Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘 作:新米ユーリ/神座/DMP
仕事がヤバすぎる……
「はぁー。それで何か心当たり、というかやったこと覚えてますか?」
俺は校長室の応接ソファーに座っていた。広いソファーの端に俺が陣取り、その横にはアーシュ会長と熊田が座ってる。他の面子は後ろでソファーの背もたれに寄りかかっていた。
「ほうほう、各部活の予算は纏まったようじゃの。よかったよかった」
対面に座っているのは、黄色のスーツを着た、小柄の老人──我らが桜龍高校の校長。ぽわぽわした空気をまとっている呑気な爺さんはその手に持った書類を見ては朗らかに頷いていた。
──あの後。草臥れていた俺は武道場で尻もちをついて座り込んでいた。色々とあったことに何が何だが分からず混乱していた。そんな時に同じく疲れていた翔子に天啓が下りてきた。曰く、面倒なことが起きたら偉い人に投げればいい。そんなわけでクリーチャーに関わってる偉い人、生徒会をドラゴン娘にした張本人である校長の下へ、生徒会が書類を渡しに行くのに便乗して、ひとまずはアオハル組の事を聞きに来たのだ。
「あんなぁ! 真面目な話してんねんで! ちゃんと答えろやクソジジィ!」
「どうどうギャイちゃん、落ち着こう。流石にその言い方は色々とマズいよ」
キレた地封院を翔子が宥める。友達に止められて冷静になったのか、地封院は口をつぐんだ。
(ナイス翔子。よく止め──あっ、ちげぇわこれ。これ以上言うのが面倒になっただけだ)
チラリと地封院の方を見ると、彼女の額には青筋が浮かんで校長を睨みつけていた。さっきの言動といい、よくやるな。一応相手は校長だぞ……?
「ふむ、ちゃんと答えろと言ってものー」
「校長先生、お願いですから話してください。私たち何が何だか分らないんです。何で私たち以外にドラゴン娘がいるんですか?」
アーシュ会長のお願いに校長は腕を組むと頭を傾げて唸り始めた。少し待つと、困ったように話し出す。
「そもそものぉ、お主たち以外にドラゴン娘がいること自体がおかしいのじゃ」
「……はいっ?」
「ドラゴンの力を与えたのは生徒会へ入会した5人のみ。それ以外の生徒に力など与えておらん」
「は、はあぁ!? なんだよそれ!?」
嘘だろ? 校長無関係なのかよ。じゃあ伍代たちの力はマジで何なんだ?
「手掛かりゼロかよ」
「謎は減らず、だね」
「冗談キツイぜ……」
「まあ、なるようにしかならないさ」
翔子は後ろから顔を突き出すと、困ったように苦笑する。いや俺からすると苦笑いすら浮かべられねぇ状況だよ、今。マジで。
「ああくそ。アオハル組のこともだけどよ、水上と間桐のことも調べねぇといけねぇし。お先真っ暗じゃねぇか」
俺が呟くと、困った顔をしていた校長がぽわぽわした空気を引っ込めた。
「ほう、どうやら他にも困ってることがあるみたいじゃの。言ってみよ」
「……急に食い付いてきましたね」
「うむ。件のアオハル組については分からんが、クリーチャーの騒ぎが起きた時に妙な力を感じてはおったのじゃ。学園内での非常事態は把握しなければならんからの」
「…………了解です」
俺は、校長に全てを話した。妙な格好をして現れたリンとロムの事。2人が展開したデュエルエリアのこと。二人と出くわした場面に賢哉と尾瀬先輩もいたこと。その二人が巻き込まれていたクリーチャー事件のことも。
「ふむ」
話を聞き終えた校長は真面目な雰囲気をまとって息を吐いた。
「事の経緯は分かったが、面妖なことになっておるな」
「当事者からすると堪ったもんじゃないですよ。今でもパンク寸前で頭が痛ぇんですよ」
「まあ、儂も驚いておる。ドラゴン娘でなくクリーチャーに対応できる者達がおぬしたち2人以外にもいるとはのぉ」
校長はソファーに身体を深く沈めると、天井を見上げる。
「うーむ、分からぬ。じゃが、自らコソコソと調べるのも性に合わん。いっそ呼び出して聞き出してしまおうかの」
「まあ、それが一番手っ取り早いですよねぇ……ん? はいっ?」
今、なんて仰いました?
※ ※ ※
僕の名前は御崎賢哉。家がそれなりに長い歴史のある武術道場をしているだけの普通の高校生。取り柄は身体を激しく動かせること。空手や剣道といった武術は色々できる。それ以外ならパルクール擬きができる。突然のトラブルへの対処能力は結構低い。目の前で変なことが起きると少し固まる。
(何が何だかもうさっぱりだけど。誰か助けてよ……)
先程、
「はあぁー」
僕は屋上へのドアを開けると、フェンスへ向かう。そのまま持たれて座り込んだ。
「でっけぇ溜息だなおい。吐いても仕方ねぇだろ」
一緒に来た尾瀬先輩が隣に座り込むと、彼は苦笑しながら天を仰いだ。
「先輩も僕のこと言えないじゃないですか……」
「いやいや、そんなわけ……あるな。本当にその通りだ。割と動揺してんな、俺」
「た、頼りない……」
先輩にとっても、さっき出くわした事態の衝撃は大きいみたいだ。
「無茶言うな。クリーチャーが出張ってくるのは予想できてたけどよ、それ以外は想像つかんぞ」
たはは、と彼は笑った。放送の時と言い、結構肝が据わってる人だ。よく取り乱さないよな、色々と信じられないことが起きてたって言うのに。
「特に、翔野と神上以外にも戦える奴らとか誰なのか分からんしよ」
「それは……そうですね」
確かに、僕らを2度も助けてくれた、あの2人。ライトと神上さんは知り合いみたいだけど、一体何者なんだろうか。
「──まあ、そういう反応になるよねぇ」
不意に、困ったような声が聞こえてきた。方向は上だ。
「えっ? ……あっ、君は」
「オメェ! さっきの!」
見上げると、塔屋の上に女の子がいた。サイバーパンクなジャケットを着た藍色ショートヘアの、溌剌とした女の子だった。
「よっっと」
女の子は塔屋の上から飛び降りると、軽やかに降り立つ。すると、彼女は座り込んでるこっちを興味深そうに見下ろしてきた。
「でも、アタシとしては2度もクリーチャーと遭遇してるアンタたちの方にビックリしてるんだけどね」
「いや、そんなこと言われても。別に意図してクリーチャーと出くわしてるわけじゃないし」
「うーん、となるとやっぱり学校って環境に鍵があるのかなぁ?」
「ちょっと待て! オメェよ、いきなり現れて自己紹介もねぇのはどうかと思うぜ?」
僕と女の子の間に尾瀬先輩が割り込むと、彼女は少し距離を取った。
「そういえば、自己紹介とか何もしてなかったね。ねぇ、ロムもしとこうよ」
彼女は振り返ると、自分が下りてきた塔屋を見上げて声をあげる。
僕たちも立ち上がり、視線を向けた。下から見上げる形になるから、塔屋の上に誰がいるのかは分からない。
「リン。俺達がどういう立場にいるのか分かって言ってるのか? 一応、身分は隠しておかないといけないんだぞ」
死角から出てきたのは、女の子──リンちゃんと同じジャケットを着た、ダークグレーの髪の少年だった。
「まあまあ、そんなこと言わないでよ。どっちみち、ライトと翔子ちゃんと話した後、この二人にも会って話さないといけなかったんだし。順番がちょっと変わっただけじゃん」
「だとしても無警戒にもほどがあるだろ」
ダークグレーの少年──ロム君は面倒そうに溜息をつく。そして不機嫌そうな面持ちで塔屋から飛び降りると、リンの横へ並び立った。
「それじゃあ改めて、アタシは水上リン。こっちは間桐ロム。よろしくね」
「おい勝手にやるなよ。はぁ……よろしく」
明るく笑いながら、リンは胸を張る。それを見てロムは呆れたと言わんばかりに溜息を吐いた。
「ああいや、こちらこそ、よろしく。御崎賢哉です」
すかさず手を差し出す。名乗られた以上、こっちも挨拶と握手が礼儀だ。
僕の差し出した手をリンちゃんがしっかりと掴む。
『──御崎賢哉、尾瀬甲介、間桐ロム、水上リン』
不意に名前が呼ばれて、全員が固まった。
「はい?」
「えっ?」
「どうして俺達の名前が」
「また校長の放送かよ」
屋上に設置してあるスピーカーからはっきりと放送が聞こえてきた。
『御崎賢哉、尾瀬甲介、間桐ロム、水上リン。以上4名は校内に残っているならば至急、校長室へ来るように』
何故校長室から呼び出しが? と首を捻る。少なくとも校長室へ呼び出されるようなことをした覚えはないぞ? 辺りを見てみると、他全員も心当たりがないのか首を傾げていた。
とはいえ、呼び出された以上は行かないわけにはいかない。
※ ※ ※
俺──翔野ライトの耳にその音が聞こえてきたのは、校長の突拍子もない行動から10分も経たないうちの事だった。校長室は現在静まり返ってるから廊下に響く複数人の足音はしっかりと聞こえてくる。
(案外はえーな、というかあの放送聞いて素直に来るのかよ)
正直な所、校長によるリン達の呼び出しには驚かされた。姿をくらませた面子を名指しで校内放送で呼び出すとか力業にも程がある。仮にすぐに来なくても他の先生とかに呼び止められるだろうし。
──コンコンコンッ
扉が3回ノックされると、校長の返答を待たずに扉は開いた。
「ごめんなさーい! お待たせしました!」
先頭を切って現れたのは藍色のショートヘア。
「失礼します。校長お待たせしました」
「「お、お邪魔しまーす」」
その後に続いて見慣れた男子3人が入って来る。
「ほほほっ、よく来てくれたのう。お主たち」
やってきた4人が部屋の中央に並ぶと、校長は視線をリン達に向けて笑う。
だというのに部屋の雰囲気は重さを増していった。
(こんっのジジィ、初っ端から圧かけるじゃねぇか)
横を見ると、翔子や生徒会の面々も冷や汗を流していた。そんなこっちの状況なんぞ知らん存ぜぬな態度で校長は話を続けた。
「すまぬが、単刀直入に聞かせてもらうぞ。お主らは何者じゃ?」
対する該当者──リンとロムも冷や汗を流していた。表情は落ち着いているように見えるが、少しぎこちないように思える。巻き込まれた被害者である賢哉と尾瀬先輩は顔をこわばらせていた。
重い空気の中、ロムが口を開いた。
「何者とは、どういうことですか? いまいち俺達が呼び出された理由も分かっていなんですが」
「しらばっくれなくともよい。今回呼んだ者たち全員がクリーチャーに関わっていることは知っておる」
また、空気が重くなった。
「特に間桐ロムと水上リン、お主らが妙な方法でクリーチャーを倒したことも知っておる。じゃからな、気になるんじゃよ。お主らは何者じゃ?」
俺は、心臓が強く跳ねるを感じた。言葉に怒気などは感じない、だというのに威圧感に感じる。身体が瞬時に警戒している。
(本当に何なんだよ、この爺さん。何をどうすれば落ち着いた声でビビらせれるんだよ)
「まあまあ、そんなに警戒しないでくださいよ。校長先生」
気楽そうに笑いながら、重くなった空気を破ったのはリンだった。
「アタシたち、別に怪しい人じゃないってば」
リンはスマホを取り出すと、何度か画面を操作する。それが終わると、画面から空中に立体映像が立ち上がった。
立体映像にはドラゴンのロゴ──デュエマでお馴染みのエンブレムが、『DPG』というアルファベットと共に投影されている。
「アタシたちは極秘防衛機関、DPGに所属するエージェント。影からクリーチャーが起こす事件──『Cケース』を解決してるデュエリスト。正義のヒーローってところかな」
パンク寸前だった俺の頭は、その話を聞いて遂にバーストした。
バトルはまだ待って欲しい。本当にすまない……(´-ω-`)
それはそれとして逆札編のストーリーが読めねぇ。
まさかカレーパンであんなことになるとは思わんじゃん。
アバクもよう分からんぞ。オメェはマジで暴れてるの、どっちなの?
面白いから創作のプロットの筆は進むんだがさ。