赤い光弾ジリオン外伝シリーズ   作:LLZILLION

3 / 5
本編29話と30話の間くらいのお話です。
『ジリオン』最大の謎、「ジリオンってそもそも何?万能すぎない?」をノーザ側視点での一解釈で書いてみました。
すみませんがホワイトナッツは脇役です。オリキャラのDr.パイロは、当時のネーミング規則に沿って当時のプロレスラーから名前を採っています。


「神秘」の舞台裏

 「――急ぐのです、我々に残された時間はあまりに少ない」

 ノーザ軍P38宙域の総司令官アドミスは重々しく言った。ノーザの命はあとわずか。己の研究は間に合わないかもしれない……そんな気持ちを押し殺し、Dr.パイロは敬礼した。

 「ヤー!」

 

 アドミスの映像が消えたとたん、データを持った助手が急いで通信室に入ってきた。

 「どうした?」

 「いえ、それが……理解できない現象です、是非ドクターに確認していただきたく……」

 「わかった。すぐ行く」

 

 Dr.パイロは、マリスで抵抗する地球人たちの軍備を開戦当初から分析していた。個々の兵士の能力は、特に白兵戦において我が方の圧倒的優位。技術力に関しても、特に個人用パワードスーツと、大型の戦略兵器、ステルス性能の開発および量産化において、これも地球人の追随を許さない。

 

 占領は、時間の問題のはずだった……あのときまでは。

 マリス空軍の基地を襲撃した部隊から、あの日受けた報告は信じがたいものだった。

 分子崩壊――およそ、個人用兵装の概念を遥かに超えた、我々の存在そのものを脅かす新兵器の出現に戦慄したことを覚えている。

 だが、彼らはそれを大型化することも、量産化することもなく、わずか数人の特殊部隊で運用するに留めていた。

 理由はわからない。しかし、彼らにはそれができないのだ。地球人に化けて潜入したスパイによって、その訳はほどなく明らかになった。

 

 神が与えし神秘の銃、ジリオン。

 

 その武器は地球人の間でそう呼ばれていた。なんのことはない、つまりその驚異のテクノロジーは、彼らのものではなかったのだ。

 しかし、そのたった三丁の銃に、我々はずいぶん苛まされることとなった。戦線の膠着を打破しようと開発された新兵器、新拠点、作戦などが、ことごとくその特殊部隊ホワイトナッツの妨害に遇い、出鼻を挫かれた。

 彼らを排除する試みもあったが、しかしその結果は惨憺たるものだった。我々は、暗殺部隊ジェノサイド6、ノーザ最強のスナイパー・バルガリ、スペシャルエリーターズなど、多くの優れた兵を失った。

 傑出した武人であったバロン・リックスなどは、彼らに執着しすぎるあまり、遂にはノーザの敵となってしまった。

 ノーザウォーリアーズは健闘しているが、しかし成果だけを見るなら、ホワイトナッツの行動力をやや削いだに過ぎない。

 

 いまや、ノーザの優位は消えていた。もちろん数で圧倒する我々は、時間さえあれば地球人にいずれ勝利することはできるだろう。

 だが繁殖期に近づいたいま、時間は地球人に優位を与えている。早急に、戦いに勝利しなければならない。

 もはや研究の主題は、ホワイトナッツや、彼らの持つジリオン銃そのものではなかった。ジリオンの持つ驚異的な力の源泉を解き明かし、それを我らのものとする……この研究の成功に、ノーザの未来がかかっているのだ。

 

 「――見てください、活性化したジリオニウムの付近で、イオン化した原子が、稀少な同位体を多数生み出しています。あり得ない確率です」

 「ふむ……」

 やはり、このジリオニウムが分子になんらかの影響を与えている。惑星マリスの遺跡で発見されたばかりのジリオニウムは実験データこそ未だ揃っていないものの、これまで様々な物質を試してきた中で初めて、実験において特異な性質を示していた。

 「ドクター、こちらもご覧を。こんな現象、見たことありません!」

 実験機器を確認し、Dr.パイロは絶句した。原子から飛び出す電子の方向が、なんの力の影響もなしに、単一の方向に揃っている。

 もちろんたまたま、いくつかの電子が同じ方向に放出されることはあり得る。だがこれは明らかに異常だ。

 「あり得ない確率」……その時、Dr.パイロの脳裏に閃くものがあった。

 「ホワイトナッツとの交戦記録をいますぐ用意しろ、全てだ!」

 

 膨大な記録を詳細に見ると、思い当たる場面が次々に出てきた。圧倒的な理不尽、常に地球人に有利に働く偶然。

 間違いない。

 分子崩壊は、この活性ジリオニウムの力の一端でしかない。

 分子、素粒子レベルでの、恣意的な確率操作――

 これこそが、おそらくは地球人も把握していないジリオンの本質なのだ。

 ならばバロン・リックスの報告にあった、ホワイトナッツメンバーが目前から消失し、のちに何事もなく現れたことにも説明がつく。分子崩壊と、移動と、再構成。影響範囲はおよそ5ミレ(約500m)……。

 何者かが、あらゆる可能性から任意に未来を選択している……それを可能たらしめるテクノロジー、それが「神秘の銃」の正体……!

 Dr.パイロは声を失った。我々は、神に戦いを挑んでいるのか? なぜ神は、苦境にあえぐ我々ではなく彼らに味方するのか……。

 「――敵襲!」

 Dr.パイロの思索は慌ただしく駆け込んだ警備兵によって破られた。

 「……敵部隊は3名……ホワイトナッツです!!」

 

 「――でもよデイブ、ホントにジリオニウム反応なのか?」

 『その可能性は高いと思う。くれぐれも慎重に行ってくれ』

 JJは通信を切り、アクセルを開いた。

 その先に、施設の門を守るようにノーザ兵が現れ、銃撃を開始した。

 「おおっと」

 JJはライディングセプターを操り、それをなんなく避けた。車体を立て直すと、チャンプが横に並んだ。

 「チャンプ、どうやらヤツら、ジリオンを作れたワケじゃなさそうだなぁ?」

 「ノーザに予備を作ってもらえよ、JJ。お前は扱いがテキトーだからな」

 チャンプが警備兵をスナイプした。

 「そうだな、二丁拳銃ってのも悪くねえ」

 「できんのか?」

 ノーザの施設が見る間に近づいた。

 「さあな!」

 JJはライディングセプターを乗り捨てノーザ兵にぶち当てると、ジリオンを右手で撃ち、そのまま転がって、左手で背後の2体を立て続けに倒した。

 それを見たチャンプは笑みを漏らすと、施設から新たに現れた敵を連続で仕留めていった。

 「サンキュー、チャンプ!」

 JJが扉をくぐると同時に、アップルが叫んだ。

 「JJ、こっちよ!」

 背後からアップルのライディングセプターが走り込み、JJは素早くサイドカーを掴んだ。

 「おっとあぶねぇ!」

 バランスを崩しつつもJJはサイドカーに立ち上がり、2台のライディングセプターは施設内を突き進んだ。

 

 目指す部屋は正面だった。三人はマシンを止めると扉を爆破し、慎重に奥に進んだ。

 そこは何かの研究室のように見えた。薄暗く、不気味な色の物質がそこここに保存されている。そこにいた、一般兵とは明らかに違う異様なノーザが、三人をじろりと睨んだ。

 「お前たちが、ホワイトナッツ……死ねぇ!」

 奇妙な形の武器を構えたノーザは三人に狙いをつけた。

 赤いエネルギー体が発射され、彼らを襲う。

 「あぶねぇ、アップル!」

 JJはアップルにタックルし、転がりながらジリオンでノーザを倒した。それが、Dr.パイロの最期だった。

 

 「これは……ジリオン?」

 アップルは残された銃を拾い上げた。

 「ぜんぜん似てねぇな、こいつ」

 JJは自分のジリオンとその銃を見比べた。

 「ジリオニウムを撃ち出す機構はありそうだが……そこまでだな」

 チャンプが言うと、そこにデイブから通信が入った。

 『終わったみたいだな、みんなお疲れさん。早速で悪いが、すぐそばにジリオニウム反応だ。探してみてくれ』

 

 ジリオニウムはすぐに見つかった。小さい段ボール箱ほどの器に、たっぷりと赤い耀きが満ちていた。

 「クリスタルパレスにあったものと同じ……」

 アップルが呟いた。これも、マリス先史文明の遺産だろうか。

 「すげぇ、ちょっとしたボーナスだぜ」

 「JJのボーナスはもう消えちまったけどな」

 「いーんだよ、オレは宵越しのカネは持たない主義!」

 JJがムキになってチャンプに反論し、アップルが笑った。

 「拗ねない拗ねない。はやく回収して戻りましょ。もしかしたら特別ボーナスが出るかもしれないし」

 「そりゃあいい!」

 JJは躍り上がった。

 

 

 「――そうですか、Dr.パイロも……」

 「ヤ、ヤー……」

 「ご苦労でした。下がりなさい」

 マリスを廻る衛星リルの基地で、アドミスは立体映像の惑星マリスを見つめた。

 「できれば、美しいままのこの星を手に入れたかったのですが……」

 そう呟くと、うって変わって張りのある声で宣言した。

 「全軍に指令を。最後の作戦を決行します――」

 

<了>

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。