捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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02-07

 真っ黒な髪を肩ほどの長さで切り揃えている女の子。瞳の色も黒で、着ているものは真っ黒なローブ。全身真っ黒。

 

「くろい」

 

 思わず漏らしたリフィルの感想に、老婆は苦笑いを浮かべた。

 

「もうちょっと服を考えろって言っているんだけどねえ。寝ている時以外は、絶対にあの服を着てるのさ」

「そうなんだ」

 

 老婆は不思議そう。けれど、リフィルにはアレシアと呼ばれた女の子の気持ちは分かる。安心感があると思うから。だってあれ、魔道具だし。

 リフィルは魔法に詳しいわけじゃない。むしろ何も知らないと言ってもいい。けれど、そんなリフィルでも、魔力だけはなんとなく感じられるようになっていたりする。

 ずっと結界を伸ばしていって、そして魔女さんが作った魔道具を使っていて……。なんとなくで身についた能力だ。能力なんて大げさなものでもないけれど。

 そしてアレシアも、リフィルの特殊さを感じ取ったらしい。じっとリフィルのことを見つめていた。

 

「珍しいねえ。この子が他人に興味を示すなんて」

「この子、部屋に閉じ籠もってる子だろう? ちゃんと見たのは村に来た時以来だね」

「ああ……。同年代で感じるものでもあるのかね」

 

 よく分からない。よく分からないけど、なんとなく、リフィルはアレシアが気になっていた。本当に、なんとなく。

 

「それで? ジュリアは何の用なんだい」

「ジャムだよ。この子がジャムを気に入ったみたいだったからね。案内ついでに買いに来たんだ」

「あいよ」

 

 老婆は壁際にある棚から瓶を取り出すと、煮詰めているジャムを入れていく。そうしてたっぷりと入れたジャムをリフィルに渡してきた。

 

「ほらよ。持っていきな」

「ん……。ありがと。おかね、ちょっとある」

「いらんよ。子供から金を取ろうなんて思わんさね。その代わり……」

 

 老婆が振り返る。視線の先は、アレシア。アレシアは全員の視線にさらされて、あわあわと鍋の後ろに隠れた。当然ながらちゃんと隠れてはいない。

 

「村を回るならあの子を同行させとくれ。ずっと引き籠もっていたからね。興味を持った子がいるなら、むりやりでも連れ出すべきさ」

「わかった」

「うえええ!?」

 

 変な声を上げているアレシアへと、リフィルが近づいていく。そうしてアレシアの手を取って、言った。

 

「いこう?」

 

 ほんのりと笑う。表情に出にくいリフィルの、精一杯の笑顔。そうするぐらいに、リフィルはこの子と一緒にいたくなった。

 だって。同年代の子。初めての、同年代の子。いなくなってしまったあの子をのぞくと、初めて。とても、気になる!

 

「ぁぅ……。あの、えと……」

「いってらっしゃい」

「あれえええ!?」

 

 老婆に追い出されるような形で家を出た三人。呆然としているアレシアを見て、ジュリアはくつくつと小さく笑った。

 

「ほら、行くよ」

 

   ・・・・・

 

「リフィル。よろしく」

「う、うん……。アレシア、です……」

「レオン。もふもふ」

「もふもふ……。わあ、もふもふだ……」

「かわいい」

「うん。かわいい」

 

 村の中を歩きながら、リフィルとアレシアがそんな言葉を交わす。ジュリアは二人の様子を、微笑ましそうに眺めていた。

 リフィルから手渡されたレオンを、アレシアが優しく抱いてその毛並みを堪能している。猫なのに自慢気に見えるのは気のせいだろうか。

 

「ま、村の案内って言っても、そこまで見るところがあるわけでもないしね」

 

 当初はしっかりと村の良さを教えて、この村を気に入ってもらって定住してもらおう、なんて思っていたのだが、それよりもきっと友だちができた方が離れづらく思うはずだ。だから、このまま仲良くなってもらえばいいと思う。

 ジャムの老婆はアレシアのことを後継者にしようとしているみたいなので一緒に暮らすとういことは難しいだろうが、宿から通うことは簡単な距離だ。宿に住んでもらえば、仲良く遊ぶ二人の姿を見ることができるようになるかもしれない。

 子供はのびのびと遊ぶもの。ジュリアはそう思っている。危険な旅なんてする必要はないはずだ。

 

「にくきゅう」

「ぷにぷにしてる……」

「ぷにぷに」

「ぷにぷに」

 

 それはそうと、あの猫の肉球。少し気になってしまっているのは内緒だ。触らせてほしいとお願いすれば、触らせてくれるだろうか。

 村の中をゆっくりと歩いて、昼過ぎに三人は宿に帰ってきた。食堂も兼ねている宿だが、食事の提供は夜だけだ。今はまだ静かなものである。

 

「昼ご飯は何か食べるかい?」

「たべたい。おかね、ある」

「金はいいから」

「あの……。わたしも、お金……」

「子供のご飯にいちいち金を要求したりしないよ」

 

 そもそもジャムを分けてもらっているのだから問題ない。

 子供たちを食堂の席に座らせて、昼食の用意をする。昼食は保存していた川魚を塩焼きにして、パンと一緒に出してやった。

 

「おさかな」

 

 リフィルが少し嬉しそうに魚を食べ始める。魚に刺している串を持って、豪快に、けれど小さな口でぱくりと。そうしてぱくぱくと食べ進める様子はとても可愛らしい。

 

「骨があるから気をつけなよ」

「だいじょぶ。しってる」

「へえ……。食べたことがあるのかい?」

「魔女さん、焼いてくれた」

「魔女……!?」

 

 これに驚いたのはアレシアだ。唖然とした様子でリフィルのことを見つめている。

 

「あの……。魔女の人と、会ったの……?」

「うん」

「わあ……」

 

 一般人が魔女と会うことなんてほとんどない。それこそ、魔女が村を気に入って入り浸らない限り。そういう場合でも魔女は身分を隠すものらしいが。

 リフィルは、そんなアレシアの反応に不思議そうに首を傾げていた。

 

「アレシア、魔女さん、あってる、はず?」

「え……」

「だって……。それ、まどうぐ。ちがう?」

「……っ」

 

 アレシアが言葉に詰まり、ジュリアも目を丸くした。

 アレシアは三年ほど前に、ジャムの老婆が森で拾ってきた子だ。行く当てもないというので、ジャムの老婆が引き取ってあの家で暮らしている。

 老婆の家に引き籠もってなかなか出てこないので辛いことがあったのだろうとは思っていたが、まさかこちらも魔女が関係しているとは思わなかった。

 けれど。これは丁度良いかもしれない。

 

「不思議な縁もあるもんだね……。せっかくなんだし、仲良くしなよ」

「うん」

「は、はい……!」

 

 似たような境遇の子供たち。これなら本当に友だちになれるかもしれない。できればこのまま親友にまでなってくれればいいなと、仲良く食べる二人を長めながらジュリアは思うのだった。

 

   ・・・・・

 




壁|w・)友だち枠です。お友だちは大事。
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