あけましておめでとうございます。
本来は1月1日に投稿しようと思ったんですが、加筆修正したい箇所があったので遅れました。
2026年もよろしくお願いします。
何処かの道を歩く二人がいた。
迷いなく歩く少年の後をついて行きながら不安ながらも物珍しそうに初めての物を見るコマリ。
「あっちとは全然違うんだな…」
その光景は何処かカルガモの親子にも見える。
「休んでなよ、何か持ってきてあげるから」
「でも、一人じゃ心配だし…」
というか一人だと心細いと呟くコマリ。右も左も分からない現状で出会えた人と離れたくないのもそうだ。しかし少年はやや鬱陶しそうに云う。
「くっついて来られると怖いから。不審者だから」
「いや、だから不審者じゃないって何度も……」
どうやら少年は私のことを不審者の類いだと思っているらしい。
ふざけんなと言いたい所だが、逆の立場になって見ればその通りとしか言い様がない。そのくらいは流石のコマリも客観視できるのだ。
ふとコマリは少年の持ってる袋の中身に目がいった。
少年が歩くたびに不思議な綺麗な音が聞こえる。
そういえばこの少年と会った所は、しょっぱい水が沢山ある”海”の砂浜とかいうらしい。(意識がぼんやりだったので正確な事は分からない)
しかし少年は何故砂浜にいたのだろうか?
なけなしの知識を総動員してコマリは言い当てる。
「分かったッ……もしかしてお菓子っ!!」
「違うよ。見たら分かるでしょ」
違ったようだ。ハズレで少しヘコむ。
やはり彼方の世界と此方の物も色々違うようだ。
すると少年はコマリに見せるように袋を掲げる。どこかキラキラした薄い固形物で、よく見ると綺麗だ。
「貝殻。お母さんにあげたくて綺麗なの探したんだ」
「そっか。お母さんに…」
少年は青になった横断歩道を歩いて行く。
だがコマリには立ち止まり、あちらでの記憶が脳裏によぎった。
あちらの世界は苦しく辛かった記憶だがほんの少しの暖かく優しいことも沢山あった。
お母さん、そして彼女———
そんな記憶を思い出している最中に何かの音が近づいている。
横断歩道を渡っている始にすごい勢いの車が突っ込んで来る。
しかも横断歩道の信号が青なのに明らかにそれを無視したスピードでだ。
「危ない!」
コマリは身を挺して始を庇う
その数秒もしない内に車に激突した。
まずい、まずい、まずい。
思わず駆け出して庇ったが、恐怖のあまり目をつぶってしまったせいで何が起こったのかまるで分からなかった。
大きな衝撃を感じたが、その後に訪れるであろう激痛がまるで襲ってこない。
だがコマリに庇われた少年は一部始終を見ていた。その驚くべき光景を
凹む車体
降り注ぐワゴン車のガラス
座席ごと宙に飛び出す二名の運転手
衝突したのに無傷の少女
それら全てを
「ええええええぇぇぇっ!?」
跳ね飛ばされると思ったが逆にワゴン車の前面がひしゃげて停止した。
運転手二名は座席ごと着地したおかげで怪我はない。しかしフリーズでもしたのかまるで微動だにしなかった。どうやら目を開けたまま気絶しているようだ。
コマリはまったくの無傷。
かすり傷はおろか血の一滴すらも流れていない。
だが当の本人はペタリと座り込んでおり、遅れて涙目になっていた。
「………マ、マジで死んだと思った」
誇張抜きで本当に死ぬかと思った。少年を庇った瞬間死ぬ覚悟したが、少年も私も怪我もしていないしどうにかなったようだ。
だが、この惨状はかなり不味いのではないだろうか?というか三割ぐらい私のせいもある。とりあえず少年に聞いてみる。
「あ、その…えと、…どうしよ?」
「僕に言われても」
流石にこの状況をどうにかする術は少年にはない、当然この少女にも。
コマリは全力で誤魔化す。思いっきり目を泳がしながら。
「あ、ああぁ!私はこの通り怪我はしてないぞ。いや、こっちの世界のものは全然弱いな~って思って…」
嘘だ。なんでもないように振る舞っているが、さっきまでへたり込んでガチ泣きしてたのに。
「…………」
「あ!そうだ 大丈夫ですか!?大丈夫!?」
沈黙の空気に耐えられず、話題を逸らすようにコマリはいまだに気絶している運転手二名の存在に気付くと必死に身体をさすったり、怪我がないか確かめようとアタフタしている。
少年は思った。
もしかして僕はとんでもない不審者を拾ったんじゃないかと
とある住宅地から出て来た一人の主婦がゴミ袋を片手にゴミ捨て場に向かう。今日は燃えるゴミの日で主婦や住民にとっては一日のルーティーンの一環であろう。
そこへ駐車場の車と車の間から、髪は先が少し茶が混じった青で、何処か胡散臭そうな黒いサングラスを掛けたコートの少女が現れた。
コートの少女は主婦———白壁に声を掛ける。
「
「なんですか貴女?」
怪訝そうに名前を聞く白壁に少女は慣れた手つきで名刺を渡した。
「フリーライターの
「白壁さん、半年前、旦那さん失踪していますね?」
「見つかったんですか!?」
その話の内容に驚く白壁、そう実は半年前に夫が謎の失踪で行方不明になっているのだ。警察に捜索届けを出したがその健闘虚しく未だに行方は知れない。
「いえ、そうじゃなくて実は見て頂きたいものがありまして…」
「失踪前後でこうゆうの見かけませんでしたか?いわゆる”モンスター”なんですけど」
するとミリセは鞄の中からスケッチ用紙を取り出した。
その紙に描かれていたのは子供が描いたような身体中に斑点が付いたモンスターだった。およそ人とはいえなかったがその最大の特徴は腹部に”大きな赤い口”があったことだった。
「そんなおふざけに付き合ってる気分じゃないんです!」
さっきまでの表情が嘘のように豹変し白壁はミリセを突っぱね怒った足取りで家の中に戻ってしまった。
完全に人がいなくなるとミリセは、モンスターの絵が描かれたスケッチ用紙を見ながらさっきまでの人の良さそうな表情が嘘の様に顔を機嫌が悪そうに歪ませ舌打ちをした。
「……ちッ」
「ミリセ」
「あぁもう、なーにやってんのよ」
そんなミリセに二人の声がすると、家同士の隙間から二人の人物が現れた。
一人はヨレヨレなコートと眼鏡をかけた癖っ毛の強そうな髪な中年男性は、ミリセの師匠ともいえる記者としての先輩である
二人目はキャップ帽子を被った明るい水色の髪で、やや肌の白い小柄な少女。その塩谷の後輩であり、ミリセの(自称)先輩にあたる
この三人だけだが『塩谷ジャーナリスト事務所』に所属している。もちろん創業者は塩谷自身である。
「ミリセ、話の持っていき方考えろ。世間一般にとっちゃ、モンスターなんて想像上の生き物なんだから」
塩谷の指摘にミリセはバツが悪くそっぽを向き呟いた。
「……すいません、つい」
「まったく…あなた普段から無愛想なのに取材する時だけ、胡散臭そうな笑顔するから、いっつもスクープ情報取れないのよ」
馴れ馴れしく上らから目線感が半端ないメルカの指摘にさっきまでの態度は何処へやら、ミリセね表情が露骨に悪くなった。
「うるせぇんだよ、メルカ。お前のアドバイスはいらないんだよ」
「うるさいっ!? ちょっ先輩と呼びなさい。先輩と!」
「うるさいのはいいのかよ……」
と塩谷はぼやく。この三人とってはこんな会話は日常茶飯事である。二人の口喧嘩も(メルカの一方的な絡みなのだが)一応区切りがついたのか静かになった。そんなミリセとメルカに塩谷が口を開いた。
「まぁいいや……それよか、さっきの奥さんの怖い顔見たか?この事件、モンスター絡みどころか、失踪でもねえなぁ」
「え、それならなんです?」
不思議そうに聞くメルカ
塩谷はそう不思議がるメルカに小声で云う。
「殺し」
メルカが驚く声を上げた。それに驚き慌てた様子で静かにさせる塩谷。
「ええぇ!?奥さんが、だ、旦那さんを!?」
「おいメルカッ⁉︎しっ!し——っ!このバカッ!?」
ただの行方不明かと思ったらそんな話になっていたのか、メルカほどではないが驚くミリセ。
あの少ないたった数分で、相手の態度だけでここまで推測するなど、経験が違う。
「さすがお師匠様」
師匠に比べたら自分はまだまだだが、ああなりたいと思う。まぁそんなこと口が裂けても言わないが。
「スクープだ。GO!」
塩谷が新たなスクープ記事のために二人にGOサインを出した。
「………うす」
「了解!」
ミリセは必要最低限に、メルカは元気よく返事をした。
気を取り直すようにミリセは気持ちを切り替え情報を集める為動く。
自分のやることは探すことだけだ。
いつか必ず見つけ出してやる。
あいつを———あのモンスターを
「さてと、仕事だ」
とある建物の屋外非常階段
普段なら此処は非常時以外は人は誰もいない筈だが、カツン、カツンと階段を上がる音が聞こえる。そこに現れたのは、眼鏡をかけたボサボサ頭のやや不衛生そうな男だ。
「今日までの収穫だ」
男が何かをかかげる。それは何人もの恐怖に歪む人間をアタスタのような何か———『ヒトプレス』を白い帯が付いたエージェントに渡した。エージェントは渡されたヒトプレスを品定めするようにかざした。
「……報酬です」
そしてエージェントは懐から小さな箱を手渡すが男はそれを奪い取るように急いで中身を確認した。
中には求めているモノが入っていたが、それは一つだけだった。
少ない、余りにも少なすぎる。これだけじゃ駄目だ。もっと、もっと
「これっぽっち!?もっと———」
しかし男が顔を上げた時は既にエージェントの姿は影も形もない。
「……欲しけりゃもっと稼げってか…」
男は手に箱から開けたモノを掲して呟いた。
モノに刻まれた刻印にはキャンディが包まれた所に口が歪むように嘲り嗤っているように見えた。
そのモノの名は『