赤い光弾ジリオン外伝シリーズ   作:LLZILLION

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これまで書いた話をつらつら読んで、デイブの扱いがちょっとヒドすぎない俺?と思って書きました。
本編以前、デイブのホワイナッツ参加の舞台裏。的なお話です。


今日もお空で

 「デイビッド。君の選択をわたしは支持しない。だが君のことだ、わたしが思いもよらないような成果をそこで出すのだろう。わたしもせいぜい、君に負けないようここで研究に励むとしよう」

 神経質そうに眼鏡を押さえながら、長身の青年は計測機器から目を上げた。

 「すまない、ボブ。僕はどうも、一度思い込むとそれにのめり込むクセがあるみたいだ」

 屈託なくデイブが答えた。

 研究室には夕日が満ち、ボブと呼ばれた青年の白衣をオレンジに染めている。

 「知っているよ。君のその性格のせいで、わたしが何度二番手に甘んじたと思ってるんだね? チーム・ホワイトナッツが、君にとって実り多い場所であることを祈っている」

 

 

 「ーーアタックチームについては分かりました。しかし、この技術主任……17歳ですか」

 Mr.ゴードは眼鏡の位置をずらした。かつてマリス空軍にその人ありと謳われたパイロット時代を彷彿させる、鋭い視線がちらと覗いた。

 マリス軍最高司令長官バーンスタインはゴードの当惑を内心楽しんでいるのか、上機嫌でそれに答えた。

 「うむ。マリス大の工学部始まって以来の逸材だと、もっぱらの評判だ。なんでも、彼の担当教授によると自らアタックチームに志願してきたらしい。もちろん、将来のマリスへの貢献を考えればそんな人事はさせられないが……」

 昨日、秘書としてチーム・ホワイトナッツに配属されたばかりのエイミは、手元の資料に目を落とした。

 技術主任として推薦されたメンバーは2人。マリス大学工学部の院生で、天才の名を欲しいままにするデイビッド。その名声に似合わぬ柔和な笑顔、だぶだぶのツナギが板についた、弱冠17歳とは思えない恰幅の良さもあって、エイミは彼の写真に好感を覚えた。

 もう1人は、こちらも大学創立以来の秀才と謳われるロバート。こちらは23歳、長身痩躯に切れ長の眼、角ばった眼鏡と白衣が、いかにも研究者らしい、人を寄せ付けない雰囲気を漂わせており、見ているエイミの眉間にもみるみる苦渋の色が滲んできた。

 イケメンは好みだけど……お仕事を一緒にやるのは、ちょっと大変そうね。

 

 コンピュータがチーム・ホワイトナッツの技術主任として選んだのはデイビッドだった。ロバートはデイビッドの不慮の事態にそなえた補欠要員として登録された。

 

 

 「はじめまして、わたしはエイミ。よろしくね!」

 「これはどうも。僕はデイブ。いやぁ、配属初日にこんなかわいい娘と出会えるなんて、僕はツイてるな」

 「やだァ、お世辞がお上手!」

 「お世辞じゃないさ。ところで、君は修学旅行か何かかい? どこの学校?」

 「えーっ!? 違います、学生じゃありません! わたし、ホワイトナッツの長官秘書なんですっ!」

 「ええっ!?」今度はデイブが驚く番だった。

 「紹介するわね。こちら、ホワイトナッツ長官のMr.ゴード。私たちの頼れるボスよ」

 「デイビッド、ゴードだ。君のことは教授から聞いている。よろしく頼む」

 「こちらこそよろしくお願いします、ゴード長官。僕のことは、デイブと呼んでください。ところでうちの教授、悪口は言ってなかったですか? ものを勝手に持ち出すとか、よく研究室を爆破するとか」

 エイミの目が吊り上がった。

 天才だって聞いていたけど……大学じゃ手に負えない問題児を、体良く軍に押し付けようってコトなんじゃないかしら? アタックチームにも問題児がいるっていうし、あ〜、なんだかすごいところに来ちゃったのかも……。

 

 「そうだな、注意は貰っているよ。物事に没頭しすぎる、発想が奇抜すぎて前例を鑑みない、責任感が強すぎて他人に任せられないーー」

 「アハハ、よく見られてるなぁ」デイブは赤面して頭を掻いた。

 「ーーすべて、望ましい資質だと答えておいた。これから話すことは、非常に機密性の高い事柄だ。このノーザとの戦いにおいてカギとなる重要な役割を、君に担ってもらいたい。……エイミ」

 重厚な扉からエイミがスーツケース様のものを取り出し、デイブに向けて厳重なロックを解いた。

 「これは……」

 見慣れない形の銃……いや、これは本当に銃だろうか? シンプルすぎる直線的なフォルムに、銃把から長く伸びたコード。銃だとしても、通常のものではあり得なかった。超小型のレールガンだろうか? ノーザ兵の驚異的な打たれ強さに既存の携行兵器で対抗するには限界があることは、デイブも薄々気づいていた。

 

 「ーー"ジリオン"だ」

 Mr.ゴードが言った。

 怪訝そうな顔を前に、Mr.ゴードは続ける。

 「何者かによって宇宙からもたらされた神秘の銃。マリス星の希少物質ジリオニウムを用いて、対象の物質を分子崩壊する。我々"ホワイトナッツ"は、この3丁のジリオンを有効に運用するために、特別に組織された部隊だ」

 

 ……分子崩壊!? 物理学を学んだ者として、とても大真面目に受け取れる発言ではない。が、しかしデイブはこのMr.ゴードの言葉を信じた。なるほど、それほどの異常事態なのだ。手足となる部下がいないことも、配属まであまりに任務の情報が少なかったことも、そういうことなら理解はできる。

 

 「……聞きたいことはたくさんありますが……どうやら、この銃に直接聞いてみたほうが良さそうですね」

 Mr.ゴードは微笑した。

 「うむ、そうしてもらいたい。そしてもう一つ。実働部隊となるアタックチームの扱う装備もきみに一任したい。期間はないが、軍のあらゆる装備を優先して使ってもらって構わない。詳細は後ほどエイミから聞いてもらいたいが……どうだろう、やってもらえるかね」

 考えるまでもなかった。日々状況が悪化するノーザとの戦いにやっと身を投じられるだけでなく、技術者、研究者として最高の環境を与えられるという、夢のようなオマケ付き。

 「ラジャー! 精いっぱい、やらせてもらいます」

 

 

 「しっかしデイブも物好きだよなー! ガッコじゃ成績トップだったんだろ? こんなハードな仕事じゃなくて、いくらでも他の進路があったんじゃねーの?」

 任務の帰路、ヒマを持て余したJJが操縦桿を握るデイブに話しかけた。

 「迂闊だぜJJ、そんなこと言ってデイブの気が変わったらどうすんだ? どっかのお調子者が出たとこ任せの戦いができるのは、いったい誰のおかげだと思ってんだ」

 「わたしたちアタックチームは3人いるけど、デイブはジリオンの解析に、マシンの開発とメンテナンス、パイロットに後方支援に補給まで全部一人でやってくれてるでしょ? 本当、替えのきかないホワイナッツの大黒柱よね」

 「いやあ、照れるなぁ。そう言ってもらえると嬉しいよ。研究室では問題児扱いだったからね」

 「へー、デイブがか!? どーせお堅いセンセーなんだろ?」

 急にJJが身を乗り出して言った。

 「JJ、問題児仲間だと思って急に元気になってない?」

 「まぁ、才能があるヤツってのはどこの組織でもハミ出し者なのさ……」

 「おっとチャンプ、そういうドヤ顔から鼻毛がハミ出てるぜ?」

 「えっ、そんなバカな!? ……コノォ、騙したなJJ!」

 「イッヒヒヒヒヒ、引っかかった!」

 「ぐぬぬぬぬ……今度という今度ばかりは許さん! JJ、だいたいお前はなー!」

 「はァ……まーた始まった」

 いつものように騒がしい3人組を見やるデイブに自然と笑みが浮かんだ。

 戦争は一刻も早く終わらせたいけれど……この時間がずっと続くのも悪くない。

 そんなことを思ってしまった自分にデイブは軽く驚き、操縦桿を握り直した。

 「お取り込み中すまないが、そろそろマリスベースだ。各シート、着陸準備を頼む」

 「ラジャー!」

 

<了>

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