Duel Masters デュエルと願いとドラゴン娘   作:新米ユーリ/神座/DMP

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やっと本格的にドラゴン娘を出せた……



4話:絵描きと桜――うっかりとドラ娘生徒会

「どうだクロスファイア。何か手掛かりはあるか?」

《うーん……ダメだ。クリーチャーの力が関わってるのは違いねぇんだが、本体の気配が感じられねぇな》

 

 放課後。部活動も終わった時間に俺は桜の木を調べていた。

 昼放課に賢哉が言っていた散らない桜の話、それが俺にはクリーチャーが関わっているとしか思えなかったからだ。

 クロスファイアは桜の周りをカードのまま飛び回るが、期待した答えは返ってこなかった。

 

「つまり、クリーチャー案件ではあるが、桜の木に憑りついてるわけじゃない?」

《多分な。どっかにいる本体が桜の木に力を流し込んでるんだろな》

「そうきたかぁー」

 

 少し頭が痛くなってきた。クリーチャーの居所が分からないとなると、これから学校内を虱潰しで探すことになる。しかも生徒の誰かに憑りついてたら、その難易度は更に爆増だ。

 

(まだ関わって三日目とはいえ、面倒なのにぶち当たったな)

 

 今のところ、クリーチャーが騒動を起こすのにちゃんとした理由があるようには見えない。全部が直情的か愉快犯的なものだ。だが、それの方が怖い。

 今の桜みたいに一見無害そうなことをしていても、突然恐ろしいことをやり出す可能性が捨てきれない。だからこそ、早期発見からの退治は急務だ。

 

「なあ、クロスファイア。お前ってアラシの時、嗅覚とか鋭くならないのか?」

《犬扱いするんじゃねぇ! それにクリーチャーの匂いはこっちの世界じゃ分かりづらいんだよ!》

 

 猛抗議するクロスファイアに合わせて、俺の手に戻ったカードが激しく揺れる。もしも誰かに見られたらビビられそうな絵面だ。

 

《クスクスクス……》

「ッ! 何かいるぞ!」

 

 突然聞こえてきた笑い声に、身の毛がよだつ。

 辺りを急いで見渡すと、その原因は桜の枝に腰かけていた。

 その正体は一体の妖精だった。

 

「《魔誕妖精スイセン》か。スノーフェアリーなんて、おあつらえ向きなのが出てくるな」

《おい、どうやらアイツだけじゃねぇみたいだぞ……!》

「は? なに言って──!」

 

 桜の木をよく見ると、スイセンのいる所以外の枝にも様々な妖精たちがいた。そのどれもがスノーフェアリーのクリーチャーだ。

 

「いや多すぎるだろ! 十体以上は軽くいるぞ!?」

《さっきまでいなかったはずだ! どこに潜んでやがった!?》

 

 突然現れた軍勢に驚きながら、何とかデッキを取り出す。

 クリーチャーが現れたなら、やることは一つだ。

 

「やるぞ、クロスファイア! デュエルの始まりだ!」

 

 デッキを掲げ、共に戦う相棒に呼びかける。

 

「あれ?」

 

 だが、いつまで経っても光が俺達を包まない。

 妖精たちはそんな俺の姿を見て、不思議そうに首を傾げていた。

 

《あー、その……わりぃ、マスター》

 

 と、そこへクロスファイアが気まずそうに声をあげた。その声はまるで悪いことが親にバレた子供のようなキレの悪さだ。

 

「なんだよ、こんな時に。というかさっさとデュエマでこいつらを倒すぞ」

《そうしたいのはやまやまなんだが、そうもいかねぇんだよ》

「なんだよ煮え切らねぇな。はっきり言えよ」

《あのスノーフェアリーども、人間に憑りついてねぇだろ》

「ああ、そうだな」

 

 クリーチャーは色々な方法で俺達の世界に来て、その中にはクリーチャーの身体のままじゃ来れないパターンがあるが、それはレアケースで大抵は自分の身体のままでやってくる。

 初めてクロスファイアに会った時、本人が言ってた話だ。

 

《それで、戦ってきたのは人間に憑りついてた奴だったろ?》

「ああ、そうだな」

 

 初めて戦った相手の《暴覇斬空》や、その次の日に戦った《~黒馬の騎兵長~》も人間に憑りついていて、実体を取り戻してはいなかったクリーチャーだ。

 

《あのデュエル、今はまだ人間に憑りついてて実体がない奴にしかできねぇんだよ……》

「…………は?」

 

 何を言っているんだ、この似非ドラゴンは。

 

《で、そうなると俺を実体化させれば戦えるんだが。今実体化すると、アラシの姿になっちまう。

 あの姿は出力が足らなくて、まともな戦いができるとは言えねぇんだ》

「つまり……?」

《今のオレ達に人間に憑りつかずに実体を持ってるクリーチャーと戦う方法は、ない!》

「…………」

 

 冷や汗が流れるのを感じる。

 俺は素早くデッキをしまうと、そのまま体を180度回転させた。

 そして。

 

「それ最初に言えよォォォォ!!」

 

 できる限りの全力で地面を蹴った。

 

《やっちゃえー》

《わーいわーい!》

 

 走りながら後ろを見ると、大量のスノーフェアリーが追いかけてきていた。

 詳しい数は分からないが、ざっと見て二十体ぐらいはいる。

 デュエマで対抗できないならどうしろって言うんだ。

 

《そーれ♪》

「げっ!?」

 

 突然ツルが足に絡まり、身体のバランスが崩れた。そのまま勢いよく俺の身体が倒れる。

 実体を持ってるクリーチャーはこういうこともできるのか。

 

「と、取れねぇ……」

 

 足に絡まったツルを取ろうとするが、どういうわけかツルがワイヤーのような硬さになっていて、びくともしない。

 そうしているうちに、大量の妖精たちは俺を取り囲んでいた。

 流石に不味いぞ、これは。

 

「待ちなさい、そこのクリーチャー!」

 

 そこへ澄んだ声が響いた。

 声につられて俺と妖精たちの意識が声の聞こえてきた方を向く。

 

「なっ……!」

 

 そこには一人の少女がいた。

 薄黄緑のショートヘアに澄んだ薄黄色の瞳。

 その姿には見覚えがあった。なぜなら──

 

「流星、アーシュ?」

 

 その正体が俺達一年の主席であり、復活した桜龍高校生徒会の会長を務めてる優等生、流星アーシュだったからだ。

 だが、俺が驚いた主な理由はそこじゃない。

 

(つ、角!? それに腕にも鱗が……)

 

 現れた彼女の姿は人間からあまりにもかけ離れていた。

 頭には角が生えていて、その腕は人間にないはずの鱗に覆われていて鋭い爪が伸びている。その姿はまるでドラゴンのようだ。

 

「かいちょー!」

「アーシュはん!」

「アーシュちゃん!」

「会長!」

 

 アーシュ会長の後に続くように四人の少女たちが駆け寄って来た。他の生徒会役員たちだ。

 後から来た彼女たちも身体の一部をドラゴンに変化させていた。

 

《うわー》

《逃っげろー!》

 

 生徒会メンバーの姿を見た途端、妖精たちが四方八方へ飛び去っていく。まるで捕食者に見つかった小動物ように。妖精たちの姿はあっという間に見えなくなってしまった。

 それに合わせて、生徒会の面々の姿も普通の人間に戻っていた。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ。助かった、ありがとう生徒会長」

 

 座り込んでいた俺に生徒会長が駆け寄ってくると、手を差し出してくれた。

 その手を取って立ち上がると、後ろにいた四人の近づいてきた。

 

「かいちょー、これどうする?」

「思いっきりクリーチャーとウチらのこと、見られてしもたけど」

 

 赤髪の少女が困ったように笑い、緑髪の少女が眉間に皺を寄せる。

 どうも俺にさっきの姿が見られたのが、かなり不味いことみたいだ。

 まあ、ひとまずは困難を乗り越えれたことを喜ぼう。

 

《ふえー、助かったぜ。まさか学校にオレ達以外にもクリーチャーと戦えるやつがいるなんてな》

「あっ待てバカ!」

 

 だが、そう思ったのも一瞬。クロスファイアがカードのまま飛び出すと、ボンッという音と共にアラシの姿で実体化した。

 

「うぇ! クリーチャー!?」

「まだ残っとったのか!」

「ん? でもさっきいたのと違うような。それにぬいぐるみっぽくてかわちぃね」

「確かにカワイイわね」

「おい貴様、一応クリーチャーだぞ」

「あー! 待って待ってくれ! そいつは敵じゃねぇ!」

 

 五人五様な反応を見せる生徒会。俺は咄嗟にアラシを庇うように抱きかかえた。

 アラシがもがもがと動くが、今は頼むから大人しくしてくれ。

 

「生徒会長、どっか人目が付かない場所ってないか? そこでコイツ(アラシ)について話すから」

「あっ、はい。でしたら生徒会室に」

 

 ありがとう生徒会長、貴方は天使だと思う。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 そんなこんなで、生徒会長に案内されてやって来た生徒会室は、なんというか学校の中でいうと豪華な場所だった。

 職員室にあるような給湯器を始めとした水回りや、放送室にしかないはずの放送ブース。それらに加えて、生徒会の面々がデコレーションしたであろう備品の数々はキラキラしたJKっぽさがある。水晶も好きそうだ。

 そんな場所で、俺と生徒会は自己紹介をした後、互いにクリーチャーと関わることになった経緯を説明することになった。

 俺とクロスファイアの関係や、クリーチャー退治をしてる経緯を聞いてくれた生徒会の反応は、またそれぞれだ。

 

「く、クリーチャーと契約ですか……」

「まあ反応に困るよな」

 

 流星会長はおっかなびっくりに話を聞いていた。

 

「へえー、悪さをしないクリーチャーもいるんだね。それにやっぱりかわちい!」

「メガ、そんなベタベタするもんやないって! そいつもクリーチャーなんやで!」

 

 一方で、赤髪のギャル──真久間(まぐま)メガはアラシの身体を撫でまわして、それを緑髪の少女──地封院(ちふういん)ギャイはアラシを警戒してそれを咎めてる。

 

「しかし、わらわ達以外にもクリーチャーの存在を知っているやつがいるとはな」

「『とっくりと横転』ネ!」

「それを言うならビックリ仰天だ!」

 

 白髪に小柄な少女──熊田すずは少しばかり驚き、黒髪と褐色肌に長身な少女──サーヴァ・K・ゼオスはアラシの事が気になるのか目を輝かせていた。

 

「でも、ビックリしたのは俺もだ。まさか生徒会全員がドラゴンになるなんてな」

「うぅ……これについては誰にも言わないでください」

「言わないって。バレたら騒ぎってレベルじゃないだろ?」

「助かります」

 

 しゅんとする生徒会長。会長たちに何があったのかを知ると、そうなるのも分かる。

 

「まさか校長がドラゴンだったとはな」

 

 生徒会メンバーの事情というのは、一言で言えば俺達の校長による独断によるものだ。

 入学式の最中、学校の備品をうっかり壊しちまったことで生徒会長とドラゴンの力を押し付けられたアーシュ会長。

 その会長に助けられて、生徒会に入ると言ったらドラゴンの力を付与された真久間と地封院。

 会長に因縁をつけたと思ったら、クリーチャーによる騒動に巻き込まれた熊田とそれを助けたゼオスは生徒会へ入るかどうかを決める前に力を与えられた。

 

「なんつうか、大変だったな。今まで」

 

 いや、本当に色々と酷い経緯だ。生徒会発足までの出来事が全部巻き込まれ事故なのが酷い。

 それにドラゴンの力を他の人に見られたらパニックは避けられない。

 これについては、俺が先にクリーチャーの事件に巻き込まれてたのが功を奏したって言っていいかもしれない。

 多分だが、余程の超常現象じゃなければ真正面から見た時は驚かない気がする。不意打ちはダメだ。あれは何度あっても慣れるものじゃない。

 

「は、はい。本当に色々なことがありました」

「でも、そのお陰で俺は助かったんだよな」

 

 俺は深々と頭を下げる。出来る限りの誠意が伝わるように。

 

「えっ、翔野さん急にどうしたんですか?」

「流星生徒会長、今日は危なかった所を助けてくれてありがとう」

 

 困惑している生徒会長。まあ当然だ、いきなり真面目な雰囲気になれば戸惑う。

 でも、生徒会がクリーチャーと戦うことになった経緯を聞いたら、こうするしかないと思った。

 だって、それは彼女たちが自分で選んだことじゃないから。なし崩し的にやらないといけなくなったことだからだ。

 それなら、助けてもらった側から大きな感謝とかを貰ってないと割に合わない。

 

「頭を上げてください」

 

 会長が優しい声でいう。

 

「それに気にしないでください。あれも私たち『ドラ娘生徒会』の仕事ですから」

「なっ……」

 

 顔を上げると、生徒会長は何気なく笑っていた。

 その姿に思わず言葉が詰まる。まるで真面目になっていた俺が馬鹿みたいだ。

 

「そう言われたらどうしようもないな」

 

 なら、真面目にお礼を言うのはここまでだ。

 仕事として戦うなら、ここは俺と生徒会双方が楽をできるようにしよう。

 

「なら、その礼ってわけじゃないが、クリーチャー退治について協力しないか?」

『えっ?』

 

 俺がその提案を口にすると、生徒会全員は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まった。

 いや、何で?




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