ハンナノ三度目ノ正直   作:緋色鈴

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-承- (髑髏マーク)乗ると答えた

 

それはそこそこの大きさがある観覧車だった。

 

ここは割と広い有名な公園ではあるが、遊園地でもないのにこんなものがあるのかとハンナは驚く。

ちょっと場違いな感じもするのだが、シェリーは特に気にした風もなくそちらへとハンナを連れていく。

 

ただその観覧車は一見、停止していた。

近くまで寄ってみると塗装もところどころ剥げているのも分かって、本当に動くのかという気がする。

他に客もいないようで、なんというか。

 

「なんか・・・寂れてますわね」

「私達の貸し切りですね!」

 

底抜けポジティブモンスターの彼女の表現には呆れを通り越して尊敬すらしてしまいそうだった。

 

「あの、係員さんもいませんけれど・・・」

「これ全自動みたいなんですよ。いまどきってスゴイですね!」

「じ、自動・・・その、これ大丈夫ですの?」

「平気ですってー」

 

観覧車の入口には申し訳程度の柵と、受付代わりの機械が備え付けられている。

電子制御されているそこへお金を入れると次のゴンドラのロックが外れる仕組みらしく、シェリーはさっさとコインを投入していた。

そこらへんの遊具と同じノリでこんな巨大な乗り物を動かして良いのだろうか、と思うのだが、もう返却はできなさそうなので貧乏性のハンナとしてはもう選択肢は一つに絞られてしまう。

そして二人乗るのがやっとではというサイズのゴンドラの前で、シェリーはやたらと恭しくこちらに手を差し伸べてきた。

 

「ささ、お嬢様~?どうぞコチラへ☆」

「・・・ふんっ、こんな時ばかりお嬢様扱いするんですから・・・」

 

別に乗せられたわけではない、わけではないが。

悪い気はしないのだった。

 

 

 

そして、数十秒ほど経って。

 

 

 

「飽きました!」

「あなたねぇ・・・」

 

案の定、先に音を上げたのはシェリーの方だった。

ゆっくり上昇していくゴンドラの中で最初はしばらく周囲をきょろきょろ眺めていたシェリーだが、幾分もしないうちに見える範囲のものを網羅したのか、急に興味を失ってしまったらしかった。

土台、彼女が限られた空間でじっとしているなど無理な話なのである。

「実は初めて乗ったんですけど、中って意外とヒマなんですねー。パフォーマンス見合ってるんですかこれ?」

「あなたが勧めたんでしょうが」

 

ハンナはぼやきつつも、仕方ないと溜息をつく。

シェリーの無軌道は今に始まったことでもないので、今更怒るところでもなかった。

 

「そうだろうなとは思ってましたけど・・・あなた、それ絶対わたくし以外にやるんじゃありませんわよ」

「えー、飽きたら飽きたって素直に言った方がよくないですか?」

「それは・・・まあ何事も直球なのはあなたの美徳でしょうけれども・・・」

「うわあハンナさんが珍しく褒めてくれた!これは乗った価値アリ!」

「言うんじゃありませんでしたわ」

 

わけのわからないところではしゃぐシェリーに呆れ果てて、ハンナは背もたれに身体を預けた。

確かにただひたすら座って外の景色を眺めるのは退屈だろうが、ハンナに言わせればシェリーに連れ回されて息つく暇もなかったので、こうした休み時間はあって然るべきだと思った。

発起人は御覧の有様だが、ハンナ個人としては悪くはない気分だった。

 

「まったく・・・あら?ここからだと意外と良い景色ですわよ、シェリーさん」

 

ゴンドラはおおよそ半周して、結構な高さまで到達している。

ふと視線を巡らせた先、きらきらした光に気づいてハンナはそんな声を上げた。

遥か向こうのビル群の隙間から、日光を反射して輝く水面が見えていたのである。

それは海だった。

まさかこんなところから海が見えるとは思わず、なるほどこれなら此処にあえて観覧車を作った意図も分からなくはない、とハンナは見直した。

しかし水平線近くは微妙に見切れていて、ハンナは首を伸ばして窓の上の方を見ようとする。

 

「あ・・・ハンナさん、背が低いからって席から立っちゃダメですよ?」

 

なんだか気の抜けた様子のシェリーがそんなことを言う。いつも一言余計。

カチンと来て、ハンナは聞こえなかったフリをする。

そもそもハンナをおだてて乗せておきながら自分は何故すっかり電池切れの姿勢なのか。

 

そんな生意気を言う彼女だって、この窓からの景色を見れば素直にテンションを上げてくれるだろう。

そう思ったハンナは立ち上がって、シェリーの手を引く。

そして、ゴンドラの壁に手をついた時のことだった。

 

 

「ほら、あちらに海が――――」

がちゃん、と音がして。

「――――え?」

 

 

ふわ、と風を感じた。

そしてシェリーらしからぬ、緊迫した声。

 

 

「ハンナさんっ!!」

 

 

その時。

 

不運、不幸というのはべつに、魔女だとか、人間だとかに関わらず。

悲劇はどこにでも転がっているものなのだと、ハンナは思い出した。

 

 

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