捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

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 ぺたぺた歩きながら、リフィルは目の前を歩く魔女を観察する。黒いローブの魔女は、あの子が表にいた時から何度か見たことがあるはずの人だ。

 でも、あの時はこんな服装じゃなかった。あの子も魔女だなんて思っていなかったはず。リフィルが魔女だと思ったのも、今の服装からだから。

 隠していたのかな? ちょっと分からない。でも、優しそうな人みたいで、ずっとリフィルのことを気に掛けてくれている。とてもいい人だ。

 

「大丈夫? 足、痛くない?」

 

 今もこうやって聞いてくれるほどだから。

 

「けっかい、へいき」

「えっと……。結界の魔法の影響で、足が痛くないの?」

「うん」

 

 そういう感じ、だと思う。リフィルにもよく分かっていなかったりする。魔法は難しい。

 

「その……。ずっとあなたの体を使っていた子については、どう思う?」

 

 そんなことを聞かれて、リフィルはちょっと悩んだ。だって、答えにとても困るから。リフィルにとっては、大事な片割れ、そんな感じなのだ。

 リフィルはのんびりぼんやり中から眺めているだけで満足だったのに。あの子がいなくなってしまって、とても寂しい。とても、とっても寂しい。

 

「さびしい」

 

 そんな気持ちをこめてそう言ったら、そうなんだ、と言ったきり魔女は何かを考え始めた。難しいことを考えていそうなので、邪魔はしないでおく。聞いてもリフィルには理解できないことだ。多分。

 ぺたぺた歩いて、結界をゆっくり伸ばしていく。今は魔女さんのお家に向かっているはずだけど、このまま結界を伸ばしていっても大丈夫かな。それすらリフィルには分からない。

 でも、どうせ目的地なんてなかったから、今は魔女さんに従おうかなと思う。優しそうだし。

 

「まじょさん」

「んー……。あ、ごめん。なに?」

「おうち、とおい?」

「あー……。徒歩だと……。二日ぐらい歩けば着く、かな?」

 

 なんと。思っていたよりも遠かった。でも考えてみれば、魔女さんはあまり村には来てなかったはず。こういう事情もあったんだ、と納得するばかり。

 そんなにお家が遠いのに、村に来てくれていたなんて……。魔女さんはとってもいい人だ。

 

「箒で飛べば、半日もせずに着くんだけどね。それはだめでしょ?」

「ん」

「じゃあ、ゆっくり歩こう。疲れたら言ってね」

 

 リフィルがこくんと頷くと、魔女はなんだかとっても優しい笑顔になった。

 

 

 

 ぺたぺた歩いて、夜。いろいろ変なことになってしまったリフィルだけど、睡魔は普通に感じてしまう。なので寝ることは必要。でも、当然ながら寝ている間は無防備だ。襲われても死ぬことはないんだろうけど。

 

「それでどうやって旅をするつもりだったのやら……」

 

 魔女さんは苦笑いしながら、たき火を起こして何かの魔法を使った。多分、結界。魔物を寄せ付けないようにするための結界みたいで、リフィルがちょっとずつ広げている結界と少し似ている気がする。

 でも。結界ならリフィルが広げているものがあるから、必要ないと思うのだけど。

 

「晩ご飯はなんでもいいかな?」

「なくてもいい」

「お腹は空く……でいいよね?」

「ん」

 

 食べなくても死にはしない。今のリフィルはそんな状態だ。でもやっぱり空腹感はあるので、食べて良いなら食べたい。

 それに。あの子はちゃんとご飯を食べていたけど、リフィルはまだ食べたことがない。ご飯。食べるって、どういう感覚なんだろう。とても気になる。

 魔女さんがローブの内側からお鍋を取り出した。どう見てもローブの中にしまえるような物じゃないけど……。魔女さんの魔法かな?

 そんなお鍋に、水と、何かの食べ物、それになんだか不思議なねばねばしているものを入れていく。何を入れているのか想像もできない。

 リフィルが興味深そうにそれを見ていたら、魔女さんは小さく笑いながら教えてくれた。

 

「これはね、お米。私が好きな食べ物で、よく外の国に買いに行くんだよ」

「おこめ」

「こっちが、お味噌。外の国の調味料って言えばいいかな」

「ほうほう」

 

 頷いたけれど、よく分かっていない。外の国というのも、リフィルにとっては知らない場所だから。

 ぐつぐつと煮込みながら、魔女さんが何かの草を入れていく。香草、らしい。香草ってなに?

 

「完成!」

 

 そうしてできあがったのが、不思議なスープ。なんだかとろみがあるみたい。

 魔女さんが取り出したお椀というものにそのスープを入れてくれた。

 

「はい、どうぞ」

「ん……」

 

 一緒に渡されたのは、スプーン。少しすくってみると、やっぱりとろみがある。べちゃっとしているけど、これは美味しいのかな?

 ちょっとどきどきしながら、ぱくりと一口。

 

「おー……」

 

 ほんのりとした甘みと塩辛さ。少しある粘りけが、お米という食べ物にしっかりと絡んで、とても美味しい……と、思う。少なくともいっぱい食べたいと思える味だ。

 リフィルがぱくぱく食べ進んでいたら、魔女さんが嬉しそうに笑っていることに気が付いた。

 

「ん?」

「ふふ……。なんでもない。しっかり食べてね?」

「うん」

 

 遠慮なく、たくさん食べていく。あの子はこんなに美味しいものをずっと食べていたのかな。そう考えると、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、ずるいと思ってしまった。

 




壁|w・)このお話は旅するちっちゃい子をひたすら甘やかすお話です!
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