい。
安堵の一息を吐くと、目線を尾瀬先輩の方へ戻す。
そこでは、腕を組んだ尾瀬先輩がまるで観念したように苦笑いを浮かべていた。
「翔野、ひとまず確認してぇんだが。ちょい前にあった放送ってクリーチャー絡みだよな?」
その言葉で、思わず頭が痛くなった。本当に何がどうなってるんだ?
なんで先輩ってばクリーチャーのこと堂々と言ってんだ。賢哉の奴も平然と《消男》を掴んでるしさ。
(まさか、知られてるのか? 賢哉の奴に)
今ある目の前の状況と先輩の物言いを考えると、そうとしか思えなくなってきた。
色々と確認する必要が出てきたな
「……そうっすけど、その前にこっちの聞きたいこと優先していいっすか」
「ああ、いいぜ。お前が聞きたいことも予想がつくしな」
「はぁ……んじゃあ、先輩。あんた、賢哉に色々吹き込んだろ」
「おう、色々教えたぜ」
「……何してんだよアンタ」
「そう言うな、俺だってお前が御崎の奴に隠したかったのは分かってる。でもな、残念なことに主因は俺じゃねぇんだ」
そう言って尾瀬先輩はデカい溜息を吐きながら頭を掻いた。
「一昨日、二人仲良く巻き込み事故みてぇなもんにあってな。そん時に色々とあったんだわ」
「は? 一昨日……一昨日!?」
身体が冷えあがった。一昨日って天音先輩と戦った日じゃねぇか。確かに大量にクリーチャーが出てきてたが、あいつら音楽室以外にもいたのかよ。
「そしたらクリーチャーに出くわした」
「……で、賢哉がクリーチャーのことを知ったと?」
「おう。そしたら今日の昼放課、俺の所に来たんだよ。クリーチャーのことを教えてくれってな。どうも一緒に出くわした時の反応で何か知ってるって見抜かれちまってよ、そん時は時間が無くて流れちまったんだが、終礼諸々の後にもう一度集まって、ついさっきまで大雑把だが関係してることを教えてた」
「…………」
思わず、空を仰いだ。そしてそのまま両手で顔を覆った。本当に、もう何なんだよ。
つまり、賢哉の奴は知っちまってるのか。クリーチャーのことも、俺や翔子がクリーチャーと戦ってることも。
「そしたら妙な放送は流れるわ、下に降りたらクリーチャーが突っ込んでくるわ、それしたら次はお前も突っ込んでくるわ。そんで今に至る」
「あの、尾瀬先輩? ライトが見たこともない状態になってるんですけど……なんか絶望オーラを垂れ流しながら膝を抱えて蹲ってるんですけど!?」
「まあ、仕方ねぇだろ。きっと情報を処理しきれなくてエラー吐いてんだ。可哀想にな」
屈んだ俺に尾瀬先輩は可哀想な目線を向けてきた。誰のせいだと思ってんだよ、この人。
「あぁぁくそ! もう!」
溜まった鬱憤を吐き出さんと声を張り上げて、同時に勢いよく立ち上がる。
「おっ、復活したな」
「無理矢理復活させたんだよ! 頭痛の種増やしやがってこの野郎!」
「ライト? その、大丈夫? なんかごめんね?」
「…………別にお前は悪かねぇだろ」
賢哉が申し訳なさそうに苦笑する。そんな顔をされると気まずくなって何も言えない。実際のところ、賢哉は何も悪くないわけだしな。
「ふぅ……それはそれとして! 先輩共々、分かってることは聞かせてもらうからな」
気まずさを振り払うために、二人をピシリと指さす。それと同時の事だった。
『──ライト! 別のクリーチャーが出た! 勝負はアーシュちゃん達に投げて!』
耳に突っ込んでいたイヤホンから、
「…………マジ?」
また、ゾワりと悪寒が駆け巡った。耳の痛みなんかもうどうでもよくなっていた。
最悪だ。一番起きて欲しくなかった想定が起きたのかよ。
『普通教室棟の3階まで上がってるから急いで来て!』
「ああクソ! 今3階行きの階段にいるから待ってろ!」
俺はすぐさま駆け出した。普通に被害を出す奴が出てきたなら1秒でも早く仕留めねぇと!
「えっ、ちょ、ライト!?」
「おい翔野! どこいくんだよ!?」
後ろから賢哉と尾瀬先輩の焦った声が聞こえるが、止まれない。流石に今が一大事過ぎる。
「わりぃけど話は後で聞く! まだ帰んなよ!」
焦ってる俺には、まだ困惑してる二人に釘をさす事しかできなかった。
※ ※ ※
3階へ上がると奥が何やら騒がしかった。
「……早速穏やかじゃねぇな」
聞こえてきたのはドタドタと煩い足音と、距離と混ざり過ぎてるせいで内容が分からない無数の声。その音源へ向かって、廊下の真ん中に差し掛かった時、俺の反対側からその原因達がちょうど走って向かってきた。
「……おい、話がちげぇだろ……」
そうして見えてきた光景に思わず頭を抱えたくなった。
「ええい! 待てぇ!」
「待ちなサイ!」
『逃がさない!」
「逃がしゃんばい!」
「ちょっと皆待ってよ!」
反対側から走って来るのは
色々と話が違うだろ。さっきの話じゃ翔子だけがクリーチャーを追ってる感じだったじゃん。
「なぁんで、生徒会とアオハル組もいるんだよ……」
翔子を最後尾に、見知った白髪のちびっ子と褐色美人──熊田とゼオスのコンビに加えて、ゲーマーと褐色スク水のコンビがこっちへ走ってくる。
「クリーチャーも何か混ざってるし」
その前には勝負の獲物になってる《消男》が6体、それ以外に2体のクリーチャーが群れとなっていた。
「見覚えがあるのもいるな」
そこにはドングリの小人と猫? というかレッサーパンダらしき姿のクリーチャーがいた。多分いつぞやの小人探しの時に出くわして逃した奴らだ。
《レッサー! もっとスピード上げろ! 追い付かれるぞ!》
《ムグ! グルルルル!!》
《ヘドゥルルル……助けるドゥル……》
レッサーパンダはドングリ小人を乗っけて、《消男》の1体を口にくわえていた。おそらく翔子以外の4人が追っかけてる原因はあれだな。大方、追ってた《消男》を取られてたから追ってるって感じだろ。
それはそれとして、あの2体は何だ? マジで正体が分かんねぇ。
「ちいっ、考えるのは後か!」
クリーチャーの群れはスピードを落とさずに突っ込んでくる。前にいる俺は眼中にもないってことらしいな。
「クロスファイア、あのクリーチャー共を女子から引っぺがした後は頼んだぞ」
《おう、任せてとけ!》
クリーチャーとの距離が詰まっていく。俺は中腰で構えてレッサーパンダへ立ち塞がる。
《やっちまえレッサー!》
《グル! ぷはっ、いけ!》
瞬間、何かが俺の顔にかかった。べっとりしてる黒い何かだ。
「おわっ!? なんだ!?」
《へドゥル……散々へドゥ》
顔にかかったものを引っぺがすと、その正体は《消男》だった。どうも口にくわえてたのをぶつけられたみたいだ。
「ったく、なんでこうな──グゲェ!?」
かるく顔を拭おうとすると、突然腹に鈍い痛みを感じるのと同時に身体が吹っ飛んだ。
あのレッサーパンダ、真正面から突っ込んできやがった。
「いって……あっ、ヤベェ!?」
吹っ飛んだ身体は壁にぶつかり、クリーチャー共はそのまま廊下を爆走していく。まずい、あのままじゃ下の階に行かれる! まだ下には賢哉と尾瀬先輩がいる!
「ライト! 大丈夫?」
「おう、そこまで酷くはねぇよ。わりぃ、肩借りるぞ」
駆け寄って来た翔子の肩を掴んで急いで立ち上がる。身体のあちこちが痛いが気にしてる場合じゃない。
「走れる?」
「ああ、さっさと追うぞ」
翔子に連れられて、俺は駆け出した。
「ちぃ! すばしっこい奴らだな!」
「フフ……祖国の猛獣を思い出すワネ♪」
「ばりすばしっこか!」
『これ、イタチごっこかもね』
俺達2人の前を走るのはイレギュラーから遠ざけようとしていた女子4人。完全に出遅れた形になったが、彼女たちもクリーチャーとの距離に悩まされていた。いや、本当になんでいるんだよ。
「おい翔子。なんとなく予想は付くけどよ、何でこんなことになってんだよ」
「いやー、なんでって言われてもねー。ほんと、偶然の事故としか言えないんだよ。1階で猫とドングリを見つけて追ってたら、途中で皆が追ってた《消男》の群れに突っ込んじゃってさ。そしたらこうなっちゃった」
翔子の方を見ると、彼女は困ったように笑った。
今すぐに頭を抱えたくなってきたぞ。まさか予想がドンピシャとは。
そうこうしているうちに俺達は階段を下って2階へ戻って来た。
「なっ、なんだぁ!? ってクリーチャー!?」
「ちょっ、あれって尾瀬先輩!? それに──」
「クソクソ!」
翔子が悲鳴を上げた。廊下の先には尾瀬先輩と賢哉がいる。そこへクリーチャー共は突っ込んでいく。
「賢哉! 尾瀬先輩! 避けろ!!」
驚いて行動が遅れたせいなのか、声を荒げても2人とクリーチャーの距離は開かない。
クリーチャーの群れと2人の距離がゼロへと減っていく。ダメだ! 間に合わねぇ!!
「ギリギリセーフ、だよね」
──瞬間、淡い光が現れた。
次に聞こえたのは甲高い音。まるで金属同士がぶつかったような音が廊下に響き渡る。
その音の正体は、先輩達の前に現れた光とクリーチャー共がぶつかり立った衝突音だった。
「なっ、なんだよ……あれ」
突然の事に俺達は唖然として固まっていた。生徒会とアオハル組も呆然とし、クリーチャーさえも警戒で固まり、廊下は一気に静まり返った。
その中で翔子が呟くと、その言葉に合わせるように光は形を変え、見覚えのある青白い長方形となった。まるで──。
「──デュエマの、シールド?」
「正解!」
声がした。知っている声が。
静まり返った廊下に
「なんで分かるのか、すごく不思議だけどねぇ」
「状況も酷いな。頭が痛くなってくる」
「だね。やることいっぱい。となると、優先しないといけない私たちのミッションって何かな?」
「最初から変わらないだろ」
藍色のショートヘアにあどけない雰囲気の少女と、灰色の髪にナイフのような鋭い目の少年。
制服の上からサイバーパンクなジャケットを羽織っているが、見間違えるはずがない。
「水上? 間桐?」
水上リンが、間桐ロムが、何でもない日常にいるはずの友達がそこにはいた。
2人は先輩たちの前に立つと、それぞれのスマホを取り出して掲げる。
そして、ロムは今まで見せてこともない鋭い目つきでクリーチャーを睨みつけた。
「──
時間があっという間に流れてく……もう新しいカードの情報出てきちゃったよ(涙
それはそれとして、ゼッツ面白れぇ……