以前、ある有名アニメーターの方が描かれたファンイラスト(JJがアップルを押し倒してる)にズキュンされまして、あれはどういったシチュエーションなんだろう?とずっと考えた結果がこれです。
「うん、これで大丈夫」
アップルはJJの足にテープを巻きつけ終わると、満足そうに頷いた。
「サンキュー、アップル。まったく、とんだドジ踏んじまったもんだぜ」
――ノーザの移動基地を追ったホワイトナッツは、慣れない山岳地帯での戦闘に分断を余儀なくされ、ライディングセプターやトライチャージャーも稼働不能に陥っていた。基地は破壊したもののノーザの残党はまだ残っており、徒歩で突破するしかないJJとアップルは、まず山の中腹のポイントでのチャンプ、デイブとの合流を目指していた。
「仕方ないわ、ノーザとの戦いが終わるかも、って思ったら、私だって少し撃つのをためらっちゃう。JJもそうでしょ?」
「なんだよォ、人を浮かれたヤツみたいに」
JJが口を尖らせて抗議した。
「ふふっ。……でもデイブとチャンプ、ちょっと遅れてるのかしら」
「時間が経つほどノーザは減るんだろ、ゆっくりさせとくさ。アップルも少し休みゃいーんじゃねえの?」
「ええ、ベースに戻ったらね」
そう軽く言うアップルを、JJは見つめた。アップルは……いつもマジメ過ぎる。軍じゃあ早死にするタイプだぜ……。
会話が不意に途絶えたことに気づいたアップルが怪訝そうな顔を上げた。
不意に目線が合ってしまったJJは、思っていたことをうっかり口に出してしまった。
「……なぁアップル……アップルは、この戦いが終わったら軍をやめるんだろ?」
「……どうしてそんなこと聞くの?」
アップルの疑問はもっともだった。
「いや……、なんとなくさ」
さりげない感じに答えられただろうか? JJはアップルを横目で伺ったが、生真面目な彼女の視線はJJより遠くを見ていた。
「私は……もうちょっと軍にいるつもり。まだ未発見のノーザの基地は残っているし、危険な兵器もあとどれだけあるか、まだわからないわ。それを発見処理して、安心して暮らせるマリスになるまでは……軍が要るんじゃないかな、って」
「それって……いや、そんなのダメだって! アップルは……ほら、やりたい事とかあるんだろ!? そんな危ねぇ仕事はオレとかチャンプに任せちゃってさ!」
アップルは目を丸くした。
「JJ、それはあなたも同じでしょ? それがいまの私にしかできないことなら、なんであれ続けなくっちゃ」
JJが身を乗り出した。
「そんなことねぇって! アップルじゃなくて、オレにだってやれるぜ。だいたい、それでアップルが死んじまったら……みんな……そう! みんなが困るんだよ!」
「……そういう考え方もあるかもね……。でも、そう思えるようになるのは、もう少し先だと思ってるわ」
アップルは瞼を閉じ、自分に言い聞かせるように呟いた。
「だーーッ! こンの分からず屋ァッ!!」
JJは突然アップルの腕を掴み、そのままアップルを地面に組み伏せた。
「聞けよアップル! ……いや、聞いてくれよ……頼む」
なにかを懸命に堪えながら、胸の奥から絞り出すようにJJは言った。こんな体勢からでも彼女はいつでも逆転できるはずだが、苦悶をにじませたJJの表情に、アップルからその気勢は削がれてしまっていた。
「アップル……オレ、マジでアップルのこと……死んでほしくないって……」
「JJ……」
アップルはJJを見つめた。
辛そうに、だが視線を避けずに、JJはアップルの瞳を受け止めた。
「JJ、私は……」
JJがゆっくりと、アップルに顔を寄せてくる。アップルは、そんなJJの潤んだ瞳から目を離すことはできなかった。
JJが……私のことを……?
アップルは押さえつけられた両手を初めて意識した。はねのけるべきなのだろうか? 逡巡している間にも、JJの唇はアップルに近づいてゆく。
いいの……アップル?
自問するが、答えは出なかった。アップルはどうしたいのか自分でもよくわからず、思わずぎゅっと目をつぶった。
「あっれぇ、JJとアップルはどこだぁ?」
デイブの声が聞こえ、二人は飛び起きた。
「でっ、デイブ!?」
その声を聞きつけたチャンプが草むらから現れ、デイブも続いて顔を出した。
「JJ、アップル! 無事だったか?」
「チャンプ! デイブ! ありがとう……私は無事だけど、JJが軽い捻挫で」
尻もちをついたJJが頭を掻いた。デイブはアップルに頭を下げた。
「遅れてすまなかった、アップル。だが、もう少しで空軍の援護が到着するはずだ」
「JJ、動けるか?……おーお、なんだか微妙なツラしてんじゃない。二人っきりのラブシーンを邪魔されて怒ってんのか?」
「チャッ、チャンプ!?」
「ちっ、違わい! ちょっと、怪我した脚が痛むんだよっ!」
チャンプは頰に手を当て、あたふたと否定するJJとアップルを流し目で見つめた。
「ふぅ〜ん……なぁんだ、まんざらでもなさそうじゃないか……」
*
最後の戦いに向けて、準備は整った。
あとは彼女だが……
JJは首を振った。
自分の望みは、彼女を守ることだ。危険な場所に連れて行くことでもなければ、出発前に余計な事を伝えて彼女を混乱させることでもない。
もし自分やチャンプ、デイブが死んだら彼女は俺たちを恨むだろうが、それくらいは覚悟の上だった。
そしてもし、もしも俺たちが生きて帰れたら……そのときには、彼女に告白したっていい。
JJは晴れやかな笑顔でコンソールを開いた。自分の運命は自分で切り開く。すごく、性に合うシチュエーションだ。
コクピットはどことなく、好物のマリスチキンの匂いがした。こんな時に食い物のことが考えられるってんだから、いまのオレは絶好調ってワケだ。
JJはレバーを引き、力強く宣言した。
「行くぜ、チャンプ、デイブ!! ノーザと決着をつけてやる!」
<了>