キーンコーン。学校のチャイムが鳴る。予鈴ってやつだ。
「はよ~っす」
「おっはよー!」
俺と来天は教室に一緒に入る。クラスの奴らがガヤガヤしている中、俺も来天もそれぞれ自分の席に向かった。
「よう、おはよう山下」
「おう、おはよう佐藤」
俺が自分の席に座り、前の席に座っている友達の佐藤大五郎(さとう だいごろう)が声を掛けてきた。佐藤は短髪スポーツ刈り野郎だ。
「んだよ~。今日もラブラブ登校か?」
佐藤がぐぬぬ顔で俺に聞いてくる。俺は、はあとため息をついて頬杖を突く。
「だから何回も言ってっだろ。あいつとはただの幼馴染みだっつうの」
「そんなはずねえだろおおおおおお!」
佐藤は机にダン! と手を振り下ろしながら叫ぶ。
「学校で知らねーやつなど皆無って言っていいほどのきゃわわなアイドルにしてテニス部のエースのあの堂上来天ちゅわんの毎回近くにいやがるてめーがただの幼馴染みなわけねえだろおおおおおお!」
「きゃわわなアイドルって何だよ?」
「そのまんまの意味だぜ!」
「あいつがアイドルねえ……」
まあ、笑顔は振り撒いてるわな。
「ゆっきー! 今日の放課後、あっごめん。話してた?」
来天がぴょーんと俺の近くまでやってきた。
「いや、大丈夫だよ」
俺がそう言うと、来天はうんと頷いた。
「おっはよー! 佐藤君」
「おはよう堂上さん」
朝の挨拶をかます来天に対して白い歯をキラリンとさせながら爽やかイケメン風に挨拶を返す佐藤。いや誰だよお前。いつもはそんな感じじゃねえだろ。
「え~、ゆっきーと何の話してたの~?」
「男同士の秘密の話さ」
普通にお前の話だよ。
「ふ~ん。なんだか妬いちゃうな~」
「何でだよ」
俺が呆れたように言うと、来天は、む~と俺に視線を投げかけたかと思えば――
「とりゃっ!」
「「んなっ!」」
俺の後ろに回って抱きついてきた! おいおいおいおいおい! ここ教室ですよ! クラスの奴らの視線が!
「お、おい来天! は、離れろ!」
「やだもん!」
「山下ああああああ! 一発ぶん殴らせろおおおおおお!」
「させるかボケエエエエエエ!」
「えへへ~ゆっき~」
ギャーギャーと朝っぱらから騒々しい教室での時間を過ごした。
昼休み。いそいそと俺と来天は机をくっつける。お弁当タイムってやつだな。
「もうお腹ペコペコ~」
「そうだな~」
のほほんと返事する俺。ちなみに佐藤のやつは早くしねーとお目当てのパンが売り切れるってんで購買までダッシュしていったよ。廊下走んなって感じだがな。
「今日の自信作はね~。唐揚げだよ~」
来天が手を両頬に添えて、したり顔で言ってきた。そう、来天は毎朝のようにわざわざ家に来て俺の母親と一緒に弁当を作っている。感謝の念が絶えない。
「そうなのか。美味そうだな」
俺が弁当箱を開けると、そこには大盛りのご飯とおかずの山。何段も重ねてあったから予想は出来たがちょっと作り過ぎじゃねーか?
「楽しくてちょっと作り過ぎちゃった。残してもいいからね?」
眉を若干ハの字にして、苦笑する来天。
「バカ言うな。全部食うに決まってんだろ?」
俺が、そう言うと来天は嬉しそうな顔を浮かべた。
そんじゃまあ。
「「いただきます」」
パクパクモグモグムシャムシャ。
「……美味っ!」
「本当!?」
いやマージで美味い。味付け完璧すぎねーか? あん? 幼馴染み補正かかってる? そんなわけねーだろ。
俺が唐揚げに舌鼓を打っていると、背後からゾンビみてーな声が聞こえてきた。
「い~い匂いがするぞ~。俺にも寄越せ~。青春味わわせてくれ~」
ゾンビ佐藤が俺の肩を揺する。
「お引き取り願おうか」
「そんなこと言わないでさ~。そんな沢山あるんだし~」
「金払え」
「ふざけんなよこらあああああ! パン買って所持金少ねーんだぞ!」
「だろうな」
「ゆっきー。佐藤君にもあげてもいいよ~」
「……ちっ。感謝しやがれゾンビ」
俺はゾンビ佐藤に唐揚げ2つを恵んでやった。
「ありがとうございます山下様ーー!」
調子いいやつだぜ。貸し1な?
はい佐藤、貸し1です。抜かりない。また次回です~。