デュエルアカデミアがヤバイ、というのは一般には広まっていないでしょうが、卒業生、在校生を通じてアカデミアの闇は広まっているでしょう。何故マスコミに垂れ込まないのかって?
オーナーが海馬瀬人ですから。
デュエルアカデミア。孤島に建設された海馬瀬人がオーナーのデュエリストを養成する名門校。
だが、そこには黒い噂が広まっている。
実技試験を受けに来た少女。だが、彼女は入学する気は無かった。
彼女の姉はアカデミアへ進学したが、突然海外留学する事になった。その費用はアカデミアが負担するというが、大好きな姉が自分に何一つ連絡せず留学を決め、その後も連絡を取らないのはおかしい。何かしらの事件に巻き込まれたのだろう。
にも拘らず、継母は入学するよう強要した。父の連れ子である自分達姉妹が邪魔なのは感じていた。
そもそも、全寮制なので入学させてしまえばほぼ会わずに済むというのもあるのだろう。
筆記試験を名前だけ書いて白紙で提出する事も考えたが、『筆記で落ちたら、中学卒業と同時に社会人になりなさい!』と継母に言われたため、筆記は突破した。
だから、この実技試験。必ず不合格になってみせる。
「それでは、これより実技試験を始める。」
「…よろしくお願いします。」
『『決闘!』』
受験生 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
試験官 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私の先攻、ドロー!魔法カード、成金ゴブリンを発動。カードを1枚ドローして、相手はライフを1000回復します。」
「ふむ、手札増強カードか。」ライフ4000から5000
「G・コザッキーを召喚。」
「な、何!そのモンスターは!」
「このカードは、場にコザッキーが無ければ破壊されます。そしてこのカードが破壊された場合、コントローラーはその攻撃力分のダメージを受けます。」ライフ4000から1500
単なる自爆。
試験官は唖然とする。
「カードを2枚伏せてターンエンドです。」
受験生 ライフ1500
手3 フィールド
魔法・罠 伏せ2
試験官 ライフ5000
手5 フィールド
魔法・罠
「わ、私のターン、ドロー。」
「罠発動。強欲な贈り物。相手はカードを2枚ドローします。」
「…私はカードを2枚ドローする。」
「罠発動、不運なリポート。相手はこのターン、バトルフェイズを二回行う事が出来ます。」
ここにきて、相手が明らかに負けようとしている事に試験官は気づく。
不愉快だ。一体、実技試験を何だと思っているのか。だからこそ、試験官はこのターンで終わらせないと決めた。
「カードを2枚伏せてターンエンドだ。」
受験生 ライフ1500
手3 フィールド
魔法・罠
試験官 ライフ5000
手6 フィールド
魔法・罠 伏せ2
「私のターン、ドロー。」
「ここで永続罠発動!スキルドレイン!ライフを1000払い、場のモンスター効果は無効になる!」ライフ5000から4000
これで、先ほどのように自壊モンスターでライフを削って負ける事は出来まい。
「速攻魔法、サイバネティック・フュージョン・サポートを発動、ライフを半分払います。」ライフ1500から750
「君の墓地に機械族モンスターは居ない。発動した所で…ああ、そうか。ライフを減らすのが目的か。」
「モンスターをセット。魔法カード、死者への手向けを発動。手札の破滅へのクイック・ドローを捨てて、今セットしたモンスターを破壊します。」
「な、何?!」
「破壊されたグラナドラの効果発動。私は2000ポイントのダメージを受けます。」ライフ0
ライフが尽き、実技試験が終わる。会場は騒然とする中。試験官は怒りをにじませる。
「君は、ふざけているのか?」
「いいえ。全力で挑みました。」
優しさと強さを兼ね備えた姉が行方不明になった学校に、自分が入学して何が出来るというのか。
潜入して調査?無謀にもほどがある。学園のサーバーにアクセスしてある程度真相に近づこうものなら、黒幕は容赦なく姉と同じ末路を辿らせるだろう。
だからこそ、あえて負けた。
「…もういい。試験終了、帰宅を許可する。」
「ありがとうございました。」
会場から出ようとした少女は、オベリスク・ブルーの制服を着た少女に絡まれる。
「待ちなさい!一体、どういうつもり!わざと負けるなんて!」
「貴女には関係ないでしょ。」
「それでも、デュエリストなの!」
この金髪の少女は何も知らないのだろう。オベリスク・ブルーの制服を着ている事から中等部からのエスカレーター組。
デュエルアカデミアは素晴らしい教育機関と信じ切っている。
ここは実技試験会場。姉を行方不明に追い込んだ黒幕の目や耳があると考えていい。だが。デュエリストであることを否定されては引き下がれない。
「取り消しなさいよ。私の事情など何一つ知らないくせに」
「いいえ、取り消さないわ!」
「だったら。」
少女はデュエルディスクを構える。
「これで決着をつけましょう。」
「望むところよ!」
『『決闘!』』
受験生 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
明日香 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私の先攻!ドロー!思い知らせてあげるわ!魔法カード、融合!手札のエトワール・サイバーとブレード・スケーターを墓地に送り、サイバー・ブレイダーを融合召喚!」
「攻撃力2100…」
「さらに装備魔法、レアゴールド・アーマーを装備!これで貴女は他のモンスターに攻撃出来ないわ。ターンエンド!」
受験生 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
明日香 ライフ4000
手2 フィールド サイバー・ブレイダー
魔法・罠 レアゴールド・アーマー
「私のターン、ドロー!その装備魔法って、直接攻撃される場合は無力なのよ。知ってた?」
「だとしても、直接攻撃出来るモンスターは基本的にステータスが低いわ!たとえ直接攻撃されても、次のターンには戦闘破壊出来る!」
「あっそ。私はサブマリンロイドを召喚。このカードは相手に直接攻撃出来るわ。バトル、サブマリンロイドでダイレクトアタック!」
「くっ、だけど攻撃力は800!」ライフ4000から3200
「ダメージステップ終了時、このカードは守備表示になるわ。」
「フン、守備力1600なんて。」
「メインフェイズ2に入って、永続魔法発動!平和の使者!このカードがある限り、お互いに攻撃力1500以上のモンスターで攻撃出来ない。」
「何ですって?!」
「カードを2枚伏せてターンエンド。」
受験生 ライフ4000
手2 フィールド サブマリンロイド
魔法・罠 平和の使者 伏せ2
明日香 ライフ3200
手2 フィールド サイバー・ブレイダー
魔法・罠 レアゴールド・アーマー
「攻撃力1500以上は攻撃出来ないのに、守備力1600…。私のターン、ドロー!速攻魔法、サイクロン発動!平和の使者を破壊!」
「カウンター罠、アヌビスの裁き!手札の魔法カード、サルベージを捨てて、サイクロンの発動と効果を無効にして破壊!さらに、サイバー・ブレイダーを破壊してその攻撃力分のダメージを与える!」
「そんなっ!きゃあああ!」ライフ3200から1100
「私は、サイバー・ジムナティクスを守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド。」
受験生 ライフ4000
手1 フィールド サブマリンロイド
魔法・罠 平和の使者 伏せ1
明日香 ライフ1100
手0 フィールド サイバー・ジムナティクス
魔法・罠 伏せ1
「私のターン、ドロー!サブマリンロイドに装備魔法、閃光の双剣-トライスを装備。コストとして手札のグリズリーマザーを捨てる。これでサブマリンロイドは攻撃力が500ポイント下がるけど、二回攻撃が出来る。」
「フン、プレイングミスね!二回攻撃出来るようになっても、攻撃力300に下がっては意味が無いわ!」
「本気で言っているの?そんなわけないでしょ?サブマリンロイドが直接攻撃で相手に与える戦闘ダメージは、元々の攻撃力を参照にするの。」
「って事は、800のダメージが二回って事…?そ、そんな!」
「サブマリンロイドを攻撃表示に変更。バトル、サブマリンロイドで二回連続ダイレクトアタック!」
「ここよ!カウンター罠、攻撃の無力化!これでバトルフェイズは終了。これなら、サブマリンロイドは攻撃表示で場に残る!そうなれば、サイバー・ジムナティクスのモンスター効果で破壊出来る!」
「カウンター罠、トラップ・ジャマー。攻撃の無力化の発動と効果を無効にして、破壊する。」
最後の防御札も防がれ、明日香にサブマリンロイドが迫る!
「きゃあああああああ!」ライフ1100から300、300から0
ライフが尽きた明日香はその場にへたり込む。
「私の負けね…。酷い事を言ってごめんなさい。」
デュエルをした事で、少し冷静になった少女は事情を話す事にした。
「…私の姉は、アカデミアに進学して行方不明になったわ。」
「貴女、私と同じ…!」
その発言に、少女は大きなショックを受ける。
「待って。アカデミアで兄か姉が行方不明になった学校に行くの!」
「そうよ、兄さんを取り戻すために。」
「学生の貴女はそもそも真相にたどり着けない。たとえ真相に近づけたとしても黒幕が出てくるわ!それでも行くの?」
「当然じゃない!貴女こそ、お姉さんが行方不明になったなら。」
「何かあったら。私に構わず逃げなさいって言われたの。だからアカデミアには行かない。」
決意が固い事を悟り、明日香は納得する。
「…そう、だったのね。」
「さようなら。」
そう言い残すと、少女は会場を後にする。
当然のように、不合格通知が届いた。
作中の行方不明者は吹雪さん以外にも結構いるんですよね。
こういう被害者の身内が居てもいいかな、と思って執筆しました。