捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~   作:龍翠

40 / 65
閑話 関係のない聖女2

 

「これは……」

 私はその結界を見て、ただただ驚くことしかできませんでした。

 

 

 

 サハル王国にしっかりと結界を張り終えた私は、チェスター様と共にカーザル王国を訪ねることにしました。私が張っていた結界はすでに消えてしまっているので、護衛の騎士たちも一緒です。すでに危険な魔物が多数入り込んでいるでしょうから。

 魔物だけではありません。もしかすると、魔王ですら入り込んでいる可能性があります。もし魔王と遭遇すれば……。考えるだけでもぞっとします。

 だから。護衛の騎士たちは、護衛としての役目だけではなく、もしものための囮の役目もあります。皆さんそれを承知で一緒に来てくれているのですから、頭が上がりません。

 

「本当に、申し訳ありません……。私のわがままに付き合っていただいて……」

「なんのなんの。聖女様を守れるのなら、この命惜しくはありませんよ」

 

 老齢の騎士がそう言ってくれます。他の騎士たちも同じ意見らしくて、みんなが頷いていました。

 もし魔王が出てきても、全力で結界を張ればきっと時間稼ぎはできるはずです。なんとしてでも、全員で生きて帰りたいと思います。

 そうして、私とチェスター様、そして騎士十名でカーザル王国の森を進んでいって……。唐突に、それが現れました。

 

「これは……結界……?」

「何か見つけたのかな?」

「チェスター様……。はい。ここに、結界があります」

 

 チェスター様は私が示した場所を怪訝そうに見つめていましたが、首を傾げてしまいました。騎士の方々も一部は分かっていないようです。

 けれど、魔法を使える騎士の方々はその結界に気付いたようでした。

 

「確かに……結界、のようなものがありますね……」

「聖女様の結界の名残、でしょうか?」

「いえ……。おそらく、違います」

 

 私の結界とは根本的に違う結界です。そう、これは……。

 

「私の結界よりも、ずっと強力な結界ですね……」

「なんと……」

 

 強度は大差ないかもしれません。ですが、この結界にはとんでもない特徴があります。それは。

 

「維持する必要がありません……」

「…………」

 

 私の言葉に、チェスター様を含めみんなが絶句しました。

 私の結界は、結界の維持のために定期的に魔法を使う必要があります。大量の魔力を一度に使えば一年は持続するようですが、それでもそこが限界です。放置はできません。

 けれど。目の前の結界は、地下から魔力を吸い上げて維持しているようです。おそらくは魔脈を利用しているのでしょう。

 原理は分かるのですが、方法が分かりません。少なくとも、私は魔脈に魔法を届かせる術を知りません。

 

「では……。この国はもう安全なのか?」

 

 チェスター様の問いに、私は小さく首を振りました。

 この結界は確かに私の結界の上位のものと言えます。ですが、あまりにも魔法が複雑すぎるのでしょう。この国を覆うことはできていません。

 

「少しずつ、結界を伸ばしているようです。ここにあるのは結界の道、ですね。多分ですけど……。村や町をそれぞれ繋ごうとしているのかと……」

「それは……。時間がかからないか……?」

「はい。とても。十年、いえもっと……。とても時間がかかります」

「…………」

 

 あまりにも気が遠くなるような作業です。そんな人を心から尊敬します。

 できれば、一度会ってみたい。そして何か手伝えることがあれば協力したい。そう思いました。

 

「チェスター様。私は、この結界を作っている人に会いたいと思います」

「ああ、わかった。もちろん一緒に行くとも」

「ありがとうございます!」

 

 そうと決まれば、方法は簡単です。この結界に沿って向かえばいいだけですから。問題は、どちらから来て、どちらに向かっているのか、それが分からないことぐらいです。

 行き先を決めるためにしっかりと結界を調べようとしたところで。

 

「今頃になって戻ってきたのね」

 

 そんな声が上空から聞こえました。

 

「誰だ!」

 

 騎士の皆さんが剣を構えます。私も結界の準備をして上空を見ると、一羽のカラスが飛んでいました。

 そのカラスは私たちの目の前に下りてきます。そして、ぐにゃりと形を変えて人の姿になりました。

 

「まさか……。観測の魔女、か!?」

 

 チェスター様の言葉に、黒いローブの魔女が頷きました。

 

「そう呼ばれることもあるわね」

「魔女が何の用だ!」

「そんなに嫌わなくてもいいじゃない。私、あなたたちに何もしてないのに」

「黙れ!」

 

 騎士たちが殺気立っています。私はそんな騎士たちの反応に驚いてしまいました。あんなに優しい騎士たちが、こんなに怒っているなんて。

 もちろん魔女は悪しき存在です。けれど、彼女の言う通り、あの魔女はまだ何もしていません。敵対する必要はないと思います。

 

「あの……。どうしてここに?」

 

 そう聞くと、魔女は肩をすくめました。

 

「あなたが……聖女がここに来たから」

「何かご用があるのでしょうか?」

「そうね。今すぐ帰りなさい」

 

 魔女のその言葉に、私は戸惑ってしまいます。帰ることを勧められるなんて思いませんでした。

 

「どうして、ですか?」

「この結界を張っている子に会うつもり、なんでしょう?」

「はい」

「やめておきなさい。知らなくていい現実を知ってしまうから。サハル王国で幸せに暮らしなさい」

「それは……だめです。私は、知らないといけません」

 

 私を追放した国の末路を、私は、私だけは見届ける必要があると思っています。追放されたといっても、私はこの国を確かに愛していましたから。

 そう言うと、魔女は何故か泣きそうに顔を歪めました。

 

「さすが、主人公ね……」

「え?」

「なんでもない。私はあなたに罪があるとは思っていない。だからこそ、不必要に傷つくことはないと思ってる。あの子に会えば、あなたは絶対に後悔するわよ。いろんなことに、ね」

「魔女様は……結界を張っている人を知っているのですね」

 

 魔女がしっかりと頷く。きっとこの魔女は優しい人です。そんな魔女が、会わない方がいいと言うなんて……。どんな人、なんでしょう。

 きっと、この人が言うように、会わない方がいいのだと思います。けれど。それでも。

 

「私は、一応先達ですから……。できることなら、協力したいんです」

 

 魔女としばらく見つめ合います。やがて魔女は小さくため息をついて、ある一点を指差しました。結界が伸びる一方向へ。

 

「あちらに向かいなさい。この先に、あの子たちがいるから」

「ありがとうございます!」

「…………。どうなっても、知らないからね」

 

 そう言って、魔女はカラスの姿となってどこかへと飛んでいってしまいました。

 新たな結界を張る、次代の聖女。女性かはまだ分かりませんが……。あちらに向かえば、会えるようです。

 

「行きましょう」

 

 チェスター様たちにそう言うと、戸惑いながらも頷いてくれました。

 

 

 

 私は、後に後悔します。忠告に従っておけばよかった、と。

 




壁|w・)聖女さんが動き始めました。

毎日投稿はここまでとなります。さすがに書きためがなくなっちゃった……。
ここから先は3日ごとの投稿となります。たまにお休みするかも?
もう少しだけお付き合いいただければ嬉しいですよー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。