捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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02-08

 

 アレシアと出会ってから、五日後。リフィルはまだ旅に出ずに、この村で過ごしている。ジュリアと一緒にご飯を食べて、日中はアレシアとひなたぼっこしながらおしゃべりして、なんだかとってもあったかい日々で。ちょっとだけ、離れがたくなってしまった。

 

 

 

 リフィルは日の出と共に目を覚ました。昨日はなかなか寝付けなかったけど、わくわくで無事に目を覚ますことができた。

 わくわくの理由はとても単純。今日はお友だちになったアレシアと、お出かけする予定なのだ。

 昨日、アレシアが誘ってくれた。村をちょっと出たところにとっても綺麗なお花畑があるらしい。

 リフィルはとても興味がある、というわけでもなかったけれど、アレシアが好きな場所なら見てみたいと思った。

 

「だから……。むらをでる、あした、いい……?」

「にゃーう。にゃう」

 

 そろそろ出発しないといけない。そう分かっていても、もうちょっと、と思ってしまう。

 テーブルの上のレオンが、当たり前だと頷いてくれる。リフィルは小さく頷いてレオンを撫でた。

 ちょっとだけずるいかも、なんて思ってしまう。だってレオンは、リフィルのやりたいことを否定しない。きっと、旅なんてやめたい、なんて言ってしまえば、レオンはそれも頷いてくれる。

 だから、レオンに聞くのはずるいのだ。レオンが頷いてくれた、それを言い訳にしているみたいで。

 

「ごめん」

 

 レオンをもふもふと抱きしめる。レオンは仕方ないなとばかりに頬をなめてくれる。それがとても、幸せ。

 

「アレシア、おうち、いく」

「にゃう!」

 

 ともかく、アレシアに会いに行こう。リフィルはそう考えて部屋を出た。

 

「おはよう。お弁当できてるよ」

 

 ジュリアが食堂で待ってくれていた。テーブルには小さな木箱。昨日、アレシアと二人でお出かけすることが決まって、ジュリアはお弁当を作ってくれると言ってくれた。

 これはそのお弁当。中身は内緒らしい。お弁当を食べるのもとっても楽しみだ。

 だって、お弁当。お弁当だ。初めての、お弁当! あの子がお母さんとお出かけする時に持っていっていたのは知っているけど、リフィルのためのお弁当は初めてだ。

 だから、とても楽しみ。リフィルのための、お弁当。

 楽しみにしているって知ったら、あの子は怒っちゃうかな?

 

「行き先は村の外れの花畑、だったね」

「ん」

「じゃあ気をつけて行っておいで」

 

 そう言って、ジュリアが頭を撫でてくれる。それがなんだかとても心地良くて。

 これが、家族なのかな、なんて思ってしまって。

 

「ほら、行っておいで」

「うん」

 

 こくりと頷いて、ジュリアに手を振る。ジュリアは笑顔で手を振り返してくれた。

 そうして村の中を歩いていく。途中で村の人とすれ違ったりもする。

 

「おはよう、リフィルちゃん」

「お出かけかい? 気をつけてな」

 

 村の人もすっかりリフィルのことを受け入れてくれている。

 村の一員として暮らす。きっと、こういうことなんだろうなって。リフィル自身は初めての経験。あの子が暮らしていたもの。

 あの子が。失いたくなかったのに、失ったもの。

 

「…………」

 

 腕の中のレオンを抱きしめる。レオンは気遣わしげにこちらを見上げて、にゃう、と小さく鳴いた。かわいい、のに。かわいいのに心が苦しい。

 

「魔女さん、あきれる?」

 

 魔女さんは旅になんて出なくていいと言ってくれていた。ここで暮らそうって。でも、リフィルは役目があるからと断った。

 それなのに、今はここを離れないでいる。きっと魔女さんは呆れてるはずだ。使い魔で様子を見ているはずだから。

 

「にゃうにゃ」

「そうかな」

「にゃう」

「ん……」

 

 そんなはずはない、とレオンは言ってくれているけど、やっぱりちょっと、申し訳ないと思ってしまう。

 でも。ちゃんと旅には出るから。リフィルはそう自分に言い聞かせて、アレシアのお家に向かった。

 

 

 

 アレシアのお家に行くと、家の前ですでに待ってくれていた。

 

「シア」

「あ……。リフィちゃん」

 

 いつの間にか、愛称で呼び合うようになってしまっていて、それがなんだかとってもくすぐったい。でも、とってもぽかぽかする。ぽかぽか。

 二人で手を繋いで、歩き出す。アレシアのお手々はちょっとだけひんやりしていて、気持ちいい。そんなお手々はほんのり果物の香りがしていて、なんとなく好き。

 

「リフィちゃん。手に持ってるそれって……」

「おべんとう。ジュリアさん、くれた」

「わあ……! わたしも、おばあちゃんにもらったよ」

 

 アレシアが手に持っている包みからは良い香りがしていて、お腹がきゅうと鳴った。ちょっと恥ずかしい、けど……。アレシアのお腹もきゅうと鳴いたからおあいこだと思う。

 リフィルとアレシアは顔を見合わせて、思わず笑ってしまった。リフィルは相変わらずの薄い笑顔だったけど、アレシアには十分伝わってくれるようになった。

 しばらく歩いて目的地に到着。村から五分ほど歩いたところにそれはあった。

 森の中の不思議な広場。不思議と木がなくなっている場所があって、そこに花畑があった。とっても綺麗なお花がたくさん。

 

「すごい。おはな、いっぱい」

「うん。わたしのお気に入りの場所。綺麗でしょ?」

「うん」

 

 アレシアが言うには、村の人はみんなこの花畑のことを知っているらしい。昔からある花畑。なんだか、不思議。

 

「あ」

 

 気付けばレオンがリフィルの腕の中から飛び下りて、ちょこちょこ走っていってしまった。とっても楽しそうに走っているから、心配はいらなそう。レオンもこんな花畑は初めてなのかも。

 てくてく歩いて、花畑の中へ。こんなに綺麗なお花を踏んでしまうのはなんだかもったいないけれど、さすがに避けて歩くのは難しい。なので内心でごめんなさいをしながら、花畑の中心まで歩いた。

 

「おー……」

 

 中心まで歩いて、改めて周囲を見回せば、やっぱりこの花畑はとってもすごい。辺り一面綺麗なお花で、ここだけ別の世界みたい。なんて綺麗な場所なんだろう。

 




壁|w・)旅に出ないといけないのに、出たくないと思ってしまう、そんな感情。
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