「起ーーきーーろーー! あーさーだーよー!!」
朝っぱらから馬鹿でかい声が寝ている俺の脳に響き渡った。
「っ……! せえなあオイ」
俺は煩わしそうに目をゆっくりと開く。
そして俺の視界に映るのは――
「おっはよー! ゆっきー!」
お天道さんもびっくりするくらいニコニコ笑顔な幼馴染みの姿があった。
俺の名前は山下雪之丞(やました ゆきのじょう)。都内の私立高校に通う、まあ、高校生ってやつですたい。
学生の本分は勉強って言うが、大人になったって勉強すんだからわざわざ学生の、って付ける必要あるか? なんて思う今日この頃。
ふあ~と欠伸して涙も出る中、俺の横で忙しなく動き回るやつがいた。
「早く早く~! 学校行こうよ~!」
はすはすとしながら俺に促すのは――
「まだ早えよ。俺のモーニングルーティンをずらすなっちゅうの」
「はえ~、そうなのん?」
堂上来天(どのうえ らてん)。俺の幼馴染みだ。目をパチパチしている。黒髪ショートで青いリボンを付けている。格好はウチの高校の制服であるブレザーだ。つか、ちょっとスカート短くね? 校則ギリギリラインの膝丈らしいが……。
「ああ。とりあえず俺の部屋から出てけ」
「ええ!? 何でよ!」
「着替えっからだよ! わかっだろ!?」
「別に見られてもよくな~い?」
「よくねえよ!?」
確かに小さい頃は特に気にしてなかったが、ふとこいつの成長した可愛さを目の当たりにするとってげふんげふん!
「ええ~。あたしはゆっきーなら別にいいけど~」
「!?」
くっ! 冗談だって分かっているのに俺ってやつは……!
「ゆっきー。どしたの~?」
ニヤニヤしながら来天が俺の顔を覗き込んでくる。
「っ……! あーもう! 出ていけってほら!」
俺は強引に来天の肩を掴んでクルッとドアの方に向けてペイッとした。
「わあ!」
恥ずかしいお年頃の俺はドアを閉めて鍵を掛けた。
完全に目覚めちまったよ。
「じゃあ、行ってきます」
玄関先で靴の踵を調整して俺は家を出た。既に外には来天が待っている。
「待たせたな。行くか」
「うん。レッツゴー!」
来天は右腕を大きく掲げ、大きく一歩踏み出す。朝っぱらから元気いいよなほんと。こちとら夜更かしして疲れが残ってるっつーのにさ。
「へいへい」
俺もうんとこせと来天についていく。
街路樹が左右にあるこの道はいつもの通学路。保育園から一緒のこいつとはもう勝手知ったる道だ。年月が経って道も少しずつ変わっていっている。時代の流れってやつか。俺はチラリと隣を見る。
「今日はぽかぽかウェザーだね~」
来天が伸びをしながらそんなことを言っている。 「んだよ。ぽかぽかウェザーって。快晴って事か?」
「そうだよ~。きんもちいいね~」
「そうだな」
俺は、空を見上げる。一点の曇りもない青空。いい天気に違いねえや。
「あのさあのさゆっきー!」
「あん?」
来天が俺にズズイッと迫ってくる。相変わらず距離感えぐいな。
「今度の休みアミュストラに行こう!」
「アミュストラ? 聞いたことねえな……どっかのアミューズメントパークか?」
俺が尋ねると、来天はブンブンと首を振った。
「んーん。異世界だよ!」
「……は?」
なーにを言っとんだこいつは。
「おいおい来天。俺も確かにファンタジー好きだけどよ。俺は現実の話をだな……」
俺がやれやれと窘めようとすると来天はほっぺを小さくぷくっとさせる。
「ちーがーう! 本当に異世界なの!」
俺は、暫し言葉に詰まる。幼馴染みだから分かるが、こいつは嘘を言ってねえ。おいおいマジか。本当にあるってのか異世界。だとしたら行ってみてーけど……。
「……この近くにファンタジー体験が出来るアミューズメント施設なんてあったか?」
俺がスマホで検索を掛けまくっていると、
「あ~、まだ勘違いしてる! よしっ! じゃあ今度の休みに異世界連れて行くから! 強制だぜ!」
「あ~、へいへい。分かったよ」
どこだ? どこをこいつは異世界なんつってんだ? まあ、いいか。準備だけはしておこう。
俺と幼馴染みの日常から始まります。よろしくお願いします。