明日はアギト超能力戦争の公開日です。
少年はコマリと共にとあるガレージのシャッターを開け中の電気をつけた。
そこにはサーファーボートやテントなど様々な物や道具などが置かれているが、家にしてみれば随分と埃などが溜まっており、衛生的に汚くなど色々心許ないと感じる。
「此処が家、なのか…?」
「んなわけないじゃん。僕の秘密基地」
「はい、これあげる」
少年は棚から取り出した箱の中に手を突っ込みガサゴソと取り出したのは色とりどりなお菓子の箱や袋など取り出した。
「こ、これは…ッ」
「助けてくれたお礼。今はお菓子しかないけど好きなだけ食べてね」
「これが……お菓子」
コマリは沢山あるお菓子の山に自然と手に取ったのはグミだった。ポップな色合いのコマリは袋を開け、恐る恐る手に取って口に運んだ。
早速食べはじめるコマリだったがその瞬間口に衝撃が走り目を見開く。
「うっまッッ!」
「この噛むときの『ムニュ』っとした食感、口の中に広がるこのジューシーな甘み、絶対グミだよな?グミだよねッ!?」
「グ、グミだよ」
さっきまで何処か小動物のようにオドオドしていた姿から一転。グミを食べた途端に興奮気味に喋り出すコマリに少し引いた少年。
そんな少年に気付かずコマリは袋からオレンジ色のグミを取り出し口に運ぶ。
「おぉ!さっきと味違う!」
「それはオレンジ、さっきのはグレープ」
「そうだ、色々あるんだよな……あッ!こっちはペロペロキャンディか…!」
さらにコマリが手を出したのは包みに覆われた棒付きのペロペロキャンディを取り出した。キャンディ包みを丁寧に外し舐める。
「あっ甘~い!これが人間のお菓子…ッ
うっおッッ最高すぎるぅっ!」
もはや別人レベルにまで変貌ぶりをみせるコマリだったが急に違和感を感じた。
「ん…? なんかお腹が———」
身体の異変がしかもその場所は自分の腹部から、つまり———
コマリの服の隙間から『なにか』がポトリと地面に転がり落ちた。
2人がよく見るとなにかは微かに動いているように感じた。
「……なにそれ」
「いや、分からん……なんだこれ?」
少女が服をまくり上げると少年は驚く。本来腹部にある筈のない『口のようなもの』があったのだ。
赤を基調とした、まるで獅子舞や饕餮の面を思わせる機械的な意匠。左にはハンドルのようなものがあり、普通の少女にあるには異様な存在感を放っていた。
コマリのお腹の口の上顎がひとりでに動くとその奥が一瞬光り、その光の中から『なにか』が勢いよく飛び出た。
「「うわああぁ———!?」」
「だからなんでお姉ちゃんまで驚くの!?てかそれなに!?」
当の本人も驚く事態にツっこむ少年。
そりゃ驚くよ。てゆーか私にも分かんねーしこっちが聞きてぇよ。
今の今まで私のはウンともスンともいわない飾り同然だったし……なんで今になって?
困惑しながらもコマリの腹の口から未だに小さい「なにか」はポーンポーンと生み出され続けていた。
だが私はそれに似た存在を知っている。物心ついた時かはずっと見ていたから。
コマリは沢山のなにかの内の一体を手に乗せ眺めながら呟いた。
「多分……私の『
「眷属ってなに?」
「自分を助けてくれる……分身みたいなものだと思う。
そっか、私にも使えたんだ……きっとお菓子のおかげだな」
少年は意を決して口を開いた。この少女の異常さに
車に衝突しても無傷の身体。
腹部に付いている口のようなもの
そしてそこから生み出された『眷属』
ここまで出揃っているのだ。もう単刀直入に聞くしかない、というかまどろっこしいと感じた少年は口を開いた。
「あのさ、もう面倒くさいから言うけど、お姉さん人間じゃないよね?」
「えっ………………ソンナコトナイヨ?」
聞いた途端にコマリは白目になるくらいに目を逸らした。
怪しいとかそんなレベルじゃない。事件が起きる前に探偵にトリックや動機が全てバレた犯人のような動揺っぷりだ。
「いや、分かるよ!なんかお腹に変な口みたいなのあるしさ…」
「あ〜、そ、それは……分かった。全部話すよ」
さすがにこれ以上の言い逃れは出来ないと観念したのかコマリは小恥ずかしそうに再び、服を捲し上げ腹部にある赤いモノ———“ガヴ„を見せた。
「そう…うん、私の種族はお腹にも口があるんだ。『ガヴ』って言うんだけど…」
「もしかして人間を食べる…!?」
最悪の想像を呟く少年、しかしコマリは食い気味に否定する。
「いや食べないよ!…………私は…」
「それって———」
♪〜♪〜
「え!?な、なんだ、この音!?」
そこへ突如、少年の携帯に着信音が秘密基地に響き渡り驚くコマリ。少年はポケットから携帯を取り出し通話する。
『始。今どこだ?もうママ帰って来ちゃったぞ』
「やば!ごめんすぐ帰る!」
「お母さん、海外出張行っててさ。久しぶりに戻ってきたんだ」
「えっ!なら早めに帰ったほうがいいんじゃないのか?悪いな。私なんかの為に」
母が戻ってきたので、始は家に帰る準備をする少年———『
「お姉さん、ここ泊まっていいよ」
「またご飯持ってきてあげる。あと外に出るなら、人間じゃないって人にバレないほうがいいよ。不審者だから」
「じゃあまたね!」
そう言うと始は秘密基地を出て母のいる家へと駆け出す。
「気をつけてなー!あと寄り道するなよ」
そんな後ろ姿を見ながら手を振るコマリだったが、嬉しそうな表情に少し陰が出来る。
お母さん、か———
家に向かい嬉しそうに走る始は、黒い箱を持つメガネを掛けた男とすれ違った。
すると、男は足を止めゆっくりと振り返る。その視線が、少年の背中にぴたりと張り付く。
しかし始は気づかず母のことを思い浮かべながら、ただ前を向いて走っていた。
口元に笑みを浮かべ、男は黒い箱から闇菓子を一口貪ると口の中に味わった事のない衝撃が味覚を通して恍惚に震えた。
男は服を捲し上げると裂けるような大きな口が———否、ガヴから長い舌を伸ばしガヴの中に入り食べる。
これだ、この全身を駆け巡るこの感覚。何回味わってもやめられない。
だがそれ以上に弱者同然の人間が恐怖や絶望で歪む顔が堪らない程最高の気分になる。闇菓子同様にやめることが出来ない。
もっとだ
もっともっと
人間をもっと攫えばもっと闇菓子が喰える筈だ。
何処かにいねぇのか、幸せそうな人間は
———いた。幸せそうな人間
その男の濁った瞳は、まるで獲物を見つけた猟犬のように“