現実だけ見ていたい   作:布団から出られない

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第1章 まずはメンバー集めから
1人目


 

「話せばわかる! 私達はきっと! いずれ! 必ず! 友と呼べる存在になるだろう! 間違いない!」

 

「どうする琴音、普通は事務所に任せるのがいいんだろうけど、一応話聞いてあげないとこいつ、何しでかすかわかんないし」

 

「本名を当てられているし、私達の現住所もバレている可能性があるわ。まずどうやって情報を収集したのか、それから探りを入れて、彼女の身元も割り出す。彼女の住所が入手できれば、条件は同じ状態に持っていけるはず」

 

「なんか妙に手慣れてるなー。もしかして琴音、裏社会の人間だったりする?」

 

「なわけないでしょ」

 

「私はいくらでも喋ろう! 最初から隠し事をするつもりは毛頭ない!」

 

とりあえず、推定変態ストーカー少女は縄で括り付けて、情報を吐かせることにした。大人に対応を任せてもいいのだが、どこから私のことを知ったのか、それに、夢場美咲をトップの座から引き摺り下ろすと、仮にもそんな大それたことを平気で口に出す少女に、少し興味を持ったのだ。

 

「それじゃあまず、貴女の名前は?」

 

「よくぞ聞いてくれた! 私は白崎蕾! かの有名な白崎プロダクションの白崎社長の愛娘! 夢はトップアイドルの座に自分が声をかけたアイドルを導くこと!」

 

「白崎プロダクション、知ってる?」

 

「知らない」

 

ある意味偉い人の娘っていうのは当たっていたのかもしれない。でも、申し訳ないが白崎プロダクションという芸能事務所は知らなかったし、彼女がなぜか私の目の前で露出しはじめた事実は消えない。

 

「なに? 白崎の名を知らぬとな? まあ今に見てなされ。夢場美咲をも超えるトップアイドルを生み出した事務所として、後の世に語り継がれることになるだろうからなぁ。あーっはっはっはっは!!」

 

ふむ。でかい口叩いてるから、何か算段があるのかと思ったが、これはただ自信家なだけなのではないかという気がしてきた。奇想天外で非凡な才を見せつけてくれるかのように期待させておいて、実際はただの狂人でしかないのではないか、そんな仮説が頭の中に思い浮かんでくるくらいだ。

 

「華梨奈、やっぱ突き出そうと思うわ」

 

「おっけー! 変態露出魔ストーカーさんはお縄についてもらいますよーっと」

 

「待て待て待て!! 私の住所を聞き出すのではなかったのか? 話が違うじゃないか!」

 

「白崎プロダクションの存在が知れれば、ある程度自分で探れるし、問題ないわ」

 

「くっ、なるほどやられた! しかし君はいいのか!? こんなところで燻っていて、それで満足か!? こんなところで地下アイドルなんぞやったところで、夢場美咲に追いつくことなど到底できんぞ!!」

 

そんなこと、分かりきってる。知ったような口を聞くな。

私はただ、こうでもしておかないと、私は何かしているんだと、そう実感しないと、駄目なのだ。

 

どうしても諦めきれないのだ。

 

美咲の隣に立つことを。

いつか美咲と2人で一緒に歩むことができることを。

 

私にはそんな資格なんてない。美咲を拒否したのは、私の方なんだから。

 

それに。

 

「私には才能がない。どこでアイドル活動をしようが、私に才能が備わらない限り、結果は変わらない。違う?」

 

「自分の価値を見誤るな、真村琴音。私には分かる。私の観察眼をみくびるなよ?」

 

自分の価値は自分が1番理解している。

私という人間に価値があるとするならば、それは容姿と、夢場美咲の幼馴染であるというその2点だけだろう。

あと、両親は将来的に頼りにできる存在、程度の価値を見出してはいるのだろう。実際、私、真村琴音の父は、子に養ってもらう気満々の様子だったし。見てくれはいいから、適当な男を引っ掛けて稼ぎを得させることだってできる。だが、それだけだ。

 

「観察眼、ね。じゃあ、貴女には私がどう見えていると?」

 

「幼馴染との関係を拗らせていて、それでもなんとか仲直りしたい普通の女の子に見えるね!」

 

仲直り? そんなものではない。別に私は、美咲と喧嘩したわけじゃない。連絡を取ろうと思えば、取ることはできるだろう。

ただ、見たくなかっただけだ。私の知らない美咲を。アイドルとして、遠くなってしまった私を。

 

ただ、私が許容できなかっただけなのだ。

 

「それだけ?」

 

「ふーむ。まあ、今のところはこんなものだ。あれだ、とにかく私と一緒にトップアイドルを目指そう! 大丈夫だ。君なら夢場美咲と並び立てるアイドルになれるよ!」

 

「……………何もわかってない。まるで何も。ご自慢の観察眼はその程度? だったら、やっぱり貴女はただの変態で露出狂なアイドルのストーカーでしかないわ。ご自慢の観察眼も、アイドルを視姦するためのものでしかないんでしょうね」

 

私程度で美咲に並べるなら、最初から美咲はトップアイドルになんてなっていない。

そもそも、私にはアイドルの才能なんてないんだから。

だから嫌だったんだ、美咲がアイドルをやろうと言い出したのが。

 

「琴音、変態とはいえ言葉は選んであげたほうが……」

 

「何? 事実を陳列してるだけ。何か悪い? 何も間違ってなんか」

 

「おー怖い怖い。まーまーそんなに怒らずに。感情を表に出すのは、アイドルのすることではないんじゃーないかな?」

 

「私は、アイドルなんかじゃない」

 

私は、アイドルになんて興味がない。

私が関心を持っているのは、アイドルとして活動している夢場美咲だけなのだから。

そんな私がアイドルを名乗るなど、そんな烏滸がましいことがあるだろうか。

 

「君がアイドル足り得るかどうか、そんなこと、私は心底どうでもいいんだ。私はただ、“夢場美咲の幼馴染”という立場の君が欲しいだけなんだから」

 

「少しは、理解してるみたいね」

 

「分かりやすくて助かるよ、君は。こりゃ重症だな」

 

それでも、私程度で夢場美咲を超えようなどと、そんな甘い考えで私を勧誘した時点で底が知れているというものだ。

夢場美咲に勝ちたいのなら、もう1人夢場美咲を連れてくるしかない。

 

そんなこと現実的には不可能だ。だから、夢場美咲を超えることなんてできない。少なくとも、私はそう考えている。

 

……分かっているのに、私は美咲の隣に立つことを、未だに諦めきれていないのだ。

 

「とにかく、これ以上言うことはない。変態露出狂ストーカーに相応しい場所に送ってあげる」

 

結局、ただの狂人だったのだ。

期待していたのだろうか。私は。こんな変態に、何を…。

 

「……私には、勝算があるんだ」

 

また変態の戯言だ。警察に引き渡され、変態の烙印をものにしたくがないために、言い訳がましくデタラメを話しているに過ぎないんだろう。

 

「もう話すことはない。これから貴方は…」

 

だから、聞く必要はない。結局、ただの狂人の戯言なんだから。

 

「確かに真村琴音には才能はない。アイドルの素質は、少なくとも“今の君”にはないのかもしれない。けど、“昔の君”ならどうだろうか?」

 

昔の……私……。

何故、いきなり昔の私の話が出てくる?

私にアイドルの才能がないのは、昔からだ。美咲がアイドルになりたいと言い出した時から、私には才能なんて……。

 

これも、戯言だ。聞くに耐えない妄言だ。気にしなくていい……はずだ。

 

「“昔の君”なら、アイドルという偶像をつくりあげることくらい、造作もないことだったろう! 君は、それを完璧にこなすことができていた!」

 

美咲がアイドルになりたいと言い出した時、じゃあ、それ以前は?

それ以前の私には、アイドルの才能がなかったのだろうか?

 

まさか……こいつが言いたいのは……。

 

「ちょっと何の話? 小学生とかの頃の琴音は、アイドルの素質があったって言うの? 何? 小学生アイドルとしての才能はあった的な?」

 

「もう分かっただろう? “昔の君”が何を指すのか!」

 

こいつ、本当に私のことを知って……。

いや、そんなことはどうでもいい。

 

仮に“昔の私”がアイドルという役目を完遂できるだけの才能があったとして、それが何だというのだ。

”昔の私“に戻って、それで美咲と同じところにまで這い上がっていったって、それじゃ意味がない。

仮に美咲と並び立てるのだとしても、それをしたいのは“今の私”なのだ。

 

「話は終わり。“昔の私”というのが何を指すのかもよくわからないし。華梨奈、こんなペテン師の言うことは信じなくてもいい。今も昔も、私にアイドルの才能がないのは変わらないんだから」

 

「な、何の話をしとるんだこやつら。あたしにはまーったくついてけん……」

 

ますます嫌悪感が募る。

“昔の私”というワードから、こいつが私の何かしらを知っていることは明らかだ。こんな不審度MAXな人物、警戒するなと言うほうがおかしい。

 

「どうやら私の発言は、君を不快にさせてしまったらしい。………今日のところは、これくらいにしようかな!」

 

変態ストーカー女を括り付けていたはずの縄が、いつの間にか解けている。

私と会話している隙に解いていたのか……。

 

なるほど、じゃあ結局、今の会話は時間稼ぎのための嘘っぱち。

そうだ。そうに決まってる。こいつが私のことを知っているなんて、そんなことあるはずがない。

 

「また明日も来るよ! おっと、通報はしないでくれ! お願いだから!」

 

「ちょ、琴音、こいつどうする……?」

 

………はぁ。まあいい。私も頭に血が上りすぎていたところはあるだろうし、今日のところは見逃してやってもいいだろう。けど。

 

「次やったら今度こそ通報だから」

 

釘だけは刺しておく。1度までならまだしも、2度までもを許すつもりはない。

私は仏ではないのだ。

 

「次からは許可を取ってから脱ぐことにするよ!」

 

「そもそも脱ぐな!!」

 

本当におかしなやつだ。

 

 

 

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