ハンナノ三度目ノ正直   作:緋色鈴

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-結- シェリーちゃん三度目ノ嘘

 

ハンナは真っ赤に染まっていた。

それは血の赤色。

 

「・・・」

 

それは感情的なストレスにより交感神経が活性化され、血管が拡張することで肌表面に集中したことで起こる顔の紅潮。

今もハンナの内を流れている、熱き血潮の赤色である。

 

「・・・・・・恥をかきましたわ」

 

感情的なストレスとは即ち、脳を闘争ないし逃走のための反応に至らせる、怒りや緊張、そして恥ずかしさといった精神的な負荷である。

 

・・・要するに、ハンナの顔は羞恥で真っ赤に染まっていた。

 

隣をシェリーが歩いている。

大変でしたねー、などと、あっけらかんと。

そして彼女は笑って言うのだ。

 

「いやあー良かったですよー、()()()()()()()()()()()()

「赤っ恥を!!かきましたわ!!」

 

ハンナは堪らず叫んだのだった。

 

ハンナとシェリーは観覧車のゴンドラから転落した。

その落下距離・・・数十センチ。

 

二人の乗るゴンドラはハンナが転落しかけた時点で頂点を既に越えていたところであり、そもそも観覧車自体そこまで大きくはない。

そしてシェリーが持ちこたえている間にも、ゆっくりとではあるがその高度は確実に低下していたのだ。

落ちてから悲鳴を上げる間もなく、かつんと軽い音を立てて靴があっさり地面を捉えてしまったハンナはあまりに拍子抜けして、茫然自失のまま尻餅をついただけ。

なんなら後を追ってきたシェリーに押し倒された方が痛いという有様だった。

命に別状などあろうはずもなく。

そうして二人は(観覧車の管理会社にめちゃめちゃにクレームを入れて稼働停止させた後)五体満足で帰路についているのだった。

 

「でもでも、最初の高さだと死にはしなくても、打ちどころによっては大怪我はするかもしれなかったんですよ?今は私も大概ですが、ハンナさんだって元から身体よわよわですし」

「一言余計!」

 

ハンナは憤慨して肩をいからせ歩く。

別にシェリーのそれまでが嘘だったとは思っていないし、変わらず感謝もしている。

ただ本気で命の危機を感じて、本気でシェリーだけは助かって欲しいと、あんな切迫した感情のぶつけ合いをした後で、これでは。

なんだか空回りではないか、とハンナは気持ちのやり場に困っているのだった。

 

「・・・というか」

 

ひとつ気になることがあって、ハンナはシェリーに問いかける。

 

「わたくしはずっと上を向いてましたけれど、あなたはずっと下を向いてましたわよね?」

「そーですね?」

「なら・・・あなた、ひょっとして、もう地面がすぐ近くまで来ていること・・・」

 

ハンナはその時「下を見るな」とシェリーに言われていたので、その高度に気づいていなかったが、シェリーは?

必死さのあまりに周囲の状況に気づかなかった可能性はもちろんある。

それなら二人して状況にそぐわないやり取りをしてしまったという話で済む。

が。

 

「あ、気づいちゃいました?」

 

シェリーはてへ、と舌を出しながらそう言った。

 

「いやあ~、なんというか・・・あんな状況でも、ハンナさんが自分じゃなくて私の心配をしてくれるのが嬉しくって、つい」

「・・・!!」

「実は途中からもう大丈夫だろうなとは薄々思ってたんですけど、私の表情からは分かりませんでしたよね?ポーカーフェイス、得意なんですよ☆」

「~~~~~~~っ!?」

 

へらへらぺらぺらと真相を明かすシェリーに、ハンナは暫く声も上げられなかった。

代わりに、ぷるぷると震える握り拳がゆっくり上がっていく。

 

それでは恥をかいたのは自分だけではないか。

 

もちろん、助けてくれたこと・・・最後まで離さないでいてくれたこと。

それは嬉しかった。感謝すべきだ。すべきだけれど。

 

最初から最後まで何もかも笑いごとだったかようにしてしまうシェリーのそんなふざけた態度は、どうしても、ハンナを怒らせようとしているようにしか思えないのだった。

 

本当にいつも、とハンナはシェリーに憤る。

素直にお礼を言わせて欲しいのに、と。

 

「それにしても観覧車も絶叫マシーンだったとは知りませんでした!そうだ、今度みんなで遊園地にも行ってみます?ジェットコースターとかオススメですよ!」

 

多分、半分は素だろうが、半分はわざとなのだろう。

・・・ならば。

半分だけ感謝して、もう半分でそれに乗り、怒るフリをしてやった方が、多分。

シェリーは楽しいのだろう。

 

「この・・・このっ・・・」

「ああっ暴力の気配!?か弱いシェリーちゃんを労わってくださいよ~!!」

「誰がか弱いですかっ、このノンデリ神経ごんぶと女ーっ!!」

「前より呼び方ひどーい!!」

 

日も沈み始めた、薄橙の光に照らされる閑散とした公園。

そこには二人の少女の影が長く伸びて、長い間、子供のように追いかけっこをしているのだった。

 




――――――――――――――


<あとがき>

ここまでお読み頂き有難う御座いました。
魔法少女ノ魔女裁判、大変面白くて、エンディングの姿に心躍らせ、嗚呼この続きが欲しい!と衝動が暴走した結果のこちらの物語になります。
いや整備不良ってレベルじゃねえぞとは自分でも思いますが、魔法を失った二人がこの危機に陥り、尚且つ救われるにはこうするしかありませんでした。すみません。

ハンナならこう言うだろうな、シェリーならこう言うだろうなと考えるのはとても楽しかったです。この2人の掛け合い好き。

「非力もやしシェリーちゃん概念」は独自設定ですが我ながら、かなりギャップ萌えという奴を感じますね。ええ。
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