・ザ・ナイツ(ログレス騎士団)は反王室・反政府を掲げるイギリスの魔法秘密結社で、イギリス政府からはテロリストに指定されている。その政治的スタンスはイギリス王室の複雑な歴史を反映したもので、今となってはイギリス人でも理解できる者は少ない。彼らの中心教義はブリテンの伝説、アーサー王の復活。
本当にアーサー王の復活への準備をしているかは不明。
サークルの罰ゲームのバンジージャンプで紐が切れて普通に死んでしまったが、ある程度の徳を積んでいたおかげで、俺は転生特典を三つも貰えることになった。
「まずは記憶の引継ぎで」
「おけ、次は?」
「王道系イケメンになりたいので、プロトアーサーになれますか?」
「おけ。今ならプロトアーサーDXセットでエクスカリバーとアヴァロンもあるぞ?」
「セットもいいの!? お願いします!」
「いいぞ~ でも枠二つ分だから」
「そんな...やっぱりチェンジで」
「うちではやってません(無慈悲)」
「ひえっ」
「じゃあ、転生先は型月系列だから」
「マジ無理です。型月系列以外で、なんとかお願いします」
「えー、じゃあ“呼ばれてる所”に送っとくね(適当)」
「ありがたやありがたや~」
――そして時は2052年、第三次世界大戦のさなか。
EUは仏独ラインを境に東西へ分裂し、それぞれが国家連合として勢力を拡大していた。
イギリスも西EUに属し、表向きには利害調整に追われる弱腰の姿勢を取っていたが、国内の魔術秘密結社 ザ・ナイツ(ログレス騎士団)の中でも狂信派にとっては到底受け入れられないものだった。
ザ・ナイツは反王室・反政府を掲げる過激派で、イギリス政府からはテロ組織に指定されていた。その政治的立場は王室の複雑な歴史を反映しているが、現代ではイギリス人ですら理解できる者は少ない。
ただ一点、その中でも狂信派の信仰は揺るがなかった。
――ブリテンの伝説、アーサー王の復活によるイギリスの覇権国家化。
彼らはドルイド魔術とキリスト教神秘主義を混ぜ合わせた古式魔法に、盗み出したレリックのエクスカリバー(真贋不明)、そして当時のブリトン人に近い遺伝子を持つ調整体を用い、ついに「アーサー王降霊の儀」を執り行う。
本来なら、何も起こらないはずの儀式。
しかし、神の適当な手配によって、彼らの祈りは形を得る。
魔法陣から虹色の精霊が現れ、祝福するかのように羽を散らしながら回転する。
本来の術式とは異なる光景だが、その場の全員が魅入っていた。これはアタリだと。
目前が光に満ち、降臨したのは――彼らが待ち望んだ「男性のアーサー王」。
ただし、それは“すり抜け”であった。
視界が真っ白になったかと思えば、俺は召喚されていた。
ちなみにプーサー先輩(親しみを込めて)の霊基も表には出ないが存在していることが召喚されてから発覚。なので見られているのを意識して、善属性の王子様キャラを遵守するつもりだ。
――召喚者たちと目と目が合う、この間を埋めるためにはあのセリフを言うしかない。
「――問おう。あなたが私のマスターか」
名台詞と共に彼らの声は一斉に上がった。歓喜と恐怖が混ざり合ったような、狂気じみた響きで。
"A miracle!" 《奇跡だ》
"I have beheld the work of the Almighty!" 《神の御業を目にした》
"Pray, grant us Thy guidance—!" 《我らを裁き、救い給え》
その瞳はジル・ド・レェ(キャスター)に似て、狂信の光が膨れ上がっている。恐怖すら滲む熱狂に、誰もが我を忘れ、地に膝をついて叫び続けた。
明らかによろしくない宗教の無法さを前に、俺は一歩後ずさるが、自分がプーサーなのを咄嗟に思い出して”なりきり”に戻る。まずは、ここがどんな世界かを把握するため声をかけねばならない。
「初めまして、私の事はセイバーとでも呼んで下さい。あなたの名前を伺っても?」
神様を信じて型月作品以外の世界だと思うが、一応、真名は伏せておくことにする。
引き攣る顔を押さえ、目の前の人物に笑顔で話しかけるが、返ってきたのは英語と訛りと号泣で、全く理解できない。
いや、よくよく考えれば当然だった。型月じゃない=聖杯戦争が無い。
つまり俺に現地の知識や言語はインストールされない訳だ。証明完了、やったぜ!
“O Savior! will you be the one to deliver us?” 《おお救世主よ私たちを救ってくださるのか》
「イエス!アイムセイバー!ヘイ、オープンザドアー!」
それはそうとして、なんか「セイバー」で興奮しているので、寄り添うように肯定しておく。
そして、何も解決していないので俺の英語力がバレる前に早くこの部屋から出して欲しい。
あと、魔法陣書いて召喚成功したら発狂や号泣する連中は大体ヴィランサイドだって、はっきり見覚えがあるんだよなぁ。
――そして、直感(A)並みの予想は見事に現実化する。
"Open door! Somerset Constabulary!" 《開けろ、サマーセット警察だ!》
"Bloody hell, what were the lookouts doing?!" 《くそっ、見張りは何をしている》
"It was your cock-up during the burglary, wasn’t it!" 《お前が盗むときにヘマをしたからだろ》
"Shut it! Get ready for a scrap!" 《うるせえ 戦闘準備をしろ》
"It’s the lot from Headquarters… we’re done for…" 《本部の奴らだ、もうおしまいだ……》
"Oi, get His Majesty out of here first!" 《おい、まずは陛下を下がらせろ》
扉の向こうから荒々しいネイティブの「オープンドア!」
室内の狂信者どもは一瞬で殺気立ち、俺は壁際へと押しやられる。
最初から急展開だが、相手が敵だとしたら狂信者と一緒にいて英語の話せない俺の立場が危うい。
ここは、全員まとめてカリバっちゃっていいかな。俺の直感(A)がそう告げている。
――とは言え、こんな些末なことで円卓決議を取って聖剣を開放するのは無理だろう。
そこで、代わりに風王鉄槌(ストライク・エア)を使うことにした。
まず、聖剣を風王結界(インビジブル・エア)で覆ったまま手元に出す。
プーサー先輩の霊基サポートのおかげで、素人の俺でも見劣りしない動作ができる。
これなら武器が透明になって出したことはバレないはず。
次に、聖剣をゴルフクラブみたいに軽く後ろに引いて……。
最後に、風王結界へ過剰に圧縮した風を一気に振り上げて解放!
「――ストライク・エアッ!」
轟音と共に暴風が炸裂。瓦礫や粉塵が舞い散る中、俺は風王結界を体表に沿って展開し身を守る。
推定ヴィランサイドの狂信者たちは壁に叩きつけられ、多分気絶している。
ついでに扉ごと外に立っていた人も綺麗さっぱり吹っ飛んでいった。
ヨシッ! 勝ったな。
じゃ、外に出ますか。
その後――。
外でスタンバっていたのは警察の皆さんで、身に覚えのある俺は抵抗はせずに拘束されて連行されていった。
***
初日は言語的な問題で会話が通じな過ぎて、拘留2日目にわざわざ日本語対応のスタッフが来て意思疎通が可能になった今。
『現状、貴方には魔法の無断使用と警官への傷害が罪に問われます。気絶していたザ・ナイツの狂信派によれば“アーサー王の降霊に成功した”とありますが、信じがたい話ですね』
スタッフは疑わしげにこちらを見てくる。だが、それが現実なので呼び出された身としては返す言葉もない。それより気になることが、魔法の存在が一般人にも明らかになっているのか?
「まず、警官への被害は謝罪しましょう。あと、此方の世界では魔法は秘匿されていないのですか?」
『秘匿? いえ、もう三十年も前から公になっています。まして、この戦時中に無断で魔法を使った時点で、テロリスト認定ものですよ』
眉をひそめるスタッフの視線は、まるで精神異常者を相手にしているかのようで心が痛い。
「なるほど。では、その魔法について詳しく教えていただけませんか?」
『あのですね、こちらも暇じゃないんです。早く本当のことを話してもらえますか?』
「分かりました。魔法についての説明を聞いたら、全部話しますから。お願いします!」
現代で魔法が公になり、戦時中。情報がそれだけではどこの世界に召喚されたのか分からない。
もしかしたらオリジナルの世界かもしれない。
話を聞いていくと、俺を召喚した狂信者たちは「古式魔法」と呼ばれる、魔法陣や詠唱を用いる伝統的なスタイルらしい。
また、魔法の起源は、アメリカでの核テロを超能力者が未然に防いだ事件に遡る。先天的に備わる超能力を「魔法式」として体系化し、素質ある者なら使用できるようになったのだという。
具体的には科学的解析が進み、Casting Assistant Device(略してCAD)と呼ばれる魔法発動補助装置が開発され、サイオンを大量に投入すれば多様な魔法を扱えるようになった。
これが、いま主流の「現代魔法」だそうだ。
おや、CADに現代魔法と古式魔法ってプーサー知ってるぞ。これ「魔法科高校の劣等生」だろ。
でも、現在は西暦2052年の4月14日だ。原作開始は西暦2095年の4月なので、40年ほど時間が空いてしまうが、DXセットでアヴァロンが付いているので年齢などは心配無用か。
そうなると、やることは必然的に原作改変だな。
このままでは西暦2062年に、四葉真夜(12歳)が崑崙方院によって誘拐からの人体実験で闇落ちしてしまうので助けるべきだ(正義感)。ほら、霊基のプーサー先輩も黒髪美少女を助けたいと仰っている。分かります、助けた後に眼鏡を買い与えましょう。
――さすがの僕でも怒るよ
本当にすみませんでした。悪乗りが過ぎたので真面目にやります。
兎に角、敵は崑崙方院ひいては大漢という国家規模の敵になるので、こちらがテキトーにエクスカリバーをぶっぱして、「はい終わり」では済まない。殲滅しないと復讐に追われることになるし、全員コロコロしたら英霊から反英霊に堕ちてしまう。
もちろん、俺がプロトアーサー(オルタ)に成るのは非常に興味深いが、まだその時ではない。
要するに、国家規模の後ろ盾が欲しいということだ。俺が出来ない国家間政治や隠密に済ませるための特殊技能を持つ人員など、必要なモノは沢山あるわけで。
どっかに野生のアーサー王を受け入れてくれる親切な国はないかな~
――ッ!
......いちおう俺はアーサー王で、この国は(グレート)ブリテン(及び北アイルランド連合王国)だ。あれれ~おかしいぞー。この俺を差し置いて王を称する不埒者がいるとは、その不敬は万死に値する(豹変)
だが、今の私は善と秩序を重んじる王子様だ。彼らには隠居していただこう。
「是は、少女を救う戦いである――!」
キマッたな、これは。それにプーサー先輩も何も言ってこないので大丈夫だろう。
『いきなり何を言っているんですか?』
「ああ、すみません。もう大丈夫です。ありがとうございました。」
またしても精神異常者を見る目で見られるが、もう心は痛くない。
『では、本題に戻ります。貴方の名前は?何処から入国したのですか?」
保有するスキルの「赤き竜の
「私は嘗てブリテンを治めていたアーサー・ペンドラゴンだ。訳あって召喚に応じて参上した。
そして、これより私はブリテンを再建する」
『アイエエエ――!』
不運にも、日本語対応スタッフは魔法師ではなく常人だった。だからこそ、赤き竜の化身の気に触れてしまったことで彼は聞き終わる前に精神錯乱を起こしてしまった。死んではいないが失禁している。
だが、そんなことをプーサーは知るはずもない。
「いや、なんでさ...」
誰か四葉真夜を
読んでくれてありがとうございます。