捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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 ひとしきりアレシアとなでなでしあってから、レスターに道案内をしてもらう。レスターが向かったのは、入ってきた門の側にある二階建てのお家だった。

 周りのお家と比べても、ちょっとだけ小さいかもしれない。ドアの前には鉢植えが置かれていて、綺麗なお花を咲かせていてとってもかわいい。ここのお家はいいお家。

 

「きれい」

「妹が育てている花だよ」

「かわいいお花だね」

 

 お花は好きだ。見ているとなんだか胸がぽかぽかしてくるから。

 それに。おかあさんも、お花を育てていたはず。あの子の中でぼんやりしていた頃だったから、あまりはっきりとは覚えてないけど。

 たまに、少しだけ思ってしまう。もうちょっと、ちゃんと両親を見ておけばよかったかな、と。

 

「にゃう」

 

 リフィルの頭の上に戻っていたレオンが、小さく鳴いたことでリフィルは我に返った。アレシアが心配そうにこっちを見てる。そんなアレシアに、なんでもないと首を振った。

 

「もういいか?」

 

 そう聞いてくるレスターに頷く。レスターはそれならとお家のドアを開けた。

 

「戻ったぞ!」

「あ、おかえりお兄ちゃん!」

 

 そんな可愛らしい返事がすぐにあった。

 お家に入ってすぐのこの部屋は、リビングとキッチンを兼ねた部屋。ドアの側に料理をするための台がある。部屋の中央にはテーブルがあって、奥にはまた別の部屋に続くドア。

 テーブルには椅子が二つ並べられていて、その一つに女の子が座っていた。

 女の子と行ってもリフィルよりも年上、だと思う。多分十代半ばぐらいだ。栗色のショートヘアに、同じ色のくりっとした目をしてる。

 その子が怪訝そうにリフィルたちを見ていた。

 

「お兄ちゃん……。その子は?」

「ああ。俺の研究に協力してくれる子たちだ」

「まさか……! さらってきたの!? 一線だけは、一線だけは越えないって信じていたのに……! この人でなし!」

「お前は俺をなんだと思っているんだ!?」

「研究一筋の穀潰しだよお金稼げバカ野郎!」

「正論で殴るのはやめるんだ!」

 

 ぎゃあぎゃあと言い争いを始める二人。ぽかんと口を開けて固まるリフィルと、ええ、と引き気味なアレシア。レオンは微笑ましそうにそれを眺めていた。

 

 

 

「恥ずかしいところを見せちゃってごめんね。私はミントです」

「改めて俺も自己紹介しておこう。この町一番の魔道具研究家、レスターだ! いずれ世界に名を轟かす発明家でもある!」

「恥ずかしい兄を見せちゃってごめんね」

「さすがに傷つくぞ妹よ」

 

 そんなやり取りをしているけれど、ミントは笑顔だ。仕方ないなあ、みたいな顔で、レスターのことを信頼しているのがなんとなく分かった。

 お家の奥から椅子を二つ出してもらって、今はテーブルを挟んで向かい合って座ってる。リフィルとアレシアが並んで座って、その対面がレスターとミントだ。

 

「わたしは、リフィル」

「えと……。アレシアです。リフィちゃんと旅をしてます」

「この子が、レオン」

 

 リフィルが頭の上のレオンをテーブルの上に置く。レオンは右前足を上げて、一鳴きして挨拶した。

 

「にゃ!」

「かわいい! え、すごくかわいい! だ、だっこしても、いい?」

「うん」

「それじゃあ……」

 

 ミントが両手を差し出すと、レオンがてくてく歩いてミントの腕の中へ。優しく抱いて、もふもふし始める。ほわあ、と変な声が漏れてきた。

 

「かわいい……すごくもふもふだあ……」

「レオンはとてもかわいい」

 

 リフィルの自慢の使い魔なので。もっともふもふしてもいいよ!

 ひとしきりもふもふを堪能するのを待ってから、お話を再開した。

 

「それで……。お兄ちゃんの研究のお手伝い、だっけ?」

「らしい」

「ふうん……。どうしてこんな子をさらってきたの?」

「前提がおかしいぞ妹よ。さらってなどいない」

「犯罪者はみんなそう言うんだよお兄ちゃん」

「兄に対する信頼がなさすぎでは?」

 

 仲の良い兄妹だな、というのは分かったから、そろそろ話を進めてほしいと思う。ほら、レオンもちょっぴり飽きてきたのか、テーブルの上であくびをしちゃってる。後ろ足で耳の裏をくしくしとかいてる。かわいい。

 

「アレシア。レオンがかわいい」

「う、うん……! すごくかわいい……!」

 

 アレシアと二人でレオンのかわいいを眺めていたら、ようやく話が進むことになった。こほん、とミントが咳払い。

 

「研究のお手伝いは分かったよ。でも、お給料とか出せないよ? 大丈夫?」

「だいじょうぶ」

「なら……いいのかな?」

 

 少なくともリフィルは納得しているし、アレシアも問題ないみたいだから大丈夫だ。リフィルがあまりお金に頓着していないというのもあるかもしれないけれど。だって、あまり必要としないから。

 もちろん必要ないわけじゃないけれど、多分今回の魔物の解体の後でお金が入ると思うから、それで十分だと思う。あまり多く持っても、それはそれで危ない、というのは魔女さんから聞いたことがあるから。

 

「おかね、いらない」

「本当に……?」

「ん……?」

 

 なんだかすごく疑われてる。不思議に思っていたら、ミントが遠慮しがちにきいてきた。

 

「でも、あの……。裸足、だったよね?」

「うん」

 

 どうしてそんな顔なんだろう。リフィルとしては、必要だから裸足でいるだけなのに。足の裏を通して大地に魔力を流して、結界を形作る。靴をはいてしまうと、魔力の流れが悪くなってしまう。ただそれだけの理由なのに。

 

「説明しないと分からないよ、リフィちゃん」

「んぅ……。ひつようだから」

「説明になってないよ、リフィちゃん」

「あれ?」

 

 おかしい。必要だからやっている、で十分だと思うのに。

 アレシアが苦笑いして、リフィルが首を傾げて。そんなリフィルたちの様子に、ミントは小さく笑って頷いた。

 

「うん。分かった。お金がなくて靴を買ってない、てわけじゃないんだね」

「ちがう」

「それなら、安心……。安心なのかなこれ……」

 

 少なくともリフィルはミントの気にしすぎだと思う。足が痛くなってるわけでもないから、問題ないのだ。きっと。

 

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