TRANSFORMERS Weigh Anchor 作:H2O(hojo)
深海棲艦とディセプティコンにグアム島が襲撃されてから数日後
アメリカ合衆国 ワシントン
「あーあ、ビーのやつ作戦でJapanに行くって言ってたなぁ。Fleet Girlsに会うのかなぁ。いいなぁ」
ワシントンにある借家にてソファに寝ころがりながら、ビーという人物が日本に行って艦娘に会うことを羨ましがっているのは、サム・ウィトウィッキーという青年である。彼はミッション・シティとザ・フォールンのトランスフォーマーの関わる重大な事件に居合わせており、オプティマス・プライムも彼の事を信頼している。
だが今の彼は彼女であるミカエラと別れてしまい、心ここにあらずといった状態であった。
「Decepticonsか…」
日本 呉鎮守府
「「「「「・・・・・・」」」」」
呉鎮守府の一角にアメリカから来た複数台のヘリが着陸しようとしていた。鎮守府に所属する艦娘たちはその様子を敬礼しながら、冷ややかな目で眺めていた。
「N.E.S.T.部隊で現場の指揮官をしている、ウィリアム・レノックス陸軍中佐です。どうもよろしく。こちらは部下のロバート・エップス空軍曹長です」
「どうも」
「この呉鎮守府にて『提督』を務めているナリタ海軍大佐です。この度はわざわざご足労いただき感謝いたします」
ヘリから降りて来たのはモーシャワー将軍ではなく、N.E.S.T.部隊の現場指揮官であるレノックス中佐であった。彼は艦娘たちの前に立つ白い制服を着た男のほうに向かって挨拶し、自身の部下であるロバート曹長を紹介する。
レノックス中佐に挨拶されたのは、この呉鎮守府にて艦娘の指揮をする「提督」のナリタ海軍大佐である。彼は丁寧な態度で2人を迎えると、鎮守府の建物に向けて2人を案内する。
「まったく、どうなっているんだこの国は!!うだるような暑さにこの湿度!!こんな場所によく住めるもんだ!!」
「彼は何者です?軍人のようには見えませんが…」
「我々が協力を要請した元政府関係者です。最も、今はただの民間人ですが」
「お前ぇ!!一体誰のお陰でMegatronもThe Fallenも倒せたと思ってるんだ!?この元セクター7であるシーモア・シモンズ様のお陰だろうがぁ!!」
「無視して結構です。時間がありません。行きましょう」
「私を無視するんじゃない!!おい!!待てコラァ!!」
そして2人の後にヘリから出てきたのは、サングラスを掛けアロハシャツを着た中年男性であった。彼は日本の気候に文句を垂れながら提督たちの元に歩いてくると、自分をただの民間人だと紹介するレノックス中佐に憤り、ザ・フォールンを倒せたのは自分のお陰だと主張した。
彼の名はシーモア・シモンズ。トランスフォーマーのことを古くから調査していたアメリカの秘密組織「セクター7」の元捜査官である。
「ねぇねぇ朝霜、何であのヘリ…普通の車が乗ってるのかなぁ?」
「そんな事アタイが知るかよぉ。あれじゃねぇか?アイツらが外に出て乗り回すんじゃねぇか?」
「あの大っきいトレーラーも?」
「朝霜さん、清霜さん、まだアメリカの軍人さんたちがいるので私語は慎みましょうね?」
「「はーい」」
提督とレノックス中佐たちが鎮守府の庁舎へ向かった後、夕雲型駆逐艦の朝霜と清霜はヘリの中を覗き込み、様々な乗用車が乗っていることを不思議に感じていた。呉鎮守府に降り立ったヘリには軍用車のバギーではなく、「シボレー・カマロ」や「GMC・トップキック C4500」、さらには「ピータービルト・379」などが乗せられていた。
だがそんな2人のことを姉である夕雲が注意すると、2人は大人しく彼女の言う事を聞くのであった。
「敬礼、止め!」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「オイ大和さんよぉ、アイツら一体何なんだ?提督から何か聞いてないのか?」
「私は何も…。ただ米軍の特殊部隊がこちらに来る、ということだけしか分かりません。提督も通達を聞いたときには首を傾げていましたし…」
「マジかよ…」
N.E.S.T.部隊があらかた庁舎のほうへ向かったのを見計らって、呉鎮守府の旗艦である大和が「敬礼、止め」の号令をかける。その直後何も聞かされていない天龍が大和に、彼らのことを尋ねるが、彼女どころか提督でさえ詳しい事情を知らされていないという事実に、天龍は呆れてしまった。
「心当たりといえば…先日のグアムの一件でしょうか…?」
「アメリカよりうちのほうが近いからって私たちを作戦に参加させるつもり?まったく、私たちは米軍の補欠人員じゃないのよ?」
「あとはビキニ環礁で起こった正体不明の大爆発の件かしらね。あれが切っ掛けで太平洋上で深海棲艦の出現が多発しているのでしょう?」
「それに関して上は出撃を許可してくれないし…出撃停止の指令を聞いた横須賀の長門なんか怒髪天を衝く勢いだったそうよ。うちの酒匂も大丈夫かしら…」
「「・・・・・・」」
N.E.S.T.部隊を見送った後、榛名、加賀、矢矧の3人は彼らが何のために呉鎮守府に来た理由を、互いに考えながら会話していた。ビキニ環礁での爆発やグアム島襲撃の件も、当然日本には伝わっており、彼女たちもその不可解な出撃停止命令に疑問を抱いていた。
「夕雲姉ぇ、確かアイツら海軍じゃなくて、陸軍と空軍って言ってたよな?」
「えぇそうね、長波さん。N.E.S.T.部隊って何なのかしら…?」
「朝霜の言う通りバカンスでこんな場所に来るとは思えないけど…あの車といい、アロハの中年オヤジといい、一体何が目的なんだ…?」
その後ろを歩く夕雲型駆逐艦の夕雲と長波の2人はN.E.S.T.部隊の2人が海軍でなかったことに引っ掛かる。N.E.S.T.部隊やヘリに積まれた乗用車について2人は考えるが、答えは出ず首を傾げるばかりであった。
呉鎮守府庁舎 第二会議室
「この度はこの非常事態の中、わざわざ日本にお越しくださり誠にありがとうございます。こちら私の隣からこの呉鎮守府の艦隊旗艦の大和、高速戦艦の金剛、航空戦隊を取り仕切る加賀、重巡戦隊の高雄、水雷戦隊旗艦の矢矧、そして駆逐隊の長波です」
「「「「「「よろしくお願いいたします」」」」」」
「N.E.S.T.部隊司令官のウィリアム・レノックス陸軍中佐です。こちらは私の部下のロバート・エップス空軍曹長です」
「どうも…」
(視線が冷たいな…やはり警戒されているようだ。まぁ、無理もないか…いきなり他国の軍人が自分たちの基地に来れば、こうもなる。しかし…娘にこんな顔で睨まれたら俺は立ち直れんな…)
庁舎に到着したレノックス中佐たちは、会議室に案内されそこで提督と艦娘たちと対面していた。いきなりやって来たレノックスたちを見て、艦娘たちの態度は冷ややかであった。彼は彼女たちの心情を理解しつつも、可愛い娘に自分がああいう態度を取られたらと想像し、恐ろしくなっていた。
「どうぞ、お茶です」
「あぁ、どうも…」
(Japaneseってマジで緑色のteaを飲むんだな…)
「がぁッ!!苦ッ!?Japaneseはよくこんなもんを飲めるな!?この気候で味覚がイカレたのか!?」
「すみません。コイツのことは無視して結構です」
会議を始める前に間宮が部屋の中を訪れ、客である3人にお茶を用意する。ロバート曹長は初めて緑茶を見たのか、心の中で少々引いていた。だが彼の隣に座っている民間人のシモンズが、目の前に日本人がいるにも関わらず思ったことを口にしたため、レノックス中佐は冷ややかな声で無視するようにと述べた。
「さて、気になっているでしょうから結論から先に申し上げます。あなた方には我々N.E.S.T.部隊の作戦に参加していただきます」
「『参加していただきます』?冗談はやめて欲しいものね。何故私たちがあなた達の命令を聞く必要があるというのかしら?」
「いいや、これは決定事項だ。既に我々の長官であるモーシャワー統合参謀本部議長がJapanの首相他閣僚たちと今回の作戦についての会談を行っている。じきに正式な作戦指令が出されることだろう」
「またそうやって頭越しに私たちに指令を出すのね」
「その件に関しては強引なやり方であると自覚しているが、何分非常事態なんだ。勘弁して欲しい」
レノックス中佐は会議が始まって開口一番に、自分たちN.E.S.T.部隊の作戦に参加してもらうと、呉鎮守府の面々の前で宣言する。だが、加賀は彼の言う事に対し、他国の部隊の命令を聞く必要は無いと答える。だがレノックス中佐は既に首相といった政府の閣僚とモーシャワー将軍が会談を行っており、この話は既に決まっていると答え、非常事態であることを強調した。
「ではその理由というのを聞かせてくれますカ?いきなりここに来て、従えと言われても誰も納得できまセン」
「金剛さんの言う通りだぜ。深海棲艦との戦いはアタシたちの領分のはずだろ?アタシらは一体何と戦わされるんだ?」
「ハハハハハハ!!随分と嫌われてるな!!」
「「・・・・・・」」
(途中で太平洋に捨ててくりゃよかったぜ…)
金剛と長波はレノックス中佐に自分たちがN.E.S.T.部隊の作戦に参加しなければならない理由の説明を求める。シモンズは彼女たちのレノックスに対する態度を見て、愉快そうに笑い、ロバート曹長にここに連れてきたことを後悔させた。
「彼女たちの言う通り、貴方方の作戦に参加するためには、それに足るだけの理由が必要です。ご説明願いますね?」
「無論です。我々はそのためにここに来たのですから」
「まったく、ご苦労なことだ!N.E.S.T.部隊の司令官どころかモーシャワー将軍までもがJapanにわざわざtripとはな!いやぁ~好かれてるね!君たち!!」
「ロバート!!」
「ラジャー」
「いだだだだだ!!ギブギブギブ…!!」
艦娘たちの態度を見ていた提督は、改めてレノックス中佐に今回の作戦の意義や目的の説明を促す。自分が説明を始めようとしているのにも関わらず、シモンズが横から茶々を入れるので、彼はロバート曹長の名を呼んだ。
するとロバート曹長はシモンズにヘッドロックをかけ、彼はその痛さに悶絶していた。
「では改めて…数日前グアム島が深海棲艦によって占領されたのは皆さんご存知でしょう。そしてその前に起きたビキニ環礁における正体不明の大爆発…。これらは我々人間でも、深海棲艦でもないある別の存在によって引き起こされたものです」
「別の存在…ですか?」
「これからあなた方にはある映像を見てもらいます。口で説明するより見たほうが早いでしょうから。それこそが今回の一連の事態を引き起こしている黒幕の正体です」
レノックス中佐は鎮守府の者たちに、今回の事件は人間でも深海棲艦でもないある存在が引き起こしたものだと打ち明ける。だが当然それだけでは想像がつかないため、彼女たちは首を傾げる。それを横目に彼はモニターの電源を入れその存在が映った映像を流し始めた。
「これは数年前、上海にてある存在とN.E.S.T.部隊が戦闘をした際の映像になります」
『2時の方向、スチール反応』
「ショベルカー…?どういうことなの?」
モニターに映し出された映像は上海の市街地をヘリで空撮している映像であった。その映像の中心にはO&K/テレックス・RH400という種類の油圧ショベルが映っており、高雄は何故それを撮っているのかという疑問を抱く。
だが、次の瞬間…
ギゴガゴゴ!!
『伏せろ!!』
『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?』
『伏せろ!!伏せろぉぉぉぉぉ!!』
「「「「「・・・・・・」」」」」
その油圧ショベルは一瞬にして変形し、辺りに砂埃を撒き散らしながら暴れ回る。ヤツはその大きな巨体で鉄製の資材を吹き飛ばし、精鋭であるN.E.S.T.部隊を恐怖に陥れていた。
そしてその異様な映像を見た提督と艦娘たちは、その有り得ない光景に絶句していた。
「コイツはDecepticonsのDemolishor。Transformerという金属生命体だ」
「ディセプティコン…欺瞞ある者…ですカ」
「随分と精巧なCGですのね。でも私たちを揶揄うにしては少し悪辣ではなくて?」
「いきなりこんなものを見せられて信じられないのは分かるが、コイツはCG映像なんかじゃない。ホンモノだ」
レノックス中佐はモニターに映された存在をディセプティコンのデモリッシャーだと述べ、彼のことをトランスフォーマーという金属生命体だと説明する。その映像の内容を信じられない高雄は、これを精巧なCGだと言うが、レノックス中佐は現実の映像であると返すのであった。
そもそもトランスフォーマーに関する情報はアメリカによって統制されており、「ミッション・シティ」や「ザ・フォールン」に関する情報でさえも全て知られているわけではない。つまり彼女たちは初めてトランスフォーマーという存在を知ったのである。
「つまりアタシたちはこのよく分からんロボットと戦わされるってことか?」
「Robots!?アレが人の作った物に見えるのか!?これだからJapaneseは…アレはお前たちが大好きなAnimationのMobile SuitやLaborじゃない。コイツらはこの地球にやって来たAlienだ!!」
「いやモビルスーツとレイバーって…アンタも好きなんじゃん…」
「正体不明のエイリアンが侵略して来て人間を襲う。いかにもアメリカンって感じのシナリオですネー。アナタも人のこと言えませんヨ?」
映像を見て長波はデモリッシャーのことを「ロボット」と言うと、シモンズは彼らがエイリアンであると訂正する。金剛は長波の発言を馬鹿にしたシモンズに対し、自分も人のことを言えないと口にした。
「DecepticonsはMegatronをleaderとしてこの地球どころか宇宙の支配を目論んでいる。我々N.E.S.T.はヤツらを殲滅するために結成された部隊だ」
「それで?そのメガトロンは今どうなっているのかしら?」
「・・・。エジプトで取り逃がした後、現在消息不明だ」
「そう…つまり私たちはあなたたちの尻ぬぐいをさせられるということね」
レノックス中佐はディセプティコンが地球どころか宇宙を支配していると述べ、N.E.S.T.は彼らを殲滅させるために結成されたと説明した。加賀はそのディセプティコンのリーダーであるメガトロンは今どこにいるのかとレノックス中佐に尋ねると、彼は気まずそうに取り逃がしたと答える。
「ともかく…今回の事態はコイツらDecepticonsが深海棲艦と手を組んで起こしているとみて間違いないだろう。つまり、今回の作戦の目的は我々と君たちが協力して深海棲艦とDecepticonsを殲滅することだ」
「それでそのディセプティコンとやらに私たちの艤装での攻撃は効果があるのかしら?私たちが作戦に参加したところでアレに太刀打ちできないと意味ないでしょう?」
「いや…Transformersの武装は現代兵器よりもさらに強力だ。君たちの攻撃は効果がないだろう」
「ではどうやってディセプティコンを倒すのですか?」
「TransformersにはTransformersだ。Decepticonsに敵対し我々に協力する集団Autobotsが彼らの相手をする」
「オートボット…また新しい単語が出てきましたね…」
レノックス中佐は改めて今回の作戦は深海棲艦と協力するディセプティコンを殲滅することだと説明する。その説明に対し矢矧は、自分たちの艤装による攻撃が通用するのかと問うが、彼は艦娘の艤装ではトランスフォーマーには通じないとハッキリ答えた。
そしてディセプティコンの相手はオートボットがすると答え、度重なる知らない単語の登場に大和たちの頭はこんがらがっていた。
「んで、そのオートボット?とやらはどこにいるんだよ?あんなデカいヤツどこにもいないじゃんか」
「Transformers最大の特徴は地球の乗り物をスキャンして擬態することだ。Autobotsは既に乗り物に擬態してココに来ているよ。コイツらがMegatronの捜索に手間取ってるのもそれが理由だな。我々セクター7を解散などさせるからこうなるのだ。ざまあみろ!!」
「ロバート!!」
「うぉぉぉぉ!!痛いッ!!痛いッ!!やめろぉぉぉぉぉ!!」
だが長波は先ほど映像で見たデモリッシャーのような存在を見かけなかったと言うと、シモンズがトランスフォーマーは乗用車などへ擬態していると述べる。これはディセプティコンも同様なため、N.E.S.T.部隊は彼らの捜索に手間取っているのである。
「てことはまさかあの車がそのオートボット…?」
「その通りだ」
「に、にわかには信じられないですね…」
「うむ…」
長波はレノックス中佐の話を聞いて、先ほどヘリの中に置いてあった乗用車がオートボットであると察する。ぱっと見はただの車にしか見えなかっただけに、大和や提督もアレが機械生命体であると信じられない様子であった。
「Autobotsの話が出たことですし、これから彼らに会いに行くとしましょう。彼らもあなた方をお待ちかねです」
「「「「「・・・・・・」」」」」
提督と艦娘たちはレノックス中佐に促され、会議室を出てオートボットたちがいる工廠へと向かうのであった。
呉鎮守府 工廠
「オーライ!オーライ!よし!!」
「見ろよ清霜、さっきの車が工廠に運ばれてきたぞ」
「あ、本当だ。ということは提督とかにあげるのかな?」
「あっちの乗用車とバイクならまだしも、あんなデケェトラックウチじゃ要らねぇって」
先ほどヘリに乗っていた複数の乗用車は、N.E.S.T.部隊によって呉鎮守府の工廠へと移動していた。それを横目で見ているのは先ほど乗用車に興味を持っていた、朝霜と清霜である。彼女たちは相変わらずあれらの乗用車が何のためにここに運ばれているのかと、話し合っていた。
「ふぁ~あ…みんなおはよう…って何これ。どしたの?」
「さぁな。アイツらがいきなりやって来てアレをここに運んできやがった」
「ふぅ~ん。くれるの?」
「知らねぇよ」
工何かが起こっているのを嗅ぎ付けて工廠に訪れたのは、今日非番であった北上である。彼女は工廠にいた天龍を見つけると、この事態について聞くが、知らないと返された。
「『ドゥカティ・848』に『スズキ・B-KING』と『MVアグスタ・F4』ね…良い趣味してるじゃない」
「あの3台のバイクのことか?」
「えぇそうよ!戦果を上げたら1台貰えないかしら…」
「現物の贈与が軍務規定に接触しなければいいがな」
工廠の2階部分にて車が運び込まれている様子を眺めていたのは、妙高型重巡洋艦の那智と足柄である。足柄は停まっている3台のバイクの種類を言い当て、戦果を上げれば貰えるのではと期待に胸を膨らませていた。だが姉の那智の反応は冷たかった。
「ちょっとこれどういう事よおやっさん!?いつからココは駐車場になったの?」
「さぁな。いきなり米軍がやって来てココに車を置かせてくれと言いやがった。まぁすぐに終わるつーから仕方なくだ。アイツらとひと悶着起こすわけにもいかねぇからな」
「そうよ瑞鶴。何もずっとここに置いておくわけじゃないんだからそう怒らないの」
「もう!!おやっさんも翔鶴姉ぇも甘いんだから!!」
工廠の責任者であるおやっさんに文句を言っているのは、翔鶴型航空母艦の瑞鶴である。だが当のおやっさんと姉の翔鶴は、一時的に置いておくだけだと言って彼女を止めるのであった。2人の甘い態度に瑞鶴は憤っていた。
「あら、あらあら?随分騒がしいと思って覗きに来たら、面白そうなことになってるみたいね」
「これから一体何が始まるというのでしょうか…?」
「それは、提督と一緒に会議室に行った金剛たちに聞いてみないと何ともね。見た感じ結構大事な話をするような雰囲気だったけれど」
「私たち、何か大変な事に巻き込まれようとしているような気がします…」
「それは同感ね」
工廠に乗用車が運ばれてくるという異様な事態に呉鎮守府の艦娘たちが騒いでいるのを見た長門型戦艦二番艦の陸奥は、その様子を面白がっていた。一方で榛名は自分たちが何か大変なことに巻き込まれるのではないかという予感を感じており、それは陸奥も同様であった。
「彼らの移動は完了しているか?」
「えぇ、全てこちらの工廠へと移動させています」
「そうか。既に彼らの正体はこの方々には開示している。そして、これからこの基地にいる人間にも彼らの正体を明かす。まぁ、後は彼女たちと彼ら次第だな」
「そうですね。上手くいけばいいのですが…」
レノックス中佐と呉鎮守府の面々は、会議室を出て工廠へと向かっていた。N.E.S.T.の隊員は上官のレノックスに彼らの運び込みが完了したことを伝える。
彼はここからの話は艦娘たちとトランスフォーマーたち次第だと考えていた。
「あっ、噂をすれば…米国の軍人さんと提督たちが来たみたい」
「この場にお集りの皆さんにはご迷惑をお掛けしています。私はアメリカ軍特殊部隊N.E.S.T.のレノックス海軍中佐です」
「ちょっと!!うちの工廠はアンタたちのバカでかい車を置いておく場所じゃないんだけど?」
「瑞鶴、少し落ち着きなさい。これからこの事について中佐から説明がある」
「提督さん…」
工廠の入り口付近で榛名と話していた陸奥は、レノックス中佐が提督たちを連れて来たことに気付く。彼らが工廠に入ってきたのを見た瞬間に瑞鶴はレノックスに不満をぶちまけようとするが、隣にいた提督に制止されてしまった。
「やっぱり普通の車に見えますね」
「アレが映像で見たようなロボットに変形するだなんて…どうにも信じがたい話ですわ」
会議室から工廠に戻ってきた大和と高雄であったが、未だにトランスフォーマーの存在を信じられずにいた。工廠に停まっているトレーラーも乗用車もバイクも、ロボットに変形するとは想像できないのである。
「まぁ、説明するより本物を見たほうが早いだろう。Autobots、もうtransformしていいぞ」
ギゴガゴゴ!!
「は……?」
「ウソでしょ…?」
「・・・・・・」
「す、スッゲー…」
レノックス中佐がオートボットたちにトランスフォームの許可をすると、工廠に運ばれてきた車たちが一斉に人型の姿へと変形する。その場にいた艦娘たちはその異様な光景に、ある者は目を擦り、ある者は呆然と口を開け、ある者は尻もちをついていた。
「長旅ご苦労だ諸君。ここが目的地であるJapanだ」
「ふぅ~やっと着いたぜ。ってオイ、こりゃどういう事だレノックス?何で俺たちトランスフォームして早々銃口を向けられてんだよ」
「多分俺たちのことを初めて見たんだろう。見覚えのある反応だ」
「あぁ、ビビッてんのか。それならそうと言っておいてくれよ。キャノン砲を撃ちそうになったぜ」
「しゃ、喋ってる…」
GMC・トップキック C4500から変形したのはオートボットの副司令官を務める「アイアンハイド」である。彼はトランスフォームしていきなり艦娘たちに銃口を向けられていることに対して、レノックスに説明を求める。それに対しシボレー・コルベットから変形した「サイドスワイプ」は、初めて見る自分たちに怖がっているのだと述べ、彼の言葉にアイアンハイドは納得するのであった。
「あのトレーラーから変形したロボット、大きいねー。お台場のヤツとどっちが大きいかな?」
「さぁ、同じくらいじゃねぇか?」
「あら、最近の技術は凄いのね。車がオモチャみたいにロボットに変形するなんて」
「会話もしてるぜ、スゲェな」
オートボットたちがトランスフォームした姿を見た清霜は、朝霜と一緒に子供のようにはしゃいでいた。2人の後ろでその様子を見ていた夕雲は、トランスフォーマーを米軍の新兵器か何かだと思っており、その技術力に感心していた。
「驚かせてすまない。私はオートボットのリーダー、オプティマス・プライム。我々は君たちと争いに来たのではない。協力を頼みに来たのだ」
「彼らに銃口を向けている者は武器を降ろしなさい」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「貴方がこの基地の司令官か?感謝する」
「はい。私がこの呉鎮守府にて艦娘たちの指揮を執っている、ナリタです」
ピータービルト・379から変形したトランスフォーマーは、自らをオートボットのリーダー「オプティマス・プライム」と名乗り、艦娘たちに協力を申し出るために来たと述べる。それを聞いた提督は彼を信じて、艦娘たちに武器を降ろすよう命じた。
「『日本の皆さん』『こんにちは』『私の名前は』『バンブル』『ビー』」
「うわぁ!?ビックリしたぁ…お前、ラジオ使って喋んのか?」
「ビーは声を出す機能が損なわれてしまっているのだ」
「『皆さんにお会いできて光栄です』」
そして最後にシボレー・カマロから変形したトランスフォーマーがラジオの音声を繋ぎ合わせながら、自身を「バンブルビー」だと名乗る。その変わった会話方法に天龍は驚いていると、オプティマスは彼が声を出す機能が損なわれているのだと説明するのであった。
「レノックス中佐からある程度お話は聞いています。ディセプティコンというトランスフォーマーの軍団が深海棲艦と手を組み、太平洋で暴れ回っているとか」
「あぁ、その通りだ。どうやったかは知らないが、ヤツらはこの惑星の深海棲艦という生物を従える術を見つけたようだ。新たな力を手に入れたディセプティコンはこの惑星で破壊の限りを尽くすだろう。そうなる前に止めなくては…!!」
「そのために、我々に力を貸して欲しいと?」
「そうだ。君たちには我々と共にディセプティコンや深海棲艦と戦って欲しい。私は君たちに助力を頼むためにここに来た」
提督はオプティマスの足元に近づくと、彼に今太平洋で起きている異変について尋ねる。オプティマスは深海棲艦と手を組んだディセプティコンは地球で破壊の限りを尽くすだろうと言い、それを止めるために艦娘たちに助力を求めに日本に来たと答えた。
「貴方に私の部下を預ける。皆、ディセプティコンと長きに渡って戦ってきた精鋭たちだ。きっと役に立つはずだ」
「我々N.E.S.T.部隊もここに残って貴方たちと共に戦います。私とOptimusは本国へ戻って本国の部隊の指揮を執らなければなりませんので、そちらのことは全て貴方にお任せします」
「・・・・・・」
そしてオプティマスは連れてきた彼の部下を提督に預けると言い出す。さらにはレノックス中佐までN.E.S.T.の人員をここに残し、彼らの指揮を提督に一任するとまで言っていた。さすがの提督もこれには悩んでいたようであった。
「あの…提督?」
「大和…」
「私たち艦娘は提督である貴方の指示に従います。ですから、どうか悩まずに、自分の思うままに決断してください」
「やれやれ…部下に気を遣わせてしまうとはな」
そんななか、旗艦である大和が提督に言葉をかける。提督は大和の言葉を聞いて、彼女に気を遣わせてしまったことを反省していた。
「オプティマス・プライム、そしてレノックス中佐、貴方方の大切な部下をお預かりいたします。そして必ず暁の水平線に勝利を刻んで見せましょう」
「お引き受けいただき感謝いたします」
「戦う戦場は違えど、我らは目的を同じくした戦友だ。よろしく頼む」
「はっ!!」
提督は大和の言葉で覚悟を決め、オプティマスとレノックス中佐に勝利を誓う。その姿を見た2人は彼の決断に感謝し、共に戦えることを喜んでいた。
「Hey!!さっきのアンタの言葉、痺れたわよ!アタシの名前はエリータワン、これからよろしくね、Admiral」
「私の名前はクロミア。あら、近くで見るといい男じゃない!」
「アーシーよ。この後一緒にどう?」
「あ、あぁ…」
「そこの人たち!!慣れ慣れしいですよ!!提督から離れてください!!」
提督がオプティマスとレノックス中佐に作戦の参加を宣言すると、バイクから変形したエリータワン、クロミア、アーシーの3人が彼の元に寄ってくる。彼女たちが提督にちょっかいをかけていると、大和が怒りながら彼から離れるように注意するのであった。
「オートボットたちよ、これより彼らと共にディセプティコンを撃ち倒し、必ずやこの惑星の平和を守るのだ!!」
「「「「ラジャー!!」」」」
「ロバート、後のことは頼んだぞ」
「任せろ」
オプティマスは自分の部下たちに艦娘たちと共にディセプティコンと深海棲艦を倒し、地球の平和を守るよう命令する。レノックスはロバート曹長に後を託し、彼は上官と部下ではなく戦友としての言葉を返した。
「では、我々はモーシャワー将軍と共に本国へ戻ります。貴方たちは日本から、我々はアメリカからそれぞれビキニ環礁を目指しましょう」
「グアム島の奪還は我々にお任せください」
「えぇ、良い報告を期待しています」
「幸運を祈る」
こうして、オプティマスとレノックスは自分たちの部下を提督に託し、アメリカへと帰還した。後日政府から通達が届き、彼女たちは正式にトランスフォーマーと作戦を共にすることとなった。
作戦開始まで残り7日
呉鎮守府の艦娘の人選は単なる私の趣味です。
Tips
ナリタ海軍大佐 cv成田剣
アニメ2期に出てきた提督。
おやっさん cv京本政樹
アニメ2期に出てきたおやっさん。
サム・ウィトウィッキー cv小松史法
実写映画3作目までの主人公。ミカエラと別れた。
ウィリアム・レノックス陸軍中佐 cv矢崎文也
リベンジでは少佐、ダークサイドムーンでは大佐なので、今は中佐。
ロバート・エップス空軍曹長 cv山野井仁
ケツのポッケにクレカが入っている黒人の人。悲しいかなこの後軍を辞める。
シーモア・シモンズ cvチョー
元セクター7のおっさん。最近レストラン経営が軌道に乗り始めたらしい。