捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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03-14

 意志のある魔物を支配する。それはつまり、本能に従うような魔物は違うということ。そして多分、リフィルの故郷やアレシアの村を襲った魔物は魔王とは関係ない。

 でも、それならどうしてここに来たんだろう。それも、魔王たった一人で。

 リフィルが首を傾げていると、リフィルの頭をぽんぽんと叩いてくる子がいた。レオンだ。視線をちょっと上向かせると、レオンが言った。

 

「ふに、にゃおにゃん。にゃーご。にゃむ!」

「わからん」

「うにゃあ!?」

「いやそりゃそうだろう……」

 

 ちょっと慣れてきたのか、レスターが呆れたようにそう言った。

 長文になると、どうしても意志の理解が難しくなってくる。ちょっと不思議な感覚。言いたいことはなんとなく分かるから、どうにかこうにか頭の中を整理する。むむむ……!

 

「わたしの結界が、きになる?」

 

 そう魔王に言ってみると、魔王が口角を持ち上げた。にやりと。ぴゃっとアレシアがリフィルの後ろに隠れてしまった。大丈夫大丈夫。

 

「ああ、そうだ。忌々しい結界が消えたからな。試しに王都を滅ぼしてやったのだが……。そこで新たな結界を感じ取った。お前の、結界だ」

「王都を滅ぼしただって!?」

 

 そう反応したのはレスター。信じられないような顔で魔王を凝視する。

 

「その通りだが、貴様と会話するつもりはない。黙れ」

 

 そう魔王が睨むと、恐怖からかレスターは口を閉じてしまった。かわいそうだからやめてあげてほしいのだけど。

 

「お前の結界は……あまりにも強力だ。そして、おそらくもう消えることはないだろう。そんな結界を張ろうとしているお前に興味がわいたのだよ」

「んと……。ころす?」

「やめておくとも。俺は自殺志願者ではない」

 

 そう言う魔王はレオンを一瞥して、そしてまた別の方向に視線を投げていた。遠いところを見るみたいな目。その方向に何かがあるとは思えないけど、魔王よりも怖いものがいるのかもしれない。

 レオンも、魔王からすればすごいのかも。さすがレオン! とってもすごい! すごくすごい!

 

「なでなで」

「ふにゃあ……」

「…………。俺は何を見せられている?」

 

 勝手に見てるのは魔王なので知りません。

 

「それで、まおうは、なにをしにきたの?」

 

 レオンをもふもふしながらそう聞く。邪魔な結界を張るリフィルを殺しに来たのかも、なんて思ったけれど、それもない。本当に何をしたいのやら。

 

「本音を言えば、お前を殺しておきたいところではある。不可能だが」

「ん……」

「あとは、そうさな……。新たな奇跡の担い手を確認したかった。それだけだな。どのような代償を支払ったのか、気になるところではあるが……」

「代償……?」

 

 おずおずと、アレシアが顔を出す。代償。何のことだろう。

 

「知らなかったのか? 奇跡は何かしらの代償支払うことを強いられる。以前の結界を最初に張った初代聖女も、悲劇を経験していたほどだ。その結界よりも強力なものを使うお前の奇跡。代償は、なんだろうな?」

 

 アレシアとレスターがリフィルを見る。そんなに見つめられても、ちょっと困る。でも、悲劇には心当たりがあった。もっとも、その悲劇はリフィルじゃなくて、あの子が経験したものだけど。

 幸せに生きていたのに、唐突に村が滅びることを知ってしまい、どうにかしようと奔走するも結果的に村が襲われ、一人をのぞき皆殺しにされてしまう。そんな、殺されていく様を見せつけられる。

 リフィルの魔法は、あの子から引き継いだものだ。だからこの魔法の代償は、きっとあの子が経験した悲劇なんだと思う。

 もっとも。これは、魔王に伝えるつもりはないけれど。

 

「ないしょ」

 

 そう言うと、魔王は面食らったみたいに目を丸くして、そしてすぐに笑い出した。とても楽しそうに、快活に。

 

「そうか! 内緒か! それならば仕方ないな!」

「うん」

「ならば俺から言うことはもう何もない。俺はあの不毛の地よりお前の物語を楽しむとしよう」

「がんばる」

「くは。ああ、がんばるといい」

 

 魔王はそう言うと、背中に大きな翼をはやして飛び立っていった。あっという間に見えなくなってしまう。きっと、結界がなかったら襲われていた……かもしれない。

 

「ふみゅう……」

 

 それにしても、レオンはちょっと残念そうだ。レオンから伝わってくる感情は、とても複雑そう。憎みたいけど何か違う、怒りたいけどそれも違う、かといって笑って流すこともできない、そんなごちゃごちゃした感情。

 

「レオン。いいこ、いいこ」

「ふにゃ……」

 

 とりあえずきゅっと抱きしめて撫でておく。それだけでレオンはふんにゃりと脱力した。かわいい。

 

「あれが、魔王か……。思っていたよりも、理知的だったな」

 

 そう言うのは、レスターだ。レスターが言うには、もっと会話が通じない化け物だと思っていたらしい。それはさすがに魔王に失礼だと思う。

 だって、あんなにちゃんと会話していたんだから。

 でも。魔王。どうして来たのかは結局よく分からなかったけど、会えて良かったとは思う。少なくとも、リフィルを邪魔するつもりがないことは分かったから。

 そんなことよりも研究の続きだ。だってもう時間はない。今夜にでも、この町の結界を張り終えると思う。明日の朝にはもう出発するつもりなんだから。

 

「レスター。つづき、どうぞ?」

「あ、ああ……。そうだな。続けよう」

 

 レスターももうあまり時間がないことは分かってくれてるはず。レスターはしっかり頷くと、また魔法の研究に戻った。

 この町での生活の終わりも、もうすぐだ。

 

   ・・・・・

 




壁|w・)戦闘要素はないよ!
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