デュエルアカデミア不合格列伝   作:交響魔人

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ダークチューナーのOCG化は驚きました。黒い枠はXモンスターになり、ダークシンクロモンスターは全てSモンスターとしてOCG化されたので…。

入学試験でシンクロ召喚を使うと驚かれるものの受け入れられると思います。でもそれがダークシンクロだった場合は…。


入学試験でダークシンクロを使った者の末路

 黒いフード付きのジャケットを羽織り、全身黒タイツな褐色肌の少女が、まっすぐ試験官に向かって歩く。

 長い黒髪ポニーテールが揺れ、紫色の瞳が試験官を見据える。

 

 

 

「受験番号49番、ロサーナ・カムラウです。」

「先攻は受験生からだ。」

 

 

 

 

『『決闘!』』

 

 

試験官 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

ロサーナ ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「我の先攻、ドロー。ダブルコストンを召喚!」

「闇属性のモンスターを召喚する場合、一体で2体分の生け贄になるモンスター、つまり闇属性デッキか。」

「はい。我はここで手札からDTナイトメア・ハンドの効果発動!このカードを見せることで、DTモンスターの召喚を行う!」

「何?」

「我はダブルコストンを二体分の生け贄に捧げ、DTナイトメア・ハンドを召喚!」

「なっ?!なんだ、この嫌な感じは…。攻撃力こそ0だが…。」

 

 

 黒と紫の毒々しい服装で、肥大した両腕のモンスターが出現した事で、試験官は絶句する。

 

 周りの会場は二つに分かれる。すなわち。

 

『な、何だよ!闇属性の最上級モンスターを出したかと思えば、攻撃力0の雑魚じゃねぇか!』

『こけおどしにも程があるぜ!』

 

 と侮るもの。一方で。

 

『チューナー、一体どういう事だ?』

『あのモンスター、何かある。しかし、一体何を狙っている?』

 

 と警戒心を強める者に分かれた。

 

 

 直接対峙している試験官は悪寒を感じている。

 

 

 

「ナイトメア・ハンドの効果発動。召喚成功時、手札からレベル2以下のモンスターを特殊召喚出来る。我は、見習い魔女を特殊召喚!」

 

 可愛らしい黒魔女が現れ、魔力を解放すると、DTナイトメア・ハンドと自身の攻撃力がアップする。

 

 

「そのカードは、場の闇属性モンスターの攻撃力を500ポイントアップし、光属性の攻撃力を400ポイント下げる。これで攻撃力は0から500にアップしたが…わざわざ、そのダーク・チューナーというモンスターを召喚した理由は何だ?」

「DTナイトメア・ハンドが通常召喚されている場合、このカードより低いレベルを持つチューナー以外のモンスターとこのカードを生け贄に捧げることで、そのレベルの差と同じレベルのSモンスターをS召喚扱いで特殊召喚する!」

「…は?シンクロ、召喚?」

 

 

 ロサーナは神聖な儀式を執り行うかの如く、高らかに宣言を行う。

 その紫色の瞳に、若干の狂気を宿して。

 

「レベル2の見習い魔女と、レベル10のDTナイトメア・ハンドとの差は8!これにより、我はレベル8のモンスターをダーク・シンクロ召喚!」

 

 醜悪な悪夢の使者が両手を虚空に広げると、雷鳴が轟き、10の黒い輪が見習い魔女を包み込む。

 箒を手に何とか逃れようとする魔女だが、黒い輪が引き裂き、その全てが漆黒へ飲み込まれていく!

 

 余りの無惨な光景に、試験官はもちろんの事、会場の職員が言葉を失う。

 

 

「現れろ、魔王龍ベエルゼ!」

「なっ?!こ、攻撃力、3000だと!」

 

 双頭の龍が現れ、咆哮を上げる!

 見ていた実技試験本部の職員が一斉にざわめく。

 

 

『一体全体、何がどうなっている?』

『攻撃力3000を呼び出したが、い、一体どういう仕組みなんだ?』

『レベルの差、つまり、レベルの引き算という事、でいいのか?』

『クロノス教諭!こ、このまま続けさせていいのですか?即刻中止するべきでは!』

 

 

 そんな中、ロサーナはデュエルを進める。

 

 

「我はこのままターンを終了。」

 

 

 

試験官 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

ロサーナ ライフ4000

手3 フィールド 魔王龍ベエルゼ 

    魔法・罠  

 

 

 

「わ、私のターン…。」

 

 だが、試験官は震えている。

 

 

『だ、大丈夫なノーネ?!』

「す、すみません、クロノス教諭…。恥知らずな事は承知の上、処罰も覚悟の上…!」

 

 

 そう宣言すると、試験官は手札を全てデッキに戻し、デュエルディスクからデッキを取り外す。

 想定外の行動に、ロサーナは目を見開き、一体何を?という感じで顎に手を当てて訝しむ。

 

 

 

『ま、待つノーネ!デュエルが始まってから、入学試験用の調整デッキではなく、自分のデッキと入れ替えるノーハ』

『クロノス教諭、恐れながら、調整デッキでは相手にもならないかと!』

『そ、それもそうナノーネ…。』

 

 

 デッキを入れ替えた試験官は申し訳なさそうに深々と頭を下げた後、覚悟を決めてデッキをセットする。

 

 

「…申し訳ないが、本気で行かせてもらう。」

「…少し意外でした。まぁ、どちらにせよ、我は我のデュエルをするまで。」

 

 

 デュエルを開始した直後のデッキ交換。あり得ない行為である。とはいえ調整された手加減デッキから本気のデッキへの交換という事で、ロサーナは受け入れる。

 改めて初手を眺める試験官に対し、スッと目を細め、好戦的な目つきになる。

 

 

 

「では改めて。私のターンだ、ドロー!魔法カード、強引な番兵を発動!さぁ、手札を見せてもらう!その中から1枚をデッキへ戻してもらう!」

「我の手札は、地獄の門番イル・ブラッド、ゴブリンゾンビ、龍の鏡だ。」

「地獄の門番イル・ブラッドをデッキに戻してもらう!相手の場にのみモンスターが存在する事で、サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」

「攻撃力2100…」

「さらに、死霊騎士デスカリバーナイトを通常召喚!」

「どちらもベエルゼの攻撃力には及ばない。となれば…」

「きわめて特殊な召喚方法だった以上、何かしらのモンスター効果があるのだろう。だが、死霊騎士デスカリバーナイトはモンスター効果が発動すれば、このカードを生け贄に捧げることで、発動を無効にして破壊する。魔法カード、ライトニング・ボルテックスを発動!手札の奈落の落とし穴を捨てて、君のシンクロ・モンスターを破壊する!」

 

 

 稲妻が魔王龍ベエルゼに降り注ぐ!

 だが、直後にライトニング・ボルテックスの稲妻がかき消される!

 

 

「何だと!ら、ライトニング・ボルテックスが効かない?!」

「ベエルゼは破壊されない。」

 

 誇らしげにドヤ顔でフフン、という態度のロサーナに対し、試験官は破壊耐性持ちに驚きながらもデュエルを進める。

 

 

「ならばバトルだ!行け、サイバー・ドラゴン!ベエルゼを攻撃!」

「攻撃力が低いのに攻撃…。となると、収縮か?」

「私はこのダメージステップに速攻魔法、リミッター解除!これで攻撃力は4200!」

「我は1200のダメージを受ける。だがここで、ベエルゼの効果発動。受けたダメージの数値分、攻撃力がアップ!」ライフ4000から2800

「戦闘でも破壊されないのか?!だが、ここで死霊騎士デスカリバーナイトの効果発動!攻撃力がアップする効果を無効にして…破壊は出来ないのか。」

「はい。」

 

 

 ベエルゼに対し、突進して剣で斬りかかるデスカリバーナイト。

 その気迫に押され、ベエルゼの動きが止まる。

 

 

 周囲のギャラリーは、その効果の強力さに呆然とする。

 

 

『な、何だよその効果…どうやって倒せばいいんだ?』

『装備魔法で攻撃力を上げて戦闘ダメージを与えても、次のターンには一方的に戦闘破壊されるって事だろ…。』

 

 

 

「…ターンエンド。エンドフェイズに、リミッター解除の代償としてサイバー・ドラゴンは破壊される。」

 

 

 

試験官 ライフ4000

手0 フィールド 

    魔法・罠 

ロサーナ ライフ2800

手2 フィールド 魔王龍ベエルゼ 

    魔法・罠  

 

 

「我のターン、ドロー!ゴブリンゾンビを召喚。魔法カード、龍の鏡を発動!」

「な、何だと?フィールドと墓地から決められたモンスターを除外する事で、ドラゴン族の融合モンスターを特殊召喚するカード…。だ、だが!」

 

 試験官は、ロサーナのデュエルディスクを指さしながら叫ぶ。

 

「君のフィールドはともかく、墓地にドラゴン族は1枚も居ない!一体、どんなモンスターを融合召喚するつもりだ!」

「私は墓地のダブルコストンとフィールドのゴブリンゾンビを除外!融合召喚!冥界龍ドラゴネクロ!」

「あ、アンデット族を融合素材にした、ドラゴン族の融合モンスターだと?こ、こんなカード、知らないぞ…!」

 

 

「バトル、冥界龍ドラゴネクロと魔王龍ベエルゼで、ダイレクトアタック!」

「うわああああああ!」ライフ4000から1000、1000から0

 

 

 

 倒れた試験官に、ロサーナは一礼する。

 

 

「ありがとうございました。」

 

 静まり返った試験会場を、ロサーナは後にする。

 彼女が去ってしばらくたってから、ようやく会場はざわめく。

 

 

 

 

 

 

 

 実技試験を受験した夜。ロサーナはホテルから外出する。

 バーガーショップにより、そのメニューの多さにやや面食らう。

 

 やや悩んだ後、近くの客がハンバーガーにハッシュドポテトを挟んで食べ、ザクっという音が聞こえた事で試してみたくなった彼女は、セットメニューを注文する。

 

 

 チーズハンバーガーにハッシュドポテトを挟み、客のようにかぶりつく。

 ザクザクとした食感を味わい、口元が乾けばコーラで流し込み、時折オニオンリングでリセットする。

 

 

 故郷に居ては味わえない料理を完食したロサーナは公園のベンチに腰掛け、夜の月を見上げながらひとりごとを呟く。

 

 

「5000年ごとに起きる、地縛神と赤き竜との戦い…。族長は次こそ勝てる、と言っているけど。」

 

 地縛神は封印され、ダーク・シグナーでも従えることが出来ず、最強と言われたスカーレッド・ノヴァはバーニング・ソウルの魂を持つ男に封印された。

 族長が言うには、そんな突然変異じみた者が現れたから敗れたのであり、奇跡は何度も起こらない、との事だが。

 

 

 

「5000年前に敗れた以上、勝つためには行動あるのみ。デュエルアカデミアを卒業、プロデュエリストとなって名を上げた後…。赤き竜は悪の化身であると主張し、シグナーが迫害される風潮を作り出せば…。」

 

 

 ロサーナは薄く笑う。

 

 

「私たちが勝つ。そうなれば、こうやって夜しか出歩けない時代は終わる。あの太陽の元で、過ごせるようになる…。」

 

 ロサーナは手を伸ばす。届くはずのない満月へ。

 手が満月と重なった状態で、彼女は手を握る。

 

 

 

 ロサーナの部族は「邪神をあがめる蛮族の末裔」「忌まわしい娘」と呼ばれ、迫害されてきた。

 

 近くの交易所で買い物する時はフードを被り、素性を知られないようにしなくてはならない。

 知られたら。

 

 

『何だってうろついていやがるんだ!』

『足を踏み入れるんじゃねぇよ!』

『汚らわしい!あっちへ行きなさいっ!』

 

 

 だからこそ、デュエルアカデミアへの入学試験を受けたいと族長に話したが、一喝された。

 「確かにドーマもバクラも滅んだが、大っぴらに行動するのは危険すぎる」「お前はイリアステルの恐ろしさを分かっていない」

 そう言われて、監禁された事で彼女は決意した。

 

 もはや行動あるのみ、と。

 

 同年代の友人の助けを借りて脱走。裏社会で名を馳せるアウトローと交渉し、やっとの思いでここまで来た。

 そういえば、旅の途中に行動を共にした老人はどうしているだろうか?

 成り行きで助けた際についてきた矢薙という、どう見てもガラクタにしか思えないオーパーツについて一時間ぐらい話していた愉快な人は。

 

 

 

「試験官の本気デッキも破った。私の目的の障害になりうるのは実技担当最高責任者くらい、か。」

「それはどうかな?」

「っつ!」

 

 

 ロサーナは素早く立ち上がり、振り返るとそこには右目を眼帯のような機械で隠し、白いフードを被った青年が立って居た。

 

 

「小娘が。おとなしく故郷で暮らしていれば良い物を。」

「誰だ!お前は!我に何のようだ!」

「消えゆくものに、名乗る名は無い。」

 

 

 

 未知のデュエリストに、ロサーナは気圧されながらも、立ち向かう。

 

 

 

「どうだ!これが我の力、魔王龍ベエルゼ!」

「フン、虫けらのシンクロモンスターが。俺のターン、ドロー!ジェネラルデーモンを召喚!」

「攻撃力2100…フィールド魔法、万魔殿-悪魔の巣窟-を手札に加えるモンスター。なるほど、【チェスデーモン】か。」

 

 

 アウトローに移動代として用心棒を買って出た時、襲撃してきたデュエリストの使用デッキがそれだった。

 最も、エースモンスターがミストデーモンという事もあり、大した腕では無かったが。

 

 

 だが、彼女の目の前にジェネラルデーモンが出現すると、即座に自壊する。

 

「…えっ?フィールド魔法をサーチせず、わざわざモンスターを自爆させた?」

「この瞬間、手札から機皇帝ワイゼル∞の効果発動!このカードを手札から特殊召喚する!」

「攻撃力2500…なるほど、装備魔法で攻撃力をアップしてベエルゼに対抗するつもりか。だが、そんな事をした所で。」

「機皇帝ワイゼルの効果発動!シンクロモンスターを、装備カード扱いで装備し、その攻撃力分、攻撃力がアップする!機皇帝の糧となるがいい!シンクロ・アブソーブション!」

 

 

 機皇帝ワイゼルの胸にある∞の形をした穴から、光の糸のようなものがベエルゼに向かって伸ばされ、全身を拘束する!

 そのままワイゼルに引き寄せられる事態を目の当たりにして、ロサーナは動く。

 

 

 

「な、何?!破壊ではなく、吸収?!リバースカードオープン!速攻魔法、月の書!これで機皇帝ワイゼルを裏側守備表示に」

「機皇帝ワイゼル∞の効果発動!1ターンに1度、魔法カードの発動と効果を無効にして、破壊する!」

「そんなっ!」

 

 

 自身の力の象徴でもあったエースモンスターを失い、ロサーナは焦る。

 ワイゼルの剣がオーラを纏う。

 

 

「これで、ワイゼルの攻撃力は5500!この一撃で砕け散るがいい、行け、機皇帝ワイゼル!ステンレス・スチール・スラッシュ!」

「きゃああああああっ!」ライフ0

 

 

 倒れたロサーナは、青年を睨みつける。

 

 

「シンクロモンスターを吸収するモンスター…。シグナーでは、無いのか?」

「違う。」

「だ、第三勢力か。だから族長は…うぐっ」

 

 

 

 青年、プラシドは冷たく敗者を見下ろす。

 

 

「これでイレギュラーの排除は完了。後は、デュエルアカデミアの実技試験の記録を改竄すれば…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、デュエルアカデミアの初日授業にて。

 

 

「それデーハ、デュエルモンスターズのモンスターカードの種類について、答えるノーネ」

「はい!モンスターカードには、通常モンスター、効果モンスター、融合モンスター、儀式モンスターがあります。」

「スプレンディード!」

 

「すみません、クロノス教諭!」

「何ナノーネ?」

「シンクロ・モンスターというのが存在するそうですが。」

「そんなカード、存在しないノーネ。」

「えっ?受験番号49番の生徒が」

「そもそも49番は受験していませんノーネ。」

 

 質問した生徒は困惑する。

 

 

「ささ、続けるノーネ。続いて、魔法カードの種類について…」

 

 

 困惑する生徒を放置し、クロノス教諭は授業を進める。

 

 




GXの世界にSモンスターを持ち込んだことでイリアステルが介入してくる、というのは蛇足になるので別に無くてもいいと思っています。
まぁ、こんな風にプラシドがお仕事して終わり、というのもありかな?と。

「地縛神はともかく紅蓮の悪魔のしもべは、5000年間何で特に行動していないの?」と思っていましたが、たぶんこんな感じでイリアステルが介入しているのでしょう。
ダークシグナーが勝つと、人類終わっちゃうので。
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